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                   文部科学省研究開発学校
 
 
 
                  平成29(2017)年度指定
 
         スーパーサイエンスハイスクール
 
 
 研 究 開             発 実              施 報        告 書
 
                        第 四 年 次
 
 
 
 
                          研究開発課題
 
 
  国際社会に貢献する科学者・技術者の育成をめざした
         探究型学習システムの構築と教材開発
 
 
 
 
                     令和3(2021)年3月
 
 
                    筑波大学附属駒場高等学校
 
 
     〒 1540001    東京都世田谷区池尻 471   TEL0334118521
 台中一中オンライン国際交流   大阪大手前高校マス・フェスタ
 
 
 
 
 台中一中オンライン国際交流   大阪大手前高校マス・フェスタ
 
 
 
 
 台中一中オンライン国際交流   数学オリンピックワークショップ
 
 
 
 
 地歴公民科SSH特別講座
                              数学オリンピックワークショップ
 全国SSH生徒研究発表会(収録)   英語科 SSHプレゼン・ワークショップ
 
 
 
 
                                    理科 オンライン授業 リアルタイム生徒実験
 
 
 
 
   数学科教員オンライン研修会
 
 
 
 
                                     理科 教育研究会 オンライン研究協議
 
 
 
 
   数学科教員オンライン研修会
                                         技芸科 CiNii での論文検索演習
 
 
 
 
   数学科教員オンライン研修会           技芸科 オンラインポスター指導
                                         目      次
 
  1.研究開発実施報告(要約)  1
  2.研究開発の成果と課題  4
 
 I.研究開発の概略     6
 
 II.研究開発の経緯    10
 
 III.研究開発の内容
    1 国際社会に貢献する科学者・技術者の育成をめざした探究型学習の教材開発と実践
      a. 中高一貫数学教材の開発と全国への発信  12
      b. 理科課題研究の充実と探究型教材の開発と実践  18
      c. 情報収集能力とメディア活用能力の育成  23
    2 主体的な探究活動をするための基礎力育成カリキュラムの開発と実践
      a. 理数系基礎力の充実と科学的リテラシーの涵養
        a1. 数学科 SSH 講座 25
        a2. 理科 SSH 講座 26
        a3. 国語科 SSH 講座 27
        a4. 社会科 SSH 講座 28
        a5. 保健体育科 SSH 講座 29
      b. 主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)による探究能力の開発
        b1. 環境地図作成 30
        b2. 城ヶ島野外実習 31
    3 探究型学習を実践するためのプログラム開発とサポート体制
      a. 水俣実習/福島フィールドワーク 32
      b. 課題研究「障害科学:ともにいきる」 34
      c. 数学科課題研究発表活動支援 36
      d. 台湾台中第一高級中学とのオンライン研究交流  37
      e. 他 SSH 校プログラムへの参加(名古屋大学附属高校)  39
      f. 大手前高校マスフェスタ 40
      g. SSH プレゼンワークショップ  41
      h. 課題研究「サイエンス・ダイアログ」 42
    4 探究型学習システムの開発と他校への発信・共有
      a. SSH 数学科教員研修会(オンライン)  43
      b. 教育研究会(理科の取り組み) 45
 
 IV.実施の効果とその評価
     a. 講演会・実施講座生徒アンケート 47
     b. 台湾台中第一高級中学との交流プログラムの評価  48
     c. 国際交流プログラムの評価 49
     d. 卒業生アンケート 50
 
 V.研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向・成果の普及    52
 
 VI.校内における SSH の組織的推進体制    54
 
 関連資料    55
 別紙様式11
                                筑波大学附属駒場高等学校       指定第4期目     2903
 
 
            令和2年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)
 
 
  1 研究開発課題
   国際社会に貢献する科学者・技術者の育成をめざした探究型学習システムの構築と教材開発
  2 研究開発の概要
 過去3期(H14-18・H19-23・H24-28)の研究開発課題
   第1期「先駆的な科学者・技術者を育成するための中高一貫カリキュラム研究と教材開発」
   第2期「国際社会で活躍する科学者・技術者を育成する中高一貫カリキュラム研究と教材開発
   中高大院の連携を生かしたサイエンスコミュニケーション能力育成の研究」
   第3期「豊かな教養と探究心あふれるグローバル・サイエンティストを育成する中高大院連携
   プログラムの研究開発」
 への取り組みを活かし、主体的・協働的な学びを通じて、自ら設定した研究課題に対して探究する
 理数系人材の育成を目的とする。そして、生徒の成長過程に即したカリキュラムと学習プログラム
 を開発・実践し、それらを連動させた学習システムの構築を目標とする。さらにその成果を積極的
 に発信し、中等教育現場との共有を図る。
   研究開発の柱は以下の4つである。
   1 国際社会に貢献する科学者・技術者を育成する探究型学習の教材開発と実践
   2 主体的な探究活動をするための基礎力育成カリキュラムの開発と実践
   3 探究型学習を実践するためのプログラム開発とサポート体制
   4 探究型学習システムの構築と他校への発信・共有
  3   令和2年度実施規模
   全校生徒(附属駒場中学校を含む)を対象に実施する
  4   研究開発内容
 ○研究計画
 【第1年次】
   準備・リサーチ段階と位置づける。新規に取り組む内容については、各種プログラムの準備、
 および試行へ向けた調整を行う。すでに実施している内容については、これまでのSSH事業の成果
 と評価を踏まえ、継続的実践・改良・再構築を進める。
 【第2年次】
   試行段階と位置づける。第1年次に準備したプログラムについては、実施規模を限定した形で
 の試行を通して、さらなる実現可能性を探る。第1年次に試行・改良したプログラムについては、
 前年度の結果を踏まえた本格実施を行う。
 【第3年次】
   研究を具体的に展開する。第2年次までに試行した内容について、再検討を行い本格的な実施
 に取り組む。また、継続的に実践している内容については、再検討・改良などを行い、成果の普及
 を進める。
 【第4年次】
   研究の深化・充実を図る。全ての研究内容について、第3年次までに開発した教育プログラム
 や教材を本格的に展開し、評価を試みる。
 【第5年次】
   研究の完結および発展期ととらえる。第4年次までの研究で得られた成果をもとに、開発した
 各種プログラムや教材、カリキュラムを、他校でも活用できるような形での普遍化に取り組む。
 
 
 
 
                                            1
 ○教育課程上の特例等特記すべき事項
  なし
 ○令和2年度の教育課程の内容
  巻末・関係資料(教育課程)の通り。平成 28 年度より「理科課題研究」および「学校設定科目
 ・課題研究」を、高校2年次・3年次で実施している。
 ○具体的な研究事項・活動内容
  今年度の主な活動内容を、研究開発の柱14の順に示す。
 1 国際社会に貢献する科学者・技術者を育成する探究型学習の教材開発と実践
  1) 理科課題研究の充実と探究型教材の開発と実践
    高校2年次の必修科目「理科課題研究」(または「学校設定科目・課題研究」)において行わ
    れてきた「能動的・探究的学習」プログラムおよび教材を正課授業の中で発展開発した。オン
    サイトとオンライン、それぞれの適性を活かした学習形態から新たな教材を開発した。
  2) 情報収集能力とメディア活用能力の育成
    生徒の研究・発表に必要な情報検索やプレゼンテーションスキルを涵養することを目標とした
    SSH 特別講座「メディア虎の穴(シリーズセミナー)」を、独立講座として実施した。
  3) 学際的(教科融合型)課題研究や理数系以外での課題研究の推進
    高校2年次の必修科目「学校設定科目・課題研究」(または「理科課題研究」)において、
    理科以外の7講座(国語・地歴2・数学・保健体育・障害科学・英語)を設置し、探究型学習
    に取り組んだ。高校3年次「学校設定科目・課題研究」(選択科目)では、7名の生徒がさら
    に研究を進めた。
 2 主体的な探究活動をするための基礎力育成カリキュラムの開発と実践
  1) 理数系基礎力の充実と科学的リテラシーの涵養
    本校では、全教科を挙げてSSH事業に取り組んでおり、上述の「情報科・メディア虎の穴」
    の他にも、各教科でSSH講座を開き、生徒の科学的リテラシー涵養を図っている。
  2) 主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)による探究能力の開発
    高校での「課題研究」などで必要となる探究型学習の基礎として、前段階の中学の総合的な学
    習の時間において、探究学習を全員に課し、探究的学びの土壌づくりをしている。
 3 探究型学習を実践するためのプログラム開発とサポート体制
  1) 高大連携によるプログラムの推進と実践
  ・高校生希望者を対象とした東京医科歯科大学高大連携プログラム、「英語模擬交渉ワークショ
    ップ」に参加(6~7 月)し、医療分野の複雑な問題に関する英語模擬交渉の資質を醸成した。
  2) 本校卒業生を活用した SSH 事業サポート体制の充実と育成プログラムの検証
    数学(ジュニア)オリンピック参加に資する講座「SSH 数学オリンピックワークショップ」に
    おいては、講師を始めとして TA、アドバイザーとして本校卒業生を招聘し、指導協力を得た。
  3) 社会と連携し貢献する科学者・技術者の素養を育成するプログラムの開発と実践
  ・「科学者の社会的責任を考える」を主題とした、熊本県水俣市におけるフィールドワーク(「水
    俣から日本社会を考える」および震災後の福島に関する現代の科学・技術をめぐる多様な側面
    を共同で研究する灘高等学校とのフィールドワークは協議や実習等をオンラインで行った。
  ・高2課題研究(学校設定科目)「障害科学:ともに生きる」では、実際に様々な形で障害に
    かかわる方々による講演を聞き、情報保障を体験的に学ぶ機会設けたオンライン交流を大学や
    特別支援学校行った。
  4) 国際舞台での研究発表の推進と国際科学コンクール等への派遣
  ・姉妹校協定を結んでいる台中市立第一高級中学とは今年度オンラインで研究交流を行い、互い
  の研究を発表した。また、今後の研究交流をさらに発展すべく姉妹校協定を5年間更新した。他
  校の SSH プログラムにも生徒を派遣し、名古屋大学教育学部附属高等学校重点枠事業の約 10 ヶ
 
 
 
                                            2
   月に及ぶ「数学的課題の協同解決」の研究交流に参加した。
   ・今年度生徒が参加した国際科学コンクールは以下の通りである。
   科学地理オリンピック兼国際地理オリンピック/国際情報オリンピック/アジア太平洋情報オ
   リンピック/国際化学オリンピック/国際生物学オリンピック/国際言語学オリンピック
   ・英語プレゼンテーション能力の育成を図る取り組みとして、SSH 特別講座「プレゼンワークシ
   ョップ(オンライン)」を年3回実施し、オンラインでの効果的コミュニケーションスキルを磨
   いた。高2課題研究(学校設定科目)においても「サイエンス・ダイアログ」を開講した。
 4 探究型学習システムの開発と他校への発信・共有
   ・隔年実施の数学科教員研修会を今年度はオンラインで行った。複数の SSH 校の『数学』分野の
  取り組み事例とともに生徒の知的な興味関心を刺激し、数学的思考力を育成するような具体的教
  材について報告・協議した。本校公式 HP の限定公開サイトで、当日の発表資料に加えて、開発
  教材が閲覧できるように工夫し、成果の広い共有に努めた。
  5   研究開発の成果と課題
 ○研究成果の普及について
 ・各教科の教育活動の成果の共有・普及を学校全体へ拡げるべく、ICT 機器を活用した資料発表を
 校内教員研修会として工夫した。共有した成果が即時に活用されるよう ICT 機器を使用したこと
 で授業改善や発展に繋がった。今年度オンラインで行われた各種 SSH 事業の実施後は随時報告を
 行い、共有を図って、学校全体の授業改善・発展に努めた。
 ・学校 HP における SSH ページを通じて、数学科では開発教材を広く公開し、普及を図るべくダウ
 ンロード可能としており、理科についても新たに開発された学習プログラムを集約し、公開・普及
 へと努めた。教育研究会や数学科教員研修会では、SSH 事業の成果発信を図った公開授業と研究
 協議をオンラインで行ったが、オンサイトでの質の維持・発展をねらい成果の普及に努めた。
 ・各教員が所属する学会等において、SSH 事業の取組みや開発教材、その成果を発信している。
 ○実施による成果とその評価
 ・課題研究では、高2(必修)から高3(選択)への流れが教員・生徒ともに意識できるようにな
 り、高2課題研究の総括的活動の外部での発表という意識がさらに高まり、他校での SSH 成果発
 表会などに参加する数も場も増えている。
 ・海外校との研究交流プログラムで発表した自分の研究を一層ブラッシュアップし、より多くの場
 で披露する機会を得るために、複数の発表会等に参加するという流れがなお強くなった。
 ・海外校との交流プログラムや国際オリンピックへの継続的な参加により、生徒のパフォーマンス
 だけでなく、生徒指導の手順・方法も多くの教員に共有されるようになっている。また、オンライ
 ンでの発表において研究テーマや効果的プレゼンのスキルが中高異学年で共有でき、中学生の高校
 進学後の積極的な応募が増えている。
 ・水俣と福島でのフィールドワークも継続的に実施できるようになり、理系だけでなく文系生徒の
 研究も社会と密接に関わる科学技術に対する探究活動が、一層活発になっている。
 ○実施上の課題と今後の取組
 ・高校3年次に、「(理科)課題研究」を選択する生徒を一定数確保するために、2年次の研究指
 導のあり方、研究継続の働きかけなどさらなる工夫を検討したい。
 ・様々なオンライン交流会の経験を、既存プログラムの「大学研究室訪問」に活かし継続する高大
 連携プログラムへと発展させたい。
 ・SSH 事業の効果測定で、学校独自アンケートによる卒業生調査を一昨年度より実施している。調
 査回答者を増加させ、継続的、効率的に経年調査ができる方法を模索したい。
 ・学校 HP の中で、本校 SSH 事業への取り組みや成果(物)等を、効果的に発信する方法について、
 関係部署とも協議の上、さらなる研究を重ね、普及させたい。
 
 
 
 
                                             3
 別紙様式21
                                筑波大学附属駒場高等学校           指定第4期目   2903
 
 
                令和2年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題
 
 
  1   研究開発の成果
 研究開発の柱14の順に示す。
 1 国際社会に貢献する科学者・技術者を育成する探究型学習の教材開発と実践
   1) 理科課題研究の充実と探究型教材の開発と実践
      新型感染症拡大による緊急対応とするオンライン授業から新たな教材が開発され、授業後の
   生徒へアンケートからその効果が検証された。新たな実践により、生徒の探究をより一層深め
   るオンサイト・オンライン学習プログラムの構築につながった。
   2) 情報収集能力とメディア活用能力の育成
      日本マイクロソフトやアドビシステムズなどのご協力を受け、従来のシリーズセミナー「メデ
   ィア   虎の穴」を独立講座として複数回におよび継続実施し、メディアリテラシーとプレゼンテ
   ーションスキルの向上を図った。ここでの指導法は理科・数学・社会科の教員で構成され、成果
   の普及を図り東京都高等学校情報教育研究会で発表される。
   3) 学際的(教科融合型)課題研究や理数系以外での課題研究の推進
      高校2年次「学校設定科目・課題研究」では、「アルトー『演劇とその分身を読む』」「社
   会時評のすすめ‐〈危機〉の時代の記録として‐」「水俣から日本社会を考える」「ポスト 2020」
   「ともに生きる」「Science Dialogue + D.I.Y.」を設置し、探究型学習に取り組んだ。全国、都、
   学芸大学主催、関東近県の SSH・課題研究成果発表会等例年になく多くの生徒が口頭発表やポ
   スター発表において研究の成果を披露した。ほぼすべての発表会がオンラインで行われ、専門
   家からの意見や助言が研究継続のモチベーションへとつながった。
 
 
 2 主体的な探究活動をするための基礎力育成カリキュラムの開発と実践
  1) 理数系基礎力の充実と科学的リテラシーの涵養
    技術科の他にも、全教科でSSH講座を開催し、探究活動に必要な基礎力や科学的リテラシー
    涵養を図った。実施時期は各学期期末考査終了後、対象は中学・高校問わず希望者としている。
    「プレゼンテーション能力向上ワークショップ(英語科)」
                                                        「伝わらないこと、伝わってしまう
      こと(国語科)」
                    「科学者の社会的責任世界から尊敬される日本人であるために(社会科)」
   2) 主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)による探究能力の開発
      中学においては、全員の探究学習向上に役立てるために学年に応じたフィールドワークを計画
   しが、中止、代替企画、オンライン講義と形態を変えて実施した。主なものは以下の通り。
    「身のまわりの環境地図作成(中学1年12学期:社会科)」
    「東北地域研究(中学2年2学期中学3年1学期:総合学習)」は宮城震災学習(代替)
    「城ヶ島野外実習(中学3年生2学期:総合学習)」
 
 3 探究型学習を実践するためのプログラム開発とサポート体制
  1) 高大連携によるプログラムの推進と実践
    ・今年度中止となった、中学3年および高校2年次の「筑波大学研究室訪問」は、従来複数設
    定されたコース(研究室)から各自選んで見学・実習を行うプログラムだが、これまで生徒の
    知的好奇心を満たすだけでなく、将来の自分の専攻やキャリアを考えるきっかけとなる意義深
    いものとなっている。各種SSH成果発表会がオンラインで行われ、例年以上に多くの生徒がの
    参加し、それらから得た経験から、新たな「大学研究室訪問」プログラムの創案につながった。
 
 
 
 
                                             4
   2) 本校卒業生を活用したSSH事業サポート体制の充実と育成プログラムの検証
       「SSH数学オリンピックワークショップ」では、本校卒業生らが講師として、またTAとして
     中学生たちに、数学オリンピックの問題を教えたり、自身のオリンピック経験について話した
     りすることで、これまでのSSHの成果を母校に還元することができた。また、1月の公開課題研
     究(課題研究オープン)でもSSH卒業生のOBによる、受講生の研究発表に対するフィードバッ
     クを与える機会を独自で設けた。課題研究での研究成果を論文としてまとめ、SSH課題研究と
     して論文集を発行した。
   3) 社会と連携し貢献する科学者・技術者の素養を育成するプログラムの開発と実践
      ・課題研究「水俣から日本社会を考える」の実習や福島フィールドワークの現地実習はオン
      ライン上で実施し、改めて実際の現場を肌で感じることの重要性を実感させることができた。
     ・課題研究「障害科学:ともに生きる」では、実際の障害者の方々や特別支援学校教員、東京
      大学先端技術研究センターの教授や医師から学び、インクルーシブ教育と科学・技術の融合
      を図る機会となった。科学的な視点での取り組みとして筑波大学サイバニクス研究センター
      と特別支援学校と連携をした「人を支援する工学技術」を学ぶ講義・グループワークや盲ろ
      う者当事者や介助者から情報機器や情報保障の実際を聞く機会、聴覚障害のある高校生との
      オンライン交流で情報保障を体験的に学ぶ機会を設けた。これらは、障害と科学が融合した
    「ともにいきる」社会の実現の構築につながるプログラムとなった
   4) 国際舞台での研究発表の推進と国際科学コンクール等への派遣
     ・台中第一高級中学との研究交流を発展させるべく、実施形態の協議を約6か月に渡り重ねて
         実施したオンライン研究交流会により、継続的研究交流や共同研究の可能性を開いた。
     ・名古屋大学教育学部附属高等学校のSSH重点枠プログラムでは、英語で他校の生徒と共同で
         半年以上に渡り研究を進め、成果を国内外の高校生に向けて発表した。
     ・各種国際オリンピックおよび国内科学コンクールに参加し、成果を挙げた。
     ・プレゼンワークショップや課題研究「サイエンス・ダイアログ」を今年度も実施し、より
     多くの生徒の英語プレゼンテーション能力を育成することができた。
 
 4 探究型学習システムの構築と他校への発信・共有
        本校数学科教員および近隣の SSH 校数学科教員が講師として参加する、数学科教員研修会を
      オンラインで実施し、開発教材等についての報告や協議、数学教育に関する意見交換を行うこ
      とで、本校の教育に関する情報発信・共有に寄与した。
  2   研究開発の課題
 ・高校3年次「(理科)課題研究」は選択履修科目だが、学校行事や受験準備で最も多忙な学年で
 あり、履修生徒を今以上に確保することは困難である。現状2年次の「(理科)課題研究」「課題
 研究(数学講座)」の担当教員が個別に履修を薦める形であるが、全国 SSH 生徒研究発表会を始
 めとした各種発表会での研究を校内に広く普及し、探究活動や研究の継続をさらに推進したい。
 ・「課題研究」の評価方法について引き続き検討しているが、講座が文理(その融合)の幅広い分
 野に及ぶため、統一、画一化した形のものを設定する難しさがある。
 ・大学研究室訪問は従来1日開催であるが、今年度は中止となった。各種 SSH オンライン発表会
 で得た経験から、大学研究室から研究の指導を継続的に受けられるような、新たな形態の高大連携
 プログラムが創案された。
 ・一昨年度より、SSH 事業の効果の調査を兼ねた統一の記述アンケートを、進路懇談会や進学懇談
 会で来校する卒業生に数回実施した。データの蓄積や分析方法、数値での定量評価について検討を
 続けることが必要である。
 ・刷新された本校HPにおいて、過去の SSH 研究開発実施報告書や SSH 年間行事カレンダー、イ
 ベント写真などを随時公開・更新しているが、さらに広く効果的に発信する方法やその効果の検証
 について、外部の意見も取り入れて改良を進めたい。
 
 
 
 
                                              5
 I.研究開発の概略                                    サポート体制
 1.研究開発の実施期間                               4探究型学習システムの開発と他校への発信・
   指定を受けた日から令和 4 年 3 月 31 日まで         共有
 
 
 2.研究開発課題                                     4.現状の分析と研究の目的・目標
   国際社会に貢献する科学者・技術者の育成を             過去3期の SSH 事業では、生徒の研究発表能力
 めざした探究型学習システムの構築と教材開発           を高めるプログラムを開発・実践してきた。その
                                                      過程における課題として、SSH 事業と中学・高校
 3.研究開発の概略                                   での成長の検証、通常授業と SSH 事業との関連、
   第1期(平成 1418 年度)では、研究開発課題         事業成果の発信などが挙げられていた。そこで
 「先駆的な科学者・技術者を育成するための中高         第4期では、中学の基礎力養成から高校での高度
 一貫カリキュラム研究と教材開発」
                               に取り組んだ。         な探究活動につながる育成カリキュラムの編成を
   第2期(平成 1923 年度)には、研究開発課題         図り、高大連携・卒業生の活用・社会との連携・
 「国際社会で活躍する科学者・技術者を育成する         海外校との連携という観点から各種プログラムを
 中高一貫カリキュラム研究と教材開発中高大院           開発・実践する。さらに、そのプログラムや成果
 の連携を生かしたサイエンスコミュニケーション         を広く発信し、効果を検証しつつ、探究型学習
 能力育成の研究」の下、生徒の「教え合い学び           システムの構築をめざす。
 合い」による、
             「サイエンスコミュニケーション」
 能力育成、国際交流・研究活動支援等を行った。         5.研究の仮説・内容・方法・検証
   第3期(平成 2428 年度)では、
                               「豊かな教養           研究内容の柱14の順に詳述する。
 と探究心あふれるグローバル・サイエンティスト         1国際社会に貢献する科学者・技術者の育成を
 (global scientist)を育成する中高大院連携プログ       めざした探究型学習の教材開発と実践
 ラムの研究開発」を掲げ、全員に探究型学習であ           数学科における探究型学習教材開発については、
 る「(理科)課題研究」を履修させるとともに、意       全国の教員と活発な意見交換をすることで、これ
 欲の高い生徒には、次年度も続けて履修させるこ         までに開発した教材を見直し、更なる教材の開発
 とで研究や発表の能力を伸ばした。
                               本校従来の「教         へとつなげることができると考えられる。
                                                                                          そこで、
 養」主義に則り、理数系のテーマに偏らないこと、       SSH 全国数学科教員研修会における開発教材や
 「グローバル」としては、従来の台中一中との研         カリキュラムを公開・発信、研究協議を通して、
 究交流や他 SSH 校海外派遣プログラムを目標に、        実践報告と教材の共有を図る。また、過去の SSH
 英語発表(口頭・ポスター)スキルを高めること         において実施していた、遠方の学校において本校
 に留意した。
           「高大連携」では、SSH 以前から実施         教材を活用した研究授業・研究協議を行う取組み
 している筑波大学研究室訪問を継続し、東京医科         を復活させ、近隣の SSH 校数学科教員に加わっ
 歯科大学・高大連携プログラムを拡充した。             ていただくことで、より広く深く教材の共有を図
   第4期(平成 2934 年度)は、主体的・協働的         る。実施の前後に、参加した教員へのアンケート
 な学びを通して、自ら設定した研究課題に対して         調査や E メール等による意見交換を行い、内容の
 探究する理数系人材を育成するとともに、中高生         検討に役立てる。
 の成長過程に応じたカリキュラムと、それを有機           理科や数学では、中学3年総合的学習「テーマ
 的に連動させた学習システムの開発を目標とする。       学習」教材を、高校2年「理科課題研究」および
   今期の研究開発の柱は以下の通りである。             「課題研究」で発展・拡充させ、発展性のある課
 1国際社会に貢献する科学者・技術者を育成する          題に取り組んだ生徒を高校3年「理科課題研究」
 探究型学習の教材開発と実践                           「課題研究」に引き上げ、SSH 期卒業の OB(学
 2 主体的な 探究活動 をす るための 基礎力育成         部生・院生)
                                                                によるサポートを引き続き実践する。
 カリキュラムの開発と実践                             課題研究や科学系部活動の OB によるサポートは
 3探究型学習を実践するためのプログラム開発と          長期 SSH 校にのみ可能な利点かつ責務であり、
 
 
                                                  6
 第4期 SSH では、従来の理科や数学以外での実          ては、対外的な研究発表の成果や参加生徒のアン
 現可能性についても検討していきたい。また、新         ケート調査等により評価検証する。
 学習指導要領の「理数探究」を見据え、これまで           保健体育科では、
                                                                      「体育や保健の見方・考え方を
 開発・実施してきた実験教材や生徒の研究成果を         働かせ、課題を発見し、合理的、計画的な解決に
 整理し、実践例の蓄積とテキスト化の検討を継続         向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉
 する。                                               え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊か
   情報科における、情報活用能力を育成して研究         なスポーツライフを継続するための資質・能力を
 成果の発信技能を向上させるセミナーには、民間         育成すること」を目指し、スポーツ科学・医学分
 企業との連携が不可欠である。第4年次は、シリ         野における最先端の研究や事業等に触れる機会を
 ーズセミナー「メディア虎の穴」と「メディア虎         提供する。
 の穴・特別編」
             の継続実施および発展に取り組む。           国語科では、
                                                                  「伝わらないこと、伝わってしまう
 評価については、対外的な研究発表の成果や生徒         こと―人間とAIから見た言語理解―」と題した
 へのアンケート等により検証する。                     SSH 特別講座を行い、協働的・探究的活動に不可
   課題研究全般に関する取組みとしては、これま         欠な「伝えあう力」の育成を目指す。
 でも実施してきた中学3年総合学習
                               「テーマ学習」           中高連携をめざす取組みとしては、従来の中学
 が、高校2・3年「理科課題研究」
                               「学校設定科目:       2年生および中学3年の総合学習「東京地域研究」
 課題研究」
         における探究学習の基礎と考えられる。         「東北地域研究」における協働的な探究活動を取
 これらを継続するとともに、中学生と高校生の相         り入れた学習の改善をさらに進め、継続発展させ
 互交流による異学年学び合いや共同研究について         るとともに、異学年による学び合いを意識し、高
 も試行する。実施前後には、生徒・担当教員への         校生が中学生、中学3年生が中学2年生に指導す
 アンケート調査や意見交換等を行い、講座数・内         る機会や、研究発表を相互に見合う合同での学習
 容の検討を随時行いたい。                             機会の設定を図る。
 2主体的な探究活動をするための基礎力育成 カ           3探究型学習を実践するためのプログラム開発と
 リキュラムの開発と実践                               サポート体制
   数学科では、SSH 期の卒業生の在校生に及ぼす         ()高大連携によるプログラムの推進と実践
 影響について考察すべく、これまでの特別講座を           筑波大学研究室訪問や東京医科歯科大学との高
 発展させた、数学オリンピックワークショップを、       大連携プログラムを継続し,意欲の高い生徒の高
 継続実施し、部活動である数学科学研究部を対象         校3年「理科課題研究」
                                                                          「学校設定科目:課題研究」
 の中心として、事前・事後指導の拡充を図る。SSH        への接続方法等について,大学と連携しながら進
 特別講座も継続して実施し、
                         対象の幅をより広げ、         める。実施の前後に,生徒・大学教員・教員への
 高いレベルでの理数探究心を養成する。                 アンケート調査やメール等での意見交換を行い,
   理科では、応用力の育成には探究型学習が有効         プログラム内容の充実と発展を図る。
 であるという仮説に基づき、理科(4科目)によ           保健体育科では,3年次までに構築した大学と
 る教材開発や、高校1・2年での必修科目におけ         の協力関係を活用して,大学研究室の協力を受け
 る理科カリキュラムの再構築や、現行教材の発展         た探究型学習を更に推進し発展させる。
 はカリキュラムの検討を継続する。また、中学3         ()本校卒業生を活用した SSH 事業サポート
 年総合学習「城ヶ島野外実習」を継続し、グルー         体制の充実と育成プログラムの検証
 プ活動や議論を重視した主体的・協働的な学びに           指定第1年次に在校生していた生徒が卒業生と
 つなげる。                                           なって SSH 支援の側にまわる年次となり、組織
   情報科では、民間企業等と連携して情報活用能         的な卒業生からの支援について更なる内容の充
 力を育成し、研究成果の効果的発信技能を向上さ         実・発展を試みるとともに、若手研究者による特
 せるセミナーを継続する第4年次には、現況に鑑         別講座や課題研究や探究型学習の卒業生による指
 みシリーズセミナーを独立講座として実施し、対         導、国際オリンピック出場者による後輩への助言
 象の幅を広げた特別講座を開講する。効果につい         等について、持続可能な体制づくりをめざす。卒
 
 
                                                  7
 業生アンケートや聴き取り調査によるデータの分         よる自己評価や、パフォーマンス評価を用いた探
 析を進め、まとめる。                                 究型学習の達成度を測る評価基準をまとめ、他校
 ()社会と連携し貢献する科学者・技術者の             と共有し検証を行う。
 素養を育成するプログラムの開発と実践
   科学系部活動の一環として実施してきた、科           6.教育課程
 学・化学部による小学生向け実験教室を発展継続           巻末の関係資料を参照。教育課程の特例に該当
 するとともに、生物部、パーソナルコンピュータ         しない教育課程の変更(平成 28 年度完全実施)
 研究部、数学科学研究部等による小・中学生向け         については以下の通りである。
 実験教室やワークショップを計画し、可能な団体         【教科・科目名】「理科課題研究」及び学校設定
 から本格実施する。                                   科目「課題研究」
   地歴公民科では、「科学者の社会的責任を考え         【開設する理由】理科及び理科以外の教科での
 る」を主題とした従来の水俣に関する研究を継続         主体的・探究的活動の支援強化
 するとともに、東日本大震災がもたらした福島県         【目標】理科だけでなく、数学や情報や他教科で
 への複合災害に関する研究を通して、科学・技術         の生徒の主体的・探究的活動の深化・発展を促進
 をめぐる諸課題をより多様な視点から思考を深め         させ、その成果と課題を教育課程に反映させる。
 られるようなプログラムの構築を目指し、検討す         【内容】高校2年生では、大きなテーマを掲げた
 る。                                                 10 程度の講座を教員が用意し、オリエンテーショ
   インクルーシブ教育に関しては、「学校設定科         ンで研究の内容と探究活動を紹介する。生徒は
 目:課題研究」障害科学講座での特別支援学校と         希望する講座を選択し、ゼミナール形式で探究型
 の交流・協働学習を継続実施するとともに、SSH          プログラムを実践する。その後、そこで身につけ
 の取り組みの中で科学技術との融合を図る。また、       た研究手法を活かし、自ら設定した課題に、個人
 東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、       あるいはグループで主体的探究的に取組む。高校
 スポーツサイエンスと障害者スポーツを取り入れ         3年では、さらにその課題を深化させ、専門性の
 た課題研究の推進を図る。                             ある高度な研究に取組み、その成果を発表する。
 ()国際舞台での研究発表の推進と国際科学             【履修学年】高校2・3年次/【単位数】各1
 コンクール等への派遣                                 【指導方法】個人・グループ毎に指導教員を配置
   姉妹校、台中第一高級中学(台湾)との研究交         し、研究を支える理論、実験方法、先行研究の
 流を継続する。その研究を軸にした、共同研究や         検索・活用方法、データ解析方法、論文のまとめ
 他地域・他校での交流に関して検討し、
                                   試行する。         方を一貫して指導する。また、大学との連携や
 また、国際科学コンクールや国際科学オリンピッ         OB の活用等、多面的な指導方法も視野に入れる。
 クと、SSH 事業への参加生徒や卒業生などについ         【年間指導計画】集中形式での課外実施を含め、
 て収集したデータから立てた、SSH 事業とその効         研究を支える理論、実験方法、先行研究の検索と
 果に関する仮説を検証する。                           活用方法、データ解析方法、論文のまとめ方を
   英語の授業では引き続き、話すこと・聞くこと         指導する。
 の産出能力およびプレゼンテーション能力の醸成         【既存の教科・科目との関連等】研究活動の発端
 を、ALT や外部講師のさらなる活用により伸長し、       となる課題発見、研究活動を支える課題解決の
 大学や卒業生との連携企画の効果の検証を行う。         方法等は、高校1年次までの履修教科における
                                                      学習内容を基盤とする。
 4探究型学習システムの開発と他校への発信・                                     (研究部・多尾奈央子)
 共有
   第3年次までの評価・検証を受けて、本校の探
 究型学習システムをさらに発展させ、再検証が可
 能な形を模索しながら他校と共有する。
   また、実施した各プログラムについて、生徒に
 
 
                                                  8
 9
 II.研究開発の経緯                                                       SSH 卒業後アンケート(高2進路懇
                                                             7/25
                                                                          談会)
   5年計画の第4年次は研究の深化・充実をはか
                                                                          名大教育学部附属高 SSH 重点枠
 る。すべての研究内容について、第3年次までに
                                                            8/1-2         事業「アメリカで数学をしませんか」
 開発した教育プログラムや教材を本格的に展開し、
                                                                          2nd ステージ(2チーム8名)
 評価を試みる。
                                                                          技芸科 SSH メディア虎の穴「ポス
 今年度は多くの事業が中止、延期、実施形態の振
                                                                          ター制作に役立つ画像処理」「ポス
 替を余儀なくされたが、生徒の研究活動が継続さ
                                                           8-11 月        ターデザインの基礎」「ポスター制
 れること、研究支援や成果発表の場および質が保                             作ブラッシュアップ」(高 2 理科課題
 持されるに、
           「全生徒を対象に」
                           「特定の教科では                               研究・数学課題研究受講生)
 なく全教員が携わって」という本校 SSH 事業展開               8/11
 の理念を再確認して各種事業に臨んだ。
                                                                          SSH 生徒研究発表会(高3生 1
                                                           (一次審査)
                                                                          名)「9 軸センサーを用いた姿勢推
                                                             8/17
                                                                          定-計算手法の簡略化と高速化-」
 1.第4年次研究の主な活動                                (二次審査)
 
   今年度の主な活動は以下の通りである。                                   立命館高等学校 SSH 科学技術人
 一部の活動については、以降の章で詳述する。                  8/25         材育成重点枠事業 第2回連携校
                                                                          Zoom 会議「JSSF オンライン」
                 SSH 年間各種プログラム計画の見
     4月
                 直し、協議開始                              8/28         SSH 生徒研究発表会:奨励賞受賞
 
                 台湾姉妹校との研究交流プログラ                           名大教育学部附属高 SSH 重点枠
     5月
                 ム計画協議(オンライン会議)                8/29         事業「アメリカで数学をしませんか」
                 名古屋大学教育学部附属中高                               チームプレゼン(2チーム8名)
                 SSH 科学技術人材育成重点枠事                             数学オリンピックワークショップ(オ
     5月                                                    10/10
                 業「アメリカで数学をしませんか」2                       ンライン)
                 チーム8名参加
                                                                          校内 SSH 推進委員会「ポスト
                 東京医科歯科大学・高大連携                 10/19         SSH
   6/20
                 プログラム(英語模擬交渉オンライ                         -第4期終了後の展望-」協議開始
    (全3回)
                 ンワークショップ)参加生徒 4 名
                                                                          釜山国際高校 第 11 回 Global
                 SSH 卒業後アンケート(高3進学懇            11/5         Week「Post-Pandemic Society」
    6/27
                 談会)                                                   (高2生3名 ビデオプレゼン参加)
                 英語科 SSH 特別講座 「プレゼン                           名大教育学部附属高 SSH 重点枠
     7/4         テーション能力向上オンラインワー          11/6
                                                                          事業「アメリカで数学をしませんか」
                                                            (全 8 回)
                 クショップ」(中3・高1・高2)                         自己研鑽ステージ(2チーム8名)
                 第1回 SSH 運営指導委員会(メー
                 ル会議)前年度中間評価を踏まえ                           技芸科 SSH メディア虎の穴「ポス
     7/4                                                    11/13
                 た事業改善の協議はできず。                               ター講評と意見交換」
                 (中間評価通知:7/20)
                                                                          技芸科 SSH メディア虎の穴「研究
                 立命館高等学校 SSH 科学技術人              11/19
                                                                          発表ポスターのデザイン講座」
     7/6         材育成重点枠事業 第1回連携校
                 Zoom 会議                                                第 47 回教育研究会(Zoom ウェ
                                                                          ビナー開催)テーマ「(コロナウイル
                 第4期 SSH 第3年次(2019)中間            11/21
    7/20                                                                  スに負けない)主体的で探究的な
                 評価通知。校内共有。
                                                                          深い学びをめざして」
 
 
 
                                                      10
          技芸科 SSH メディア虎の穴 第3                          横浜サイエンスフロンティア高校
  11-
          期シリーズセミナー開始(全 15                 3/20      SSH マスフォーラム 数学生徒研
 ‘21/4
          回)                                                    究発表会
                                                                  関東近県 SSH 指定校合同研究発
 12/6     数学科教員研修会(オンライン)
                                                        3/21      表会(オンライン) 参加生徒9名
          英語科 SSH 特別講座 「プレゼン                          (口頭1件、ポスター発表6件)
 12/7     テーション能力向上オンラインワー                        英語科 SSH 特別講座 「プレゼン
          クショップ」(高2対象)                      3/13      テーション能力向上ワークショップ」
                                                                  (中1・中2対象)
          社会科 SSH 講演会
 12/9                                                             令和2年度 SSH 研究開発実施報
          「科学者の社会的責任」                        3/26
                                                                  告書提出(文部科学省・JST)
          技芸科 SSH メディア虎の穴「学術
 12/10
          情報の探し方」                             2.委員会等の活動
                                                     1SSH 運営指導委員会
          台中市立台中第一高級中学との
                                                       校外の運営指導委員とすべての教科から選出さ
 12/11    研究交流(オンライン)高2生徒 9
          名・高1生徒 3 名                          れた校内推進委員が参加して、7 月はメール会議
                                                     で、1月はオンライン会議で2回開催され、今年
          SSH 東京都指定校合同発表会                 度の SSH 事業の報告や今後の SSH 事業の進め方、
 12/20    「ミジンコは光がお好き?」口頭発           第4期指定終了後の考え方などについて意見交換
          表参加
                                                     を行った。
          マスフェスタ(大阪府立大手前高             2校内プロジェクト委員会
 12/26    校)高2課題研究(数学)受講生6             校内プロジェクト3(筑駒アカデメイア担当)
          名参加、引率教員1名                       「筑駒人材バンク」を活かして本校 OB による公
                                                     開講演会を催し、地域貢献を果たした。また、3
          技芸科 SSH メディア虎の穴「クラウ
 1/12                                                月末には「駒場将棋道場将棋の世界を知ろう」
          ドを活用した研究スタイル」
                                                     と題した公開講座を予定しており、本校部活動の
          技芸科 SSH メディア虎の穴「AI と           生徒への活躍の場を設けている。
 1/18
          は、RPA とは」                             3研究部
                                                       実施計画書、事業計画書、事業経費説明書など
          第2回 SSH 運営指導委員会(オン
 1/30                                                SSH 関係書類の取りまとめ、
                                                                             文部科学省および JST
          ライン)
                                                     との連絡協議、外部からの各種調査・アンケート
          校内研修会「オンライン教育研究             の実施等を行った。また、研究発表の場となる
 2月      会の工夫と課題・ポスト SSH の展            教育研究会、校内研修会の企画・運営を行った。
          望」(資料発表)                           また、形態をオンラインに代えて実施した国際交
                                                     流プログラムについて、今後の発展のための検証・
          理科(生物)SSH 特別講座
 2/19                                                評価を行った。
          「ウイルスとかけて妖怪と解く」
                                                     4その他
          東京学芸大学主 SSH/SGH/                      筑波大学附属学校群 11 校が参加する、年5回の
 2/23     WWL 課題研究成果発表会 参加                附属学校連携委員会において、本校 SSH 活動つい
          生徒 17 名(口頭2・ポスター9)           て報告し、新型感染症拡大の影響による新たな教
                                                     育活動の様式について大学側と全附属学校教員が
          国語科 SSH 特別講座「伝わらない
                                                     意見交換を行い情報共有をしている。
 2/25     こと、伝わってしまうこと―人間と AI
                                                                             (研究部 多尾奈央子)
          から見た言語理解―」
 
 
                                                11
                                                      関数のグラフの和や差について扱う教材について
 III.研究開発の内容
                                                      は,中学校での比例・反比例の学習から高校での
 1    国際社会に貢献する科学者・技術者の              微分・積分の学習までを一貫し,さらに大学にお
      育成をめざした探究型学習の教材開                ける数学をも見通した中心概念として,長年の教
      発と実践                                        材開発の蓄積が,一種のカリキュラムとして成立
                                                      しつつある。
 a.中高一貫数学教材の開発と全国への発信                 ひとつの教材に対し,教師と生徒が授業の中で
                                                      ともに知恵を出し合い,さらに定例の数学科教科
 1.仮説                                             会を通して教師間でもさらに深める。この繰り返
   高等教育において探究型の学び,対話的な学び         しが,本校数学科の教材開発と実践研究の中心で
 の重要性が声高に主張され,授業改革が叫ばれて         ある。
                                                          開発教材集として提示しているものは,
                                                                                            日々
 いる昨今,中等教育において,高等教育機関での         の膨大な授業の中で試行錯誤しながら,一定の成
 学びを見通しながら教材・カリキュラムを構成す         果としてまとまったものの一部にすぎない。また,
 ることの重要性も高まっているといえる。探究的         開発教材自体も完成されたものではなく,同じ教
 な学びは決して授業の「型」のみで実現するもの         材を異なる教師が扱い,異なる生徒が取り組むこ
 ではなく,その内容である教材,そして教材と教         とで,さらに新しい視点や,深い考察が生まれて
 材をつなぐストーリーとしてのカリキュラムがあ         いく事例もある。
 ってこそ実現できると考えるからである。                 第IV期を迎えた本校 SSH 事業において,今まで
   言うまでもないが,数学科としての教材研究の         以上に求められるのは,新たな教材開発はもちろ
 基盤となるのは授業である。どのような教材で生         んのこと,既に開発し共有している教材について
 徒のどのような資質・能力を引き出し,どこまで         も,本校に限らず広く他校で実践していただき,
 高めていくかという長期的な視野が求められる。         その反応をもとにさらに洗練していくことである。
   これらの要請に応えるべく,本校数学科では教         そして,個々の教材と,それを貫くカリキュラム
 材開発を進め,それらを全国へと発信する試みを         という視点で既存のカリキュラムや教材を見直し
 行っている。                                         再構成することが,研究主題として標榜する「探
                                                      究型学習システムの構築」にもつながっていくの
 2.概要                                             ではないかと考えている。
 2.1 教材開発に際しての基本姿勢
   本校数学科ではすでに 100 程度の教材開発の事        2.2 開発教材とその発信
 例を蓄積しているが,ほとんどの教材に通底して           次ページに,過去の SSH 事業も含めて本校数学
 いるのは,扱いたい中心課題と,それに対する生         科が開発した教材の一覧を掲載する。本校数学科
 徒の発想や反応が対となっていることである。教         では,教材を大きく分けて代数,解析,幾何,統
 材によっては,生徒の発想がさらに次の課題を生         計,微分方程式,確率の各分野に位置づけ,主な
 み出し,数学的活動のサイクルが展開しているも         対象学年によって教材をナンバリングして整理し
 のもある。これが,本校数学科における教材開発         ている。表内の★印は,今年度「筑波大学附属駒
 の基本姿勢として「教師と生徒との相互作用で築         場論集」にて実際の内容を掲載したものである。
 き上げること」を掲げている所以である。               また,論集以外にも,後節にて報告する SSH 数学
 教材を束ねるカリキュラムの開発に関しても,発         科教員研修会をはじめ,本校公式 Web サイトでも
 想はトップダウンではなく,ボトムアップである         専用ページを設けて閲覧できるようにしている
 と言えるだろう。すなわち教師は,日々の教材開         (Web 上ではパスワードによって閲覧制限をかけ
 発において,授業を通して生徒との相互作用で教         ているが,パスワードについては問い合わせに応
 材を磨きつつ,次にどのような教材を提示するか,       じるとともに,教員向け研究会でその都度周知)。
 どのような課題へとつなげるかを考え,理解や深         本報告では,
                                                                「d3-6. 放物線の長さ」を掲載する。
 化,
   発展や一般化への流れを組み立てる。
                                   例えば,
 
                                                 12
                                                                  開発教材一覧(筑波大学附属駒場中・高等学校数学科) 2020年度
 表左端のアルファベットの記号は各分野の略であり,中学は小文字,高校は大文字,数字は実施学年である。もしく
 は,実際に授業をおこなった学年を数字で示した。学年を特定していない教材や複数学年での取り扱いを想定してい
 る教材は,数字の代わりに「f」を用いた。教材名の末尾の数字は開発年度である。
 A.「代数(Algebra)」                                                          G.「 幾何(Geometry)」                                 D. 「微分方程式(Differential Equation)」
 a1.      整数                                                         2008   g1.     四角形の合同条件                       2008 d1.        自然数の和,平方数の和,立方数の和 からの拡張    2019
 a1-2.    有理数                                                       2007   g1-2.   作図の教材                             2009 d1-2.      『数える』                                       2010
 a1-3.    剰余類の演算とウィルソンの定理                               2014   g1-3.   四角形の性質(包含関係)               2010 d2.        グラフや図形の移動・変形                         2006
 a1-4.    速算術                                                       2015   g1-4.   正多面体の面や辺の作る角               2012 d2-2.      不等式の活用                                     2019
 a1-5.    最大公約数と差が等しい数の組み合わせ                         2017   g1-5.   三平方の定理                           2013 d3.        2次関数の接線                                   2006
 a3.      暗号理論と整数論                                             2006   g1-6.   中学1年の幾何(作図問題などの補充)   ★2020 d3-2.     面積・体積                                       2006
 A1.      数と方程式                                                   2008   g2.     チェバ・メネラウスの定理               2007 d3-3.      最大・最小                                       2006
 A1-2.    平方根の連分数展開について                                   2012   g3.     立方体の切断                           2007 d3-4.      放物線で囲まれる面積                             2013
 A1-3.    高校における整数問題                                         2014   g3-2.   反転法                                 2007 d3-5.      場合の数 樹形図から漸化式へ                      2014
 A1-4.    開平法と連分数による平方根の近似値                           2014   g3-3.   立方体の切断(2)                     2009 d3-6.      放物線の長さ                                    ★2020
 A1-5.    オイラー関数について                                         2015   g3-4.   ヘロンの公式の幾何的証明と応用         2013 D1.        包絡線                                           2006
 A1-6.    集合と場合の数の導入                                         2016   g3-5.   双心四角形の性質                       2015 D2.        グラフ描画の方法 テクノロジへの挑戦              2007
 A1-7.    多項式から見た二項係数とスターリング数                       2019   g3-6.   円を使う作図の教材                     2017 D2-2.      3次関数の性質                                   2014
 A2.      離散な数列と連続な関数                                       2009   g3-7.   作図の応用問題                         2018 D2-3.      定積分と面積                                     2019
 A2-2.    ΣK^4と区分求積法                                           2011   g3-8.   反転を利用した教材                     2019 D3.        包絡線(その2)                                  2006
 A2-3.    斜交座標の薦め                                               2015   G1.     四面体の幾何                           2008 D3-2.      微分方程式                                       2006
 A2-4.    漸化式                                                       2015   G1-2.   デカルトの円定理                       2009 D3-3.      微分方程式の応用                                 2006
 A2-5.    確率漸化式と課題研究                                         2018   G1-3.   正多角形と等積な正方形の作図法         2013 D3-4.      関数のグラフの描画法                             2008
 A3.      置換と正多面体群                                             2007   G2.     正17角形の作図                       2008 D3-5.      曲線と面積                                       2008
 A3-2.    1次変換の線形性                                             2008   G2-2.   ベクトルの内積と方べきの定理           2011 D3-6.      微分方程式の応用(懸垂線)                       2019
 A3-3.    複素数と複素数平面                                           2015   G2-3.   正射影ベクトルと内積・外積             2017
 A3-4.    複素数平面における1次分数変換                                2017                                                         「O. その他(Others)」
                                                                              P.「 確率(Probability)」                              Of.      4元数を高校数学へ                                2007
 An.「 解析(Analysis)」                                                       p2.     身近な確率・連続変量の確率             2011 O2.        有限世界の数学                                   2007
 an1.     2元1次方程式とその応用                                       2007   Pf1.    組み合わせの確率モデル                 2007
 an2.     合成関数とグラフ                                             2009   Pf2.    EBIと確率・統計                        2007                         QRコードはこちら
 an3.     絶対値を含む関数のグラフ                                     2009   Pf3.    無限集合の確率                         2008
 an3-2.   絶対値とガウス記号を含む関数のソフトウエアによるグラフ描画   2010
 an3-3. 中学での2次関数の扱い                                          2017   S.「 統計(Statistics)」
 An1.     2次関数                                                      2007   s1.     統計の基本                             2006
 An1-2    2次関数(2)                                                2009   s2.     標準偏差・近似直線                     2006
 An1-3    和や積のグラフ                                               2010   s3.     正規分布と標準化                       2006
 An1-4. 図で証明する三角関数の性質                                     2013   s3-2.   シミュレーションによる授業             2006 筑駒数学科HPより,PDFファイルを閲覧できます
 An1-5. 2次関数の係数決定                                              2019   S1.     回帰直線・近似曲線                     2006         https://www.komaba-s.tsukuba.ac.jp/ssh/math/
 An1-6. 加法定理の色々な証明                                           2019   S1-2.   数理統計学入門                         2009
 An2.     円周率の近似                                                 2007   S2.     残差分析によるデタ系列の関係           2007
 An2-2. 三角関数表を作る                                               2006   S3.     主成分分析入門                         2007
 An2-3. 加法定理から導き出される多項式                                 2006   S3-2.   正規分布の平均の推定                   2008
 An2-4. 三角関数の和と積の周期                                         2011   S3-3.   中心極限定理                           2016
 
 
 
 
                                                                                                         13
                                                       2020 年度になり,まったく新しい 18 通り目
 d3-6. 放物線の長さ
                                                       のアイディアが生徒から出てきたので,まずそ
    関連分野:微分積分
                                                       れを紹介したい。この手法では数学的に完全
    高等数学:線積分
                                                       な証明を与えることはできないが,本校のカリ
    対象学年:中学3年
                                                       キュラムの成功事例ではないかと手ごたえを
    関連単元:数学 III「曲線の長さ」
                                                       感じ,ここにまとめておく。
    教材名:放物線の長さs
 
 1. 概要                                               3. 求める面積を三角形で強引に近似する
 
   本校教材集 d3-4 の続きとなるものである。              区間 (0, 1) において,y = x2 に「似せた」
 
 d3-4 で扱っている教材は 2 次関数 y = x2 の            直線を考える。(0, 0) と (1, 1) を通る直線は
 
 放物線グラフと,x 軸および x = 1 で囲まれた           y = x で,これに平行な直線で y = x2 に接す
 
 部分の面積が   1
                    であることを示せ,というた         る直線を y = x + a とする。a は,二次方程式
                3
 だ1つの教材について述べられている。                  x2 = x + a が重解を持つ時なので,a = − 41 ,
                                                       すなわち,y = x に平行な接線は y = x −       1
                                                                                                     4   で
                                                       ある。
 
 
 
 
                                                       三角形の面積比から,この 2 本の直線 y = x
 面積については数 II の積分で決着がつく。今            とy = x−     1
                                                                     4   を (22 − 12 ) : 1 = 3 : 1 の位置
 回は同じ構図で y = x2 の (0, 0) から (1, 1) ま        にある平行な直線がちょうどいいと予想でき
 での道のりを題材にした教材を開発した。正              る。このような直線を求めると y = x −        3
                                                                                                    16   で
 確な値を求めるためには,数学 III のかなり技           ある。この直線と x 軸,x = 1 で囲まれた部分
 巧的な定積分を要する問題となる。しかしな              の面積は
 がら,中学生の知識でも良い近似値を与えるこ                         (       )2
                                                                1        3
 とは可能である。理系の高校生の教材である                            1−       = 0.330078125
                                                                2        16
 が,中学 3 年生が近似を工夫する活動を通し
                                                         本教材は 2020 年度,新型コロナウィルスの
 て,2 次関数のグラフの形状について深く理解
                                                       影響で一斉休校になった際の 1 学期にオンラ
 させることが出来るとともに,線積分そのもの
                                                       イン学習で扱ったものである。なお,この解法
 の考え方を自ら体得することが期待できる教
                                                       を考案した生徒に聞いてみると,まず回帰直線
 材である。
                                                       を考えてみようと思ったようである。一斉休
           1                                           校前は中学 2 年生の 3 学期,ちょうど統計の
 2. 面積   3
                                                       授業で回帰直線を扱っていたため,「ざっくり
   d3-4 には実に 17 通りの方法が収録されて
                                                       とした考え」が出来たのだと言う。多くの生徒
 おり,初めて d3-4 を扱うどんな学年でも,様々
                                                       が精密な近似をしようと分割を細かくしたり,
 なアイディアは出て楽しみながら取り組んで
                                                       カバリエリの原理を使えるように工夫をする
 くれるものの,本質的には 17 通りのどれかと
                                                       中,統計的手法に思考が繋がっていたことが実
 同じであるようになってきた。
                                                       に興味深い。
 
                                                  14
  4. 道のりの近似                                                       接線で近似をして,接線の長さの和で近似する
    数学 III の内容になってしまうが,一応道                             というアイディアが生まれる。ここで生徒に
  のりの近似値について記しておく。y = x2 の                             は,計算の大変さの比較ではなく,どちらがよ
  x = 0 から x = 1 までの道のり L は,定積分                            り少ない分割で精度の良い近似が得られるか,
           ∫   1   √                       ∫   1   √                ということを考えさせたくて発問をしたが,夢
      L=                 1+   (y ′ )2   =              1 + 4x2
            0                                 0                         中で計算していて話を聞いていない生徒が多
 
                                       tan θ                           く,あまり良い反応ではなかったので,言わな
  で求めることができる。この積分は x =
                                         2                              くても良いかもしれない。
  と置換することで計算は可能だが,数学 III の
  積分の中でもかなり大変な部類の定積分であ
                                                                       【手法 3】 円で近似をする
  る。この定積分をやり切ると,
                                                                        中学三年生が持っている知識のうち,放物線以
               √
                 5 1     √                                             外で曲がっているものは円だけであるため,円
            L=    − log( 5 − 2)
               2    4                                                   で近似をしようと考えた生徒がいた。
  となり,この近似値が 1.4789... となる。授業                           中心が (0, 1) で半径が 1 の円を考えると,そ
                                                                                              1
  では,
      「道のりを求める」という言い方はせず,                            の円の円周の長さの    4   なので, π2 は良い近似
  最初から「近似値を求める」と提示した。                                なのではないか,というのである。
                  √
  まずは図で簡単に 2 < L < 2 を確認し,せっ
  かくの機会なので,競わせる要素を以下のよう
  に取り入れた。
   p リーグ:L < p < 2 となる p でなるべく小
  さい p を求める
             √
   q リーグ: 2 < q < L となる q でなるべく
  大きい q を求める
  リーグ優勝者 2 名は,クライマックスシリー
  ズで |L − p| と |L − q| を比べて,小さい方を
  チャンピオンとする。
  以下,1.4789 を基準として,さまざまなアプ                             このアイディアが初出の際には大いに盛り上
 
  ローチを紹介する。                                                    がった。基準値も提示していないので,実は
                                                                                 √
                                                                        かなり     2 に近い値なのだ,という感覚が新鮮
 【手法 1】まずは分割というアイディアが出る。                           だったようである。
 
  区間を 2 分割,3 分割,. . . と分割を細かくし                         一方で,上図をグラフ描画ソフトで生徒に確認
 
  て,何度も三平方の定理をって和を求めるとい                            をさせてみると,「かなり外側にある」ことが
 
  うやり方である。誰もが思いつく,非常に素晴                            分かる。すると,
                                                                                      「放物線の一部分」を,
                                                                                                          「正多
 
  らしい手法である。唯一の欠点は計算が大変                              角形の外接円の一部」と捉えようとする着想が
 
  である,という点のみである。                                          引き出せる。
 
 
 【手法 2】 q リーグを導入した意図は,手法 1                           【手法 3.1】 放物線により近い円の中心と半径
 
  に固執させないためである。与えられた 2 次                             を探す
 
  関数は下に凸なので,分割による解法はすべて                            だいぶ本題とずれてはきたが,こうなってく
 
  p リーグに属する。今なら外側から近似値を出                            ると p リーグ,q リーグは気にならないよう
 
  せば q リーグトップタイだぞ,と煽る。                                 で,楽しみながら円での近似を考える時間とな
 
  与えられた道のりの上にいくつかの点を選び,                            る。実際の授業では手法 3 の途中でチャイム
 
  接線を引く。                                                          が鳴ったので,ここからは 2 時間目である。
 
 
                                                                  15
                                  √                            5. 総括
 (0, 0) と (1, 1) を結ぶ,長さ         2 の直線を底辺
 とする正三角形を考え,その正三角形の頂点を                       2021 年に初出の教材で,まだ中学 3 年生で
                  √                                            しか扱っていない教材ではあるが,高校生に同
 中心とする半径        2 の円がかなり良い近似を
 与えるのではないか,というアイディアが出                       じ教材をやってみても別のアイディアがまだ
 
 た。                                                           まだたくさん出てきそうではある。特に,三角
                                                                関数を使った近似を考えることができれば,そ
                                                                のままフーリエ級数の考え方の素地とするこ
                                                                とが期待できる教材である。
                                                                  中学生には,まとめとしてグラフの形状の
                                                                                     √
                                                                話をした。近似値は     2 と 2 の間にあるが,そ
                                                                れがだいたい 1.48 で,1.5 よりは小さい。つ
                                                                                       √
                                                                まり,感覚的にかなり        2 に近いため,放物線
                                                                のグラフをフリーハンドで書くときには「x 軸
                                                                には接しているが,その後はほぼ y = x に寄
                                                                せてかく」という書き方のコツにはかなり納得
                                                                した様子であった。
 正確な図を確認してみても,なかなか良さそ                         最終的に,以上の話をまったく聞いておら
                                               √
 うな近似だということが分かる。半径                 2で         ず,ただ 1 人黙々と手法 1 で 50 分割して見事
                                            √
                                              2π
 中心角が 60 のおうぎ形の弧の長さ             3     が近        1.4789 をたたき出した生徒が学年チャンピオ
 似値で,これを電卓で計算してみるとなんと                       ンとなり,「力技に勝るものなし」と本教材を
 1.48 . . . ,基準値の 1.4789 . . . にかなり近い値              締めくくった。
 である。                                                                                           (2020 吉崎)
   円の中心がどこにあるかは今回の課題とは
 逸れるが,教育的な意義があるため,求めさせ
 た。彼らはすぐに「直線 y = −x + 1 上にあ
                           √
 り,(0, 0) からの距離が        2 であるような点の
 座標を求めよ」という問題にたどり着く。こ
 れはいかにも高校受験の入試に出てきそうな,
 総合力を問える重要な問題であろう。しかし,
 このような扱いで自然発生的にたどり着いた
 問題は,取り組み方が段違いである。
                                √    √
 一応,この円の中心は ( 1−2      3 1+ 3
                                   , 2 )     である。
 知的好奇心を刺激されたとある生徒が,2 次方
 程式の 2 解になっているように見える,と言
 い出し,多くの生徒が x2 − x − 1 = 0 との関
 係を探り始めたが,何の成果も得られなかった
 ようである。
 
 
 
 
                                                           16
 3.まとめと検証
   本校数学科の SSH 事業に関わる研究では,開発
 教材を中学・高校の既存のカリキュラムの中に位
 置づけることからはじめて,通常の授業で繰り返
 し実践しながら洗練してきたものである。しかし,
 前述したように,ひとつひとつの教材を完成され
 た教材と考えるのではなく,すでに実践された教
 材についても,生徒による新たな解釈や,また教
 師による新たな工夫などを盛り込んで再度実践す
 るというサイクルも含めて,教材開発ととらえる
 べきであろう。                                            数学科教員沖縄研修会での研究授業
   本校数学科が主催する SSH 教員研修会では,協
 力校に赴き,協力校の生徒を対象に本校教員が研
 究授業を行う取組や,本校開発教材をベースに,
 協力校の先生方に,自校の生徒を対象に研究授業
 をやっていただく等の取組も行っている。詳細は
 後節にて報告するが,今年度はオンラインのみで
 の開催となった。また,ありがたいことに,これ
 ら学校としての枠組みを離れた数学科教員個人の
 研究活動の中からではあるが,各種学会での研究
 発表をきっかけに,
                 「自校でもこの教材を実践して              SSH 全国数学科教員研修会での教材発信
 みたい」という申し出を受け,実践した結果や生
 徒の感想を送っていただいたという事例もある。
 開発教材の有効性の検証という側面と並行して,
 より良い教材へと発展させる礎としても,このよ
 うに教材開発のネットワークを広げていくことは,
 今後さらに重要性を増すであろう。
   公開授業・研究協議会や,SSH 数学科教員研修
 会など,従前より本校数学科では,他校の先生方
 から直接意見をいただく機会を継続的に設けてい
 る。今後フィードバックの仕組みについて,Web
 サイトを活用するなど,より集約しやすいものを
 つくっていくことも大切ではないかと考えられる。           SSH 全国数学科教員研修会での教材発信
                    (文責:数学科・須田 学)
 
 
 
 
       数学科教員沖縄研修会での研究授業               SSH 数学科教員研修会(オンライン)での教材発信
 
                                                 17
 b.   理科課題研究の充実と                             自宅で安全にできる実験を作り上げやすいので、
            探究型教材の開発と実践                     生徒一人ひとりに必要な道具をまとめて配布し、
                                                       同時に家で実験してもらう形式をとった。
 1.仮説                                               以上、説明してきた通り、3つの学習形態(これ
  以前から、オンサイトの理科の授業とは別に、オ         を3つの学習ストリームと呼ぶことにする)を組
 ンラインの学習環境が構築できたらよいな、と考          み合わせることで、なるべく能動的に、探究的に
 えていた。この新型コロナウイルス感染症の感染          学習を進められるようなプログラムを目指した。
 拡大によって休校となり、開発する時間もできた
 ので、教材を開発し、実践した。ここでは、高校
 3 年の物理(4 単位)での実践を報告する。この新た
 な実践によって生徒の探究がより一層深まること
 が期待される。
 
 
 2.概要
  まず、オンライン学習の良いところは何かについ         図1 高 3 物理オンライン学習の「3 つのストリーム」
 て考えてみたい。コロナ禍によって、半ば強制的           また、これらを統合するプラットフォームとして、
 に行うことになってしまったオンライン学習では          Microsoft Teams を利用した。これは、次のような
 あるが、前述のとおり、COVID-19 の前から「オン         理由がある。
 ライン教材の並立」を目指していたわけで、
                                       “仕方          1.オンライン会議機能がある
 なく”の取り組みではなく、COVID-19 の有無に           2.チャット機能がある(1 対 1、1 対 N も可能)
 よらない、適性を生かした学習形態について考え          3.Microsoft Office との親和性が高い
 ていくべきであろう。                                  4.OneNote とスムースに連携できる
  オンライン学習のメリットの 1 つは、生徒たち            まず、1 つ目はリアルタイムで実験するのに用
 が学ぶ際に、時間と空間に縛られない形式が可能          いた。Google Meet や Zoom など違うツールも存在
 となることである。そこで、
                         「新規事項の学習」と          するが、後述の他の機能と統合して扱えることが
 「既習事項の復習」に分け、それぞれに適した形          何よりもメリットである(アプリを行ったり来た
 態で、オンデマンドで学びを進められるようにし          りするだけで、疲れてしまう)
                                                                                 。2 つ目のチャット
 た。物理という科目は、誤概念が存在しやすい科                                      LINE などの SNS
                                                       機能は非常に有効に活用できた。
 目で、人それぞれ、適切な理解に到達する時間が          的な感覚で、生徒間、生徒-教員間で質問や議論が
 大きく違う。そういった科目特性からしても、こ          可能となる。3 つ目は物理では重要なポイントと
 のメリットを活用する手はない(というか、その          なる。
                                                           多数のデータを処理して、
                                                                                 グラフにしたり、
 ような特性を感じてきたからこそ、以前からオン          時にはマクロを利用したり、といった活動は、現
 ライン教材の必要性を感じてきていたわけだが)。        時点では Google Spreadsheet では物足りない。最
  逆に、理科という科目において、時間と空間に縛         後の 4 つ目は、プリント配布や演習の添削で
 られた方が良いコンテンツは何であろうか、と考          OneNote を用いたので、スムースに連携できるの
 えてみる。その1つとしてやはり「実験」があげ          は、重要なファクターとなる。
 られるであろう。生徒一人ひとりが各自で材料を
 用意して、好きな時間に実験するというのは、実
 験内容によってはやりやすいものもあるかもしれ
 ないが、一般的に言って難しい。また、自力で能
 動的に取り組める生徒はいいが、ほとんどは“き
 っかけ”が必要であろう。そこで、
                               「実験」だけは、
 同期型(リアルタイム)で行った。高3の電磁気             図2 Microsoft Teams(生徒とのチャット画面)
 学の最初に扱う学習事項は、静電気であるため、              写真を貼ったり、問題 PDF を添付したりできる
 
 
                                                  18
 3.高 3 物理オンライン学習の実践内容                      最初の実験だったが、生徒たちは思った以上に
 3.1 ストリーム1おうちで実験!オンライン実験               熱心に取り組んでおり、生徒によっては、時間を
  実験のために、必要な道具を生徒に配布した。              超えてもトライしていた。また、オンライン実験
                                                          の様子を録画しておいたので、参加できなかった
                                                          人もあとから視聴して実験できる(ただ、うまく
                                                          いかない場合、その場で質問したりできないので、
                                                          同時が良いようだ)
                                                                          。
                                                            リアルタイムで実験した後、気づいたこと・考
                                                          えたことなどを Forms で記入してもらい、その意
                                                                    再び Teams のチャットにアップした。
                                                          見を集約し、
                                                          時間に縛られず、実験について双方向性のやり取
                                                          りが続くイメージで行うことができた(図5)
                                                                                                  。こ
     図3 生徒に配布した静電気の実験道具の一部            のようなことがおこないやすいというのは、探究
   実験の詳細も、図4のように、事前に Teams を            型授業として大きな利点だろう。
 通じてアナウンスできるので、プリント等は必要               この後、いつもなら、理論的なことを講義で行
 ない。                                                   うのだが、ここを後述の 2 つ目のストリーム「学
                                                          習プログラム」に委ねた。つまり、オンデマンド
                                                          で学ぶようにした。1 つの軸に、実験と理論が並
                                                          ぶのではなく、多層的に実験と理論が進んでいく
                                                          ようになっているので、リアルタイムは「実験」
                                                          に集中することができた。
 
 
 
 
 図4 チャットなどで、写真や動画付きで実験準備や目
          的・内容について予め伝えることが可能
 
 
 <実験1 静電気を探究する>
   まず、身近であるが、案外よく知らない「静電
 気」について探究する実験を行った。
   机の上に置いたアルミホイル片や紙片に、こす             図5 生徒の実験後の考えをまとめて、速やかにチャッ
 った塩ビ管を近づけるとどうなるか、予想させる。           トに提示できる
 やってみると、正しく予想できる人は少ない。そ               静電気は身近な道具で安全に行えるうえに、こ
 れだけ、静電気について何もわかっていないとい             ちらが教えずとも、様々な実験を積み重ねていき、
 うことを認識させ、今後の学びの動機付けとした。           結果を議論・考察することで、わかってくること
   その後、アース、静電誘導、誘電分極といった             も多いので、探究型の実験教材として適性が高い
 諸現象を実際に経験させ、アルミホイル、スズラ             と考えている。
 ンテープ、
         ラップ、
               ストロー(以上は家にある!)
                                         、
 テスター(全生徒に配布)などを使い、静電気力             <実験2 静電気がつくる場を可視化する>
 による引力と斥力の存在を確認してもらった。                 静電気力について扱った後は、電荷から出され
 
                                                     19
 る電気力線を可視化する実験を行った。                   自分なりに考えた形状の結果も、チャットにアッ
  これも、発泡スチロール皿と鉄道模型のシーナ            プしてもらい、議論した。
 リーパウダー(配布)と、家庭にあるサラダ油や
 アルミホイルで安全に行える実験である。                 <実験4 アルミホイルフィルムコンデンサを作
  アルミホイルによって、様々な形の電荷を作る            る>
 ことができるので、これも探究的に自分であれこ             静電気の「力」
                                                                      「電場」
                                                                            「電位」といった基本的
 れと、特徴を調べることができる。うまく可視化           物理量に関する実験の後は、いよいよ「応用」で
 できたら、それをスマホで撮って、チャットにア           ある。各家庭で、アルミホイルとラップをそれぞ
 ップさせた。そうすると、生徒たちはすぐさまそ           れ 4m(2m×2),6m(2m×3)用意してもらい、フィル
 れを確認することができる。コツなどをチャット           ムコンデンサを作った。きちんと充電できるか、
 上で議論しながら、進めていけるので、最終的に           調べるために、電池ボックスと導線、
                                                                                        、ブレッドボ
 は全員がうまく可視化できた。                           ード、LED(配布)と電池を使い、LED が点灯する
                                                        ことを確認してもらった。
                                                          一瞬だが、点灯するので、それをスマホのスロ
                                                        ー動画に撮影し、やはりチャットにアップしても
                                                        らった。一瞬でも点灯すると嬉しいもので、実際
                                                        に役に立っているという工学的側面を見えること
                                                        も重要だろう。
                                                        3.2 ストリーム2学習プログラム(動画+演習)
     図6 生徒が撮影した電気力線の様子の一例              前項のオンライン実験に並立する形で、新規学
  電磁気学において、
                  「場」の概念を受容するのは            習事項を動画による講義と、それを視聴した後に
 容易いことではない。数式の上で操ることができ           取り組む演習課題をセットにした「学習プログラ
 たとしても、理解したことにはならない。このよ           ム」を 2 つ目のストリームとして展開した。これ
 うな経験は、理論を進めていく上でも、重要な支           らのコンテンツもすべて Teams のチャネルから見
 えとなる。                                             られるようになっている。今回作成したコンテン
                                                        ツは以下の通りである。
 <実験3 電位を可視化する>                              ・ドップラー効果(+αで相対性理論まで学習
  ベクトル場である電場の次は、スカラー場であ                可能)(計 2 本、約 54 分)
 る「電位」である。これも、概念を獲得するのは             ・近似を理解する(計 8 本、約 93 分)
 難しい。
       そこで、
             これも可視化する実験を行った。               ・仕事とエネルギー(計 5 本、約 63 分)
  導電性のある黒ラシャ紙、ネオジム磁石、電池              ・静電場の基礎(計 4 本、約 77 分)
 ボックスと導線、テスター、白チョーク(配布)             ・電位(計 5 本、約 66 分)
 と電池、アルミホイルで実験した(図7)
                                     。                   ・電気力線とガウスの法則(計 5 本、約 78 分)
                                                          総時間 430 分のボリュームであるが、順序や細
                                                        かい締切はなく自分のペースで学べるようにした。
 
 
 
 
   図7 リアルタイム生徒実験の一場面(等電位線)
     各自、顔ではなく、机上の実験の様子を映す
  これも、アルミホイルで好きな形状にできるの
 で、こちらが指示した基本的な形状だけでなく、                     図8 学習プログラムの動画の例
 
                                                   20
   視聴後に、理解の度合いを各自が(あるいは教           もらい、理解を深めてもらうことが目的となって
 師が)確認できるように、課題を PDF ファイルに          いる。他のストリームと比べて、手っ取り早く始
 て Teams にアップした。生徒はこれを見て、紙に          められる。そういった始める敷居が低めのものも
 解答する。そして、それをスマホなどで撮影し、           用意しておこうと思ったが、後のアンケートから
 チャット(生徒 1 人―教師)に提出する。教師は、          もわかる通り、やはりそういった観点は、このオ
 それを OneNote に貼り付け、iPad で添削をする           ンライン学習には必要であった。
 (詳細は次項)
             。次の授業まで待つといったことは             また、デジタルの添削に取り組んでみてよかっ
 なく、添削した瞬間(というか、教師が添削中に           たことがいくつかある。1つは、添削の際に、何
 相手がそれをリアルタイムで見ることもできる)           度も同じことを書かなくてよいということである。
 から、生徒は自分の解答に対するコメントを確認           よくある誤りに対するコメントは、別ファイルで
 することができる。そのため、事後のアンケート           ストックしておき、必要な時にペーストできる。
 でも述べられていたが、添削の即時性は彼らの学           初めは、労力削減のために行っていたが、やって
 習に非常に効果的であったようだ。                       いるうちに、生徒が陥りやすい誤りが、
                                                                                          (これまで
                                                        も感覚的にはあったものだが)明確に整理されて
                                                        いくことに気づいた。それにより、たくさんの添
                                                        削の後、
                                                              よくある誤りとして、
                                                                                全体に共有できる。
                                                        これは、生徒と教師それぞれにとって
                                                          有益なことであった。2つめは、添削にリンク
                                                        を貼れるということである。物理の場合は、動的
                                                        なイメージが重要になることが多い。紙面上だけ
   図9 課題後の生徒の質問の例(Teams チャット)        ではどうしても伝えきれないことも多く、それを
   ちなみに、正解の度合いが評価にはならないこ           シミュレーションなどの動的コンテンツにリンク
 とは最初に伝えてある。実際、
                           「ここまでできまし           で飛ばすことによって、生徒により深く理解して
 た。ここからわかりません」のような質問が、チ           もらおうとすることができるのである。
 ャットに上がってくることもかなりの頻度であっ
 た。また、課題とは別の疑問も多く吸い上げるこ
 とができた。これは、通常の授業ならば見逃して
 いた部分である。この点は明らかにオンラインの
 メリットだと言える点であり、生徒の探究心を見
 逃さない重要な要素であると感じる。
   また、動画を見るとどうしても受動的になりや
 すい。そこで、リアルタイムで行った実験の映像
 を入れたり、クイズや課題を入れたり、あえて「今
                                                        図 10 OneNote での添削(右下はリンクで、クリックす
 から、1 か所明らかにおかしい説明があります」
                                                              ると関連するシミュレーションに飛べる)
 と言ってそれを課題にしたりした。
                               「完全に安心で
                                                          また、チャットと OneNote という時間的縛りの
 きない」要素は、こういう受動的になりやすい動
                                                        無いツールのおかげで、今までよりもはるかに多
 画コンテンツでは重要ではないかと考えている。
                                                        くの面白い疑問がオンライン上で展開された。こ
                                                        こでは、完全に 1 対 1 なので、授業の後に、〇〇
 3.3 ストリーム3 演習課題
                                                        くんの質問が終わるまで待つ、みたいなことをせ
   最後のストリームは既習事項の復習のための、
                                                        ず、自身の探究心に沿って、納得いくまで議論で
 「OneNote による演習と添削」である。
                                                        きる。これは、教師にとっても、非常に有益なや
   前述の 2 つのストリームとは違い、既習事項で
                                                        り取りだった。
 あるので、リアルタイム授業や動画コンテンツは
 なく、物理現象に関する問いに各自で取り組んで
 
                                                   21
 4.検証                                              また別の質問では、図 12 のように、今後の学習
   以上のような、生徒の探究心を大切にし、それ         形態として、オンラインがサブ的に存在すること
 らを向上させるオンライン学習ストリームを実践         を歓迎する結果となった。今後、探究型授業を行
 した結果、生徒がどのように感じたのか、アンケ         うにあたって、オンラインの存在をどう組み込ん
 ート結果から検証する。                               でいくかは非常に重要なポイントとなるであろう。
                                                      図 13 のように、オンラインの特性を知ったうえ
                                                      で、今回の貴重な経験を適切に授業に組み込んで
                                                      いければと思う。
 
 
 
 
              図 11 学習形態ごとの効果
 
 
   図 11 からわかるように、あらゆる学習コンテ
 ンツについて、多くの生徒が効果的だと感じてい
 ることが分かる。一方、中心から左にずれた部分
 は「やっていない」層である。今回、あえて強制
 力を持たせずに行ったので、学習プログラムなど
 の新規事項をリアルタイムではなくオンデマンド
 で取り組ませるのは、既習事項を扱う演習問題よ
 りも、ややハードルが高かったことがうかがえる。
 いざ、取り組んでみると、効果はあると感じられ          図 13「物理」オンライン学習のメリット・デメリット
 るようなので、いかに多くの人がすんなり能動的
 に取り組めるようにするか、その仕掛けをどう作                             (文責:理科 今和泉卓也)
 っていくかが今後の課題であろう。オンライン実
 験は、オンデマンドではなく、共通の時間で行っ
 たので「やっていない」層は少ないが、効果でい
 うと、他のストリームよりも低い。これは、休校
 期間が明けてから行った 2 回のオンサイト実験と
 比較している部分もあるかと思う。
 
 
 
 
            図 12 コロナ後の物理の学習形態
 
 
 
 
                                                 22
  c.情報収集能力とメディア活用能力の育成                                                       2.1.2 講座の様子
                                                                                               ・学術情報の探し方 -論文とデータ-
  1. 仮説                                                                                       加藤志保研究員(本校図書館司書)と、本学学術
    技芸科では、SSH シリーズセミナー「メディ                                                   情報部アカデミックサポート課の大和田康代氏
 ア虎の穴」を構築して、生徒の研究・発表に必要                                                  (本学附属図書館ラーニングサポート担当、リモー
 な情報検索やプレゼンテーションスキルを涵養                                                    ト出講)が担当した。
 することを目標とした。換言すれば、「研究活動                                                    先行研究の論文を効率的に探すための「CiNii
 の入口と出口の技術の修得」である。これらのス                                                  Article」活用、論拠に使える統計データを探すた
 キルを養成することが、「国際社会に貢献する科                                                  めの「e-Stat」
                                                                                                           「e-Gov」活用と、それらのポータ
 学者・技術者」の育成に有用と考えるからである。                                                ルとしての筑波大学図書館「Tulips Search」につ
    第 4 年次である今年度は、シリーズセミナーの                                                いて講義と実習が行われた(図 1)。
 第 3 シリーズ(通算第 6 シリーズ)、および特別講
 座の実施を予定していたが、コロナ禍で変更を余
 儀なくされ、独立した複数の講座を実施した。そ
 れらを報告する。
 
  2. 方法
 2.1 セミナー第 3 シリーズ
 2.1.1 シリーズセミナーの断念と形態変更                                                                図 1     CiNii での論文検索演習
    年度当初は、例年通りのシリーズセミナーを
                                                                                               生徒の感想:
                                                                                                         「今まで論文を検索したことが無かっ
 2020 年 11 月開始・2021 年 3 月終了で計画した。
                                                                                               たので、正しい方法を知れて良かった。今後のレ
 しかし、とどまるところを知らないコロナ禍の中、
                                                                                               ポートや研究に生かしていこうと思う。統計デー
 外部講師を招いて対面講座を実施することは憚ら
                                                                                               タを何も考えずに Wikipedia などから集めがちだ
 れた。そこで、以下のように形態を改めることと
                                                                                               ったので、e-stat など信頼できる情報を選ぼうと
 した。どの講座の講師も中止や実施形態の変更を
                                                                                               反省した。
                                                                                                       」
 快諾してくれたことを付言しておく。
                                                                                               ・クラウドを活用した研究スタイル
 ・生徒や教員の負担や感染リスクを減らすべく、
                                                                                                 テック・ステートの杉田和久氏が担当した。高
    講座数はできるだけ少なくする。
                                                                                               1「情報の科学」の授業時間内にリモートで実施
 ・オンライン形式で実施可能な講座のみ、内容を
                                                                                               した。生徒は自宅からオンライン受講した。
    工夫して実施する。
                                                                                                 Office365 の OneNote を用いたオンラインコラ
 ・全講座受講を前提とした受講生募集1を取りやめ、
                                                                                               ボレーションの方法、ファイル共有の方法をオン
    その都度受講生を募集2する独立の講座とする。
                                                                                               ラインで講義していただいた。講師によるオンラ
 ・学校登校の再開後は、オンライン形式でクラス
                                                                                               インでのプレゼンテーションを学ぶ機会としても
    を超えた講座の時間設定が困難なため、通常時
                                                                                               有効であった。
    間割内にオンライン講座を組むことも模索する。
                                                                                               生徒の感想:
                                                                                                         「OneNote に興味を持ったので、現在
    今年度実施した講座は表 1 のとおりである。                                                  のオンライン授業の機会で生かそうと思って、授
                                                                                               業のノートをとるのに使った。画像の貼付など、
         表 1 2021 年度のシリーズセミナー一覧
         タイトル                  講師                    実施日                 時間         かなり使い勝手がよかった。また、閲覧なら
                      本校学校図書館       加藤志保                   中3・高1
 学術情報の探し方
                      筑波大附属図書館    大和田康代氏
                                                         2020/12/10
                                                                       希望者
                                                                                   2
                                                                                               OneDrive を通してスマホなどのモバイル端末で
 クラウドを活用した                                                     高1
 研究スタイル
                      テック・ステート    杉田和久氏     2021/01/12
                                                                      情報授業
                                                                                 1×4組        もできるため、現況での利便性は極めて高かっ
                                                                        高2
 AIとは、RPAとは          UiPath          原田英典氏     2021/01/28
                                                                      情報授業
                                                                                 1×4組        た。
                                                                                                 」
 
 
 
 
                                                                                          23
 ・AI とは、RPA とは                                   2.2.2 講座の様子
   UiPath の原田英典氏が担当した。高 2「情報の              貸与する機器や、ポスター添削の都合上、受講
 科学」の授業時間内にリモートで実施した。              生徒は 10 名に限定した。生徒は、各自の課題研
   「情報の科学」の授業内容「モデル化とシミュ          究と並行して、Illustrator の操作法を YouTube
 レーション」に関連して、AI と RPA (Robotic            動画をもとに独習し、情報デザインの動画を参考
 Process Automation) について、技術紹介や活用          にポスター習作を行った。数学・理科(生物)の教
 に向けた課題、将来の自動化後の社会課題との共          員は、教科の視点から研究発表ポスターに求めら
 通点などを学習した。                                  れるものを整理し、課題研究の場などを通して生
 生徒の感想:
           「人工知能を現実世界と結びつけ、ど          徒に提示した。
 のように活用していくかの研究が盛んなことを知               アドビ側の大里浩二氏(帝塚山大学)にはカリ
 れてよかったです。技術分野では専門的な人ごと          キュラム中盤でのポスター習作への助言と最終回
 に分担することが主流ですが、他の分野の専門の          での検討会(オンライン、図 2)への参加を得て、
 人が容易に人工知能などを扱うことができること          デザイン的な視点からの改善案を提示していただ
 は実用化への近道だと感じました。
                               」                      いた。生徒はこれらのコメントをもとに、ポスタ
                                                       ーのさらなるブラッシュアップを図っていた。
 2.2 特別講座・アドビ講座
   特別講座は「アドビ講座」と「ポスターデザイ
 ン講座」を開催した。このうち、高橋佑磨氏(千
 葉大学)による後者は 2018 年度に開催したもの
 の改訂版であり、詳細は割愛する。この項では新
 規講座である前者について記す。
 2.2.1 アドビとの協業
   昨年度はシリーズセミナーに含まれていたアド               図 2 外部講師によるオンラインポスター指導
 ビ株式会社との協業講座をとりだし、対象を高 2
 理科課題研究および高 2 課題研究(数学)受講者に、       生徒の感想:「「デザイン」について漫然としたイ
 目標を今後の研究会でのポスター発表に絞った講          メージしかもっていなかった私にとっては、
                                                                                             「デザ
 座を計画した。                                        インの目」を育むとても良い講座だった。配色や
   アドビからは講師(リモート)と YouTube 動画           レイアウトといった技能も基本的な部分から丁寧
 (既存)、Adobe CC のライセンス(受講期間中貸与)         に学べて、研究ポスター制作のコツがつかめたよ
 を、日本マイクロソフトからは Surface Book(受          うに思う。また身近にある様々な事柄についてデ
 講期間中貸与)を、それぞれご提供いただき、本校         ザインの観点からもみるようになった。
                                                                                         」
 側の有志グループi   でこれらの資源を構成し表 2
 の指導計画を策定した。
                                                           3. 検証
            表 2 アドビ講座指導計画
                                                            シリーズセミナー(通常講座)、特別講座とも、
 時                    内容・講師
                                                       受講生アンケートの結果は良好であったが、残念
  1 デザインの必要性(Zoom、アドビ井上莉沙氏)
  2 情報デザイン                                       ながら今年度は研究発表の場が制約され、成果を
  3     (アドビのYouTube動画、大里浩二氏)             調べることが困難であった。検証は、次年度(最
  4 ポスター習作の提出とコメント(大里氏)               終年度)に継続したい。
  5 教科の視点からポスター改善
                                                                      (文責:家庭科・情報科 植村徹)
  6     (対面、数学・理科)
  7 ツールの活用(アドビのYouTube動画)                 i 今和泉卓也・宇田川麻由(理科)、薄井裕樹・三井田裕樹(数
  8 ポスターの検討会(Zoom、大里氏)                    学)、山本智也(社会)、そして植村で指導案を構成した。
                                                       2021 年 3 月に東京都高等学校情報教育研究会で発表を予
                                                       定している。
 
 
                                                  24
 2    主体的な探究活動をするための                        対象に Gmail で広報し、参加希望者の受付も、ワー
      基礎力育成カリキュラムの開発と実践                  クショッフ゜の classroom を開設し、登録させることと
 a.理数系基礎力の充実と科学的リテラシーの涵養             した。事前問題の配布、解答の回収、アンケート
 a1.数学科 SSH(オリンピックワークショップ)                の集計なども classroom を活用した。
 1. 仮説
      数学オリンピックレベルの問題に他の生徒と
 共同して取り組む経験や、また先輩たちの体験を
 知ることで、発展的な知識を獲得するとともに、
 数学的な考え方の良さや楽しさを感じ,数学オリ
 ンピックに挑戦する意欲を喚起できると考え、本
 ワークショップを実施する。
   ワークショップの講師及び TA は、数学オリン
 ピックで活躍した本校卒業生で、講師には全体に                          TA によるオンライン助言
 関わる講演と講義、TA には事前問題および当日              3.評価・検証
 問題の作成と解説及び体験談を依頼する。                     オンラインのため、参加生徒と講師&TA との
   SSH 第 4 期で新たに企画した事業である。4年            コミュニケーションが取りづらいのではと危惧し
 目となる今年度は、コロナウイルス感染症拡大防             ていたが、生徒たちはチャットで気軽に質問等を
 止対策として、オンラインで実施することとした。           して、積極的に参加できていたようである。TA
                                                          にしても、自分の発言に対して、すぐに反応があ
 2.実施の概要                                           るため、それらの反応に丁寧に回答する様子が見
 日 時:2020 年 10 月 10 日(土)14:3016:30               られ、オンラインによる弊害を感じられず、それ
 場 所:本校図書スペースを本部                            なりのコミュニケーションはとれていたと思われ
 講    師:大島     芳樹(大阪大学准教授・本校 52         る。また、講師を担当する OB にも、時間的、地
   期卒業生・国際数学オリンヒ゜ック メタ゛リスト)        理的負担をかけずにすむことから、今後もオンラ
   TA2名(数学オリンピックで活躍した本校 OB)            インによる講師講演は検討する必要があると考え
 参加者:生徒 26 名(中 3高 2)                           る。
 
 
 
 
                                                                          オンラインの様子
              大島先生のオンライン講演                    (アンケート自由記述 抜粋)
   実施の流れは昨年度と同様に、TA が作成した問            ・まだまだ自分の勉強が足りないなと思った。
 題を参加者に事前に提示し、当日は講師による講座、         ・解説があまりわからなかったが難しい問題に触
 事前問題及び当日問題の演習、TA による問題解説、          れることができてとても楽しかった。
 体験談、最後に講評及び助言とした。                       ・例年に比べオンラインで不自由なこともあっ
   昨年度までと違うことは、コロナ禍対策としての           たが、楽しく問題に取り組めた。
 オンラインによる実施である。遠方の講師と密を避             急遽実施することとなったオンラインのワーク
 けるための生徒は各家庭よりオンライン参加とし、           ショップであったが、講師、TA および生徒たちは
 TA とスタッフは運営を円滑に進めるため、図書ス            すぐに対応ができており、ICT を活用する形態も、今
 ペースに本部を設置し、待機することとした。               後検討していきたい。
   JJMO が中止となったため、中 3 以上の生徒を                               (文責 数学科 町田多加志)
 
                                                     25
 a2 理科 SSH 特別講座
 1.仮説                                                ○化学科特別講座
   国際社会に貢献する科学者・技術者の育成にあた            『マイクロプラスチックについて』
 り、実際に世界の第一線で活躍している研究者によ          日時:令和 3 年 3 月 19 日(金) 13:0015:00
 る講演は、生徒の理科に対する興味・関心や探究活          場所:オンライン開催(Zoom 開催)
 動へのモチベーションを大きく高めると考えられる。        講師:吉田 次郎 氏(東京海洋大学 教授)
 本年度は生物分野と化学分野、物理分野の講演会                    中野 知香 氏(東京海洋大学 博士研究員)
 を 1 回ずつ、計3回実施した。                           対象:中学生・高校生
                                                         内容:我々の生活を便利にすべく大量に生産・使用
 2.方法                                                されてきたプラスチック。廃棄されたプラスチックは、
 ○生物科特別講座                                        ごく小さな粒子(マイクロプラスチック)に分解されて、
   『ウイルスとかけて妖怪と解く』                        河川や海洋に分布している。海洋環境汚染と関連し
 日時:令和 3 年 2 月 19 日(金)15:3017:00              ているマイクロプラスチックについての現状や今後の
 場所:オンライン開催                                    我々の生活におけるプラスチックの取り扱い方などに
 講師:武村 政春 氏(東京理科大学教授)                  ついて、東京海洋大学の吉田次郎先生と中野知香
 対象:中学生・高校生                                    先生にご講演いただく予定である。この講座は、今後
 申込者:中 3高 2 生徒 35 名、教職員 10 名               の我々の生活に深く関連すると考えられるので、中
 内容:今年度、我々の日常生活を大きく揺るがしたウ        学生にも受講させ、自分達がどのような社会を構築し
 イルスであるが、ウイルスに関する正しい知識を得る        ていくべきなのか考えさせていきたい。
 機会はほとんどない。そもそもウイルスは、身近な環
 境中に数多く存在しており、ヒトをはじめ多くの生物
 の進化にも大きく影響を及ぼしてきたことなどが最新
 の研究から明らかになっている。本講演では、巨大ウ        ○物理科特別講座
 イルス研究の第一人者である武村先生をお招きし、            『機械学習とは?今後の科学で必要なスキル』
 得体が知れず人間から怖れられてきた妖怪とウイル          日時:令和 3 年3月 18 日(木)13:3015:00
 スをかけ、ウイルスについての正しい知識とともに          場所:オンライン開催
 我々はどのようにウイルスを捉えていくべきなのかに        講師:土沢誉太氏(Yahoo 株式会社)
 ついてご講演いただく予定である。                        対象:中学生・高校生
                                                         内容:昨今、サイエンスにおいても、機械学習は重要
                                                         な位置を占めるに至っている。そもそも、機械学習と
                                                         は何だろうか?Deep Learning とは?プログラミング
                                                         が必修になる流れの中で、現代人が知っておくべ
                                                         き、機械学習に関する知識を「入門編」として紹介す
                                                         る。概念がわかれば、後に自分たちで活用できる日
                                                         がくるのではないかと期待されるが、果たしてどうだろ
                                                         うか?
 
                                                         3.検証
                                                           各講演会とも、生徒の事後アンケート結果をもとに、
                                                         科学全般に対する興味・関心がどの程度高まったか、
                                                         探究活動へのモチベーションがどのように変化した
                                                         かなどについて検証する予定である。
                                                                         (文責:理科・今和泉、宇田川、吉田)
 
 
 
 
                                                    26
 a3.国語科SSH                                      2.2 中 2 国語(古典分野)
                                                        古典教育に留まらず、観察に基づく客観的記述
 1.仮説                                             方法の修得や、データベース活用法に習熟するこ
   19 年度は、
            「協同的活動においては、生徒に対          と、また何よりも、活字化された間接的情報のみ
 してある程度の自由な裁量を認めることが、より         に頼らず、現物を直に観察することの重要さを体
 効果を高めること、および、既習の事項や個々の         験的に理解させることを目標とする。
 興味関心を含んだ専門性のある学習活動が有効で           まず、くずし字解読の初歩、および書誌学の基
 あること」について検討をおこなってきた。今年         礎を習得させた上で、主に近世期の刊本・写本と
 度は、こうした流れを踏まえつつ、(1)協同的活動        いった古典籍の原本に直接触れさせる。ここでは、
 を行うことにより、学習における自身の修得状況         題簽剥落等により外題を欠き、内題(見返題・序
 や達成度をより客観的かつ効果的に把握すること         題・巻首題・尾題・柱題等)もはっきりしない、
 が可能となること、およびそうして得られた自己         書名不明の本を各班に 1 冊配布し、綿密な書誌調
 理解が、学習意欲をより高める効果を有すること         査を行わせる。書名不明であるため、序跋・刊記・
 について検討をおこなった。加えて、(2)「専門性        奥付・識語・広告・丁数、あるいは文中・挿画等
 のある学習活動」の具体的試みとして、古典籍の         に記される人名等、本の個別性を識別する上で必
 原本を教材として客観的に観察し推論する方法を         要となる客観的情報を的確に読み取らせ、記録さ
 身につけさせるべく、書誌学実習を実践し、その         せる。
 効果について検討した。                                 次に、調査で得られた情報を元に、WEB 上で利
                                                      用可能な国文学研究資料館・国立国会図書館・早
 2.概要                                             稲田大学図書館などの大規模なデータベースにア
   (1)協働的活動において、生徒相互間で行われる        クセスさせ、これらの書籍の素性(書名)を調べ
 評価体験を通じて、生徒がどのように自己理解を         させる、という授業である。
 深めるかということを検討した。その際、自身が
 他者から評価され、また自身も他者を評価すると         3.検証
 いう、二つの経験が組み合わさることにより、自           (1)生徒の間で、「他人の文章は読みにくいとこ
 身を客観的に捉える視点を獲得しうることを、
                                         「客         ろがあるが、自分の文章も同様に他人には読みに
 観的文章の作成と生徒相互間の批評」という作業         くいのだと思う」といった捉え方が見られた。一
 を通じて検討した。                                   方で、このような自己認識が、表現力を身に付け
   (2)は、古典籍原本の形態上の特徴を客観的に観        ようとする学習意欲向上に結びつくか否かについ
 察させ、得られた情報をもとに、WEB 上のデータ         ては、明らかにならなかった。(2)江戸時代の原本
 ベースを駆使してそれがどのような本であるかを         に触れること自体を希有な経験と捉える生徒、解
 調査させるという実践である。                         答を求めて探求する過程を宝探しのように楽しむ
   効果は、記述されたものの質や授業中の様子か         生徒が見られた。一方で、情報の量が多いことば
 ら総合的に判断した。以下は、その例である。           かりに意識が向かい、情報の質や整理の重要性を
 2.1 中 2 国語(現代文分野)                          あまり意識づけられなかった。
   まず、身の回りの好きな対象を選ばせ、それに
 ついて「言葉で写生(スケッチ)する」ように指         4.活動内容
 示する。提出された「写生文」に教員がコメント           2021 年 2 月 25 日に言語学者の川添愛先生を講
 し、それを反映させて再提出させる。再提出され         師に招き、SSH 特別講座「伝わらないこと、伝わ
 た文章は、同じクラスの生徒全員と共有し、生徒         ってしまうこと――人間とAIから見た言語理解
 同士でコメントを付けさせる。                         ――」を行う予定。協働的・探究的活動に不可欠
   その際に、全員が「評価すること」
                                 「評価される         な「伝えあう力」の育成を企図するものである。
 こと」の両方を経験すること、およびこれらの経                           (文責:国語科・千野浩一)
 験が連動したものになるよう留意した。
 
                                                 27
 a4.社会科 SSH 講座                                    キュリーには兵器開発を進める意図はなかったが、
                                                       「広い見方」からは責任が生じる。
 1.仮説                                                現代においても、強毒性鳥インフルエンザの事
   社会科では「科学者の社会的責任を考える」と          例(2012 年)や Winny 事件(2004 年)などにお
 いうテーマに継続して取り組んでいる。この観点          いて、意図のあるなしが問題となってきたが、意
 をふまえて生徒が自ら課題を設定して考察を加え          図が全くなかったとしても責任に関する議論は生
 ていくためには、科学と社会との関係や社会的文          じるのである。
 脈の中における科学のあり方を捉える科学的リテ          2.3 RRI とは
 ラシーの涵養が求められる。その取り組みの一環            近年の科学技術政策などで重要視されているの
 として、今年度は 2018 年に『科学者の社会的責任』      が RRI(責任ある研究とイノベーション)という
 を上梓した藤垣裕子氏をお招きし、科学技術社会          概念である。具体的には「研究およびイノベーシ
 論の観点から同テーマに迫る内容で講演をしてい          ョンプロセスで社会のアクター(具体的には、研
 ただいた。これを通して、生徒の市民としての(あ        究者、市民、政策決定者、産業界、NPO など第三
 るいは、将来の科学者としての)科学的リテラシ          セクター)が協働すること」を指す。そのエッセ
 ーの涵養を図った。                                    ンスは、1議論をたくさんの利害関係者に対して
                                                       開く、2相互に議論を展開する、3議論をもとに
 2.概要                                              新しい制度化を考える、ということにある。たと
   演題:「科学者の社会的責任」                        えば、福島第一原発事故に応用すると、1技術者
   講師:藤垣裕子氏                                    共同体の中で閉じられていた意思決定を地元住民
        (東京大学大学院総合文化研究科教授)           らに開き、2それぞれが重要と思う論点について
   日時:2020 年 12 月 9 日 15:3017:00               議論し(また、
                                                                   福島の経験を基に各国が学びあい)、
   対象:中学1年生高校3年生                          3その原発ガバナンスをめぐる議論をもとに規制
   形態:Google Meet によるオンライン開催              局のあり方を作り変えていく、という姿がイメー
 2.1 3 つの責任                                        ジされる。このように市民も含めた人々が協働し
   科学者の社会的責任は、大きく分けて、1科学           て「壁を再編する力」が RRI の可能性として考え
 者共同体内部を律する責任、3知的生産物に対す           られる。
 る責任、3市民からの問いかけへの応答責任、と           2.4 日本の現状
 いう3つの側面に整理できる。たとえば2であれ             日本では、RRI の源流の一つといえる ELSI(科
 ば遺伝子組み換え技術や代理母出産、3であれば           学の倫理的・社会的・法的側面)の研究が活発で
 COVID-19 の専門家会議など、3つの側面それぞ           ある。一方、日本では一度作ってしまった組織等
 れに具体的な事例を伴って理解を深めた。                や制度の壁を所与とする傾向が強く、それは責任
 2.2 責任と意図のあるなし                              の捉え方にも影響している。RRI の「壁を再編す
   科学者の責任に関する「標準的見解」とは、
                                         「行          る力」が示唆的である。
 為の結果に対して行為者が責任を負うのは、行為
 者がそれを意図していた場合であり、かつその場          3.生徒の感想と成果
 合に限る」というものである。これに対して、
                                         「行            アンケートでは、
                                                                       「科学者の社会的な責任を果た
 為者がその結果を意図していなくても、十分予見          すためには、科学者や行政、企業にだけでなく一
 されるに足る証拠がある場合には責任が生じる」          般市民にも関わってもらわなければならないと思
 という「広い見方」が提唱されている。たとえば、        った」というように、講演の趣旨を捉えた感想が
 1939 年にフレデリック・ジョリオ=キュリーが公         寄せられた。また、
                                                                       「政経の授業で出てきた自動運
 表しようとした研究結果は、本人は純粋な科学研          転プログラムの話とも関係してきそう」
                                                                                         「遺伝子の
 究として進めたものだが、核分裂の連鎖をコント          ところなど生物の授業などとも繋がりました」な
 ロールすることで核爆弾の製造が可能であること          ど、教科の学習と関連づける考察もみられた。
 を示唆するものであった。この場合、ジョリオ=                            (文責:社会科・山本智也)
 
                                                  28
 a5.保健体育科                                          2.2「からだを測る」および姿勢学習
                                                         身長・体重・座高・胸囲・大腿囲などの形態測
 1. 仮説                                               定、体育授業時における体力測定、立位静止姿勢
   保健体育科では、
                 「体育や保健の見方・考え方を           写真の撮影、超音波による筋厚・脂肪厚の測定を
 働かせ、課題を発見し、合理的、計画的な解決に           実施した。撮影した立位静止姿勢写真を用いた姿
 向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉           勢学習では、
                                                                  主に自身の姿勢における経年変化
                                                                                              (角
 え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊か           度や高さ、ねじれ等)に着目させ、考察を深める
 なスポーツライフを継続するための資質・能力を           ことができた。
 育成すること」を目指している。この目標達成に            今年度の本学習は、例年通り対面授業において
 向け、生徒の実態や現状を注意深く把握しながら、         実施した学年とオンライン授業形式で実施した学
 工夫を凝らした教科教育実践の推進ならびに保健           年があり、後者は自宅での撮影とレポートの提出
 体育やスポーツ科学・医学分野における最先端の           を課題とした。
 研究や事業等に触れる機会を提供している。
   以下では、高校2年生における課題研究の概要
 と、例年実施の「からだを測る」および姿勢学習
 における様子とオンライン教材の一部を示す。尚、
 今年度の SSH 講演会は3月に実施予定である。
 
 
 2. 概要
 2.1「POST2020」高2課題研究
   高校 2 年生 20 名を対象とした課題研究では、ラ        「からだを測る」で使用する姿勢写真撮影会場と
 グビーワールドカップ、オリンピックなどのスポ           筋厚等を投影する超音波機器一式(対面授業)
 ーツメガイベント以降のスポーツ・運動にどのよ
 うに関わるか自分事として考えるということをテ
 ーマに授業を実施し以下のような内容を行った。
 1J リーグ昇格を目指しつつ、渋谷を中心に社会
 的な活動をしている TOKYO CITY F.C.の監督を
 招き地域クラブの運営について講義を受けた。
 2ラグビーの聖地ともいえる秩父宮ラグビー場で
 筑波大学と早稲田大学の公式戦を観戦した。
 3筑波大学教授、ヒューマン・ハイ・パフォーマ
 ンス先端研究センター・センター長の征矢英昭先
 生を招き、高校生・受験生の『身心コンディショ
 ニング』について講義を受けた。
   以上のような活動を経て、受講生とは興味を持
 って取り組める研究テーマを決め、各自調査に取
 り組んだ。
   授業内での研究発表では、自分の体の測定デー
 タを用いた独自性のある発表や、陸上競技や野球            「からだを測る」授業で使用したオンライン教
 やサッカー、バスケットボールなどの戦術につい            材の一部
 ての発表があった。
   スポーツデータ解析コンペティション中等教育            (文責:保健体育科・山合洋人)
 部門に 6 名が参加しており、ポスター審査される
 予定である。
 
                                                   29
 b. 主体的・協働的な学び(アクティブラー               に足でかせぐ調査など、工夫してデータを収集す
    ニング)による探究能力の開発                       ることの意義を説明する。
                                                       c.描図
 b1.「身のまわりの環境地図」の取り組み                   よいデータが集まっても、地図に表わせなけれ
                                                       ば、完成とはいえない。記号や色の使い方、ベー
 1.仮説                                              スマップの作成方法などを説明する。具体的な過
   「主体的な探究活動をするための基礎力育成カ          去の作品も引用しながらイメージを持たせる。
 リキュラム」の一環として、本校中学校1年時に          2.3 環境地図おたすけ講座
 実施している「身のまわりの環境地図」への取り            近年は、夏休みの終わりに、希望者を集めて講
 組みを紹介したい。これは中学校社会科地理的分          座を開いている。これは、筑波大学免許更新講習
 野で実施しているものである。自分の身のまわり          の実践講座の一環として実施しているものである。
 の環境を地図にあらわすという一見シンプルな活          希望者は、それまでに作成した地図を持ち寄り、
 動に、探究的活動を進める多くのポイントが備わ          行き詰まっている点について発表し、参加者のア
 っている。                                            ドバイスを仰ぐ。免許更新講習参加者は、授業に
                                                       参加して悩んでいる生徒に対してアドバイスを与
 2.方法                                              えてもらうことにしている。この講座を実施する
 2.1 身のまわりの環境地図とは                          ようになって、改めてテーマ設定の重要性を再確
   「身のまわりの環境地図」作品展とは、北海道          認し、この講座を経験した生徒の地図の質が格段
 旭川市で毎年開催されている地図コンクールであ          に上がることが見えるようになった。ただ、今年
 る。今年度で第 30 回を数える。本校は第6回から        度に限っては新型コロナウィルスの感染拡大によ
 参加しており、毎年中学校1年生を中心に、夏の          り、この講座は開催することができなかった。
 課題として取り組ませている。                          2.4 環境地図発表会
 2.2 作成のプロセス                                      9 月になって提出された地図は、クラスごとに
 1例年であれば、4 月の入学当初に行う授業ガイ           発表会で紹介される。本校では、二学期から対面
 ダンスで環境地図について知らせる。歩測による          での授業が行われたため、例年通り発表会を実施
 地図作成などの体験を経ることも多いが、今年度          することができた。これは、中学 1 年生で学ぶプ
 は休校期間にあたってしまい、そのような活動は          レゼンテーションの第一歩となっている。黒板に
 できなかった。                                        自らの地図を張り出し、地図の目的・調査方法・
 26 月には構想を練るプリントを配布し、各生徒           表現上の工夫・感じたことなどを全員に向かって
 の準備状況をさぐる。担当者はそれをチェックし          話すことになる。クラスで発表を聞いている生徒
 ながら、生徒の問題意識がどの程度高まっている          も地図作成の経験を積んでいるので、この活動は
 かを把握する。また、本校生徒の課題がテーマよ          大いに盛り上がる。労力をかけて描かれた地図は、
 りも地図そのものにあることがわかってきたため、        その苦労を共有できるために概して高い評価を得
 地図により注力して仕上げるような助言も行った。        る。クラスで投票を行い、推薦された上位 3 分の
 3夏休み前に、地図作成のガイダンスを行う。             1 ほどの地図を旭川の作品展に送り、専門家に評
 a.テーマ設定                                        価してもらっている。
   提出されたテーマの傾向を分析し、何が不足し
 ているかを伝える。地図のレベルとして、
                                     「どこに          3.検証
 何があるか」レベルから「なぜそこにあるかがわ            昨年度のSSHから、この取り組みを探究型学
 かる」レベルの地図を作成することが重要である          習の基礎力を養成するプログラムとして位置づけ
 ことについて、重点的に伝えた。                        ることとなった。生徒がどのようなプロセスを経
 b.調査                                              て地図作成に取り組んでいるかを今後明らかにす
   身のまわりの環境地図作成で最も重要なのが、          るとともに、評価などについても今後研究してい
 データ収集である。オリジナルな調査方法や地道          きたい。         (文責:地歴科 宮崎 大輔)
 
                                                  30
 b2.城ヶ島野外実習
 
 1.仮説
   1982 年度の中学 3 年生より、神奈川県三浦市城
 ヶ島にて地層や堆積構造を観察する、地学分野の
 野外実習を継続して実施している。野外での主体
 的かつ協動的な学びであるが、今年度はコロナ対
 応のため、内容を縮小して 11/12(木)に実施した。
 正味 2 時間ほどの実習でも有効かを考察する。
 2.方法
   中学3年の地学分野の授業では、昨年度までは
 1学期に地層や堆積岩の内容を取り上げ、2学期
 には実習に必要な知識や技能を習得させていた。
 今年度は学校の臨時休業のため、2 学期からの対
 面授業の再開から以下の内容を取り扱った。
   (1)地層のでき方:1岩石の風化2侵食・運搬・堆                (図:城ケ島地形図と観察地点)
 積作用3堆積物の分布4続成作用・堆積岩の種類
   (2)地層の調べ方:1地層のつくりと重なり2
 地層の広がり3地層の対比4地層の堆積環境5
 大地の変動;断層・褶曲・不整合
   (3)城ヶ島の地形・地質:城ヶ島実習要領
   現地では4人1班のグループ(授業の実験班)
 で調査を行い、測定データは共有するものの、結
 果は各自でレポートとして提出させている。
   今回はコロナ対応で、京浜急行三崎口駅に集合
 し、路線バスに分散(6 つ)乗車して現地入りした。                   (スケッチ1 逆断層:C地点)
   従来は AD 地点まで 45 時間の実習であった
 が、今回は C 地点のみ 2 時間前後の実習とした。
 実習内容は以下の通りである。
   1級化層理2生痕化石3斜交層理・平行葉理
 4 スラ ンプ 構造 5正 断層 6逆 断層 7火 炎構 造
 8紅色凝灰岩9スコリアの観察10侵食の様子(11
 海食崖・海食台・海岸段丘・自然橋の観察)
 3.検証
   城ケ島の海岸全体に地層が露出しており、普段
 地層を見たこともない生徒たちは、よく集中して
 観察・測定を行っている。自分で観察物を見つけ               (スケッチ2 スランプ構造:C地点)
 られる生徒もいるが、大多数の生徒には教員の方          4.評価
 で見つけるポイントを指示している。生徒の書い            担当教員が作成したレポート用紙にスケッチ
 たスケッチを見れば、生徒がどのようなところに          と観察内容を書き込み、提出させている。
 着目して観察しているかが分かり、また観察能力            また、城ケ島野外実習は中学3年の総合学習E
 がどれくらいあるかも判断できる(スケッチ1・           (集中講座)に位置づけられ、生徒は自己評価カー
 スケッチ2)。コロナ禍で実習内容を減らしたた           ドに実習の感想や達成度を記入している。
 め、2 時間の観察でもおおよそ目標は達成できた。                       (文責:理科(地学)・高橋宏和)
 
                                                  31
 3 探究型学習を実践するための
    プログラム開発とサポート体制
 a. 水俣実習/福島フィールドワーク
 《水俣実習》
 1.仮説
   「科学者の社会的責任を考える」授業づくりの
 一環として、水俣に関する課題探究学習を行った。
 高校2年生で実施している課題研究「水俣から日
 本社会を考える」の現地実習である。課題研究と
 いう授業となって5年目となり、生徒自身が、課
 題をたてて探究することを目標とした。生徒が課
 題を探す場合、全くフリーに課題を探すよりも、           2.2 オンライン実習
 問題に関する学習や実地の経験によって、課題が             実習の日程については、当初は例年同様夏休み
 見つけやすくなり探究が進むことが考えられる。           を予定していたが、早々と不可能となった。続い
 実際に実習に行くことにより、事前の学習で学ん           て、
                                                          年末を予定したが、
                                                                          これも実施不可能となり、
 だことをより深く認識できることや、問題の多面           最後に年度末を考えたが、年明けからの緊急事態
 性に気づき、その後の各自の課題探究につなげる           宣言によって、これも不可能となった。生徒に対
 ことが期待できる。しかし、今年度は新型コロナ           してその都度期待を持たせつつ、実施ができない
 ウイルスによって、すべての計画が狂った。今年           ことを伝えるのは本当につらかった。改めて新型
 度は学校の開校状況によってカリキュラムを修正           コロナウイルスの脅威と対応の難しさを実感した。
 しながら実施せざるを得なかった。                       現地に赴いての実習に代え、3 月にオンラインに
 2.方法                                               よる実習を行なうこととした。当日は水俣病ゆか
 2.1 水俣に関する学習                                   りの場所を映像で紹介してもらい、水俣病に関連
   事前学習に関しては、例年どおりテキストや映           する方々から聴き取りをする(脱稿時は実施前)。
 像資料を用いて進めることにした。テキストとし           2.3 実習後の活動 研究内容の発信
 て高峰武『水俣病を知っていますか』
                                 (岩波ブック             現地実習が実施できなかったため、今年度は個
 レット)を使用して、水俣病の歴史や現状につい           人研究に注力することとした。課題研究の開始当
 て知識を共有した。また、映像資料としては、N           初から各個人に研究課題の提示を促し、複数回、
 HK戦後史証言プロジェクト「日本人は何をめざ           課題の探究と確認を行なった。さらに年明けには、
 してきたか 第2回 水俣」2013・7・13 放送(90           研究テーマや研究の進捗状況の発表会を行い、そ
 分)
   、「水俣病その 30 年」土本典昭監督(1987             の模様はオンラインで下級生に公開した。研究テ
 年制作、89 分)を使用した。授業の形態としては、        ーマとしては、以下のようなものがあがった。お
 1学期はオンライン、2、3学期は対面で行なっ           もなものをあげると、水俣病患者の認定と補償に
 た。今年は高校2年生の生徒 20 名が参加し、2            ついて(3名)/企業城下町の抱える地域におけ
 名の教員で授業を担当した。                             る問題とその解決(3名)/患者とその家族に対
   加えて、水俣病に関するさまざまな情報を提供           する対応(3名)/医者の果たした役割/水俣の
 し、生徒の研究・関心に応えるようにした。たと           風評被害とこれから/漁業(第一次産業)と水俣
 えば、熊本学園大学・水俣学セミナーが今年はオ           との関わり方/水俣病はいつをもって終わりとな
 ンラインで実施され、資料もネットでアクセスで           るのか、など多岐にわたった。
 きたので、大変役立った。また、ノーモア・水俣           3.検証 今年度の課題研究と今後の活動
 訴訟に関わっておられる齋藤美園弁護士から昨年             大変特殊な1年間だったが、オンラインでの可
 同様、訴訟に関する話をうかがった。今年は現地           能性や個人研究のあり方を考える機会となった。
 に赴いていないので、関心度が低いかと思われた           来年度につなげていきたい。
 が、大変熱心に受講していた。                                            (文責:早川和彦・大野 新)
 
                                                   32
 《福島フィールドワーク》                              子が詳細に取り上げられており、地域の人々が実
 1.仮説                                              際にどのような境遇にあるのかについての理解を
   本フィールドワーク(通称:ふくしま合宿)は、        深めることができる。
 灘高校(兵庫県・私立)と本校が合同で行う2泊            第2章では「原発事故がもたらしたもの」で、
 3日のスタディツアーである。
                           本企画のねらいは,          長引く避難生活、子供たちの生活、空間放射線量
 本校社会科が研究課題として継続してきた「科学          の推移と除染を扱い、やはり豊富な史料と人々の
 者の社会的責任」というテーマと密接に関係する。        声が多く拾われ、とても読み応えのあるものとな
 2011 年の東日本大震災は地震被害にとどまらな           っている。中間貯蔵施設についての現状は、原発
 い複合災害であった。なかでも福島にもたらされ          事故についての全国的な議論の必要性について、
 た被害は,放射能汚染,帰宅困難,そして風評被          改めて感じさせる内容となっている。
 害と,現代の科学・技術をめぐる多様な側面を映            第3章では「福島は負けない!」で、農林水産
 し出している。本企画を通して生徒は,科学・技          業の取り組み、福島イノベーション・コースト構
 術をめぐる諸課題をより多様な視点から,そして          想、地域コミュニティの再生、高校生の活躍、観
 様々な人の立場をふまえて,考えを深めることが          光・交流の活性化、交通網の復旧、廃炉に向けて、
 期待できる。                                          という構成になっており、各分野における復興へ
   今年度で5回目の訪問になる予定であったが、          の取り組みが紹介されている。
 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、実際に現            最後にワークシートがつけられており、事前学
 地に足を運ぶことはかなわなくなった。そこで今          習や現地でのフィールドワークを終えて、自らの
 年度に限り、オンライン上でのフィールドワーク          考えを深め、まとめることができる構成となって
 が行われることとなった。参加者は高校1年生 12         いる。
 名、高校2年生 1 名の計 13 名で、本校執筆の時         2 『ホープツーリズム』
                                                                           (教育旅行版)
 点で第一回目が開催されている。以下、今年度の            教育旅行に特化したテキストブックで、A4判
 オンラインフィールドワークの予定を示す。              カラー28 ページである。フィールドワークでたど
   第一回 導入ガイダンス                               るコースやテーマがわかりやすくまとめられてい
     2021 年 2 月 4 日 10:0012:00                      る。ヒューマンと呼ばれる語り手や参加経験者の
   第二回 東京電力社員との交流・質疑応答               声などが豊富に集められており、事前学習の教材
                2 月 15 日 10:0012:00                  としてもとても充実している。
   第三回 地元高校生または福島大学生を交えた           3 『「私」の福島学びノート』
            交流・意見交換                               A4判 26 ページの記録用ノートで、事前学習で
                3 月 16 日あるいは 18 日午後           学んだ乾燥や疑問点の洗い出し、現地のフィール
 2.方法                                              ドワーク時の情報整理、学びのまとめとしてつく
 2.1 事前学習                                          りたい未来やどのように行動するか、
                                                                                       までを考え、
   福島県観光交流課作成の合宿テキストブックを          記録できる内容となっている。
 用いて,その内容を共通の事前学習事項とした。          2.2 実習
 今回用意されたテキストブックは三種類である。            現時点では第一回のみの実施であり、今後、本
 1 『福島のあの日からいま』                            格的な実習が行われる。オンラインであるため、
   B5版カラー、3章立てで 50 ページにわたるテ        例年の現地実習にどこまで近づけるか、が大きな
 キストブックで、多くの写真はグラフ、データを          課題になっている。
 掲載し、地域の人の声も取り上げるなど、非常に          3.成果
 良質な教材に仕上がっている。                            第一回の導入ガイダンスでは、zoom のブレイク
   1章では「東日本大震災と原発事故」で、地震          アウトルームを用いて、少人数における意見交換
 と津波・原発事故の詳細について、写真やエピソ          を行った。すでに活発な意見交換が行われ、今後
 ード、時系列での事象の整理など、とてもわかり          に対する期待を持たせる内容であった。
 やすく整理されている。とくに事故後の避難の様                            (文責:社会科・宮大輔)
 
                                                  33
                                                             障害のあるこどもたちの社会性を育み、こども自身
 b.課題研究「障害科学:ともにいきる」
                                                           の表現する力を養うための最先端の情報工学と発達
 1.仮説                                                   心理学、医学における学際研究(「ソーシャル・イメー
   本課題研究は視覚・聴覚・肢体不自由・知的・発達          ジング:創造的活動促進と社会性形成支援(研究代
 障害、免疫機能障害、性的マイノリティ等、多様な障          表者:筑波大学・鈴木健嗣)」)の実証研究の場とな
 害種について、医学的側面からの障害理解のみなら            っている筑波大学附属大塚特別支援学校の『ミライ
 ず、障害者の生活実態や社会的障壁や心のバリアな            の体育館』で同校小学部の児童と最先端工学支援
 ども含めて知見を深め、「ともにいきる」ことを深く考        システム(ミライの体育館の大規模床面プロジェクタ・
 究する機会としている。年間13回の講座は毎回テー            カメラシステムによる基盤システム、以下プロジェクシ
 マを変えて、年齢、専門家、医師、当事者など多種多          ョン・マッピング)を使用した交流を目的とした講座を
 様な方々から講義を聞き、交流・擬似体験ができるよ          設けた。交流の事前学習として筑波大学サイバニクス
 う企画している。それぞれの立場から捉える障害への          研究センターの鈴木健嗣先生に「人を支援する工学
 知見を深め、体験を重ねることにより、現状の社会の          技術」について講義をしていただいた。例年は筑波大
 課題を認識し、今後の社会について考え、自らが実践          学サイバニクス研究センターの見学を兼ねてつくばに
 できる力を養うことを目的としている。                      出向いて受講していたが、今年度は新型コロナウイル
   本年度は科学的な視点での取り組みとして1筑波             ス感染症の感染拡大予防のため、zoom によるオンラ
 大学サイバニクス研究センターと筑波大学附属大塚
                                                           イン講座に変更した。
 特別支援学校(知的障害を伴う自閉症の教育に特
 化した特別支援学校)と連携をした「人を支援する工
 学技術」を学ぶ講義・グループワーク、2筑波技術大
 学と成田国際空港が連携し構築した空港でのユニ
 バーサルデザインの取り組み、盲ろう者当事者や介助
 者から情報機器や情報保障の実際を聞く機会3聴
 覚障害のある高校生とのオンライン交流で情報保障
 を体験的に学ぶ機会を設けた。これらの活動は、障害
 と科学が融合した「ともにいきる」社会の実現の構築
 につながるプログラムとなったので、その成果につい
                                                              講義では、障害と支援技術の関係性や、利用者を
 て検証する。ここでは1と2について報告する。
                                                           最 優 先 に考 え 、 デ ザイ ン を 利 用 者 と と もに考 え る
                                                           (co-design)ことの重要性などを、小児義手や立位
 2.方法(概要)と実践報告
                                                           車椅子などの具体的な例を元に障害者の自立活動
                                                           の支援のために工学技術をどうデザインしていくのか
 2.1 「人を支援する工学的な技術」講座
                                                           を学んだ。大塚特別支援学校の田上幸太先生からは
    日時:2020 年 9 月 12 日(土)9:3012:20              知的障害がある子どもたちの障害特性や、意思伝達
    授業形態:オンライン ZOOM 開催                         の仕方(簡潔かつ明瞭な言葉遣い、動作の「開始」と
    講師:筑波大学サイバニクス研究センター                 「終了」を明確に示す、言葉、図、実演など複数の手
       筑波大学システム情報系教授 鈴木健嗣氏               段で指示を伝える等)を教えていただいた。以上 2 つ
             人工知能研究室研究員 大木美加氏               の講義を踏まえて、後半は児童との交流に使用する
           筑波大学附属大塚特別支援学校                    プロジェクション・マッピングを用いたコンテンツ製作
             小学部教諭 田上幸太氏、佐藤知洋氏             を行った。例年は模造紙を囲んで付箋を使った KJ 法
    内容:1講義「人を支援する工学技術」                    を行っていたが、今年は zoom のブレイクアウトルーム
           2講義「知的障害の基礎知識」                     で JAMBOARD を使ったグループワークを行った。
                                                           JAMBOARD はアウトブレイク中でも他班の話し合い
           3グループワーク「インクルーシブデザイン
                                                           の内容を参考にでき、対面での実施とほぼ変わらな
           で制作するプロジェクションマッピング子
                                                           い雰囲気でグループワークができた。またネット上で、
           どもと一緒に楽しむコンテンツ製作」
                                                           コンテンツに活用できそうな画像を検索し、皆と共有
                                                           することもでき、オンラインであることを有効活用して
                                                           いたともいえる。附属大塚特別支援学校の先生方か
 
 
                                                      34
                                                           行われたビジネスとしての UD を社会で実装するため
                                                           の具体的な取組の紹介があった。UD の実現化には
                                                           良心だけでなく、STP(セグメンテーション・ターゲティ
                                                           ング・ポジション)の考え方や戦略的意義を見出し継
                                                           続していくことの重要性があることの話があった。また、
                                                           計画策定と対応策の具体化のために「成田空港 UD
                                                           推進委員会」を設置し、車椅子、視覚、聴覚、知的、発
                                                           達障害と多様な当事者と、建築や交通、心理・情報な
                                                           どの有識者、及び空港関係者がメンバーとなり、様々
 らは、交流する子どもたちの理解度や活動度合いな            なテーマに対して多様な視点から時間をかけて議論
 どのアドバイスを頂きながらコンテンツ製作を進めて          をしていった様子をお聞きすることができた。その他、
 いった。コンテンツは白黒反転した見やすい表示にし、        筑波技術大学と連携した取り組みとして、大学生によ
 色別にコース分けをして子どもたちが自主的に活動            る手話ロールプレイ研修や infotouchi プロトタイプ
 できるような工夫がされたものとなった。1 月下旬に          機の UD 検証などの紹介もあった。
 対面で交流会を実施する予定であったが緊急事態                弱視でありろう者でもある渡井秀匡氏からは実際
 宣言が発令され、今年度の交流会は中止となった。コ          に使用している点字入出力方式の音声・点字携帯情
 ンテンツは大塚の児童だけで遊んでもらい、実施した          報端末のブレイルセンスの紹介や、誰でもスマホで使
 様子をフィードバックしていただく予定となっている。        用でき、かつ盲ろう者にとっても便利であるウエブサ
                                                           イトの読み上げ機能(voiceover 機能)や他人からの
 2.2「障害者支援技術と情報アクセシヒ゛リティ」講座         ぞき見できないような画面非表示機能(screen
 日時:2020 年 12 月 7 日(月)9:3012:20                 curtain 機能)を教えて頂いた。盲ろう者が情報機器
   授業形態:対面授業                                      の普及で以前よりも情報を得やすくなっている現状な
   講師:筑波技術大学名誉教授 須田裕之氏                   どを知ることができた。介助者の渡井真奈さんからは
         成田国際空港株式会社 山田浩介氏                   視覚者への誘導の仕方や盲ろう者とのコミュニケー
         東京都盲ろう支援センター                          ション手段である指点字などの実際を学んだ。
 
          渡井秀匡氏(盲ろう当事者)
                                                           3.検証(まとめ)
          渡井真奈氏(盲ろう向け通訳・介助者)
                                                               生徒の感想は以下のとおりである。
   内容:1「障害者支援と情報科学について」
                                                             ・他の人と同じようなことが「ただ」できるというだけ
         2「成田空港でのユニバーサルデザイン
                                                           でなく、「自分の力で」できるようになることが本人の
         (以下、UD)の取組ビジネスとして UD を
                                                           ためにも大切。そのために技術でアプローチすること
           社会に実装する」
                                                           ができる。VR、AR を利用することで他の人の視点に
         3「盲ろう者が活用する情報機器」                   立つ体験ができ、これが、人の行動を理解して支援す
           「盲ろう向け通訳・介助者とは」                  ることに繋がることを知った。
                                                             ・技術は技術でしかなく,その使い方が肝要。実際
   聴覚障害者と視覚障害者に特化した筑波技術大              には技術の力を借りていても,「自分でできた」と思う
 学で情報技術の研究をされていた須田裕之氏に障              ことが大事である。技術を使ってどのような機械をデ
 害者支援技術と情報アクセシビリティを学ぶ講座を            ザインするかが最終的な支援には大事。
 設けた。当初は筑波技術大学に訪問し、障害特性に              ・盲ろう者の自立のために、様々な技術があることを
 応じた情報保障の実際や、聴覚や視覚に障害がある            知った。障害者差別をなくすためには、しっかりと障害
 大学生から直接話を聞く機会を企画していたが、新            者に対する理解をすることが大切である。
 型コロナウイルス感染症下で訪問は中止となった。そ            今回は工学、技術、情報をテーマに実施した。受講
 の代わりに、須田先生が有識者として参加していた成          生は、人を支援する科学技術はインクルーシブの考え
 田国際空港の UD の取り組みについて、成田国際空            方や当事者の「自分でできる」感覚を大事にし、当事
 港の山田浩介氏もお招きし、講話いただくよう変更し          者とともに考える(co-design)ことの重要性等、多く
 た。須田先生から「障害者支援と情報科学の視点」            の視点を学ぶことができた。 (文責:早貸千代子)
 の総合的な話を、後半は山田氏から成田国際空港で
 
                                                      35
 c.数学課題研究発表活動支援                             にしている。
 1仮説                                                   時間割内で設定された「課題研究」の枠におい
  本校の「課題研究」
                  「理科課題研究」は,教育課            ては,筑波大学数理物質系よりアソシエイト・坂
 程において,まず高校 2 年生に 1 単位設定され,         井公先生,准教授・スコットカーナハン先生をア
 各教科が開講する講座のなかから,全員がいずれ           ドバイザーとして迎えるとともに,筑波大学の大
 かを選択して受講する。数学科では毎年講座を開           学院生や数学課題研究 OB にも加わってもらい,
 設している。2019 年度は,講座名を「Say Hello to        活発な議論を交わした。
 Euler」とし,2020 年度は,「数学の本質は自由            本校の課題研究は高校 2 年生の 1 年間で実施す
 にあり」とし,受講生徒自身が自らの感性で数学           るが,高校 3 年生になっても希望者は 1 単位を選
 の様々な側面に注目して課題をそれぞれに設定し,         択することができる。2017 年度に「半素数の逆数
 各自の内容について発表や議論を通じて受講生全           有限和による1の分割について」を研究した生徒
 員で考察や研究を進めることを掲げている。               が 2018 年度も研究続行を希望した。2019 年度も
                                                        2 名が研究続行を希望した。
 
 
 
 
 2実施概要
  今年度は何といても新型コロナウイルスの感染
 拡大の影響が甚大であった。例年通りに行く部分           3検証
 は少なく 1 学期はほぼオンラインでの実施を余儀           本校数学科では,課題研究が学校設定科目とし
 なくされた。                                           て設定されるより前から,ゼミナール形式の課題
 2 学期は対面による経過発表をすることはできた           学習を取り入れ,長きにわたり実践してきている。
 ものの,例年行われている発表会のほとんどが中           そのなかで 2020 年度は,例年通りにいかない中
 止または実施検討中となってしまい,生徒たちは           でいかにして数学的議論を深めることができるか
 研究のモチベーションを保つのが大変厳しい状態           ということが 1 つ課題となった。一般の授業等で
 であったに違いない。                                   は,オンラインでの実施は対面に劣ると言われが
  そのような状況の中,外部の発表会のうち,中            ちであったが,数学課題研究の場合はむしろ逆で,
 止ではなくオンラインで代替の場を設けたものや           他教科と比べてオンラインでも各研究を進めるこ
 現地での開催にこだわって実施したものもあった。         とが比較的容易であることを感じた。毎回の発表
 今年度は,例年 8 月に行われていたマスフェスタ          準備は少々大変な印象であるが,対面の場合とさ
 が 12 月に現地での実施となったため,研究が進           ほど変わらない場をオンラインでも提供できたと
 んでいる生徒 2 名を先行して出展し,残る生徒は          考えている。場所を選ばず,紙とペンさえあれば
 主に 3 学期,2 月の学芸大主催 SSH/SGH/WWL              このような状況下でも数学ができるという,まさ
 課題研究成果発表会か 3 月の横浜サイエンスフロ          に数学の本質は自由にありというテーマにあった
 ンティア高校主催マスフォーラムのいずれかに,           実践ができたのではないだろうか。例年蓄積して
 全員がポスターまたは口頭発表で出展することと           きた実践的なノウハウだけでなく,数学を研究す
 した。さらに,1 月の課題研究オープンに筑駒 OB          る仲間同士でいかにして議論を深めていったかを
 数名に来てもらい,発表を見て意見をもらう機会           今後継承していきたいと考えている。
 を独自で設ける取り組みを検討中である。また,                             (文責 数学科 薄井裕樹)
 最終的には研究成果を論文としてまとめ,例年通
 り SSH 課題研究として,論文集を発行すること
 
                                                   36
 d. 台湾台中第一高級中学との交流
                                                      3.方法
 1.初めに                                            オンライン研究交流の実施にあたり、例年とは異
    本校は,2009 年より台中市立台中第一高級中         なる流れとなった。
  等学校(以下、台中一中)との交流事業を行って        3.1 オンライン切り替えへの打診
  いる。
      今年度はその 12 年目にあたり,
                                  その間に,            年度当初は、新型コロナウイルス感染拡大防止
  各教科における課題研究の指導やプレゼンスキ          のため一斉休校となっていたが、12 月の催しとい
  ルの向上などが図られてきた。応募生徒の数も          うこともあり例年通り日程での渡航を予定してい
  多く,本校の国際交流の代名詞ともいえるプロ          た。だが世界的な感染拡大が止まらず、5 月には
  グラムである。                                      オンラインでの切り替え案を先方の担当者にメー
    交流は主に,隔年 5 月に台中一中の生徒約 60        ルで打診し、6 月下旬にオンラインでの実施可能
  名を本校に迎えるプログラムと,毎年 12 月に本        との返答を受けて 7 月にはオンラインでの実施を
  校生徒が台中一中を訪問して行うプログラムに          決定した。課題研究を進めて発表する高校 2 年生
  よって構成されている。本年度は,台中一中を訪        には、7 月下旬にオンライン実施であることを担
  問する予定であったが新型コロナウイルス感染          任団を通して周知した。
  拡大を受け、例年のように渡航して交流事業を          3.2 実施概要
  行うことは困難となったため、初めてオンライ          日時:2020 年 12 月 11 日(金)9:0012:40
  ンでの交流を実施した。                              会場:本校オープンスペース
                                                      参加者:高校 1 年生 3 名、高校 2 年生 9 名
                                                        先方と接続するオンライン会議システムには、
                                                      GoogleMeet を使用した。本校生徒と台中生徒はそ
                                                      れぞれの学校の広い会場で一同に会し、スクリー
                                                      ンに GoogleMeet の画面を写しながら互いの映像
                                                      と音声を外部接続カメラとマイクで送った。本校
                                                      側は、Web 会議用カメラシステム MeetingOWL を
                                                      使用した。発表の際には、GoogleMeet の画面共有
          台中一中生徒とのオンライン集合写真          機能を使って互いのスライドを先方のスクリーン
 2.仮説                                             に映した。台湾との事前接続テストは 10 日前に一
 2.1 課題研究の発表と交流                             度実施し、音響の不具合により前日にも再度接続
   高校 1 年生は 3 人で協働し英語による学校紹介,     確認を行った。生徒のオンライン口頭発表の練習
 高校 2 年生はグループで日頃から行っている課題        は、英語科 SSH プログラムによる英語プレゼンテ
 研究の成果を英語で発表することを主眼としてプ         ーション指導と兼ね、台湾とは接続せずに
 ログラムを構成した。これにより,異文化交流や         GoogleMeet を実際に使用しながら実施した。
 課題解決能力,サイエンスコミュニケーション能
 力の伸長を期待した。
 2.1 プレゼンテーション事前指導の有効性
   ここ数年,事前に英語プレゼンテーションの専
 門家を迎え,実践的な指導をしてもらっている。
 顔の向きや声の強弱,ジェスチャーを交えた表現
 など,専門的な指導をいただくことで,生徒のプ
 レゼンテーションスキルの向上を図った。事前指
 導を経て,コミュニケーションツールとして英語
 を活用できる姿勢や能力が育成できることを期待              文化交流(台中生徒によるバンド演奏)
 した。
 
                                                 37
 3.3 プログラム
   研究発表会のプログラム自体は、例年 12 月に台
 中一中で実施している形式とほぼ同様に実施した。
 司会進行は台中一中の生徒が務め、両校の校長や
 代表生徒による挨拶、文化交流として英語落語や
 楽器演奏、学校紹介が行われた。開会式の中で、
 両校校長による姉妹校提携更新の調印式も行った。
 その後、本校高校 2 年生と台中一中の生徒からそ
 れぞれ4件ずつ英語による口頭発表を交互に行い、
 最後に質疑応答の時間を設けた。数年前から始め                            研究発表(生物)
 た研究ポスター発表については、今年度は実施を
                                                          4.検証
 見送った。
                                                          2点の仮説についてそれぞれ検証した。
 (1)スケジュール(日本時間)
                                                          4.1 毎年、本プログラムは、化学部や数学科学研
 8:30              接続開始
                                                          究部、パソコン研究部などの科学系部活動や、高
 9:009:14         開会式
                                                          校 2 年生「理科課題研究」および学校設定科目「課
 9:1410:00        文化交流
                                                          題研究」において取り組んだ研究成果を発表する
 10:0010:05       休憩
                                                          場となっている。だが今年度は、昨年度 3 月以降
 10:0511:05       研究発表前半(4件)
                                                          の臨時休業および 6 月以降の分散登校の影響で、
 11:0511:10       休憩
                                                          課題研究や部活動に取り組む時間が限られ、特に
 11:1012:10       研究発表後半(4件)
                                                          課題研究は各講座の担当教員がオンラインで実施
 12:1012:20       質疑応答
                                                          できる内容に切り替えるなど、例年のように生徒
 12:2012:40       閉会式
                                                          が研究を進めることが困難な状況であったため、
                                                          発表件数は例年より少なくなった。だがこのよう
                                                          な困難な状況にも関わらず、参加に手を挙げた生
                                                          徒たちは課題研究(数学)や理科課題研究(生物)
                                                          において本プログラムでの発表を目標にして研究
                                                          を遂行し、いずれも意欲的な発表内容であった。
                                                          本プログラムは生徒の課題解決能力,サイエンス
                                                          コミュニケーション能力の伸長を促進していると
                                                          考えられる。
                                                          4.2 今年度の英語プレゼンテーション事前指導で
              姉妹校提携更新の調印式
                                                          は、オンライン発表を想定して行われ、内容もビ
 (2)本校生徒の研究発表テーマ                              デオ会議システムの向こう側にいる聴衆を想定し
   本校高校 2 年生 9 名から、生物2件、数学1件、         てゆっくり聞き取りやすい英語を心がけたり、目
 社会科学1件の研究発表が行われた。テーマは以             線をカメラに向けて身振り手振りを通常よりも大
 下の通りである。                                         きくしたりするような指導が行われた。今回の新
 ・Body color change of aphids(Biology)                 型コロナウイルス感染拡大により、オンライン会
 ・An Area Formula of Convex Regions on Hyperbolic        議システムによる教育活動が世界的に広まってお
 Plane(Math)                                            り、オンラインでの交流は今後ますます活発にな
 ・Light Attracts Daphnia(Biology)                      っていくと考えられる。本プログラムを通して、
 ・Educational inequalities that COVID-19 tells us        生徒はオンラインでも活用できるコミュニケーシ
 (Social Sciences)                                      ョン能力を身につけることができたと考えられる。
                                                                           (文責:理科・宇田川 麻由)
 
 
                                                     38
 e.他SSH校プログラムへの参加                        それぞれが身近な現実場面から課題を見いだす形
 (名古屋大附属高SSH)                              式に変更された。本校から参加した 2 チームは,
 1. 仮説                                               それぞれ「お釣りの枚数の最適化」 「クラス替えで
   今年度,名古屋大学教育学部附属高等学校 SSH 重       知り合える人数の期待値」をテーマに設定した。
 点枠企画「アメリカで数学をしませんか」に連携校          前者のチームは,生徒 4 人がそれぞれの地元商
 として参加した。本校としての参加は 2018 年度に        店街で調べてきた 600 個近い商品の価格データを
 続き 2 回目となる。                                   もとに,コンピュータによって「貨幣の構成がい
   この企画は,全国公募から 1st ステージ 12 チーム     くらであれば,お釣りの受け渡し枚数が最も少な
 → 2nd ステージ 8 チーム→ 3rd ステージ 4 チームが    くすむか」を考えた。その結果, 「五円玉を六円玉
 選抜されていくチーム対抗コンテスト型の企画で,        に変えた方がお釣りのやりとりが少ない」 「五十円
 3rd ステージでは米国でのフィールドワーク,およ        玉は七十円玉に変えた方が少ない」などの不思議
 び数学的課題の協同解決が目標とされている。            な結果が出たという。
   同学年の全国の高校生とチーム対抗で競うこと            後者のチームは,「クラス替えで重視することは
 で,参加生徒の興味・関心をさらに喚起し,本校で        何か」ということを学校の教員へインタビュー調
 の数学課題研究の推進役にもなってくれることが          査し,そのなかから「卒業までに同じクラスにな
 期待できる。今年度は情勢の変化により,オンライ        ったことのある生徒をなるべく増やすには」とい
 ンセッションによる開催進行となっているが,現時        うテーマを数学的に考察していた。例えば,3 ク
 点での本校参加生徒の様子について報告する。            ラスで 3 年間クラス替えを行うと,学年全体で考
 2. 実施概要                                           えられる知り合い関係の総数の 9 分の 7 までを成
 《公募から1st,2nd ステージへ》                       立させることができるという。こういった考察を
   4 月に公募問題が発表され,  本校からは新高校 1      一般の m クラス n 年間で行っていた。
 年生 2 チーム(1 チーム 4 名構成)が応募した。          各チームの発表審査はオンラインポスターセッ
 与えられた数学の課題に対しレポートを作成し,          ションの形式で 8 月 29 日(土)に行われた。こ
 この内容によって次のステージに進むチームが選          の時点では他校の内容の発表は聞くことができな
 考されるというものであった。                          かったが,2 チームとも次のステージに進出する
   結果は 2 チームとも次のステージへの進出がき         ことが決まり,次のステージの中で各校生徒の研
 まり,例年は 6 月に選抜されたチームによって 1st       究を知ることができた。
 ステージが行われるが,本年はそれがかなわず,          《自己成長ステージ,3rd ステージ》
 8 月に 1st ステージと 2nd ステージを合体する形          11 月から全 8 回の計画で,本校を含む選抜され
 で全国 14 チームによるオンラインセッションが          た 4 校(名古屋大附属,筑波大駒場,金沢大附属,
 行われることになった。                                三重県立四日市)6 チームが英語による数学のプ
 《1st ステージ》                                      レゼンテーションの練習や研究内容の英訳などに
   8 月 1 日(土)2 日(日)の 2 日間にわたって,      取り組む「自己成長ステージ」が現在実施されて
 Zoom によるオンラインセッションによって 1st           いる。この後,3 月には米国現地校とのオンライ
 ステージが行われた。1st ステージでは,名古屋          ン研究交流なども予定されている。
 大学の教員による数学のレクチャーと,それぞれ          3. 検証
 のレクチャーに対応するチームでの課題解決が 4            このプログラムでは,名古屋大学の留学生をま
 本実施された。本校では,まだ校内での土休日の          じえた英語でのセッションなど,参加生徒にとっ
 活動が再開していない状況であったため,2 チー          ては通常の本校の教育活動のなかでは得られない
 ム 8 人の生徒は,それぞれの自宅から Zoom セッ         ような経験ができている。またあわせて,本企画
 ションに参加することになった。生徒はチームご          への参加を通し,生徒たちは研究内容の深め方の
 とにそれぞれ,本校で普段用いている G Suite for        面でも,プレゼンテーションスキルの面でも実践
 Education の機能(Jamboard と画面共有,ドキ           的な指導を受けることができた。事業は現在進行
 ュメントの共同編集)を使うなどして,慣れない          形でいまも続いており,参加生徒の感想などを本
 ながらも工夫してオンラインでの協同課題解決を          紙面で取り上げて報告することはできないが,こ
 行っていた。                                          れらの成果が本校での次年度の生徒研究発表活動
 《2nd ステージ》                                      のさらなる充実にもつながるものと確信している。
   例年であれば名古屋地区の商店街フィールドワ                           (文責 数学科 須藤 雄生)
 ークが行われる 2nd ステージは,  各チーム単位で,
 
                                                  39
                                                         『Markov Algorithm での整式の微分』
 f.全国数学生徒研究発表会(マスフェスタ)
                                                         『不変ゲームの確率の導入について』
 1仮説
   全国数学生徒研究発表会は,全国のSSH校を
 対象とし,数学に興味・関心をもつ高校生たちが
 集まり,研究成果を発表する場である。互いの研
 究をポスター発表等を通して知り,議論すること
 によって研究を深めていくことが期待できる。ま
 た,多くの人と数学的コミュニケーションを中心
 とした交流が期待できる。
 
 
 
 
                                                         新型コロナウイルスの完成拡大に伴い,軒並み
                                                       対面での発表の場がなくなった。開催してもオン
                                                       ラインでの実施となる中,現地で発表ができる大
                                                       変貴重な機会となった。感染拡大の第 3 波の影響
                                                       により,参加予定の約半数の学校が参加取りやめ
                                                       をする中,14 校,延べ 26 本のポスター発表が行
                                                       われた。生徒の研究の中には予備知識が必要なも
                                                       のもあり,初見では内容がはいりにくいものでも
 2実施概要
                                                       あったため,高校生からは敬遠されていたように
   日程:2020 年 12 月 26 日(土)
                                                       感じた。生徒は言葉遣いに注意したり,具体例を
   会場:大阪府立大手前高等学校(大阪市)
                                                       挙げるなどして,工夫して発表をし,自身の研究
   時程:12:30受付
                                                       を伝えた。そうした中でも,指導助言の大学の先
           13:30ポスター発表1
                                                       生方をはじめ,他校の引率の教員,興味を持った
           14:05ポスター発表2
                                                       高校生が質問をしてくれたことで,生徒は今後の
           14:50ポスター発表3
                                                       研究方針が見えたようだった。
           15:25ポスター発表4
           16:10全体会・講評
                                                       3検証
                                                         発表の機会が無くなる中,現地で発表できたこ
                                                       と,他校の取り組みや研究を見学できたことで生
                                                       徒は充実した時間を過ごしているようだった。各
                                                       発表に対し,生徒は積極的に質問をして議論を交
                                                       わしていた。
                                                                 「今後,研究をがんばろうと思いまし
                                                       た」と感想を言っていたことが何よりの収穫で,
                                                       研究を深めていくには多くの人と数学的な交流が
                                                       必要であることを改めて感じさせられた。研究の
                                                       深化,数学的コミュニケーションを中心とした交
                                                       流の観点からこのような外部発表の意義は大変大
   本校の参加者は全員が高 2 課題研究数学選択生
                                                       きいものであったといえるだろう。
 徒で,ポスター発表 2 名,参観 4 名であった。発
                                                                         (文責 数学科 薄井裕樹)
 表タイトルは次の通り。
 
 
 
 
                                                  40
 g. SSH プレゼンワークショップ                          れていく。生徒は自分の研究の原稿を読むのに必
                                                        死だが、聴衆に事前にその研究についての予備知
 1.仮説                                               識が全くないことが意識されていない。折角説明
   本校生徒は理科や数学などで高い能力を示して           を聞いても、取りつく島がないことがしばしばあ
 いるが,各種研究発表でそれらを発揮するには,           る。今回は、ゆっくりとクリアにプレゼンすべき
 英語力とともに効果的にわかりやすく伝える力が           項目として以下の点を挙げられた:
 必要である。この目的のため,本校では専門家に           1    Numbers
 よる指導を行っている。ワークショップに参加す           2    Action Verbs
 ることで,生徒のプレゼン技術と自信の両面をさ           3 Descriptive expressions
 らに伸ばすことができると考えられる。                       これらはプレゼンの資料として必ず伝えたい要
                                                        素を含んでおり、シンプルなアドバイスだが、焦
 2.方法                                               って早口になり、原稿に目を落としがちになる生
 2.1プレゼンテーション・ワークショップ                徒にとって、非常に有効である。
   「日本科学未来館」所属の Vierheller 夫妻を招
 き,‘Learn to Present’と題されるプレゼン講座を,
 今年も3回開催した。ただし、今年度はコロナ禍
 の下、全てオンラインでのプレゼン作法について
 の講座であった。
 1 第1回(7 月 4 日/中3・高1希望生徒対象)
 「プレゼンテーション能力向上ワークショップ」
   20名程度参加。
 2 第2回(12 月 7 日/台中一中との研究交流生
    徒対象)
          「台湾プレゼン 4 チームの英語ブラッ
    シュアップ」12名参加。
 3 第3回(3 月 6 日/中1・中2希望生徒)ビギ                      プレゼンのコツを伝授する
   ナーズ用。スピーチの声の強弱,イントネーシ
   ョン,アイコンタクト,身振りなどを実際に体           3.検証
   験しながら細かく教わっていく。                           今回の講座からの感想をいくつか挙げる:
                                                        ・どのようなプロセスで話すのか、どこで単語を
                                                        区切るかなどの指摘がプレゼンの上で非常に役に
                                                        立った。
                                                        ・聞き手を意識して発表できるようになった。
                                                        ・発表する時の抑揚の付け方やオンライン発表な
                                                        らではのカメラに対する目・体の使い方が学べた
                                                        点。
                                                        ・改善するにはどのようなことをすれば良いかも
                                                        のすごく具体的に教えてくれたのがよかったです。
                                                        ・発音に問題があることを指摘されたこと。
  Mr & Mrs Vierheller による LL 教室からの講習          ・ジェスチャーの方法や,強調すべき単語など,
                                                        話すときに注意すべきポイントを一つずつ挙げて
 2.2 第 2 回プレゼン指導詳細                          くださったのがよかった
   Vierheller 氏は、事前にコメント用にダブル・ス            まさに講座の意味を言い表したものである。
 ペースのプレゼン原稿を提出させ、各生徒が発表                               (文責:英語科・八宮孝夫)
 すると同時に、表現のわかりにくい部分に赤を入
 
                                                   41
 h. 課題研究「サイエンス・ダイアログ」               マばかりではなかったが,生徒各自の興味関心を
                                                      見事に表現したプレゼンテーションであった。以
 1.仮説                                             下にそのタイトルを示す。
   英語で行う効果的なプレゼンテーションには             ・Introduction to “V-tuber”
 「論理的な構成・話し方・発表資料(スライド等)         ・Touhou Project
 の作成法」などが含まれるが,これらを学ぶため           ・Welcome to the City Pop World
 には,具体的にお手本となる講義を聴講し,自ら           ・Subways in Tokyo
 も英語プレゼンテーションを実際に経験する必要           今年度の講座シラバスは右表の通りである。
 がある。本校では,外国人講師による英語での専         表 1. Science Dialogue & D.I.Y.年間計画
 門的な研究内容の講義を聴講するとともに,生徒         Date        Speaker            Topic
 自らが発表したい研究テーマを決定し,リハーサ         1 May 28          ―           全体オリエンテーション
 ルで得たフィードバックをもとにその内容を修正         2 Sept. 5         ―           My Favorite TED Talk
 し,最終的に研究発表の機会を設けることで,生         3 Oct. 17   Dr. Hernandez      A Journey to the world of
 徒たちの英語プレゼンテーション能力を醸成する                     (Philippines)      ticks
 機会を設けることが可能であると考えた。               4 Nov. 14   Dr. Baltieri       Computer Science
 2.方法                                                         (Italy)
 2.1 サイエンス・ダイアログの利用                     5 Dec. 7    Dr. Sun            Effect of dioxin exposure on
   日本学術振興会が提供している「サイエンス・                     (China)            human health
 ダイアログ」プログラムを利用した。これは,日         6 Jan. 9    リハーサル1        English Room 講師陣による
 本の研究機関に滞在中の外国人若手研究者の中高                                        プレゼン指導(Zoom)
 への派遣を受け,その方の出身国や研究分野に関         7 Jan. 16   リハーサル2        English Room 講師陣による
 する講義を英語で受けるというもの。例年は土曜                                        プレゼン指導(Zoom)
 日に実施する中3テーマ学習と高2課題研究の受         8 Jan. 23   受講生徒自身       課題研究 Open(下級生・ER
 講者を対象にしているが,今年度は高校2年生の                     のプレゼン         講師を聴衆に迎えて)
 選択者4名での実施となった。                         9 March 6         ―           講座のまとめ
 2.2 高校2年生の課題研究
                                                      3.検証
   コロナ禍で実際に講師に来校して講義を行って
                                                        1月下旬に実施した発表会では,4名の発表者
 頂くのは2学期から,3名の外国人研究者による
                                                      の持ち時間が1人 30 分と長めの設定であったが,
 講義の機会のうち,2名は来校して対面での実施,
                                                      それぞれの発表者による 10 分15 分の英語プレ
 1名はオンラインでの実施となった。海外の若手
                                                      ゼンテーションの後,English Room 講師陣や聴講
 研究者から自国の文化や専門分野について英語に
                                                      していた下級生からも非常に活発に質問があり,
 よる講義を聴講し,発表内容のみならず発表の仕
                                                      発表されたテーマについての理解をさらに掘り下
 方にも注目して,内容をわかりやすく伝える英語
                                                      げるのには丁度良い時間配分だった。また,ゲス
 プレゼンテーション法を習得できるよう留意した。
                                                      トとして現在シンガポール在住の起業家の方に特
   講義と並行して,生徒一人一人が各自テーマを
                                                      別講演を実施して頂いたことも,発表会の充実に
 設定し,研究発表として英語でのプレゼンテーシ
                                                      つながったことが,下級生のアンケート結果から
 ョンを実施する機会を設けた。研究発表は対面で
                                                      も読み取れた。
 はなく Zoom を活用してのオンラインで実施する
                                                        課題研究「サイエンス・ダイアログ」は,英語
 ことにしたが,1月にリハーサルの機会を2回ほ
                                                      プレゼンテーション力を醸成する上で有効的な機
 ど設け,本校で実施している English Room 講座
                                                      会を提供できているのは間違いない。特に,今年
 (大学院留学生による英語コーチング)を活用し,
                                                      度はコロナの影響もあり,オンライン・ツールの
 指導を複数回に渡って受けた。最終的には 1 月下
                                                      活用法についても知見が得られた1年間であった。
 旬に中3・高1・English Room 講師陣を聴衆に迎
                                                      その知見を今後に活かしたい。
 えての発表会を実施した。必ずしも科学的なテー
                                                                                 (文責:英語科 須田智之)
                                                 42
 4 探究型学習システムの開発と                          部業者への実施委託を試みた。しかし,SSH 事業
    他校への発信・共有                                 での経費支援にオンライン研修会の外部委託経費
 a.SSH 数学科教員研修会(オンライン)                  は認められず,SSH 事業としての経費支援は,配
     本校数学科では,SSH 事業の取り組みの根幹          信用 PC と関連周辺機器の購入に限られることに
  を教材開発ととらえ,教科で開発した教材・カリ         なった。一方,教師教育に関する事業として大学
  キュラムを公開・発信するため,これまでも隔年         より予算を取り付け,研修会自体は 300 拠点接続
  で全国 SSH 数学科教員研修会を主催してきた。          規模の外部業者(株式会社ブイキューブ)委託運
  近年では 200 名をこえる数学科教員・数学教育          営にて,ブイキューブセミナーを利用した Web
  参加者が集まる研修会に成長し,前回(2018 年)        セミナーとして実施することができた。
  は初めて本校ではなく大学の大講義室(筑波大
  学東京キャンパス)を利用した。今年はちょうど
  その実施年度にあたり,今までどおり資料冊子
  の作成,発表者・助言者の手配を中心に,SSH の
  企画として準備を進めてきたが,これだけ大規
  模な会となったこともあり,昨今の情勢に鑑み
  て対面実施を見送ることにし,オンラインでの
  開催に切り替えることとした。
                                                                         <配信画面>
 1.SSH 数学科教員オンライン研修会                      また,これまでの数学科教員研修会で配布し
 1仮説                                                 てきた開発教材集をすべて電子化し,URL および
   SSH 校の『数学』分野の取り組み事例とともに,        パスワードを周知することで,紹介した教材を
 生徒の知的な興味関心を刺激し,数学的思考力を          PDF ファイル・Excel ファイルで公開し,広く共
 育成するような具体的教材について報告・協議す          有を図ることを目指した。
 ることは,SSH 校及びそれ以外の学校の数学教育            なお,ここで紹介したこれまでの開発教材は,
 に資するものと考える。                                本校公式 HP に公開している。
 
 
 2実施概要
 日程:令和 2 年 12 月 6 日(日)
 会場:本校 図書スペースよりライブ配信
 参加者:中高数学科教諭,大学院生,本校教員
                         延べ303拠点同時接続
 
 
 
                                                                     <現場の様子2>
                                                       開催時程:
                                                       ■ 開会行事 13:0013:05
                                                           本校副校長 町田 多加志     挨拶
                                                       ■ SSH 教材等についての報告と研究協議
                <現場の様子1>                                                   13:0516:45
   本研修会では,前述のとおり参加者が 200 名規         1. 都立日比谷高等学校
 模であること(オンラインではさらなる増加もあ                  発表者 荻野 大吾 先生
 りえるとの見通し)から,ZOOM や Google Meet           2. 市川高等学校
 を用いた手作りの研修会では,受講者へのサポー                  発表者 秋葉 邦彦 先生
 トが本校数学科教員だけで賄えないと判断し,外
 
                                                  43
 3. 豊島岡女子学園中学校・高等学校                        今回の Web セミナーシステムは,PC だけでな
         発表者 根岸 靖 先生                            くスマートフォンのブラウザから参加することも
 4. 芝浦工業大学柏中学高等学校                          可能で,参加者へのアンケート結果には,地方か
         発表者 古宇田 大介 先生                        らでも参加できる,育児休業中でも参加できる等
 5. 筑波大学附属駒場中高I                               のオンライン研修会特有のメリットが寄せられた。
   「筑波大学附属駒場中・高等学校の数学科 SSH           また,回線不具合による接続不良も何件かあった
     の取組」 発表者 須田 学                            が,業者との連携により余裕をもって対応できた
 6. 筑波大学附属駒場中高I                               ことも,本実施形態のメリットと言えるだろう。
   「筑波大学附属駒場中・高等学校の数学科 SSH           質疑は付属のテキストチャットシステムから受け
     の取組」 発表者 須藤 雄生                          付け,それらを配信会場の本校で登壇者をまじえ
                                                        て協議する形式をとったが,これについても「一
 ■ 全体講評および指導・助言 16:4516:55                 般的なオンラインミーティングのように声が入る
     芝浦工業大学 牧下 英世 先生                        心配もなく,個人的にも質問が気軽に送りやすい」
     筑波大学 Scott Carnahan 先生                       という感想があった。一方,参加者同士はそれぞ
                                                        れのテキストチャットの内容が見られない形態を
 ■ 閉会行事 16:5517:00                                 選択したため,フロアにあたる他校参加者の生の
   登壇者に関しても,従前は全国の SSH 校に依頼          意見も知りたかったという感想もあった。以下は
 していたが,今回は登壇者のみ本校に来校しても           アンケート結果の抜粋である。
 らう形態を選択し,東京近郊の SSH 校に依頼する
 こととした。結果,東京都立日比谷高等学校,豊           ・例年とは異なる方式でありましたが、筑波大附
 島岡女子学園中学高等学校,市川中学高等学校,            属駒場高校の先生方の御尽力により大変スムー
 芝浦工業大学柏中学高等学校の 4 校の協力を得た。         ズでした。この形式であれば、諸条件より多くの
 本校からの 2 報とあわせて,研修会では計 6 報の          先生方の参加がきたいでき、SSH 校のみならず、
 教材実践報告を行った。また助言者には,芝浦工            多くの学校の数学的活動,探究活動の充実に繋
 業大学の牧下英世教授,筑波大学の Scott Carnahan         がるのではないでしょうか。
 准教授を迎えた。                                       ・このような形でも会を実施していただけた筑駒
   申込は本校公式 Web サイトより受け付け,参加           の先生方のご尽力に感謝しかありません。
 申込者全員に本校数学科 SSH 教材集(公式 Web サ         ・ウィズコロナの時代において、オンラインと対
 イトにて 2017 年より限定公開中)へのアクセスパ          面の併用でこのような会を開催していただける
 スワードを送付した。限定公開サイトでは,当日            とありがたい。今後、更に学校規模が縮小する中、
 の発表資料が,これまでに本校が開発した教材の            県外出張の旅費も削られていくため、対面では
 PDF ファイルとともに見られるようにした。                参加できない可能性が高いので。
 
 
 3検証                                                    オンライン研修会,対面による研修会,それぞ
   事前に全国 30 都道府県から 174 名の申込があ          れに長所・短所はあろうことが考えられるが,ち
 り,当日は延べ 303 件の視聴接続があった。参加          ょうど本研修会が実践の仕掛けよりも教材の内容
 者属性は以下のグラフの通りである。                     にこだわって連綿と続いているように,研修会に
                                                        ついても内容の充実を第一に考え,それをもとに
                                                        よりよい実施形態を模索していきたい。
                                                                        (文責 数学科 三井田裕樹)
 
 
 
 
                                                   44
 b.教育研究会(理科の取り組み)                     II.本校理科のオンライン学習支援における探究
                                                      型学習について
 1.仮説                                             「物理 オンラインの取り組み」
   長年本校で実施している教育研究会は、SSH 事                              発表者 今和泉 卓也
 業で開発した探究型教育システムを他校に発信・         「オンラインで育む?探究スキル」
 共有する場として、非常に重要な役割を担ってき                              発表者 内山 智枝子
 ている。特に今年度は、新型コロナウイルス感染         III. 講演
 拡大防止のため初のオンライン開催となり、より         「なぜ、今、
                                                                「探究」が求められているのか −こ
 一層全国から参加しやすくなった。本研究会は理         れからの理科教育を考える−」
 科教育における教員研修の場として資することが         文部科学省初等中等教育局視学官 藤枝 秀樹氏
 期待される。
 
 
 2.実施概要
 日時:2020 年 11 月 21 日(土)10:0014:30
 会場:本校大会議室よりライブ配信(Zoom)
 参加申込者(理科)
                 :全国の中高理科教員、教育委
 員会、大学教員、大学生、本校教員等 計 98 名
 アンケート(理科)
                 :53 名回答
 2.1 教育研究会について                                           <教育研究会ウェビナー配信画面>
 
   今年度の教育研究会は、「
                         (コロナウイルスに負         2.3 公開授業
 けない)主体的で探究的な深い学びをめざして」          (1)中学 2 年「結晶を見てみよう」
 と題して実施し、本校では初のオンライン開催と          光の性質および結晶の不思議さへの興味関心を
 なった。例年、各教科隔年で発表を行っており、         喚起するため、
                                                                  塩化ナトリウム、
                                                                                アスコルビン酸、
 今年度は理科・社会科・英語科より発表した。例         グルタミン酸モノナトリウム、バニリンといった
 年の実地開催より地方からの申し込みが多く、理         様々な形状の結晶を偏光顕微鏡下て観察させた。
 科も関西や九州などからもご参加いただいた。オ         顕微鏡下で結晶が成長していくさまや偏光板を回
 ンライン会議システムとして Zoom ウェビナーを         転させると結晶の色が変化するさまを見て、探究
 使用し、午前は公開授業、午後は研究協議会とい         の基礎となる生徒たちの興味関心が引き出されて
 う流れで実施した。以降、理科で実施した教育研         いた。
 究会での取組みについて述べる。
 2.2 開催時程
 10:0010:15 開会行事
        本校校長 北村 豊 挨拶
 10:1511:30 公開授業(映像配信)
        中学 2 年 化学分野/高校 2 年 生物分野
 12:0013:00 休憩
 13:0014:30 研究協議会                                          <公開授業(中学・化学分野)>
 
 I.公開授業をめぐって                                 (2)高校 2 年「PCR 法でコメの形質の違いを遺伝
 中学 2 年「結晶を見てみよう」                        子から探る」
                  授業者 吉田 哲也                      遺伝的変異による形質の変化を扱う教材として、
 高校 2 年「PCR 法でコメの形質の違いを遺伝子か        イネ Wx 遺伝子を取り上げ、アミロース含量の異
 ら探る」         授業者 宇田川 麻由                  なる4種類のコメの遺伝子を PCR 法によって判
 講評                                                 別する実験を紹介した。本教材はこれまでの SSH
 文部科学省初等中等教育局視学官 藤枝 秀樹氏           機材を活用して本校生物で開発しているものであ
 
                                                 45
 る。Wx 遺伝子の様々な変異が、4種類のコメのも         できる有意義なものであったという意見を多数い
 ち性、うるち性、低アミロース性といった様々な          ただいた。以下はアンケートの抜粋である。
 形質の違いをどのように生み出していたのかにつ          ・化学構造を平面ではなく立体的に捉えさせる手
 いて生徒に考察させた。2時間連続の授業2回分          法として大変参考になりました。
 を撮影し、それを約 50 分の動画に編集したものを        ・化学実験について、頭では分かっていても、分
 公開した。                                            子が立体であることの確認に非常に有効な実験だ
                                                       と思います。感動は、次の学びにつながります。
                                                       ・次の段階を見据えての授業を行っており、生徒
                                                       の力を最大限に伸ばすためには学年・校種を超え
                                                       ての内容を取り入れていくことは必要なことであ
                                                       ると考えさせられました。結晶の授業では無機物
                                                       の結晶しか見せていませんでしたが、有機物を見
                                                       せるのも広い視点で結晶について考えることがで
                                                       きるなと思いました。授業で取り入れさせて頂き
            <公開授業(高校・生物分野)>
                                                       たいと思います。
 2.4 研究協議会
                                                       ・PCR 検査を実験でしたことがありませんでした
  (1)本校理科のオンライン学習支援における探究
                                                       が、温度管理をすることで実施可能であること、
 型学習について
                                                       そのための機器も動画からすることができました。
   今年度1学期の休校期間中におけるオンライン
                                                       また、ワークシートにある〈よく確認して議論を
 学習で実施した、中1生物分野、高3物理分野で
                                                       つめてほしい部分〉に、深い学びにつなげる問い
 の探究型学習の取り組みについて紹介した。いず
                                                       を知ることができました。
 れも生徒に自宅で取り組ませる実験を取り入れた
                                                       ・生徒の興味関心を引く内容であったことに加え、
 探究型学習で、この授業で学んだことを発展さ
                                                       先生方の教材研究、授業準備の緻密さには多くを
 せ、自由研究コンクール「科学の芽」賞に応募し
                                                       学ぶことができた。
 て努力賞を受賞した生徒も出た。
                                                       ・オンラインでの学習も紹介していただき、学ぶ
                                                       ことの多い研修でした。特に探究のサイクルを意
                                                       識した授業は今後必須になると思うので大変参考
                                                       になりました。
                                                       ・オンラインでの取り組み、
                                                                               「探究」の進め方につ
                                                       いて、実践と指導要領の視点で学ぶことができま
                                                       した。
                                                       ・どのように資質・能力をつけていくのかだけで
      <探究型学習について(中学・生物分野)>
                                                       なく、その評価を行うためのヒントをもらいまし
 (2)講演「なぜ、今、
                  「探究」が求められているの
                                                       た。次年度から始まる新学習指導要領の準備にお
 か −これからの理科教育を考える−」
                                                       いて、本校での課題解決に役立てそうです。
   文部科学省の藤枝先生に公開授業の助言と上記
                                                        オンライン開催によって遠方からの参加や部分
 タイトルでご講演いただいた。本校で進めている
                                                       的な参加が気軽になった一方、ウェビナーで参加
 探究型学習の学習指導要領上における意義づけや、
                                                       者同士が見えず意見交換しにくかったとの意見も
 評価、理数探究などについても触れ、理科教育で
                                                       あった。今後も新たな形式での発信を模索してい
 の探究の重要性を示唆していただいた。
                                                       きたい。
 3.検証
   参加者アンケートでは、公開授業、協議会とも
                                                                          (文責:理科 宇田川麻由)
 に 6 割以上の方に「大変参考になった」とご回答
 いただいた。本研修会がご自身の取り組みに還元
 
 
                                                  46
                                                                                Q5 自由記述(抜粋)
 IV.実施の効果とその評価
                                                                                《M》
 a. 講演会・実施講座生徒アンケート                                              ・カメラの画質が悪く解説をしっかり聞くことが
                                                                                できなくて残念でした。
 1.仮説                                                                       ・あまりにレベルが高かった。まず高校数学をや
   本年度も,
           「国際社会に貢献する科学者・技術者                                   らなければいけないと思った
 の育成をめざした探究型学習システムの構築と教                                   ・全体的に興味深い内容が多かった
 材開発」におけるプログラムとして実施した講座                                   ・予想以上に難しかった
 について,生徒にどの程度効果があったかを評価                                   ・面白かったです。全部の問題の解説を聞きたか
 するために,ある程度項目をそろえたアンケート                                   ったです。
 を以前より実施している。今年度実施した分(本                                   《E》
 報告書作成時点まで)についてのアンケート結果                                   ・zoom を使った新しい形の授業は、とても魅力的で
 と自由記述(生徒の感想など)の一部を挙げた。                                   楽しめる内容だった。
 2.方法                                                                       ・英語でのプレゼンテーションだけでなく、日本語
   本年度は計画変更にともない数は少なくなった                                   で行うオンラインの授業等にも活かせるような内容
 が,
   以下の講演会・講座にてアンケートを行った。                                   で楽しかったです。
 <数学科>                                                                     ・スピーチにおいて意識すべきことがよく分かった
 10 月 12 日(土)
                「数学オリンピックワークショッ                                  ・オンラインだからこそ、ゆっくりカメラを見て話
 プ」(以下 M と表記)                                                            すのが大事だと言うことはこれからしばらく大切に
 <英語科>                                                                     なりそうです。実践していきたいと思います。
 7 月 4 日(土)
              「英語プレゼンテーションワークシ                                  ・「オンライン」に特化した講演というのが面白かっ
 ョップ」
       (以下 E と表記)                                                        た。ただ、普通の(オフラインの)プレゼンについても
 調査結果                                                                       学んでみたいと思った。
  Q1   講座・講演会の内容を理解できたか (%)                                ・全部英語だったが意外と内容を理解できた。また
                        よく     まあ          あまり     理解                  先生の陽気さがとても面白かった。
            回答数    理解       理解        理解でき     できな    無答
                      できた     できた      なかった     かった
 
    M        16       6.3        50.0        31.3         12.5      0.0         3.検証
    E        31       77.4       22.6        0.0           0.0      0.0           例年,特別講座に参加する生徒は自由参加形態
 
  Q2   講座を受講した動機(複数可) (%)
                                                                                である生徒が多く,受講が必修であると答える生
                     受講   おもしろ 役立ち      講師に    友人に   その
                                                                                徒はごくわずかである。ここに掲載した 2 つのワ
         回答数
                     必修     そう     そう      ひかれ    誘われ   他
                                                                                ークショップは前年まで対面でやっていた企画の
    M       16       0.0       93.8 75.0 18.8 12.5                  0.0
                                                                                オンライン版であるため,連続で参加した生徒か
    E       31       6.5       80.6 83.9 12.9                9.7    6.5
                                                                                らは,内容とは別にオンラインという実施形態へ
  Q3   講座の内容は期待通りだったか (%)                                    の意見も多かった。事実,数学オリンピックワー
                                          ほぼ     少し                         クショップに参加した 75%の生徒が「出来るなら
                     期待      期待                       期待
         回答数                           期待   期待               無答
                     以上      通り                     はずれ
                                          通り   はずれ                         本企画は対面でやってほしい」と答えている。ま
    M       16       50.0 18.8 18.8 12.5                     0.0    0.0         た数学オリンピックに関しては,中学生向けの大
    E       31       71.0 29.0 0.0 0.0                       0.0    0.0         会が中止になった関係で,ワークショップの内容
                                                                                を高校生向けにしぼったことも中学生には難解に
  Q4   講座内容は自分の学習に役立ったか (%)
                                                                                感じられたと思われる。一方,オンラインによっ
                                              あまり
                     大いに                          役立た
            参加数
                     役立った
                              役立った      役立た
                                            なかった
                                                     なかった
                                                                    無答        て参加への敷居が下がったという意見も自由記述
    M        16       37.5       43.8        12.5         6.3       0.0         に見られた。今後,生徒の意見も取り入れ,オン
    E        31       58.1       38.7         0.0         0.0       3.2         ライン・対面双方の良さを生かした企画の立案や
                                                                                実施につなげたい。
                                                                                                (文責 研究部・須藤雄生)
 
 
                                                                           47
 b.台湾台中第一高級中学との交流                       A 研究目標の設定             23.1%
    プログラムの評価                                   B 計画通り実験を進めること 30.8%
                                                       C 英語で表現すること         69.2%
 1.仮説                                              D プレゼンのスライド作成     46.2%
   台湾台中第一高級中学(日本の高等学校に相               やはり自分の研究を進めるより、それを英語
 当。以下、台中一中)との交流は、本校の国際交           でいかに表現するか、に苦労したことが分かる。
 流の中心をなすものであり、本年度 12 年目を迎          3実際の研究交流での自分なりの達成度
 えた。例年は現地での研究交流であるから、夜            A 大変よく出来た             15.4%
 市に行くなど文化的な交流もあるが、コロナ禍            B かなりよく出来た           46.2%
 の下、オンラインによる交流となった。現地で            C まあまあよく出来た         30.5%
 の実際の交流とオンライン交流と効果や意識の            D あまりよく出来なかった       0%
 差はあるか気になるところであるが、少なくと              昨年度の同様の項目を見ると、
                                                                                   「大変よく出来
 も端からオンライン交流と心得て志願した生徒            た」が 19%、
                                                                  「わりとよく出来た」が 44%で、
 たちである。例年同様の達成感を示すのではな            ほぼ同じような比率と言える。
 いかと仮説を立てた。                                  4研究交流を通じて得たもの
                                                         まず、この研究交流は自分の成長に役立つか
 2.方法                                              を問うたところ、以下のような結果であった:
 2.1 実施概要                                          A 大いに役立った             46.2%
 ・回答方法:Google Forms                              B かなり役立った             46.2%
 ・回答項目:10 項目(数値・記述)                     C まあまあ役立った             7.7%
 ・回答者:2020 年度台湾派遣生徒 12 名                   ということで、研究交流自体、大成功と言っ
 ・回答期日:事後アンケート、実施後 1 か月。           てよいであろう。その上で、具体的に得たもの
                                                       を以下に挙げる:
 2.2 アンケート項目                                    ・自分の研究だったり思っていることだったり
   アンケートは昨年の調査は、昨年度とは異な            をこれからも発信していければなと思った。
 り、1研究交流とその動機、2研究過程で大変              ・英語のスピーチをできる度量。
 だったこと、3実際の研究交流での自分なりの             ・台中生の学術的な探求姿勢から刺激を受けた。
 達成度、4研究交流を通じて得たもの、という             ・まず、研究テーマについての理解が深められ
 大きな柱を設けた。また、オンライン交流とい            たこと、そして、英語を話す時の体の使い方を
 うことで、その運営面についても質問項目を設            知ることが出来たこと。
 けた。ただ、ここではスペースも限られている            ・英語での説明やスライドで、わかりやすく印
 ので、14について結果を述べたい。                      象的に内容を伝える方法
                                                       ・研究をまずは発表するスキル、そして伝えた
 2.3 結果                                              いことを英語に転じる能力。
 1研究交流の動機については以下の通り:(2 つ
 まで複数回答可)                                       3.検証
 A 海外の生徒との情報交換がしたい    46.2%              感想の中に「オンライン発表というなかなか
 B 自分の研究を海外生徒に発表したい 53.8%             体験できないことを体験できたことで、カメラ
 C 英語を実際の場面で使用してみたい 53.8%             越しに話す難しさを実感した。」というものがあ
 D オンライン交流に関心があった          23.1%        った。今回は、現地での交流はできなかったが、
   当然と言えば当然であるが、研究発表をした            逆に言えば、普段できず、これから主流となる
 い、英語を実際の場面で使用したいという 2 つ           かもしれないオンライン交流が実施できたこと
 が半数以上の動機となった。                            は、今後のことを考えると有意義であった。
 2研究過程で大変だったこと                               (文責:研究部・国際交流担当 八宮孝夫)
 
                                                  48
 c. 国際交流プログラムの評価                               り、面白いと思ったことをすぐに調べられるのは
                                                           とても良いと思った。
 1.仮説
   本年度はコロナ禍の下で、ほとんどのプログラ
 ムが実施不可となり、実施できたのは台中第一高
 級中学(以下、台中一中)とのオンライン交流と
 釜山国際高校の Global Forum へのオンライン参加
 のみであった。本稿では釜山国際高校の Global
 Forum へのオンライン参加について述べる。まず、
 実施したプログラムを紹介する。その後で、参加
 した生徒の感想をあげる。初のオンライン参加で
 刺激を受け、達成感はあったことが予想される。
                                                             サイトにアクセスし、他校の動画を見る
 2.釜山国際高校の Global Forum (online)                  ・どんな形であれ他国と互いに発表しあうという
   Global Forum の実施内容は以下のとおりであ               ことは、学ぶことが本当に多いので、来年以降も
 る:                                                      オンラインでも参加を続けていければ良いと思う。
 ・フォーラム期日:2020 年 11 月 5 日                      ・Global Forum は事前に動画を撮影し、それを相
 ・メインテーマ:Post Pandemic Societies                   互に見合うというオンデマンド形式だったため、
 ・ サ ブ ト ピ ッ ク ス : Technology and Science,        スライドや音声を視聴者にとって見やすく、聞き
   Education, Politics, Health, Economics                  取りやすくする工夫が事前にできた。
 ・プレゼン時間:10 分以内                                 ・韓国の高校生の発表動画では、実際に喋ってい
 →原稿提出 9 月末日、プレゼン・ビデオクリップ             る姿をスライド画面にクロマキー合成しており、
 のサイトへのアップ 10 月 25 日                            より魅力的な発表に見えた。次回以降チャンスが
   まさにコロナ禍ならではのテーマで、その中に              あれば試してみたいと思う。
 さらにサブトピックがあり、本校の参加生徒は
 Education を選択し、コロナ禍での下でオンライ              4.考察とまとめ
 ン授業などに潜む不平等・格差の問題を取り上げ                8 か国という多数の参加だったので、内容もそ
                                                           うだが動画の形式も様々で、参加生徒はその両面
 た。
                                                           で刺激を受けたことがよくわかる。動画なので発
 3.研究発表評価および参加生徒の感想
                                                           表の際に、取り直しや編集で完成形を送ることが
   参加校は主催の韓国はじめ、日本(3 校)
                                       、ヴェ              でき、また 1 度では聞き取れない英語も複数回見
 トナム、ニュージーランド、台湾、インドネシア、            ることで理解が深まるというメリットもあるよう
 スウェーデン、ロシアの 8 か国で、それぞれのサ             だ。
 ブトピックスに合わせて、サイトのコーナーに分                ただ、「交流は、やはりテキストベースでは難
 かれ、ビデオクリップをアップし、Global Week               しい部分もあり、テーマごとにオンライン会議サ
                                                           ービスでリアルタイム交流ができればより深い学
 中に、サイトにアクセスし動画を視聴しながら、
                                                           びができたかと思う」という意見もあり、それを
 わきのコメント欄にコメントや感想、意見を書い
                                                           補う一種の文通サイトである「STORY パルの使い
 ていく。また、釜山国際高校の生徒たちが評価も
                                                           方はよくわからないまま終わってしまった」との
 したようであるが、特に順位というものがついた              声もあった。参加国の時差もあるため、難しい部
 わけではなかった。本校生徒の、参加しての感想              分はあると思うが、やはりライブでのやり取りが
 は以下の通り:                                            あれば、交流しているという実感も刺激も一層強
 ・どの発表も非常にレベルが高く、身振り手振り              くなったのではないかと、コンピュータの画面を
 なども効果的で、自分もプレゼンの練習を積んで              眺めている生徒のわきにいた筆者も思った次第で
                                                           ある。来年度の課題としたい。
 いかなければいけないと強く思わされた。
                                     (動画な
                                                               (文責・研究部国際交流担当 八宮孝夫)
 ので)英語が聞き取れないところを何度も聞いた
 
                                                      49
 d. 卒業生アンケート                                   在学中に参加した SSH プログラムについて,覚え
                                                       ていることや印象深かったこと
 1.仮説                                              ・実際に大学に訪問し,研究室見学ができたこと
   SSH 指定もIV期目をむかえた本校では,20 年近         は非常に良い刺激でした。
 くにわたる研究開発プログラムの蓄積から,社会          ・当時はその有り難みのようなものを理解できな
 で活躍する卒業生がSSH プログラムを経験してい          かったが,大学に進んでから恵まれた環境にいた
 る事例も増えてきた。そこで,一昨年より卒業生          のだということがわかった。
 を対象に,在学中に学んだことが卒業後どのよう          ・物理オリンピックに出場するときに,実験室で
 に生かされているのか,どんな影響を与えたかな          実験したり,
                                                                 いろいろなアドバイスをいただいた。
 どを,自由記述中心に書いてもらうアンケートを          ・医科歯科大の医学部を見学したことが進路選択
 実施している。                                        に影響を与えました。
   これらを通し,中長期的な視点で本校 SSH プロ         ・メディア虎の穴の内容は,大学に入ってからプ
 グラムの効果,あるいは持続的に取り組むべき課          レゼンで助かっています。
 題について見いだせるものと考えられる。                ・プレゼンテーションをする機会は多いが,
                                                                                             「学ぶ」
                                                       機会はそれに比して非常に少ないので,プレゼン
 2.方法                                              テーションのプロから学べたのは非常に有意義だ
   今年度はオンライン実施により,2007 年卒業期         った。
 から 2018 年卒業期まで,あわせて 41 名からの回        ・JMO 受験補助のおかげでより JMO を気軽に受
 答を得た。アンケートの実施,集計には Google           けられるようになり,代表につながったと思う。
 Forms を用いた。
   質問項目は主に,授業や学校行事に関すること,        在学中にもっとあったら良かったと思うSSHプロ
 SSH プログラムに関することの 2 つを設定した。         グラム
 以下,自由記述の主な質問と回答を抄録する。            ・OB 起業家との交流
                                                       ・グループ単位で論文の執筆までできるようなプ
 自分の進路選択に影響を与えた学校の授業や行事,        ログラムがあると,early exposure としては良かっ
 部活動等とその特徴                                    たと思う(当時の自分にはできなかったとは思う
 ・数学の授業では,定量的に本質を捉えること,          が,優秀な同期の人たちには良かったかもと)
 数字の背景にある論理的構造を解明することを教          ・科学コミュニケーション(発表など)のスキル
 わったと感じており,それは企業活動での現場で          を高めるプログラムがより深いかたちで実施され
 も活かされている。                                    ると良いと思います。たとえば,高 2 課題研究の
 ・実験が多く,さらに教科書の内容にとどまらな          成果発表会は毎年開催されていますが,自分とは
 い内容も取り扱っており,知的好奇心を刺激する          異なる教科を選択した生徒や中学生など,専門を
 ものだった。                                          同じとしない聴衆に対して,より効果的に卒業研
 ・受験対策というよりは,物理の本質がわかるよ          究の面白さやワクワク感が伝えられるよう,何ら
 うな授業だった。                                      かのフィードバックが継続的に得られるとありが
 ・知識ではなく,研究というものを見据えた考え          たいです。たとえば音楽祭のように外部講師を呼
 方で生物学を教えてくださった。                        び,評価と講評をいただくだけでも,良い緊張感
 ・保健体育の授業で,競技パフォーマンスの側面          が得られると思います。
 以外の保健体育の価値を明確に教えてくれた。            ・サイエンスとビジネスは,以前よりますます結
 ・行事(文化祭)でのサインシステム計画や動線          びつきが強くなっていると思う。SSH は勉強が好
 の設計など,来場者への情報伝達を考えるという          きな人がいく,というイメージだったが,例えば
 経験が進路選択に影響を与えている。                    運動部系の人の参加を増やすには,よりビジネス
                                                       に接点を持った形でのサイエンスプログラムを出
                                                       していくのもいいのではないか。
 
                                                  50
 現在の自分の仕事や研究に役立っている本校在学         たりという利点は多くあるため可能ならば維持す
 時の経験                                             る事が望ましいと思う。
 ・筑波大学の研究室訪問,及び高校二年次の課題
 研究は,研究職という自分の現在の職業を選択す         後輩のため,保護者・教員・学校・国などへ要望
 る際の,大きな要因となりました。高校の時から         したいこと
 研究とはどのようなものか,実体験することがで         ・筑駒の,先取り学習するのではなく深く掘り下
 きたのは,今の自分の研究哲学形成にも大きく影         げ,自由な発想を大切にする授業・校風を今後も
 響しました。                                         大切にしていただけると嬉しいです。
 ・基本的な考え方や物事への取り組み方。SSH 関         ・税金で「エリート教育」を行っている,という
 連に限らず文化祭など各行事に取り組む際の経験         ような短絡的な理解に基づく誤解を招くことは,
 が現在も生きていると思う。                           避けなければなりません。
                                                                            筑駒のSSH 教育により,
 ・
 「ともに生きる」でも SSH の支援をいただいて          日本や世界の科学技術界をリードする人材を輩出
 いたと記憶しているが,この場で得た障害科学に         していること,科学技術を専門としない職種にも
 関する経験は,自分の研究活動の一つの軸となっ         科学技術に精通した人材を送りつづけていること,
 ている。                                             これらによる波及効果などなど,しっかりと発信
 ・基本的な考え方や物事への取り組み方。SSH 関         することが大切だと思います。卒業生も筑駒アカ
 連に限らず文化祭など各行事に取り組む際の経験         デメイアのようなイベントに講師として招聘し,
 が現在も生きていると思う。                           SSH の恩恵を受けた人がキャリアを通じて社会貢
 ・何かをやらせるのではなく,自分で興味を持っ         献に取り組む仕組みなども検討してもよいかもし
 たことを追究させてくれるような経験が多かった         れません。国には,筑駒の SSH 教育を予算などの
 と思います。特に,研究者にはこのような姿勢が         面で引き続きサポートしていただきたいです。
 求められますが,このような機会はなかなか自分         ・筑駒生が様々な知見をえて,様々なことに挑戦
 では作れない・体験できないので,非常に貴重な         しつづけられる環境をどうか残しつづけてほしい。
 経験だったと思います。
                                                      3.検証
 本校はこれからもSSHを続けた方が良いと思うか            今回のアンケート結果を通して,卒業生は本校
 ・中学高校のうちに幅広い範囲に興味を持てるよ         の SSH 事業を,概ね SSH 指定前からの本校独自の
 うな良質なきっかけが数多く提供されていること         伝統ある取組を継承しながら,それらにより厚み
 は非常に素晴らしいことだと思う。                     や深まりを与えるもの,というとらえ方をしてい
 ・自分も含め,多くの筑駒卒の生物研究者の生物         ることがうかがえた。特に SSH の枠組みでの支援
 学を志した理由が(SSH によって支えられた)筑駒        により,予算面での充実や,外部機関とのつなが
 時代にある気がするから。                             りが深まったというところに恩恵を感じている様
 ・高校で大学の教養課程レベルの経験が得られた         子が目立ち,これらが選択式ではなく自由記述ア
 ことは,美術大学へ進学した私にとっては唯一の         ンケートの回答から複数寄せられたということに
 高等教育であったとさえ言えます。                     注目したい。
                                                                また,
                                                                    本校に在学していたときより,
 ・いわゆる勉学はどこでも出来るし自分の力でも         卒業後に改めてSSH という環境のありがたみを実
 出来ることだとは思うが,SSH の授業で得られる         感したという記述も節々に見られた。
 ものは機会がなければ得られない体験を出来るも           これらのアンケート結果については,本校 SSH
 のだと考える。                                       運営指導委員会でも議題にあげ(詳しくは巻末の
 ・豊かな知的刺激を得られる環境がこれからも続         議事録を参照されたい)
                                                                          ,委員会では自由記述の設
 いてほしいです。                                     問数や内容の重複に関する指摘,改善案もいただ
 ・SSH ではなくなっても多分先生方の努力や風土         いている。適宜改良しつつ,卒業生ならではの説
 によってこの環境を維持できるであろうとは思う         得力ある意見を今後も効果的に取り入れ,SSH 企
 と同時に,やはり SSH の予算で講師を呼んでこれ        画運営に生かしたい。
                                                                        (文責 研究部・須藤 雄生)
 
                                                 51
 V.研究開発実施上の課題 及び                          高2「課題研究」の総括として、研究成果の発表
                                                       の場として、外部や他校の SSH 発表会を利用す
 今後の研究開発の方向・成果の普及
                                                       る講座も参加者も今年度は一段と増えた。事業発
                                                       展にともない、各講座での統一的評価となるよう
 1.今年度研究開発の評価・課題について
                                                       なルーブリックの開発を目指す。研究は文理問わ
   研究内容の柱14の順に述べる。
                                                       ず幅広い分野で行われるため、汎用性のあるシン
 1国際社会に貢献する科学者・技術者の育成を
                                                       プルな形を模索したい。また、生徒による自己評
 めざした探究型学習の教材開発と実践
                                                       価、相互評価を用いた探究型学習の達成度を測る
   数学科では、数学科教員研修会(オンライン)
                                                       評価基準の作成に向け、先進校の実践事例につい
 において、開発した探究型学習教材を使用して実
                                                       て SSH 情報交換会などを利用し、研究を進めた
 践の報告や意見交換を行った。刷新された本校
                                                       い。
 HP でも行っている教材公開と併せて、オンライ
                                                       2主体的な探究活動をするための基礎力育成 カ
 ンで実施したことによる地理的・時間的制約が減
                                                       リキュラムの開発と実践
 じ、全国への発信がより一層高まったと考えられ
                                                         理数系基礎力の充実と科学的リテラシーの涵養
 る。今後も、本校開発教材を使用した授業実践・
                                                       を目標とした SSH 特別講座を、数学科・理科・社
 協議を発展継続させ、
                   さらなる共有・普及を図り、
                                                       会科・国語科でそれぞれ実施した。統一のアンケ
 また、アンケート調査等による評価も確立したい。
                                                       ートを行い、受講生徒には概ね好評であったこと
   理科では、高2「理科課題研究」から国内外で
                                                       が分かる。自由記述欄は数値以上に生徒の変容が
 の発表会参加、高3「理科課題研究」履修から国
                                                       確認できるが、それには、通常授業や課題研究、
 内外発表会参加の流れがほぼ確立している。多く
                                                       部活動との関連で参加したという声があり、参加
 の発表会がオンラインで行われたこと、中止とな
                                                       者をさらに増やすため、これらの関連について検
 った発表会もあったことを受け、生徒自身の成果
                                                       証したい。
 を披露したいという動機は高まり、例年と比較し
                                                         主体的・協働的な学びによる探究能力の開発と
 ておおっくの生徒の参加が見られた。研究を開始
                                                       しては、中学社会科「環境地図作成」、総合学習
 する際には、生徒の研究テーマ設定のヒントとな
                                                       「地域研究」
                                                                 、中学理科「城ヶ島野外実習」を実施
 るような教材を提示することにより、探究型学習
                                                       し、グループ活動や議論を重視した活動を引き続
 の実践はさらに深まってきたと考える。今後の課
                                                       き行った。今後はアンケートなどによってその効
 題としては、高3課題研究選択者の数を増加させ
                                                       果の検証を図っていきたい。
 ることと、生徒の研究時間確保、大学および各研
                                                       3探究型学習を実践するためのプログラム開発と
 究機関との連携を用いた指導などについて効果的
                                                       サポート体制
 なシステムを模索したいが、今年度のオンライン
                                                       ()高大連携によるプログラムの推進と実践
 発表会参加の経験から早急に本格実施する可能性
                                                         今年度は筑波大学研究室訪問が2学年(中3・
 が高まった。
                                                       高2)とも中止されたが、各種 SSH オンライン研
   情報科では引き続き、民間企業との連携による
                                                       究発表会への参加経験から、
                                                                               「中高大院連携プログ
 セミナー「メディア虎の穴」と「メディア虎の穴・
                                                       ラム」の実施可能性の高い、新たな方策が創案さ
 特別編」を発展実施し、生徒の情報収集能力とメ
                                                       れた。これにより、高校・大学進学後の学習・研
 ディア活用能力を向上させることができた。本来
                                                       究への意欲を高めることができると期待する。従
 は、希望生徒が所定のコース(日時)に全て参加
                                                       来行われてきた各1日の事業に終始せず、継続的
 する形式の技術科特別講座だが、従来の独立講座
                                                       高大連携研究につながるよう、既存のプログラム
 「特別編」
         と同様に「プレゼンテーションスキル」
                                                       を効果の高い新たなものへと発展させる形で試行
 をテーマに、全教科に関わるプレゼンテーション
                                                       したい。
 能力育成に役立つ指導が行われた。
                                                       ()本校卒業生を活用した SSH 事業サポート
   課題研究に関しては、中学3年「テーマ学習」
                                                       体制の充実と育成プログラムの検証
 から、高校2・3年「
                   (理科)課題研究」という流
                                                         数学科では、
                                                                   「数学オリンピックワークショップ」
 れで、探究学習を引き続き実施することができた。
 
                                                  52
 を実施し、数学オリンピックに挑戦する生徒の意        また、追体験講座として、参加生徒が本校中学生
 欲を高め、数学の面白さを感じさせることができ        に海外派遣や研究発表について話す機会設け、生
 た。講師・TAには本校卒業生のメダリストを招        徒の研究意欲や応募意欲を高めたい。
 いて指導を行い、参加生徒に好評であった。オン          国際科学コンクールも複数の成果を挙げ、日本
 ラインでの実施により、開催時期策定の課題は解        学生科学賞では、
                                                                   「点字を墨字に翻訳するアプリの
 消されたが、事前問題の難易度、当日の時間配分        開発」で内閣総理大臣賞を受賞した。今後も各種
 等についての課題は、今後も検討して改善したい。      SSH 事業への参加生徒や卒業生など他データの
   SSH の効果を測る上で、卒業生への調査は必須        収集を続け、方法についても検討する。
 だが、本校では分科会形式で卒業生が在校生に対          英語科は、プレゼンワークショップを年間3回
 して情報提供、協議をする進路(進学)懇談会が        開催し、分かりやすく伝える技術と自信の両方を
 毎年2回行われており、統一フォームでのアンケ        伸ばすことができた。課題研究「サイエンス・
 ートを一昨年度より行っている。今後もデータの        ダイアログ」では、外国人講師による専門的研究
 蓄積および数値評価を含めたアンケートの改善に        内容の英語講義を聴講することで、「論理的な構
 取り組んでいきたい。                                成・話し方・発表資料の作成法」について学び、
 ()社会と連携し貢献する科学者・技術者の            実践に繋げた。
 素養を育成するプログラムの開発と実践
   地歴公民科では、課題研究「水俣から日本社会        4探究型学習システムの開発と他校への発信・
 を考える」現地実習をオンラインで行うことによ        共有
 り、生徒自身に問題意識を持たせるとともに、課          現況の影響から開発された、理科による新たな
 題を立てて追究させることができると期待する。        教材(オンライン・オンサイト)の実践とその検
   福島におけるフィールドワークもオンラインで        証から得た知見を、学校HP等を通じた早急な公
 実施し、文理を問わず多くの生徒が社会と密接に        開普及が期待される。
 関わる探究活動に携わることができた。現地の高
 校や参加の他校との協議が大変有意義であったと        2.今後の研究開発の方向・成果の普及
 言える。                                              「課題研究」では、必修の高2「(理科)課題研
   課題研究の障害科学講座「ともにいきる」では、      究」から高3「(理科)課題研究」への研究継続「の
 特別支援学校生徒等との交流・協働学習を通じて、      流れが整備されている。
                                                                         「課題研究」での研究総括
 これからの多様化した社会に必要なコミュニケー        として、全国や東京都 SSH 合同発表会などへの
 ションスキルが育成された。情報科を始め、他の        参加が格段に増えてきた。従前は海外研修派遣生
 様々な教科とも協働し、教科融合型課題研究の一        徒の参加にとどまっていたが、ここで一定の成果
 つの形として確立しつつある。                        をまとめておくことで、高3「(理科)課題研究」
 ()国際舞台での研究発表の推進と国際科学            (選択)の履修に繋がりやすくなると言える。ま
 コンクール等への派遣                                た生徒アンケートから、各種 SSH 生徒研究発表
   台中第一高級中学(台湾)との研究交流をオン        会に見学参加した高1・高2生徒が、自校・他校
 ラインにより実施し、継続的共同研究への発展へ        の研究・発表など大いに刺激を受けていることが
 と繋げられた。理数系交流授業等における意思疎        分かり、実際に発表をしなくても参加させる意義
 通能力促進、連続派遣生徒のイニシアティブ効果、      は明らかに高い。
 外国人プレゼン専門家による事前指導の有効性が                      」では、大幅に刷新した学校 HP
                                                       「発信(普及)
 示された。事前事後指導や、発表の相互評価につ        で現在、過去の SSH 研究開発実施報告書や年間
 いて再検討を続け、確立・発展したプログラムを        SSH 行事カレンダー、イベント報告等を公開して
 さらに改善したい。また、海外派遣プログラムや        いるが、HP において重要な、情報の見やすさと
 国際オリンピックへの継続的な参加により、生徒        即時性、発信の効果については、外部の意見も取
 のパフォーマンスだけでなく、研究指導の方法に        り入れ、さらに改良を加えていく必要がある。
 ついても校内で広く共有され、レベルアップした。                       (文責:研究部 多尾奈央子)
 
 
                                                53
 VI.校内におけるSSHの組織的                                    5.教育研究会・校内研修会
                                                                   (1) 第 47 回教育研究会 2020 年 11 月 21 日(土)
     推進体制
                                                                   実施形態:オンライン開催(Zoom ウェビナー)
                                                                   内容:社会・理科・英語の今年度のオンライン授
   本校の SSH は、以下の組織を活用して研究開発
                                                                   業における教材共有、授業動画公開、研究協議会
 の企画・評価を推進する。
                                                                   研究主題:
                                                                           (コロナウィルスに負けない)主体的で
                                                                   探究的な深い学びをめざして
 1.SSH 校内推進委員会
                                                                   (2) 校内研修会
   全ての教科より選出される教員を含む計 14 名
                                                                     今年度は第1回(7月)をオンライン授業にお
 の構成員によって、実施計画書、事業計画書、事
                                                                   ける工夫と課題、第2回(2月)を online 教育研
 業経費説明書等書類の作成および事業の評価方法
                                                                   究会実施方法の共有、post 第 4 期 SSH に関して
 の検討などを担当する。
                                                                   資料発表による研修を行った。
 
 2.校内プロジェクト会議
                                                                   6.筑波大学・附属学校連携委員会・駒場連携小
   全ての教員が下記のいずれかに所属する。
                                                                    委員会
  プロジェクトI(生徒の可能性の発掘プロジェクト)
                                                                     連携委員会は筑波大学附属学校 11 校と大学、
  プロジェクトII(学びとカリキュラムのテ゛サ゛インプロジェクト)
                                                                   駒場連携小委員会は本校と大学を繋ぐ役割を果た
  プロジェクトIII(協働・コラボ推進プロジェクト)
                                                                   し、両委員会にて SSH に関する報告を行う。
  プロジェクトIV(教育のク゛ローハ゛ル化検討プロジェクト)
   プロジェクトIIIは社会貢献事業「筑駒アカデメ
                                                                   7. 筑波大学附属学校教育局(管理機関)
 イア」
     (「筑駒人材バンク」を活かした地域貢献)
 の計画・立案、運営・実践を行う。                                    筑波大学の各附属学校の管理機関として、本校
 
   プロジェクトIVは、研究内容の柱3を担当し、                       と筑波大学および関係機関等との連携にあたり、
 
 国際交流企画の研究を進める。                                      指導助言や事業推進のための支援を行っている。
 
   プロジェクトI・IIも必要に応じて研究開発に                                                (研究部 多尾奈央子)
 
 関わる。
                                                                     2020 年度 運営指導委員
 
 3.運営指導委員会                                                     氏     名             所            属
   筑波大学および外部研究者等9名(右表)で構                                            東京海洋大学
                                                                     吉 田     次 郎
 成される、
         研究推進のために設置された委員会で、                                            海洋科学部海洋環境学科
 年2回開催される。SSH 事業報告の後に、各運営                                            東京大学大学院
                                                                     真 船     文 隆
 指導委員から助言や指導を受け、事業改善・推進                                            総合文化研究科
 に活用している。                                                                        東京医科歯科大学
                                                                     古 川     哲 史
                                                                                         難治 疾患研究所
 4.研究部                                                                              東京学芸大学
                                                                     吉 原     伸 敏
   校内の既設の分掌で、5名で構成される。実施                                            理科教員高度支援センター
 計画書、事業計画書、事業経費説明書のとりまと                                            昭和女子大学
                                                                     緩 利          誠
 め、文部科学省および JST との連絡協議、外部か                                           総合教育センター
 らの各種調査・アンケートの実施と取りまとめ等                        坂 井          公 筑波大学 数理物質系
 とともに、
         各研究・プロジェクト間の調整を行う。
                                                                     星 野     貴 行 筑波大学 生命環境系
 また、研究発表および成果普及の場である教育研
 究会、校内研修会の企画・運営を中心になって進                                            東京大学
                                                                     児 玉     龍 彦
 める。                                                                                  先端科学技術研究センター
                                                                     近 藤     玄 大 NPO 法人 Mission ARM Japan
 
 
 
                                                              54
 関係資料(2020 年度)                                   他方で、改善希望や要望も検討に値するものが
                                                         含まれていると感じた。全体的に若干、自由記
 ■SSH運営指導委員会の記録                            述式の設問数が多いかもしれない。簡単に聞く
 2020 年度 SSH 運営指導委員・校内推進委員                ところと重点的に聞くところをはっきりとさせ、
 運営指導委員:吉田次郎(東京海洋大学)
                                     、真船文            重点的に聞くところは具体的で詳しいエピソー
 隆(東京大学)
             、古川哲史(東京医科歯科大学)
                                         、              ドを引き出せると、さらに参考になるデータを
 吉原伸敏(東京学芸大学)、
                         緩利誠(昭和女子大学)
                                             、          得ることができると思う。
 星野貴行(筑波大学)
                   、坂井公(筑波大学)
                                     、児玉
 龍彦(東京大学)
               、近藤玄太(特定非営利活動法人          令和2年度 第2回 SSH運営指導委員会
  Mission ARM Japan)                                  日時:2021 年 1 月 30 日(土)15:0017:00
 校内推進委員:北村(校長)、梶山(高校副校長)
                                             、        場所:Zoom 利用によるオンライン会議
 赤羽根(事務長)
               、多尾(研究部長)
                               、平田(教務            内容:事業報告と意見交換
 部長)
     、須田(国際交流P4 長/英語)
                                 、須藤(研            (1)全般 研究部報告:今年度事業報告の概略
 究情報係/数学)
               、八宮(国際交流係)
                                 、千野(国            (2)国際交流係より:今年度実施の国際交流
 語)
   、小貫(地歴公民)
                   、今和泉(理科)
                                 、山合(保                生徒派遣プログラムについて
 健体育)
       、土井(技術家庭芸術)                          (3)国際交流プロジェクトより:海外進学・恒
                                                           常的プログラムについて
 令和2年度 第1回 SSH運営指導委員会                (4)各教科報告(数学、理科、情報・技芸科、
 日時:2020 年 7 月 4 日(土)                             国語科、地歴公民科、保体科、英語科):
 場所:メール会議による意見集約                            各教科の今年度実施取組について
 内容:事業報告と意見交換                              (5)各教科・事業に対する指導・助言:
 (1)全般 研究部報告:事業計画書の説明と               ・海外関係の中止が相次ぐ中で,オンラインで
     今年度の事業概略について                            の開催にいちはやく切り替えたのは素晴らしい。
 (2)国際交流係より:今年度の国際交流生徒              実際に現地でえられる空気感のようなものもあ
     派遣プログラムについての説明                        るだろうが,それがないなかで生徒のがんばり
 (3)各教科報告(数学、理科、情報・技芸科、            がすごいと思った。今後は,国を超えた取り組
     国語科、地歴公民科、保体科、英語科):              みが高校生の段階からできるという可能性もあ
     SSH に関する各教科の今年度の取組について            る。ひとつのテーマに双方で取り組むというの
 (4)各教科・事業に対する指導・助言:                  も理想形としては考えてよいと思う。
   ・日本の生命科学の中心的研究者を生み出して            ・コロナ禍が去ったあとも通信環境の整備は大
   きた筑駒の伝統である物理、化学、生命科学の            切であろうし,詐欺等につながるネットリテラ
   教育研究の強化が必要。それを情報科学と結び            シーの問題は,校内だけでは解決できない,シ
   つける方向性を明確にすると良い。                      ステムレベルの脅威の問題もあると思う。そこ
   ・新型コロナウィルスについて,まず教員がも            も注意してもらいたい。
   っと勉強すべきであり,それを生徒と共有すべ            ・教育は複合的で多次元の問題。その研究に,
   きである。                                            アンケートの数値といった定量的評価だけを求
   ・卒業生アンケートによると,在学中は SSH              めるのは科学的な姿勢とは言えないと思う。数
   であることをそれほど意識していなかった,し            値目標に先生方がとらわれて時間を使わされる
   かし SSH を評価する,と回答していた生徒が             ことには,断固として反対する。そのうえで提
   多かったことが印象的だった。それで良いのだ            案したいのは,インフラとしての情報基盤の整
   と思う。                                              備と,もうひとつはグローバル化への対応。こ
   ・筑駒が提供してきた教育機会/学習機会が、            れら 2 つはシステム,メカニズムとして確立し
   生徒たちの成長・発達、キャリアに結びついて            てもらいたい。
   いることが卒業生アンケートから読み取れた。                             (文責 研究部・須藤 雄生)
 
 
                                                  55
 ■教育課程 高等学校(2020年度入学生)
 
                 高校1年                        高校2年                                  高校3年
   1
                                               現代文 B(2)                            現代文 B(2)
   2
               国語総合(4)
   3
                                                                                         ★古典B(2)
   4                                            古典B(3)
   5
                地理 A(2)                                                               倫理(2)
   6
                                               政治経済(2)
   7
               世界史 A(2)                                                            ★数学II(2)
   8
                                               日本史A(2)
   9
                                                                                                          ★数学 B(2)
  10            数学I(3)
  11                                            数学II(3)                                              ★古典講読
                                                                               ★数学III(6)
  12                                                                                                              (2)
                数学A(2)
  13                                             数学B(1)                                              ★地学基礎
  14                                                                                                              (2)
               生物基礎(2)          ◆物理基礎 or 地学基礎(2)
  15                                                                                                      ★
  16                                                                    ★        ★          ★          地理概論(3)
               化学基礎(2)             ◆化学 or 生命科学(2)
  17                                                                    物理(4) 生物(4) 地学(4) 世界史概論
  18                                                                                                                 (3)
  19             体育(3)                      体育(3)                      ★化学(2)             日本史概論
  20                                                                         高2化学選択者のみ                      (3)
  21             保健(1)                      保健(1)
  22                                                                                       体育(3)
               ◆芸術I(2)                   ◆芸術II(2)
  23
  24          情報の科学(1)                情報の科学(1)                           家庭基礎(1)
  25                                           家庭基礎(1)
  26   コミュニケーション英語I(3)                                          ★コミュニケーション英語III(3)
  27
                                       コミュニケーション英語II(4)
  28
              英語表現I(2)                                                         ★英語表現II(2)
  29
                                           ◆理科課題研究 or
  30    総合的な学習の時間(1)                                                 総合的な学習の時間(1)
                                       学校設定科目「課題研究」(1)
  31              HR(1)                        HR(1)                                  HR(1)
  32           特別活動(1)                  特別活動(1)                            特別活動(1)
                                                                                  ★理科課題研究 or
  33
                                                                              学校設定科目「課題研究」(1)
 
 無印:必修         ◆:選択必修        ★:選択可能な範囲で自由選択
 卒業に必要な教科科目の修得単位は、77 単位以上(総合学習を含む)
 その他、ホームルームおよび特別活動に参加し、活動しなければならない。
 
 
 ※SSH の研究開発に係る変更:
   高校2・3年「理科課題研究」および「学校設定科目『課題研究』」の設置
 
                                                       56
 ■教育課程 中学校(2020年度入学生)
 
                    教科等               1 年    2 年             3 年            計
                    国 語                  4          5                4             13
                    社 会                  4          3                4             11
                    数 学                  4          4                4             12
                    理 科                  3          4                4             11
                    音 楽                  2          1.5             1.5             5
                    美 術                  2          1.5             1.5             5
                   保健体育                3          3                3              9
                  技術・家庭               2          2                2              6
                外国語(英語)             4          4                4             12
                    道 徳                  1          1                1              3
                   特別活動                1          1                1              3
              総合的な学習の時間           2          2                2              6
                    合 計                 32          32               32            96
   (備考)
      1 表の数字は、週当たりの授業時数を示している。
      2 総合的な学習の時間には、以下の内容、及び学年行事や学校行事に関わる活動を実施する。
              総合学習A 水田稲作                 中学1年1・2学期
              総合学習B 地域研究(東京)         中学1年3学期・中学2年1学期
              総合学習C 地域研究(東北)         中学2年2・3学期
              総合学習D 個別課題(テーマ学習)中学3年
              総合学習E 共通課題(集中講座) 中学3年(年2回程度)
 
 
 ■令和2年度 「理科課題研究」「課題研究」テーマ一覧
 
 高校2年「理科課題研究」                             高校3年「理科課題研究」
  理科(化学) 分析化学                                    理科(物理)9 軸センサーを用いた姿勢推定
  理科(生物) 生物探究                                                    ─計算手法の簡略化と高速化─
 
 
 高校2年「課題研究」                                 高校3年「課題研究」
  国語        アルトー『演劇とその分身を読む』              国語 『竹取物語』の変曲点
  地理歴史 社会時評のすすめ                                       ─嫦娥伝説を起点として─
  地理歴史 水俣から日本社会を考える                         数学 立体交差の最適化碁盤の目を“改善”する
  数学        数学の本質は自由にあり                              複素平面におけるラングレーの問題について
  保健体育 ポスト 2020                                      地歴 『苦海浄土』をはじめとする
  障害科学 ともにいきる                                           著作にみる石牟礼道子の思想
  英語        Science Dialogue+D.I.Y.                      保健(障害科学) ともにいきる
 
 
 
 
                                                 57