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取得日:2023年12月23日[更新]

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  式辞
     遠くの山並みの残雪がやわらかい陽に輝き、澄んだ大気の中に春の息吹きを感じ取る
 ことができる季節となりました。この佳き日に、ご来賓の皆様には大変ご多用の折り、卒業
 証書授与式にご臨席たまわり、厚く御礼申し上げます。
   次に、保護者等の皆様方に教職員を代表してお祝い申し上げます。例年、ここでは「保護
 者の皆様」という所ですが、18 歳を迎えた皆さんは成人であり、学校教育法上、父母等の
 皆様は保護者にはなりません。そこで、先ほど「保護者等の皆様方」と言わせて頂きました。
 しかしながら、いつの時代であっても、法律が変わっても、ご家族の皆様の子の成長を願う
 気持ちは変わらない最も深い愛情です。この三年間を今振り返れば万感の思いが去来する
 ことでしょう。これまでの皆様のご労苦に深甚なる敬意をあらわします。
   さて、全日制 273 名の卒業生の皆さん、あらためてご卒業おめでとうございます。卒業を
 お祝いするとともに、今日まで三年間、勉学に、班活に、生徒会活動などに励んできた皆さ
 んの努力を讃えたいと思います。
   式辞は、偉人の言葉や四字熟語などを引用して話を広げるのが通常ですが、今日は、皆さ
 んにとって身近な仲間の言葉や、先生の言葉からお話をしたいと思います。一学期の事です。
 ある三年の先生が生徒に話をするのを聞きました。こんな内容です。
                                                             「世の中、平等、平等
 というけれど、実際には不平等ばかりで平等なものはほとんどない。平等なのは二つあって、
 一つは時間だ。もう一つは、不平等であることが平等だ。」というのです。これは、誰にで
 も不平等はあるし、誰もがそれを受け入れざるを得ない、という意味だと思います。それを
 聞いた私は、不平等であることが平等という、逆説的だけど的を射た言葉に感心しました。
 また、その先生の、綺麗ごとで慰めるのではない、真剣な話しぶりや、その話を納得して聞
 いている生徒の姿に、お互いの信頼関係を感じて、
                                             「吉田の先生も生徒もすごい」と思いま
 した。
   さて、皆さんは高校三年間をコロナ下で過ごしました。これは、平等に日本全体が巻き込
 まれたと言う事もできるし、何で私たちだけが高校という一番の時にコロナに当たってし
 まったんだろう。予定通りに修学旅行1に行けなかったのは不平等だ、と思う人もいたと思い
 ます。先日できあがった生徒会誌「暁峰」に、三年生の皆さんがどんな事を書いているか、
 私はとてもドキドキしながら読みました。皆さんの一人一言には、想像以上に「楽しかった。
 みんなのおかげで楽しかった。班活が楽しかった。
                                             」と書いてありました。そして、
                                                                         「修学旅
 行に行きたかった。
                 」という事も書いてありました。修学旅行2が予定通りにできなかったこ
 とは本当に残念ですが、楽しかったと書いてくれた皆さんも、修学旅行3に行きたかったと書
 いた皆さんも、どちらも仲間が、吉田高校が好きなんだな、と思いました。修学旅行4に行き
 たかったというのは、仲間が好きだから、特に強く残念に感じたのだと思います。仲間が好
 きで無かったら、修学旅行5に行けても、行けなくてもどちらでもいいや、と思うのではない
 でしょうか。三年生の皆さんが暁峰に書いてくれた内容は、どれも友達や学校への愛情にあ
 ふれていて、読んでいて心が暖かくなりました。
   もう一つ、心に残った言葉を紹介したいと思います。やはり一学期に聞いた、ある三年の
 先生の言葉で、
             「起きた事全てに感謝しなさい。」というものです。その先生は、この言葉が
 好きだし、いつもそう考えて生活をしている、というのです。これは、楽しいことも辛いこ
 とも、全て繋がりがあって自分の人生になっている、という事だと思います。辛いことがあ
 ってもそれを乗り越えることで自分は強くなれると思えば、辛い事にも感謝できるし、辛い
 ことも含めての自分の人生です。暁峰に、前生徒会長さんが書いた文にも、
                                                                   「高校生活は本
 当にあっという間でした。でも初めてのことばかりで何もかも楽しかったです。うれしいこ
 とはもちろん、悲しい事や辛く苦しかったことも含めてとても良い経験になりました。」と
 あります。先ほどの先生の言葉の、
                               「起きた事全てに感謝しなさい。」に通ずる考えだと思い
 ます。そして、
             「起きた事全てに感謝しなさい。」という言葉に、私の知らなかった深い経験
 と、強い思いがあることも、この暁峰に書いてありました。保護者等の皆様にも、是非読ん
 で頂きたいと思います。
   卒業生の皆さんはこれから様々な経験をすると思います。その経験は、一人一人に違った
 内容の、不平等な経験になると思います。でも、この長野吉田高校で培った力で、どんなつ
 らい経験も乗り越え、そして楽しい事は仲間と喜び合えるという、素晴らしい人生を送って
 くれることと思います。皆さんのこれからの経験はばらばらで、不平等かもしれませんが、
 長野吉田高校の卒業生であるという事は、皆さんに共通の、平等な事実です。273 名の皆さ
 んが、同じ日に卒業した、長野吉田高校の卒業生であるという事は一生変わりません。その
 事を誇りにし、またその繋がりを大切にし、それぞれの人生を歩んで行って欲しいと思いま
 す。
   皆さんの洋々たる前途での活躍を祈念し、また、ご列席くださいましたすべての皆様のご
 健勝をご祈念申し上げ、式辞といたします。
   令和5年3月1日
                                                          長野県長野吉田高等学校長
                                                                        内藤 信一