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取得日:2024年03月19日[更新]

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式辞
 
 
   本日ここに、平素より本校を愛し、御支援をいただいております、本校ゆかりの御来賓の
 皆様の御臨席をたまわり、また、今日のこの佳き日を心から喜んでいらっしゃる保護者の皆
 様の御同席を得て、入学式を挙行できますことを、新入生とともに職員一同、厚く御礼申し
 上げます。
 
 
   ただいま入学を許可いたしました全日制278名、定時制6名の新入生の皆さん、御入学、
 誠におめでとうございます。保護者の皆様、お子様の御入学を心からお祝い申し上げます。
   本校は、明治17年に設置された長野県中学校に由来し、明治32年に長野県立長野中学
 校として独立して5年間の課程を備えてから、124年の伝統を培ってまいりしました。こ
 の学び舎を巣立った諸先輩方は日本のみならず世界の各界で活躍されています。それは本
 校での学びが学習面だけにとどまらない豊かな環境が用意されているからです。
   また、定時制は70年を超える歴史をもち、多くの卒業生と生徒を擁していますが、一人
 一人の生徒の希望により沿う、丁寧できめ細やかな指導で広く定評のあるところです。
 
 
   私たちはこれまで新型コロナウィルス感染症の拡大から、大きな影響を受けましたが、本
 校ではいち早くICT利用を進め、オンライン学習の先行実施など、このような状況におい
 ても学習面での保障ができる体制を整えたことは全県の注目を集めました。また、学校行
 事・生徒会行事1などは、アイデアを出し合いながら、できる限り実施できるようにしてまい
 りました。
   あらゆるものが制限され、絶縁された日々を送ってきましたが、その中でもただやめるの
 ではなく、新しい方法がないか常に考え続ける。むしろ、何もあきらめない。大きな力に翻
 弄されるだけではなく、どうしたらよいのか、何ができるのかを常に問いかけながら生きて
 いく、そんな新しい生きる力が、コロナ渦をやりすごしたときに、私たちには宿っているの
 ではないかと期待します。
 
 
   「星の王子様」で有名なサンテグジュペリの言葉に「良い船大工を育てるなら、広大な海
 への憧れを教えると良い」というものがあります。骨身を惜しまず、主体的に、あらゆる工
 夫を試しながら優れた船の建造に心から没頭する、本当に良い船大工を育てたいなら、船の
 仕組みや材料の良しあしの知識を教え込むよりも、未知なる異国と行きかい、無尽の可能性
 が潜む、広大な海への憧れを教えることこそ一番の近道だというのです。
                                                                 「良い船大工を育
 てるなら、広大な海への憧れを教えると良い」という言葉は、若者が夢やあこがれを抱くこ
 との重要性を示しています。
 
 
   しかしながら、世界はグローバル化し、社会が複雑さをますその一方で、自分の嗜好に合
 うものだけを選んで手元に置き、自分の興味関心のみにまかせてネットを検索するために、
 生活の中で異質なもの、新奇なものに接触する機会が減っています。
   そのような日常の中で、コロナ禍におそわれ、自分の立場だけを優先して考えたり、異質
 なものを遠ざけよう、排除しようとしたりして、多様な価値観を受け付けない風潮が生まれ、
 自分のために都合よく純化された環境しか見ていない傾向が現在世界のあらゆるところで
 顕在化しつつあるように私は感じます。
 
 
   大人は「夢をもちなさい」と比較的簡単に若者に言いますが、変化の激しい不確実性の時
 代にあって、具体的に夢をもつことはますます難しくなっていると思います。
 
 
   一体、あこがれはどのように人の心に宿るのでしょうか。
   「夢」は、意識的に選び取ったり、自律的な思考ののちに論理的に構成されるものではな
 く、何かを糧としながら、むしろ無意識のうちに自然に自覚しているものではないでしょう
 か。
   私は夢の源となるものは「深い感動」だと思います。たとえば、芸術が表現する想像を絶
 する美しさ、自然や文化財の圧倒的な偉大さ、人の話を聞いた時の深い感銘、そういうもの
 に人は心を動かされ感動します。また、人が何かに取り組む真剣な姿をみても心を動かされ
 ます。自ら身も心も一筋に何かをやり遂げたという体験からも深い感動がもたらされます。
 そうして得た「深い感動」の断片が心の中に蓄積していき、「私は将来これをしてみたい」
 とあなたに言わしめる、夢の材料に成長するのです。
   「夢」を皆さんの心に育むために、皆さんは、この3年間あるいは4年間に、広く世間や
 社会、または隣人に目をむけ、感動が残す物質を胸に多く蓄積してほしいと願います。
 
 
   保護者の皆様、本日はまことにおめでとうございます。
   お子様がたが、たくましく成長し、高校生らしく変身した姿をご確認ください。これから
 の3年間ないし4年間の生活の、今日は出発点を迎えるわけであります。長野高校が真の意
 味でその真価を発揮するためには、学校・家庭・地域が課題を共有できるということが大切
 です。そのために、学校は常に情報をしっかり発信し、保護者・地域の皆さんのご意見をよ
 く伺いながら、安全安心な学校の建設と教育を進めていく必要があると考えております。ご
 協力を賜りたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 
 
   最後に、本日入学した生徒諸君の高校生活が充実したものになるよう重ねて祈念し、合わ
 せてご臨席の皆様へ篤く御礼申し上げ、式辞といたします。
 
 
   令和5年4月6日 長野県長野高等学校長 廣田 昌彦