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       平成 28 年度指定
 
 
 スーパーサイエンスハイスクール
 
 
 研究開発実施報告書・第2年次
 
 
 
 
         平成 30 年3月
 
 
 
      愛知県立刈谷高等学校
                                        は    じ   め     に
 
 
 
   本校の第2期SSH事業がはじまり,丸2年が経過しようとしている。第2期の研究開発課題は,
                                   ・
 「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダー」であり,それによ
 り「これからの社会をたくましく生き抜く,自律した十八歳」を育て上げることである。
  そのため,第2期SSH事業では,問題発見・解決能力,プレゼンテーション能力等の伸長を図る
 ため,第一学年での「探究基礎」,第二学年での「課題研究I」,第三学年での「ESDIII」を学校
 設定教科として設置し,3年間を見据えた計画で1問題を発見し,その問題を定義し解決の方向性を
 決定し,2解決方法を探して計画を立て,結果を予測しながら実行し,3プロセスを振り返って次の
 問題発見・解決につなげていく学習態度(科学する力)を身に付けさせることに重点を置いている。
 また,多くの教科にSS科目(スーパーサイエンス科目)を学校設定科目として設定し,各教科から
 この目標にアプローチできるよう図っている。
   本校の生徒たちは,文武両道を実践する能力とたくましさをもち,日々,学習だけでなく部活動に
 も真剣に取り組んでおり,将来各方面において,答えのない課題にも率先して立ち向かうタフなリー
 ダーとして活躍することが期待されている。なぜなら,互いの良さを生かして協働する資質にすぐれ,
 情報を他者と共有しながら議論することを通して,さまざまな相手の考えに共感したり多様な考えを
 統合したりして,協力しながら問題を解決していこうとする姿勢を絶やさないからである。そのよう
                                                                                    ・
 な生徒を,信頼される人として,積極的にイニシアチブがとれる人材(“みりょく”(実力・魅力)
 あふれるグローバルリーダー)として育成することが我々の使命といって過言ではないだろう。
   本校は来年度創立百周年を迎える。今後,大学・研究機関や地元刈谷市,地域企業等と連携し,
 「生徒一人一人の心に火をつける本物″の体験」を通し,「自律した十八歳」ひいては「グローバ
 ルリーダー」を育てるためのカリキュラム・マネジメントを確立したい。そして,一世紀の伝統の上
 に,一段と高い望みに立てることを標ぼうしたい。
   終わりに,本研究に際し,御指導・御支援を賜りました文部科学省,独立行政法人科学技術振興機
 構(JST),愛知県教育委員会,運営指導委員並びに評価委員の皆様,そして愛知教育大学,名古
 屋大学,東京大学をはじめとする諸研究機関,さらに株式会社デンソー,株式会社ジェイテックなど
 の地元企業の皆様に心からお礼申し上げます。
 
 
 
 
       平成30年3月吉日
 
 
                                                        愛知県立刈谷高等学校長   伊藤    泰臣
 目       次
 
 
          平成29年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)………………………1
 
 
 
          平成29年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題……………………………5
 
 
 
 
 I     研究開発の概要……………………………………………………………………………………………13
     1 学校の概要
     2 研究開発課題名
     3 研究開発の目的・目標
     4 研究開発の概略
 
 
 
 
 II-1       自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題
           発見・解決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性等を引き出し伸ばすカリキ
           ュラムの研究開発
     1    研究開発の課題…………………………………………………………………………………………16
     2    研究開発の経緯…………………………………………………………………………………………16
     3    研究開発の内容…………………………………………………………………………………………17
     4    実施の効果とその評価…………………………………………………………………………………33
     5    研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及…………………………………36
 
 
 
 
 II-2       生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)
           の研究開発
     1    研究開発の課題…………………………………………………………………………………………38
     2    研究開発の経緯…………………………………………………………………………………………38
     3    研究開発の内容…………………………………………………………………………………………39
     4    実施の効果とその評価…………………………………………………………………………………51
     5    研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及…………………………………52
 
 
 
 
 II-3       国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
   1      研究開発の課題…………………………………………………………………………………………54
   2      研究開発の経緯…………………………………………………………………………………………54
   3      研究開発の内容…………………………………………………………………………………………54
   4      実施の効果とその評価…………………………………………………………………………………59
   5      研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及…………………………………60
 III        校内におけるSSHの組織的推進体制について………………………………………………………61
 
 
 
 
 IV      関係資料
       1 教育課程編成表…………………………………………………………………………………………63
 
       2    平成 29 年度   SSH運営指導委員会及び評価委員会   記録 ……………………………………64
 
       3    生徒アンケート結果……………………………………………………………………………………67
 
       4    スーパーサイエンス教科「課題研究」の3年間のアウトライン…………………………………69
 
       5    課題研究テーマ一覧……………………………………………………………………………………70
 
       6    ルーブリック……………………………………………………………………………………………71
 
       7    報道関係…………………………………………………………………………………………………73
 別紙様式11
                                                愛知県立刈谷高等学校   指定第2期目   2832
 
 
      平成29年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)
 1   研究開発課題
                                 ・
 科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダー育成プログラムの確立
 2 研究開発の概要
                                           ・
     将来,科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダーとして活躍する
   ために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問
   題発見・解決能力,協調的問題解決能力,国際社会においても通用する発信力,批判的思考力,創造性
   等を「意識的に」引き出し伸ばす,自律した十八歳を育成するカリキュラムの確立及びその評価法を開
   発する。
  (1) SS教科「課題研究」や理科,数学,英語,公民,情報の各教科にSS科目を設置することで,
       将来グローバルリーダーとして活躍するために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に
       加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解決能力,協調的問題解決能力,国際社会で
       も通用する発信力,批判的思考力,創造性等を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発を行う。
  (2) オーストラリアや東南アジアなどの海外での研究活動,外国人留学生や研究者との意見交換,研
       究者との議論,科学の甲子園や科学技術・理数系コンテストへの挑戦,企業や大学・研究機関と連
       携した研修,地域貢献を目的とした調査研究などの,生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を
       引き出すプログラム(“本物”の体験)の研究開発を行う。
  (3) SS科目「Science & Presentation」や「課題研究I・II」での成果発表など,国際社会で通用
       する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発を行う。
 3 平成29年度実施規模
   全校生徒(1,204名)を対象として実施する。
 4   研究開発内容
 ○研究計画
     研究を推進するにあたり,下記「刈谷高校第2期SSH研究開発5か年計画」を策定した。
     第1年次第3年次(平成2830年度)
     ・第1期SSHで開発した人材育成プログラムをこれまでの成果や課題を踏まえながら段階的に発展
       させる。
                                                 ↓
     第4年次(平成31年度)
     ・過去3年間の研究で得られた人材育成プログラムについて詳細に検証し,カリキュラムの改善を行
       う。
                                                 ↓
     第5年次(平成32年度)
     ・過去4年間の人材育成プログラムを検証し,これまでの成果の総括として,研究成果の発表,情報
       の発信など,研究成果の普及還元に重点を置いて活動する。
     ・次期SSH申請につなげるために,仮説検証のための取組の中で得られた成果や課題を踏まえ,さ
       らに質の高い研究課題の設定や評価方法の検証を行う。
 
  (1) 第1年次(平成28年度)
      SS科目「探究基礎」を柱として,SS科目や通常の教科・科目においても,主体的・協働的な学び
   を推進することで,自律的に学ぶ態度を醸成する。また,
                                                      「科学技術リテラシーI」や「探究数学基礎」,
   「社会と科学」,「Science & PresentationI」等では,第2学年以降に自律して課題研究を行うため
   の考え方や技能を向上させるための,探究課題やパフォーマンス課題を研究開発する。第1期SSHで
   作成したルーブリックを改善し,多くの教科・科目に取り入れるとともに,学習プロセスや生徒の能力
   の向上を測定するための評価法についての研究開発を行う。
 
 
                                                 1
      先端科学技術に関連した教材の活用や,最先端で活躍する研究者による講演会を行うことで生徒の自
   然科学等に対する意識を高め,次年度以降の探究活動の基盤を形成する。スーパーサイエンス部や「S
   Sゼミナール」参加者を中心に科学の甲子園等の科学技術系コンテストにも継続して参加する。刈谷市
   及び周辺地域の生物多様性調査についても発展充実を図る。
  (2) 第2年次(平成29年度)
     「課題研究I」において1年間の課題研究(理系生徒は理数及び情報科学に関する課題研究,文系生
   徒は自然科学及び人文・社会科学に関する課題研究)を実施し,将来グローバルリーダーとして活躍す
   るために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・
   解決能力,協調的問題解決能力等を向上させるための研究開発を行う。
     さらに,SS特別活動として「SS特別研究」を実施し,東京大学,名古屋大学をはじめとする研究
   機関等で研修を行い,最先端の研究内容に触れることで科学的な思考力や自然科学に対する興味・関
   心・意欲の一層の向上を図る。また,オーストラリアにおける問題解決活動,フィールドワークを実施
   し,異文化体験的交流を行いながら自然科学や環境面での意見交換を図り,国際的なコミュニケーショ
   ン能力を高める。また,海外との交流を「Science & PresentationII」はじめとする英語の授業内にも
   拡大することで,より多くの生徒に海外交流の成果を普及還元できるようにする。
  (3) 第3年次(平成30年度)
      前年度の研究活動を受けて「課題研究II」では,研究論文やポスターを完成させる。その際,科学的
   な思考力や判断力が身に付いていることを確認しながら,論文作成やプレゼンテーション作成を進め,
   研究内容を的確に表現する能力を養う。研究成果は地域に公開する。最先端科学技術を学び,その知識
   を社会で応用させることに加え,国際社会のリーダーとなる人材育成を図るため,英語研究論文・ポス
   ター作成や英語によるポスター発表,口頭発表を実施する。
  (4) 第4,5年次(平成31,32年度)
      平成31年度には,中間評価の結果も踏まえつつ,13年次の研究開発について達成状況を評価し改
   善を加える。また,第2期SSHとして最初に送り出す卒業生の3年間の研究成果について総括的な評
   価を行う。「科学する力をもった人材」,「グローバルリーダーとして活躍できる人材」,「これから
   の社会をたくましく生き抜く自律した十八歳」を育成できるカリキュラムやプログラムが開発できたか
   どうかについても検証し,SSH5年目以降の教育活動に反映させる。
      平成32年度には,第2期SSHの5年間の研究開発の総括及び地域への成果の普及を行う。また,第
   2期SSHの成果と課題を踏まえ,次期SSH申請へのSSH事業の改善を行う。
 ○教育課程上の特例等特記すべき事項
   1必要となる教育課程の特例とその適用範囲
   【第1学年】「探究数学基礎」「科学技術リテラシーI」「社会と科学」「探究基礎」
   【第2学年】「科学技術リテラシーII」「探究化学I」「探究物理I」「探究生物I」「課題研究I」
   【第3学年】「課題研究II」
   2教育課程の特例に該当しない教育課程の変更
   【第1学年】「Science & PresentationI」
   【第2学年】「探究数学I」「Science & PresentationII」
   【第3学年】「探究数学II」「Science & PresentationIII」「探究化学II」「探究物理II」
               「探究生物II」
 ○平成29年度の教育課程の内容     (   )は単位数
   第1学年教育課程
   「探究数学基礎」(6),「科学技術リテラシーI」(4),「社会と科学」(2),「探究基礎」(1),
   「Science & PresentationI」(2)
   第2学年教育課程(文理共通)
   「SS英語II」(2),「課題研究I」(1)
   第2学年教育課程(文系選択者)
   「科学技術リテラシーII」(2)
   第2学年教育課程(理系選択者)
   「探究数学I」(6),「探究化学I」(3),「探究物理I」(3),「探究生物I」(3)
   第3学年教育課程(文理共通)
 
 
 
                                                  2
   「SS英語III」(2),「ESDIII」(1)
   第3学年教育課程(文系選択者)
   「SS理科III」(2)
   第3学年教育課程(理系選択者)
   「SS数学III」(6),「SS応用化学」(4),「SS応用物理」(4),「SS応用生物」(4)
 ○具体的な研究事項・活動内容
  (1)    自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解
         決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発
      SS教科「課題研究」や理科,数学,英語,公民,情報の各教科にSS科目を設置することで,将
    来グローバルリーダーとして活躍するために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に加え,
    科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解決能力,協調的問題解決能力,国際社会でも通用す
    る発信力,批判的思考力,創造性等を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発を行う。
  (2)  生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)の研究開発
      オーストラリアや東南アジアなどの海外での研究活動,外国人留学生や研究者との意見交換,研究
    者との議論,科学の甲子園や科学技術・理数系コンテストへの挑戦,企業や大学・研究機関と連携し
    た研修,地域貢献を目的とした調査研究などの,生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出
    すプログラム(“本物”の体験)の研究開発を行う。
  (3)    国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
         SS教科「Science & Presentation」や「課題研究I・II」での成果発表など,国際社会で通用す
    る発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発を行う。
 5 研究開発の成果と課題
 ○実施による効果とその評価
   (1) 自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解
       決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発
       SS教科「課題研究」を中心として,全ての教科・科目において主体的・協働的な教育活動を取り
    入れるなど,構成主義的な学習観への転換を意識した。SS科目「探究基礎」では,SS科目「科学
    技術リテラシーI」や「探究数学基礎」等と連携しながら,第2学年以降の課題研究を自律的に行う
    ための準備段階として,論証や議論の方法,論理的な文章の書き方,統計・検定の方法等について,
    構成的・体験的に学ばせることができた。このような取組によりSS科目「課題研究I」では,学術
    的意義や統計的処理等の側面において,研究の質的向上が見られた。また,「課題研究I」を進める
    にあたっては,8割近くのグループが未習分野の自主的な学習を行い,9割近くのグループが授業時
    間以外にも研究や研究の準備を行うなど,課題研究が生徒の自律的に学ぶ力や協調的問題解決能力等
    の育成に効果的なことが再確認できた。
   (2) 生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)の研究開発
       第3学年生徒全員による課題研究の成果発表の場である「サイエンスデー」は,「SSH講演会」
    と「ポスターセッション」に加え,日頃の探究活動や主体的・協働的な学びで身に付けた力を発揮す
    る場として本校版の科学の甲子園ともいえるクラスマッチ「刈高サイエンスマッチ」の3つの内容で
    実施した。「ポスターセッション」の部では,約100枚のポスターが体育館に一堂に会し,学会さなが
    らの白熱した発表が行われ,来賓の方からも,年々研究の質が向上しているといった評価を得た。ま
    た,第3学年代表生徒による課題研究成果の英語での口頭発表会である「Scientific Research
    Presentation」には,本年度より新たに外国人講師を招聘し質疑応答やフィードバックを行っていた
    だくなど,より“本物”の体験になるように工夫を行った。代表発表生徒にとっては大きな重圧があっ
    たと推察されるが,これを乗り越えたことで自信や自己肯定間の上昇につながった。
       外国人研究者による英語でのレクチャーである「SCI-TECH ENGLISH LECTURE」は,平成29年度は3
    回実施し,毎回非常に活発な質疑応答が行われた他,多くの生徒が将来的に海外で研究を行い,国際
    社会で活躍したいという意識を高めた。実際に,平成27年度,28年度,29年度と海外の大学へ進学す
    る生徒が現れたほか,在学中に海外留学を行う生徒は増加傾向にある。また,名古屋大学が実施する
    グローバルサイエンスキャンパス「名大Mirai GSC」に7名,時習館高校がSSH事業として実施して
 
 
                                                 3
   いる「SSグローバル英国研修」には最大申込数の3名の生徒が国内研修にエントリーし,
                                                                                    「名大Mirai
   GSC」では1名の生徒がドイツ派遣を,「SSグローバル英国研修」では3人全員が,厳しい選考を突
   破し英国派遣を決めている。さらに,全校生徒で実施する「刈谷市及び周辺地域の在来種植物調査」
   やSS部生徒による「国指定天然記念物小堤西池のカキツバタ群落の保全研究」のような地域の特色
   を生かした取組では,刈谷市および愛知教育大学と連携して実施した他,東京大学特別研究,名古屋
   大学特別研究,スーパーカミオカンデ訪問研修,JTEC訪問研修等,大学や研究機関,地元企業
   等と連携したプログラムを実施した。
  (3) 国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
      3年生に実施される全校英語研究発表会「Scientific Research Presentation」において,活発に
   質疑応答ができる実戦的な英語運用能力の育成を目標に,各学年のSS科目の研究開発に取り組んだ。
   これらの科目では,科学的な文章をもとにプレゼンテーションを作成し,発表を行うという一連の過
   程を繰り返し行うことで,自律的にプレゼンテーションを作成できるようになることを目指した。そ
   の結果,平成29年度10月に実施された「Scientific Research Presentation」では,プレゼンテーショ
   ン発表はもちろん,外国人講師との質疑応答等も全て英語のみで行うことができた。また,在校生と
   の英語での質問内容ややりとりも,的確かつ充実したものに高まった。この他にも,時習館高校SS
   H事業「SSグローバル 英国研修」や名古屋大学グローバルサイエンスキャンパス事業「名大Mirai
   GSC」等の外部での取組等でも,複数名の生徒が選考を突破し海外派遣への切符を獲得するなど,SS
   科目「Science & Presentation」をはじめとした,国際社会で通用する発信力を育成するための取組
   の有効性が高まってきているものと評価できる。
 
 ○実施上の課題と今後の取組
   (1) 自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解
       決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発
       課題研究における一定の質的向上が見られ,ほとんどのグループが定量的なアプローチで研究を進
    めることができるようになったものの,学術的意義や先行研究への言及が不十分である研究が多く見
    られる。また,SS科目「探究基礎」において統計学に関する学習活動を行っているにも関わらず,
    実際に課題研究で生かせていないグループが見られる。これらの課題の解決策については,SS科目
    担当者会議等で教科の枠を超えて議論を進めており,「探究基礎」の授業内での取組みだけで終わら
    せてしまうのではなく,通常の授業で「実戦形式の練習試合」(パフォーマンス課題)を繰り返し行っ
    ていくことで,生徒たちが自律的に知識や技能を使いこなせるように,教育課程を改善する必要があ
    るという共通理解に達している。次年度以降は,例えば「探究基礎」で検定について学んだ後には,
    各SS科目において検定を用いるパフォーマンス課題等を繰り返し行い,さらにそれを「探究基礎」
    に活かしていくなどの教育課程のスパイラル化に関する研究開発を進めていく計画である。
   (2) 生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)の研究開発
       授業以外のSSH事業に参加する生徒が増えるように,各事業の魅力度をより一層高めていくとと
    もに,学校行事等の日程調整を進めていくなど,より参加しやすい環境を整えていきたい。また,S
    SHの課外活動に参加した生徒については,卒業後の進路の追跡調査を行い,各種プログラムが“本
    物”の体験となり得ているか,効果の検証も続けていきたい。
       また,現在,「オーストラリア研修」では当初計画にあるような,同一テーマでの現地校との共同
    研究やインターネット会議システム等を用いての定期的な相互交流,現地での共同研究の実施につい
    ては未だ実現できていない。これらの目標が早く実現し,より一層の“本物”の体験になるとともに,
    学校全体に海外連携の成果が還元できるように,実施プログラムの研究開発を重点的に行いたい。
   (3) 国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
       本年度の全校英語研究発表会においては,外国人研究者との質疑応答も含め,全て英語のみで実施
    することができたが,プレゼンテーションやスクリプトの作成時には,英語科教員を中心として,添
    削指導等の支援を行っている。現在の課題としては,生徒たちが教員の手を借りずに自律的にプレゼ
    ンテーションを作成したり,質疑応答ができるようになるための教育課程及び指導法を確立すること
    であり,「Science & Presentation IIII」を柱として,SS教科「課題研究」や理科・数学等のそ
    の他の教科科目の連携を強化することで,いわば練習試合にあたるパフォーマンス課題を繰り返し行
    わせるなどの教育課程の改善を「SS科目担当者会議」等を中心に継続して行っていきたい。
 
                                               4
 様式21
                                               愛知県立刈谷高等学校     指定第2期目    2832
 
 
       平成29年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発の成果と課題
 1      研究開発の成果
                                                           ・
       第2期SSHでは,『科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリー
     ダー育成プログラムの確立』を研究開発課題に掲げ,真正な学びを創出する「未来型の進学校」へ
     と進化すべく,SS教科の指導を中心に主体的・協働的な学びを全学的に発展拡充させることを目
     指している。第1学年では「探究基礎」を柱として課題研究を自律的に行うために必要な基礎力の
     育成を図り,一定の成果が得られた。また,第2学年の全生徒を対象とした「課題研究」や,第3
     学年の全生徒を対象とした「課題研究英語発表会」などの取組により,3年間を見通した全校での
     課題研究の体制が整った。第1期SSH(平成2327年度)の各事業に加えて,新規事業として,
     全校での取組である「課題研究英語発表会」,SS特別活動「スーパーカミオカンデ研修」等の,
     生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)を実施した。
     その結果,研修後は「将来,海外に渡って研究を行い活躍したい」,「国際社会で自分の意見を主
     張できるように教養を身に付けたい」等,生徒の感想が聞かれ,将来的に海外で研究を行い国際社
     会で活躍したいという意識を持つようになった。加えて,様々な場面で英語の発表会の実施により,
     英語プレゼンテーション能力が大きく向上し,外部関係者から高い評価を受けた。
     研究開発1 自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問
               題発見・解決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性を引き出し伸ばすカリ
               キュラムの研究開発
     (1) 課題研究による生徒の主体的・協働的な学びの促進
         平成29年10月に第3学年理系生徒全69グループを対象として,課題研究に関する取組状況に関
       するアンケート調査を実施した。アンケート項目は以下の通りである。
         質問1:研究を進めるにあたり,教科書や資料集等を用いて未習分野(授業で学習していない
                 内容)を,グループで自主的に学習したことはありますか?
         質問2:始業前や休み時間,昼休み,放課後,休日など課題研究(SS教科「ESDII」)の
                 授業外で,研究や研究のための準備等を自主的に行ったことがありますか?
         これらの質問に対する,結果を下表に示す。
                   質問1:未習分野の自主学習        質問2:授業以外での研究・準備
                     はい            いいえ                はい            いいえ
                 54グループ        15グループ          60グループ        9グループ
                 (78.3%)        (21.7%)          (87.0%)        (13.0%)
         この結果が示すように,大半のグループが自分たちで未習分野の学習を行ったり,授業以外の
       時間にも自主的に研究を進めたりしている。このことから,課題研究が生徒の主体的・協働的な
       学びを引き出すうえで,大きな効果をあげていることが推察される。
 
     (2)  課題研究の質的向上
         本校では,平成26年度より全生徒が課題研究に取り組んできたが,全校規模での課題研究を進
       めていく中で,先行研究や研究の目的,学術的意義等に関する言及が不十分であったり,定性的
       なアプローチにとどまる研究が多く見られるなど,課題研究の質に関する課題も明らかになって
       きた。第2期SSHでは,課題研究の質的向上を目指し,第1学年の「探究基礎」や「科学技術
       リテラシーI」,第2学年の「探究化学」や「探究物理/生物」等のSS科目を中心に,研究の
       進め方や統計学的視点についての学習内容を盛り込むことで,生徒が課題研究を自律的かつ効果
       的に進められるようになることを目標に教育課程の改善を図ってきた。この効果を検証するため
       に,平成27年度から平成29年度までに生徒が作成した論文について,次のような評価基準を用い
       て評価を行った。
 
 
 
 
                                                5
   ・評価基準(ADの4段階,Aが最高評価)
        <評価規準1:学術的意義や先行研究への言及>
        A 研究の学術的意義に加え,先行研究(これまでにどのような研究が行われ,どのようなこ
             とがすでに明らかになっており,何がまだ解明されていないのか)が示されている。
        B 研究の学術的意義は示されているが,先行研究への言及が不十分である。
        C 自分たちの興味関心等の研究の動機のみの提示に留まり,学術的意義が示されていない。
        D 研究の目的や動機に関する記述がない。
        <評価規準2:定性的/定量的アプローチと統計処理>
        A 定量的なアプローチで研究が進められており,結果がグラフ等の適切な形式で示されてい
             る。また,統計量として,中央値・標準誤差・標準偏差等の平均値以外の数値も用いられ
             ている。
        B 定量的なアプローチで研究が進められており,結果がグラフ等の適切な形式で示されてい
             る。統計量としては,平均値のみが用いられている。
        C 定量的なアプローチで研究が進められているが,結果がグラフ等の適切な形式で示されて
             いない。
        D 定性的なアプローチの研究に留まっている。
        以下に結果を示す。なお,表中の数値は百分率(%)で示した。
 
              1:学術的意義や先行研究への言及       2:定性的/定量的アプローチと統計処理
  年度          A      B        C        D          A       B          C        D
   27          3.2     6.3       85.7      4.8         3.2      54.0        4.8      38.1
   28          8.6     8.6       81.4      1.4        11.4      58.6       15.7      14.3
   29         18.0     12.0      68.0      2.0        18.4      57.1       16.3       8.2
 
     このように,先行研究への言及(A)については,3.2%→8.6%→18.0%,学術的意義への言
   及(AとBの合計)については,9.5%→17.2%→30.0%と,2項目ともに緩やかではあるが値
   が上昇している。また,定量的なアプローチの研究(AからCの合計)は,61.2%→85.7%→91.8%
   と値が大きく上昇している。このことからも,SS科目を中心とした教育課程の改善が,課題研
   究の質的向上に一定の効果があったと評価できる。なお,平均値以外の統計量の使用(表の右側
   のA)についても,3.2%→11.4%→18.4%と緩やかな上昇が見られるものの,カイ2乗検定や
   t検定等の有意差検定を用いたものはほとんど存在しないため,引き続き教育課程の改善を行っ
   ていきたい。
 
 (3)  課題研究の指導体制の確立
     本校は普通科のみの公立高校であるため,私立高校や理数科設置校のように理数系教員の大幅
   な増員や課題研究専属の非常勤講師を配置するといったことは困難である。また,(SSHに指
   定されていない)一般の公立高校が課題研究を導入するにあたっては,指導内容(ソフト面)だ
   けではなく,教員数の問題(ハード面)が障壁になることも多い。そのため,本校では,全校で
   の課題研究を導入した平成26年度より,一般の公立高校にも普及できるよう,限られた人的リ
   ソースでの全校規模かつ効果的な課題研究の指導体制(教員配置や時間割上の工夫)の研究開発
   を継続してきた。本年度は,理系課題研究における物理・化学・生物の各講座に2名ずつの教員
   を2時間連続で配置することができ,全校規模かつ効果的な課題研究の指導体制の1つの形を完
   成させることができた。
   <平成29年度の時間割>
           月            火                  水          木                金
               1組:化学(C1) 2組:化学(C1)         3組:物/生(講師/B1)
   5限
               6組:物理(講師) 5組:物理(P1)             4組:物理(P1)
               課研I(1・6組) 課研I(2・5組)               課研I(3・4組)
                 物(P1・P2)    物(P1・P3)              物(P1・P3)
   6限
                 化(C2・C4)    化(C1・C3)              化(C1・C3)
                 生(B1・C3)    生(B2・C4)              生(B1・B2)
 
 
 
                                                 6
    凡例:5限の化学・物理・物/生は,それぞれ「探究化学I」・「探究物理I」・「探究物理
        I」と「探究生物I」の2講座同時展開を,6限の課研Iは「課題研究I」を示す。また,
        C・P・Bの記号は,それぞれ化学・物理・生物の教員を示しており,記号の後の数字は
        個人を区別するために用いている。また,講師は非常勤講師を示す。なお,本校には9名
        の非常勤ではない理科の教諭が配置されており,その内訳は化学を専門とする教諭が4名
        (うち1名は再任用教諭),物理を専門とする教諭が3名,生物を専門とする教諭が2名
        となっている。
    <実施上の工夫>
    ・月曜と木曜は7限まで,その他の曜日は6限までの週32時間で授業を実施しており,理系6
      クラスの「課題研究I」を,火・水・金の各日に2クラスずつ割り当てている(13組は
      生物選択者と物理選択者との混合クラス,46組は物理選択者のみのクラスであり,生物
      選択者を含むクラスが各日1クラスずつになるようにクラスを組み合わせている)。なお,
      「課題研究I」を6限に設定している理由は,研究の継続を希望するグループは放課後も引
      き続き研究を進められるようにするためである。
    ・課題研究の本研究期間や追実験期間には,5限の「探究化学I」「探究物理I」「探究生物
      I」を課題研究の時間に振り替えることで,2時間連続の研究の機会を確保している(年間
      15回程度,この措置によって生じる授業時数の不均衡は授業変更で対応)。なお,各日の「課
      題研究I」の担当者で,5限に示してある授業を担当していない教員は,5限は空き時間に
      設定しており,特に時間割変更をせずに課題研究の指導に携われるようにしている。
    ・6限の「課題研究I」の時間には,該当クラスの担任も指導に加わることで,主に課題研究
      中におけるグループ毎の活動の様子(各生徒がグループ内でどのような役割を担っている
      か)の観察やメタ認知を向上させるような声掛けを行っている。
    ・文系(4クラス)は,金曜日の4限に設定し,担任・副担任を中心とした12名の教員により,
      5講座展開で指導を行っている。
 
 (4)  文系課題研究の取組改善
     第1期SSHにおいて文系生徒は,持続可能な社会の実現に関する課題研究に取り組んできた
   が,いくつかの課題も顕在化してきた。その中で特に重大であると考える課題を2点あげる。第
   1は,多くのグループの課題研究が,仮説検証型の研究ではなく,調べ学習に留まってしまいが
   ちな点である。第2は,生徒の提案する結論の実現可能性が低いものになりがち(机上の空論に
   陥ってしまいがち)な点である。
     前者の原因としては,実験を繰り返し行っていく中で必然的にPDCAサイクルが回っていく
   理系の課題研究と比較して,文系の課題研究では,仮説の設定から検証までの過程が明確でない
   ものが多いため,PDCAサイクルが回りにくいことがあげられる。また,後者の原因としては,
   高校生がアクセスできる知的リソースの限界が考えられる。例えば,「再生可能エネルギーの導
   入について」の研究を行った場合,再生可能エネルギーの有用性はほとんど誰もが異論なく認め
   ることであろう。しかし,社会全体として再生可能エネルギーに転換できない背景には,技術や
   コスト,社会や経済の仕組みによる問題や,様々なレベルでの立場や考え方の対立等が大きな影
   響を与えていると考えられるが,高校生の持ち得る知的リソースでは,これらの問題について多
   面的に考察することが困難である。
     そこで,第2期SSHにおいて文系の課題研究は,社会に関する課題研究と再定義し,以下の
   ように,仮説検証型の研究となるべく改善を行った。
   <概要>
       地域や社会に潜む問題を見つけ出し,問題解決のための仮説を立てた上で,実際に地域や社
       会に足を運ぶなどして,問題解決及び仮説検証にグループ単位で挑戦する。
   <基本的な流れ>
       1 一般市民に対するアンケートや街頭調査,実地調査等を行い,得られたデータから問題
            を見出す。
       2 1で設定した問題の解決に向けた仮説や解決策を考えだし,それを検証するために実際
            に地域社会で実践を行う。
       3 事後アンケートや街頭調査を再び行うなどして,仮説の検証を図る。
     取組初年度となる本年度は,「生物多様性の保全」(ジビエ料理の活用による生物多様性の保
 
 
                                            7
  全策の提唱,刈谷市民の生物多様性の保全意識を高めるには等),「防災・安全」(東海地震発
  生時における刈谷市内のハザードマップの作成と最適避難経路のシミュレーション,刈谷市内の
  歩行者事故を減らすには等)をはじめとする5つの大テーマでの取組を行った。実施初年度とい
  うことで,多少の混乱や時間的な遅れは見られたが,大まかな枠組みを作成することができた。
  次年度以降は,研究の質的向上を目指し,研究開発を行っていく計画である。
 
 (5) 自律した学習者を育成するための教育課程の改善に係る取組
    平成27年度,第2期の継続申請の内容を校内で検討するに当たり,「これからの社会をたくま
  しく生き抜く,自律した十八歳の育成」及び「真正な学びを創出する「未来型」の進学校への進
  化」を戦略目標として掲げ,さらにこの戦略目標に呼応させる形で,第2期のSSHの研究開発
  課題である「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダーの育
  成プログラムの確立」を設定した。そして,平成28年度には,これらの目標を実現させるための
  方策の一つとして,校長・教頭・教務主任・進路指導主事・生徒指導主事・各学年主任・情報研
  修主任・SSH開発主任及びSSH開発副主任から構成される「学校マネジメントプロジェクト
  会議」の立ち上げた。当プロジェクト会議では,運営委員会や「SS科目担当者会議」等と連携
  を図りながら,学校マネジメントの導入及び学校改革の具体的方策や方向性について検討を行っ
  ている。これまでの具体的な成果の一例としては,これまで実施されてきた補習(課外授業)の
  時間数や実施形態の見直しや,生徒たちが学年を超えて自主・自律的に学びあう「SSゼミナー
  ル」の導入等があげられる。なお,平成29年度は「SSゼミナール」として,科学の甲子園や科
  学オリンピック等に向けた学習会や,(株)日立ハイテクノロジーズから約2か月の間,貸与し
  ていただいた卓上型走査型電子顕微鏡TM-3030を用いた観察会等を実施した。
 
 (6) 教員の指導意識に関するアンケート調査結果から
    教員の指導意識の変容を把握するために,学校マネジメントプロジェクト会議では,SSH開
  発部と連携し,以下のようなアンケート調査を実施した。
  (問)日々の授業実践等における教育活動において,あなたが特に意識している項目は何ですか。
        次の選択肢から,あてはまるものを選んでください(最大5つまで)
    ○教科に関する基礎的・基本的な知識の理解 ○応用問題(入試問題)を解くための知識・技能
    ○教科に関する興味・関心の喚起        ○言語活動の充実
    ○批判的思考力,問題解決能力,意思決定能力の育成        ○主体的・自律的に学ぶ力の育成
    ○仲間と協働的に学習を進める態度          ○コミュニケーション能力の育成
    ○コラボレーションする力(チームワーク)        ○情報リテラシー・ICTリテラシーの育成
    下の表は,平成30年2月に実施したアンケート調査の結果を,選択された回数が多いものから
  順にまとめたものである。なお,表中のスコアとは,各項目が選択された回数を,回答者数の2
  分の1で割った値を示している。
            順位                          項 目                           スコア
              1    教科に関する興味・関心の喚起                            1.52
              2    教科に関する基礎的・基本的な知識の理解                  1.29
              3    主体的・自律的に学ぶ力の育成                            1.14
              4    言語活動の充実                                          0.90
              5    仲間と協働的に学習を進める態度                          0.86
              6    批判的思考力,問題解決能力,意思決定能力の育成          0.81
              7    コミュニケーション能力の育成                            0.72
              8    応用問題(入試問題)を解くための知識・技能                0.52
              9    コラボレーションする力(チームワーク)                  0.24
              10    情報リテラシー・ICTリテラシーの育成                  0.00
    この調査結果を見ると,「教科に関する興味・関心の喚起」,「教科に関する基礎的・基本的
  な知識の理解」に続いて,「主体的・自律的に学ぶ力の育成」が多く選ばれていることがわかる。
  一方,従来の高等学校における学習指導において,大変重視されてきたと考えられる「応用問題
  (入試問題)を解くための知識・理解」は下位にとどまっている。これらの結果からも,本校の
  戦略目標である「自律した十八歳の育成」が,教員間で共通認識として保持されており,「未来
  型」の進学校へ向けての進化が着実に進展しているものと評価できる。
 
 
                                            8
 研究開発2  生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)
           の研究開発
 (1) 全校生徒一人一人が主役となりえる「サイエンスデー」の実施方法の研究開発
     第2期SSHでは,これまで単独で実施してきた「SSH特別講演会」と,第3学年生徒に
  よる課題研究の成果発表会「生徒成果発表会」を1日に集約させ「サイエンスデー」として実
  施している。「サイエンスデー」では,3年生の全員が在校生に対して発表をできるようにす
  るために,代表班によるプレゼンテーション発表の形式ではなく,ポスターセッションの形式
  を採用している。ポスターセッションでは,体育館に約100テーマのポスターがずらりと並び,
  学会さながらの白熱したやりとりが交わされている。なお,ポスターセッションは前後半の2
  部構成し,これと並行して,本校版「科学の甲子園」ともいえる科学をテーマにしたクラスマッ
  チ「刈高サイエンスマッチ」を開催している。刈高サイエンスマッチを実施する目的としては,
  体育館の過密化を防ぐことに加えて,日頃の学習活動で身に付けた問題発見・解決能力や協調
  的問題解決能力を実際の問題解決の場面に活用する経験をさせることの2点がある。例えば,
  前半は第1学年の生徒がポスターセッションを聴講するのに並行して第2学年生徒が刈高サイ
  エンスマッチに取組み,後半は入れ替えて実施するという方法を取っている。刈高サイエンス
  マッチでは,実際に手を動かしてものづくりを行ったり,実験を行いながら課題に取組ませる
  などの競技を中心に行っているが,監督する教員からは,第1学年の生徒に比べて,第2学年
  の生徒はたとえ文系クラスであっても,問題解決のアプローチや思考スキルが非常に高いとい
  う声が複数上がっており,SS科目を中心とした教育活動の成果の現れであると評価できる。
 
 (2)全校英語研究発表会の効果について
       平成29年11月,第3学年全生徒(n=399)を対象にこれまでの課題研究等の取組に関して,ア
     ンケート調査を実施した。以下に示した表は,第3学年全体の回答結果(上段)と全校英語
     研究発表会で代表班として発表した生徒の回答結果(下段)を抜粋したものである。
     ・質問1:仲間と協力して未知な問題を探究し,解決する力が向上した。
                                                     あまり          全く
                       大変            やや
                                                     当てはまらな    当てはまらな
                       当てはまる      当てはまる
                                                     い              い
         全    体       18.7%          59.1%          18.4%            3.8%
         代表生徒       81.3%          18.8%           0.0%            0.0%
     ・質問2:英語プレゼンテーション能力が向上した。
                                                     あまり          全く
                       大変            やや
                                                     当てはまらな    当てはまらな
                       当てはまる      当てはまる
                                                     い              い
         全    体       14.3%          46.5%          30.4%            8.8%
         代表生徒       68.8%          25.0%           6.3%            0.0%
     ・質問3:仲間と協力しながら課題を解決することの有用性を実感した。
                                                     あまり          全く
                       大変            やや
                                                     当てはまらな    当てはまらな
                       当てはまる      当てはまる
                                                     い              い
         全    体       29.8%          49.7%          17.0%            3.5%
         代表生徒       68.8%          25.0%           6.3%            0.0%
 
       アンケート結果から,全校英語研究発表会で代表班として発表した生徒がこれらの質問項目
     に対し「大変当てはまる」と回答した割合が,第3学年全体の値と比べて非常に高くなってい
     ることがわかる。また,代表班として発表した生徒からは,「(Aaron先生からのフィードバッ
     クの内容から)自分たちの発表内容が的確に伝わったことがわかり,とても嬉しかったし,大
     きな自信につながった」という感想も得られた。当発表会は,3年生の10月下旬に実施される
     ことや,約1500人もの聴衆を前にしての発表に加え,外国人講師や在校生と英語での質疑応答
     を行わなければならないことなど,代表発表者の多くにとっては大きな重圧がのし掛かる取組
 
 
                                            9
            であったと推察される。しかし,このような重圧を仲間達と協力して乗り越えたことこそが大
            きな成長の機会となり,自らの成長や学習の有用性(レリバレンス)を実感し,自己肯定感の
            向上につながったものと考えられる。このことから“本物”の体験を経験させることは,生徒
            一人一人の心に火をつけるという点で大きな効果があったものと評価できる。
 
     研究開発3  国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
     (1) 実践的な英語力を育成するための取組の充実
         本校では,課題研究の成果をもとにした全校英語研究発表会を平成27年度から実施してきた。
      司会進行を含め,発表や質疑応答を全て英語で行うことを原則として行ってきた当発表会では
      あるが,平成28年度までの発表会においては,質疑応答において「日本語でもいいですか?」
      と断わりを述べた後に,日本語での質問や説明を行ってしまう場面を目にすることも多かった。
      しかし,3回目となった本年度は,質疑応答も含め全て英語のみで行われ,名実ともに全校“英
      語”研究発表会が実現した。また,外国人講師との質疑応答のやりとりも非常に的を射たもの
      であったうえ,在校生との質疑応答も一往復のみに留まらず非常に活発なものとなり,御臨席
      いただいた評価委員及び運営指導委員の先生方からも非常によい評価をいただくことができ
      た。なお,今回の発表者のほとんどは帰国子女等の海外経験者ではなく,SS科目「SS英語
      IIII」(現「Science & Presentation IIII」)等の授業や「Sci-tech Australia Tour」,
      「Sci-tech English Lecture」等の特別活動を通して,実践的な英語力を高めてきた生徒達で
      ある。これらの成果は,全校英語研究会での質疑応答に耐えうる英語力の育成を目標に据え,
      教育課程や授業の取組改善を行ってきたことの効果の現れだといえる。
 
     (2)  校外における研修や本校SSH事業「Sci-tech English Lecture」への取組状況から
         時習館高等学校のSSH重点枠事業「SSグローバル英国研修」では,平成29年度は3名,
       平成28年度は2名の生徒(各校からの派遣上限数は3名)がイギリスへの派遣を,名古屋大学
       グローバルサイエンスキャンパス事業「名大Mirai GSC」では平成29年度は1名,平成28年度は
       2名の生徒がドイツへの派遣を,いずれも厳しい選考を突破し決めている。さらに,外国人研
       究者を招いて実施する先端科学研究に関する英語レクチャー「Sci-tech English Lecture」に
       は各回2030名程度の生徒が参加している他,60分ほどの講義に対し,質疑応答の時間がほぼ
       毎回30分間を超えるなど,非常に活発なものになっている。このようなことからも,国際社会
       に積極的に関わろうとする態度が垣間見られる。
 
 
 
 2       研究開発の課題
     (1) 研究開発実施上の課題
     研究開発1 自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問
                 題発見・解決能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性を引き出し伸ばすカリ
                 キュラムの研究開発
       (a) 課題研究の質のさらなる向上学術的意義や統計学的処理に関して
           1(2)で述べたように,これまでの実践において,課題研究における一定の質的向上が見
         られ,ほとんどのグループが定量的なアプローチで研究を進めることができるようになったも
         のの,学術的意義や先行研究への言及が不十分である研究が多く見られる。また,SS科目「探
         究基礎」において統計学の重要性やカイ二乗検定・t検定に関する学習活動を行っているにも
         関わらず,自分たちの得たデータに有意差があるかどうかを,検定を用いて論じることができ
         ているグループに至っては非常に少ないのが現状である。これらの課題の解決策については,
         SS科目担当者会議等で教科の枠を超えて議論を進めており,「探究基礎」の授業内での取組
         だけで終わらせてしまうのではなく,「探究基礎」で学習した後は,通常の授業で「実戦形式
         の練習試合」(パフォーマンス課題)を繰り返し行っていくことで,生徒たちが自律的に知識
         や技能を使いこなせるように,教育課程を改善する必要があるという共通理解に達している。
         次年度以降は,例えば「探究基礎」で検定について学んだ後には,理科や数学,情報,公民等
         の授業等において検定を用いるパフォーマンス課題等を繰り返し行い,さらにそれを「探究基
         礎」に活かしていくなどの教育課程のスパイラル化に関する研究開発を進めていく計画であ
         る。これに併せて,文系課題研究についても,引き続き研究開発を行っていきたい。
 
 
                                                  10
   (b)  SSHの効果の見える化
      現在,各教科・科目等においてルーブリックやポートフォリオ等を用いた評価の研究開発が
    進められており,課題研究やSS科目の取組によって,生徒達の資質・能力の変容を個々の実
    践レベルにおいては捉えられるようになりつつある。しかし,「これからの社会をたくましく
    生き抜く,自律した十八歳」や「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグ
    ローバルリーダー」といった本校が育成を目指している人物像に対し,SSH全体としての効
    果を大局的かつ客観的な数値として測定することは,未だに実現できていない。次年度以降は,
    SS科目担当者会議で作成中のマトリックスを導入し,それぞれの教科・科目の目標や役割を
    共有化・明確化することで,到達目標や育てたい力から出発する逆向きの授業設計や指導と評
    価の一体化をより一層進展させると共に,SSHの効果の見える化を進めていく計画である。
 
 研究開発2 生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)
          の研究開発
   (a) 校内における“本物”の体験のより一層の充実と効果の検証
      それまでは一般の生徒の中に埋もれていた生徒が,あるSSH事業への参加がきっかけとな
    り,他の校内でのSSH事業に次々と参加して積極的に質問等を行うようになったり,大学等
    が主催する研修に参加したりするようになった生徒や,東京大学特別研究への参加を契機に進
    路変更を行い,大学進学後にその研究室に所属し再び学ぶ生徒が現れるなど,本校で実施して
    いる各種研修・特別活動が生徒の主体性や自律的な学習態度を引き出すうえで,有効なものに
    なっていると考えられる。その一方で,授業以外のSSH事業に参加しないまま卒業してしま
    う生徒も非常に多いため,各事業の魅力度をより一層高めていくとともに,学校行事等の日程
    調整を進めていくなど,より参加しやすい環境を整えていきたい。また,SSHの課外活動に
    参加した生徒については,卒業後の進路の追跡調査を行い,各種プログラムが“本物”の体験
    となり得ているか,効果の検証も続けていきたい。
 
   (b)  海外研修の一層の充実
      現在,「オーストラリア研修」では,現地の高校にホームステイし,授業に参加したり,課
    題研究の成果について現地の高校生と発表交流を行っており,参加した生徒からは好評を得て
    いる。しかし,当初計画にあるような,同一テーマでの現地校との共同研究やインターネット
    会議システム等を用いての定期的な相互交流,現地での共同研究の実施については未だ実現で
    きていない。これらの目標が一日でも早く実現し,海外研修がより一層の“本物”の体験にな
    るとともに,学校全体に海外連携の成果が還元できるように,実施プログラムの研究開発を重
    点的に行いたい。
 
 研究開発3 国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発
   (a) 自律して英語プレゼンテーションを作成する能力や質疑応答に耐えうる実戦的な英語運用
      能力の効果的な育成に向けた教育課程の改善
      本年度の全校英語研究発表会においては,外国人研究者との質疑応答も含め,全て英語のみ
    で実施することができたが,プレゼンテーションやスクリプトの作成時には,英語科教員を中
    心として,添削指導等の支援を行っている。現在の課題としては,生徒たちが教員の手を借り
    ずに自律的にプレゼンテーションを作成したり,質疑応答ができるようになるための教育課程
    及び指導法を確立することであり,「Science & Presentation IIII」を柱として,SS教科
    「課題研究」や理科・数学等のその他の教科科目の連携を強化することで,いわば練習試合に
    あたるパフォーマンス課題を繰り返し行わせるなどの教育課程の改善を「SS科目担当者会議」
    等を中心に継続して行っていきたい。
 
 
 
 
                                           11
 12
 I       研究開発の概要
 1    学校の概要
      (1) 学校名,校長名
          愛知県立刈谷高等学校,校長 伊藤 泰臣
      (2) 所在地,電話番号,FAX番号
          〒4488504 愛知県刈谷市寿町5101
          TEL 0566213171        FAX 0566259087
      (3) 課程・学科・学年別生徒数,学級数及び教職員数(平成30年1月31日現在)
          1 課程・学科・学年別生徒数,学級数
                                  第1学年       第2学年        第3学年                                       計
            課程      学科
                                       生徒数    学級数     生徒数          学級数   生徒数   学級数   生徒数        学級数
                         普通科        404         10           401          10       399      10      1204           30
          全日制
                        (うち理系)     共通                     233           6       240       6                     
          2       教職員数
                                          養護         非常勤        実習             事務
           校長       教頭     教諭                                           AET              司書    その他          計
                                          教諭           講師        助手             職員
              1         2         59        2              17          2       1        5        1        1            91
 2     研究開発課題名
                                                  ・
        科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダー育成プログラム
      の確立
 3    研究開発の目的・目標
      (1) 目的
                                                                ・
           将来,科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あるグローバルリーダーとして活躍す
         るために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思
         考力,問題発見・解決能力,協調的問題解決能力,国際社会においても通用する発信力,批判的
         思考力,創造性等を「意識的に」引き出し伸ばす,自律した十八歳を育成するカリキュラムの確
         立及びその評価法を開発する。
      (2) 目標
           1 スーパーサイエンス教科(以降「SS教科」とする)「課題研究」を教育活動の中心に据
             え,全ての教科・科目において,主体的・協働的な学びを展開するとともに,探究課題やパ
             フォーマンス課題,学習プロセスの評価法等を開発する。
           2 海外での研究活動や外国人との研究交流,研究者との議論,科学技術・理数系コンテスト
             への挑戦,企業や大学・研究機関と連携した研修,地域貢献を目的とした調査研究などの“本
             物”の体験を通して,生徒一人一人の主体性を引き出す。
           3 スーパーサイエンス科目(以降「SS科目」とする)「Science & PresentationI・II・III」
             やSS教科「課題研究」の成果発表等を通して,国際社会で通用する発信力を身に付けさせ
             る。
 4    研究開発の概略
      (1) 研究開発テーマ(重点研究開発課題)
          1 SS教科「課題研究」や理科,数学,英語,公民,情報の各教科にSS科目を設置するこ
           とで,将来グローバルリーダーとして活躍するために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り
           越える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解決能力,協調的問題解
           決能力,国際社会でも通用する発信力,批判的思考力,創造性等を引き出し伸ばすカリキュ
           ラムの研究開発を行う。
          2 オーストラリアや東南アジアなどの海外での研究活動,外国人留学生や研究者との意見交
           換,研究者との議論,科学の甲子園や科学技術・理数系コンテストへの挑戦,企業や大学・
           研究機関と連携した研修,地域貢献を目的とした調査研究などの,生徒一人一人の主体性,
           自律的な学習態度を引き出すプログラム(“本物”の体験)の研究開発を行う。
          3 SS科目「Science & Presentation」や「課題研究I・II」での成果発表など,国際社会
           で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの研究開発を行う。
 
                                                                13
 (2)    研究開発の実施規模
       全校生徒を対象に実施
       1 スーパーサイエンス教科・科目(対象者数は平成30年1月31日現在)
                              具体的研究活動                               対象
           学校設定科目「探究数学基礎」              6単位
           学校設定科目「科学技術リテラシーI」       4単位
           学校設定科目「社会と科学」                2単位      第1学年 404名(全員)
           学校設定科目「Science&PresentationI」     4単位
      第
           学校設定教科「探究基礎」                  1単位
      2
           学校設定科目「探究化学I」                 3単位
      期
           学校設定科目「探究物理I」                 3単位※    第2学年理系 233名
      S
           学校設定科目「探究生物I」                 3単位※
      S
           学校設定科目「探究数学I」                 6単位
      H
           学校設定科目「科学技術リテラシーII」      2単位      第2学年文系 168名
           学校設定科目「Science&PresentationII」    2単位
           学校設定教科「ICTリテラシー」          2単位      第2学年 401名(全員)
           学校設定教科「課題研究I」                 1単位
           学校設定科目「SS応用化学」              4単位
      第
           学校設定科目「SS応用物理」              4単位※
      1                                                         第3学年理系 240名
           学校設定科目「SS応用生物」              4単位※
      期
           学校設定科目「SS数学III」               6単位
      S
           学校設定科目「SS理科III」               2単位      第3学年文系 159名
      S
           学校設定科目「SS英語III」               2単位
      H                                                         第3学年 399名(全員)
           学校設定教科「ESDIII」                 1単位
                                                         ※はいずれか一方を選択して履修する。
     2 SS特別活動
                 具体的研究活動                                  対象
                                             第13学年全生徒 1,204名
     「SS特別講演会」
                                             保護者及び地元中学・高等学校教員等
                                             第13学年全生徒 1,204名
     「サイエンスデー」
                                             保護者及び地元中学・高等学校教員等
                                             第13学年全生徒 1,204名
     「校内生徒成果発表会(英語)」
                                             保護者及び地元中学・高等学校教員等
     「大学特別研究」「施設訪問研修」        全学年希望者 47名
     「SCI-TECH AUSTRALIA TOUR」             第2学年希望者 12名
     「SCI-TECH ENGLISH LECTURE」            全学年希望者 56名
     「Empowerment Program」                 全学年希望者 26名
     「SS校内実験研修」                    全学年希望者 60名
     スーパーサイエンス部                    第13学年 51名
 (3)   平成29年度SSH実施事業一覧
       1講演会の実施
                                                                                             対象学年
 月      日                                    SSH事業名
                                                                                          1   2     3
                   SSH講演会「グローバル時代のリーダーとしての科学者の資質と役割」
 6      16                                                                                全        全    全
                     川西    俊吾 教授(北陸先端科学技術大学院大学 副学長)
       2SS特別活動の実施
                                                                 対象学年             主な分野
  月          日                     SSH事業名
                                                               1 2 3       物   化 生 地 数            英
                            サイエンスデー
 6      16                                                     全   全   全   ○   ○   ○     ○    ○   ○
                              ポスターセッション
 
 
                                                       14
                         刈高サイエンスマッチ
 7/12・1/26            SCI-TECH ENGLISH LECTURE         希   希      希    ○   ○    ○             ○
 7/20・7/21・          SS校内特別講座
 7/25・8/1・8/7        (物理2講座,化学1講座,         希   希      希    ○   ○    ○
 8/8・8/21               生物2講座)
 7     28              再生医療企業訪問研修 J-TEC       希   希      希         ○    ○
 7/28・8/25            名古屋大学特別研究               希   希      希               ○
 7/318/5               東京大学特別研究                      希      希    ○         ○
 8     711             Empowerment Program              希   希      希                              ○
 8     2830            スーパーカミオカンデ施設訪問     希   希      希    ○   ○           〇
 10    23              校内生徒成果発表会(英語)       全   全      全    ○   ○    ○             ○
 3     412             SCI-TECH AUSTRALIA TOUR          希   希            ○   ○    ○             ○
      3各種発表会・コンテスト等への参加
 月    日          発表会・コンテスト等の名称                参加者                       備考
 5     16    平成29年度湿地サミット(刈谷市)                  3名
             物理チャレンジ2017 第1チャレンジ
 7     9                                                      10名
             *特例会場として本校で実施
                                                                          「カキツバタの成長速度の差
 7     16        SSH東海地区フェスタ2017                   34名        異」「シャトルコックの劣化と
                                                                          飛行」の2研究が優秀賞を受賞
                 日本生物学オリンピック2017予選
 7     16                                                     48名
                 *特例会場として本校で実施
 8    9・10      SSH全国生徒研究発表会(神戸市)           3名
                 あいち科学の甲子園トライアルステージ                     グランプリステージへの進出決
 10    21                                                     12名
                 (名古屋市)                                             定
                                                                          「劣化したシャトルコックの飛
                 AITサイエンス大賞
 11     4                                                     23名        行」「生物多様性調査」の2研
                 (愛知工業大学,豊田市)
                                                                          究が優秀賞を受賞
           京都産業大学益川塾第10回シンポジウム
 12    17                                                     3名
           (京都産業大学,京都市)
 12  27    科学三昧 in あいち2017(岡崎市)                   29名
  1  8     日本数学オリンピック予選                           8名        1名は本選に出場
  1  20    あいち科学の甲子園グランプリステージ
                                                              8名
           (名古屋市)
     11    時習館高校海外重点枠「英国研修」                               3名が平成30年3月に実施され
  3                                                           3名
    18 *国内研修 29年5月30年1月                                          る英国研修への派遣が内定
           名古屋大学グローバルサイエンスキャンパ
                                                                          うち1名が平成30年3月に実施
     4     ス事業「名大MIRAI GSC」
  3                                                           7名        されるドイツ研修への派遣が内
    11 *国内研修 29年6月30年2月
                                                                          定
           (名古屋大学,名古屋市)
    4地域貢献活動の実施
                                                                対象学年                  主な分野
 月         日                  SSH事業名
                                                              1 2 3          物   化   生 地 数    英
  4/285/7          刈谷市及び周辺地域の在来種調査(春季)     全 全 全                    ○
                   せいりけん市民講座
  7         22                                                SS部活動                   ○
                   一般市民向けワークショップ
 9/2310/17 刈谷市及び周辺地域の在来種調査(秋季)             全     全                    ○
 5/13・5/16・ 国指定天然記念物「小堤西池のカキツバタ
                                                              SS部活動                   ○
  6/11・9/9   群落」の研究保全活動
              刈谷市児童生徒理科研究発表会での研究
  1      20                                                   SS部活動                   ○
              発表
 
 
                                                15
 II-1      自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力に加え,科学的リテラシー,
          科学的思考力,問題発見・解決能力,協調的問題解決能力,批判的思
          考力,創造性等を引き出し伸ばすカリキュラムの研究開発
 
 1    研究開発の課題
      (1) 目標
          スーパーサイエンス教科(以降「SS教科」とする)「課題研究」を教育活動の中心に据え,
       全ての教科・科目において,主体的・協働的な学びを展開するとともに,探究課題やパフォーマ
       ンス課題,学習プロセスの評価法等を開発する。
      (2) 実践及び結果の概要
          SS教科「課題研究」を中心として,全ての教科・科目において主体的・協働的な教育活動を
       取り入れるなど,構成主義的な学習観への転換を意識した。SS科目「探究基礎」では,SS科
       目「科学技術リテラシーI」や「探究数学基礎」等と連携しながら,第2学年以降の課題研究を
       自律的に行うための準備段階として,論証や議論の方法,論理的な文章の書き方,統計・検定の
       方法等について,構成的・体験的に学ばせることができた。このような取組によりSS科目「課
       題研究I」では,学術的意義や統計的処理等の側面において,研究の質的向上が見られた。また,
       「課題研究I」を進めるにあたっては,8割近くのグループが未習分野の自主的な学習を行い,
       9割近くのグループが授業時間以外にも研究や研究の準備を行うなど,課題研究が生徒の自律的
       に学ぶ力や協調的問題解決能力等の育成に効果的なことが再確認できた。
 
 
 2   研究開発の経緯
   第1期SSH(平成2327年度)では,全ての学年にSS教科・科目を設定するとともに,各学年
 の「総合的な学習の時間」(各1単位)をSS教科「ESD」に改編し,問題発見・解決能力,プレ
 ゼンテーション能力の育成を図った。平成26年度には,第2学年で年間を通して取り組む課題研究(理
 系は理数に関する課題研究,文系は持続可能な社会に関する課題研究)を柱とした3年間のカリキュ
 ラムを完成させ,全校での課題研究の推進体制を構築した。以降,34人を1グループとして毎年
 約100テーマの課題研究が行われている。
   第2期SSH(平成2832年度)では,課題研究を全ての教育活動の柱に据え,SS科目やその他
 の教科・科目において主体的・協働的な学びを展開することで課題研究の質的向上と自律的に学ぶ力
 をはじめとした科学する力のさらなる育成ができると考えた。
   平成28年度には,SS教科「ESD」をSS教科「課題研究」に改編し,第1学年にSS科目「探
 究基礎」(1単位)を設置した。当科目の目的は,第2学年以降での課題研究を自律して行うために
 必要な考え方や技能や主体的・協働的に学ぶ態度を身につけさせることであり,論証や議論の方法,
 論理的な文章の書き方(パラグラフ・ライティング),統計・検定の手法,調査・研究の方法と問い
 の立て方等について体験的に学ばせた。また,第1学年の理科を「科学技術リテラシーI」(4単位)
 に,数学を「探究数学基礎」(6単位)に,公民(現代社会)を「社会と科学」(2単位)に改編し,
 主体的・協働的な学びを実践するとともに,探究活動などの「探究基礎」と連携した教育活動を行っ
 た。
   平成29年度には,第2学年に「課題研究I」(1単位)を設置し,理系は理数に関する課題研究を,
 文系は社会に関する課題研究を実施した。また,第2学年理系の理科に「探究化学I」及び「探究物
 理I」/「探究生物I」(各3単位)を設置し,探究活動や課題研究等の「課題研究I」と連携した教
 育活動を行った。また,第2学年理系の数学に「探究数学I」(6単位)を,文系の理科に「科学技
 術リテラシーII」(2単位)を設置するとともに,第2学年の情報科に「ICTリテラシー」(2単
 位)を設定した。理系の「課題研究I」では,教員配置の見直しを行うことで,各講座2名以上の教
 員による指導体制を確立できた。また,文系の「課題研究I」では,これまで以上に仮説検証型の研
 究活動とすべく,社会に関する課題研究(地域社会に潜む課題や問題を自ら発見し,その解決のため
 の仮説を立てた上で,実際に地域社会において何らかの実践を行うことで,その検証を図るという研
 究活動)への改善を行った。
 
 
 
 
                                                16
 3    研究開発の内容
      (1) 仮説
          SS教科「課題研究」を教育活動の中心に据え,全ての教科・科目において,主体的・協働的
       な学びを展開し,探究課題やパフォーマンス課題,学習プロセスを重視した評価法を取り入れる
       ことで,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問
       題発見・解決能力,協調的問題解決能力,発信力,批判的思考力,創造性等を引き出し,伸ばす
       ことができる。
 
      (2) 研究内容・方法・検証
             1
             第1学年
           ア 学校設定科目「探究基礎」
           教 科     課題研究                      科目名        探究基礎
           単位数    1単位                        対象生徒      第1学年 404名
                     第2学年で課題研究を自律して行うために必要な考え方や技能,主体的・協働的
                   に学ぶ態度を身につける。論証や議論の仕方,論理的な文章の書き方(パラグラフ・
           目 標
                   ライティング),統計・検定の手法,調査・研究の方法と問いの立て方などについ
                   て体験的に学習する。
         使用教材    自作プリント
         指導計画           指導内容(時間数)                         取    組
           1学期 0 オリエンテーション(1)
                   11 論文と論証(4)                 ・論文とは何か?や,妥当な論証の形式に
                     ・論証とは何か/妥当な論証形式1    ついて議論やグループ活動等を用いな
                     (モードゥス・ポネンス,モードゥ    がら構成的に理解する。
                       ス・トレンス)
                     ・妥当な論証形式2                ・構成的ジレンマ,背理法,非演繹的論証
                                                         を理解する。
                   12 パラグラフ・ライティング       ・論理的な文章を書くための世界標準の文
                          (6)                         章技法であるパラグラフ・ライティング
                     【課題】科学技術に関するオピニオ    を学習する。また,夏季休暇中の課題と
                              ン・エッセイを書こう       してオピニオン・エッセイを作成する。
           2学期    ・オピニオン・エッセイ発表会      ・科学とはどのような営みか,単純に白黒
                   2 科学的リテラシー(12)               つけられない問題にはどのように対処
                     ・脱二分的思考法科学とはどのよ      すればよいかを実践的に学習すること
                       うな営みか                        で,市民としての科学的リテラシーを育
                     ・白黒つけられない問題にどのよう    成する。
                       に対処すればよいのかトレー
                       ド・オフ                        ・研究や科学技術に関する意思決定に必要
                     ・クリティカル・シンキング因果      なクリティカル・シンキングについて実
                       関係と相関関係                    践的に学習する。統計学については,ヒ
                     ・クリティカル・シンキング統計      ストグラムの作成,代表値と箱ひげ図の
                       学的な視点を身に付けよう          作成,標準偏差,区間推定,検定(カイ
                   【探究活動】バイカラーコーンの胚乳    二乗検定,t検定)などを,原理は詳細
                       の色の遺伝を統計学的に解析す      に分からなくとも,道具として使えるよ
                       る                                うになることを目指す。
         3学期    31 議論の仕方(3)                 ・課題研究を進めていく上で欠かせない,
                     *科学的リテラシー調査              議論とそのルールについて学習する。
                   32 課題研究のための学術的問       ・来年度の課題研究のイメージを膨らま
                          題の提起(4)                   せ,先行研究調査や研究テーマの検討を
                                                         行う。
 
        《変容と考察》
            探究基礎ではパラグラフ・ライティングでは,パラグラフ内の構造やパラグラフ間の関係性
 
                                                17
 等の論理的な文章の書き方を学習した後に,その実践として科学技術に関するオピニオン・エッ
 セイを作成し,生徒間での相互評価を行った。この活動を通して,パラグラフ・ライティング
 に則った文章を書けるようになった。
   クリティカル・シンキングでは,因果関係と相関関係等の違いについて学んだ後に,SS科
 目「探究数学基礎」と連携し,数学Aの内容を発展させる形で,代表値や標準誤差,区間推定
 や検定(カイ二乗検定やt検定)を体験的に学習させた。特に,カイ二乗検定においては,バ
 イカラーコーン(黄色と白の粒が混ざりあったトウモロコシ)の胚乳の色の分離比について,
 理論値を中学校までの遺伝の知識から予測をしたうえで,実際の数をカウントし,測定値と理
 論値の差に有意差があるかどうかの判定を行った。授業実施後に行ったアンケート調査では,
 「これまでに数値が近いかどうかは,四捨五入や大体近いだろうという自分の感覚に頼ってい
 たが,検定のように数学的な基準があることを知り,目からうろこだった」という意見が多数
 見られた。また,区間推定の指導にあたっては,身体測定の結果を利用し,刈谷高校1年生の
 男子または女子全員の身長の平均を,区間推定を用いて各グループで求めさせるなど,知識を
 活用できるレベルになった。また,教科横断的な内容を取り入れたことで,新しい刺激や発見
 の多い授業となった。来年度以降は「科学技術リテラシーI」をはじめとした他のSS教科・
 科目との連携を強化し,より効果的に教育活動を進めていく計画である。
 
     イ 学校設定科目「科学技術リテラシーI」
   教 科      理科                        科目名        科学技術リテラシーI(α)
   単位数     2単位/4単位            対象生徒        第1学年 404名
              主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)を通して,自然科学全般につ
            いての見方を習得させる。さらに,先端科学技術に関するディスカッション等を
   目 標
            通して科学的リテラシーを身につけさせる。また,「課題研究I」を自律して行
            うための基礎力を養成する。
 使用教材   自作プリント,物理基礎(第一学習社),化学基礎(第一学習社),生物基礎(啓
            林館),地学基礎(啓林館)
 指導計画           指導内容(時間数)                          取    組
   1学期   1 物質の構成 (15)
                1 宇宙と地球                  ・学び合いを通して,宇宙誕生から現在に
                                                  至るまでの科学の営みやスケール感を
                                                  学習する。
                2 物質と化学結合              ・原子やイオン,化学結合に関して,電子
                                                  軌道の概念を踏まえて論理的に説明で
   2学期                                         きるよう学習する。
            2 力と運動 (25)
                1 力のはたらき                ・学び合いを通して,力のはたらきや社会
                                                  での利用法を学習する。
                2 運動の法則                  ・実験を通した観測・仮説・検証を軸とし
                                                  て,運動の法則を学習する。
            【探究活動】摩擦係数の測定        ・摩擦係数の測定について,自由度の高い
   3学期
                                                  パフォーマンス課題の形式で実験計画
                                                  をし,測定を行う。
            3 波動 (20)
                1 地球の構造と波              ・地球の内部構造の推測方法や地震発生の
                                                  原理を学習する。
                2 波の性質                    ・ジグソー法を用いて,身近な現象の捉え
                                                  方として粒子的概念と波動的概念の2
                                                  面性があることを学習する。
            【探究活動】屈折率の測定          ・屈折率の測定について,自由度の高いパ
                                                  フォーマンス課題の形式で実験計画を
                                                  し,測定を行う。
 
 
 
                                        18
     教 科       理科                          科目名       科学技術リテラシーI(β)
     単位数      2単位/4単位              対象生徒       第1学年 404名
   指導計画            指導内容(時間数)                           取    組
               1 生物の多様性と共通性(18)
     1学期        1 生物の多様性と共通性          ・生物多様性とその重要性について構成的
                                                      に学習する。
                   2 エネルギーと代謝              ・酵素に関してカタラーゼを用い定性的な
                                                      実験を実施する。
               【探究活動】ブラック・ボックス      ・中身の見えない黒い箱の内部の構造を推
                                                      測し,議論しあうことで,科学のプロセ
     2学期    2 遺伝子とそのはたらき (22)          スや仮説とは何かを理解させる。
                   1 遺伝情報の発現
                                                   ・遺伝子の場所や発現経路についてストー
                   2 遺伝情報の分配と変異             リーを組立てられるよう深く学習する。
                                                   ・ゲノム操作まで含め,現代の科学の進歩
                                                      と倫理的な問題について取り扱う。
     3学期
                                                   ・PCR法の原理について考察する。
               【探究活動】カタラーゼの実験の定 ・1学期に実施したカタラーゼの定性的実
                            量化及び追加実験          験を定量化することで,定量的な実験の
                                                      重要性を理解させる。また,カタラーゼ
                                                      の性質をさらに詳しく調べるための実
                                                      験をグループ毎に実施され,その結果を
               3 物質量と化学反応式(20)             レポートにまとめる。
                   1 物質量と化学反応式            ・αから引き継いだ内容を踏まえ,物質量
                                                      について学ぶ。
               【探究活動】ステアリン酸を用いた ・実験値から,実際にアボガドロ数を算出
                            アボガドロ数の算出        する。
 《変容と考察》
     年間を通して,アクティブ・ラーニングの視点を意識した授業を実施した結果,放課後など
   に生徒が主体的・協働的に学び合っている姿を目にする機会が増えた。実験や議論を通して,
   主体的・協働的に知識が構成できる授業展開を意識した。また,言語活動を充実させ,論理的
   に考え自分の言葉で適切に説明できるようなトレーニングを行った。定期考査においても,記
   述形式の設問を増やし論理的に物事を説明する能力を育んだ。α,βともに,探究活動を複数
   回実施し,次年度の「課題研究I」を自律して行うための探究スキルの向上が図った。次年度
   以降も,主体的,対話的で深い学びを推進するため,習得活用探究の学習サイクルの研究
   開発を行っていきたい。
 
 
 
 
      ▲生徒達が考えたブラック・ボックスの内部構造の一例
 
 
 
 
                                              19
     ウ 学校設定科目「探究数学基礎」
   教 科      数学                            科目名      探究数学基礎(α)
   単位数     3単位/6単位                対象生徒      第1学年 404名
               「数学I・II・A」の内容を,パフォーマンス課題等を交えて学習しながら,事
            象を数学的に考察し表現する能力を培い,数学的論拠に基づいて判断する態度を育
            てる。また,課題学習時にはグループワーク等を通して,協調的問題解決能力,発
   目 標
            信力,批判的思考力を高め,自律的に学ぶ力,創造性を育成し,「数学III・B」の
            内容を理解,習得するための土台となる数理的な興味関心を高め,科学技術研究へ
            の意欲を啓発する。
 指導計画             指導内容(時間数)                            取    組
 1学期       4月     実数(6)                           ・実数の平方が負にならない性質
                                                          を強調した。
              5月     2次関数                          ・量の変化を,グラフで表すこと
                      (第1回定期試験)(8)                 の利点を理解させることに力を
              6月                                         いれた。
                      2次不等式                        ・不等式とグラフの関係を理解さ
              7月     (第2回定期試験)(15)                せ,視覚的にとらえることを学
 2学期               三角比(5)                           ばせた。
              8月                                       ・三角比の意味や重要性を十分に
                      (課題試験確認)                      理解して活用できるように指導
              9月                                         した。
                      三角形への応用                    ・二項定理や多項定理を通じて式
            10月      (第3回定期試験)(9)                 の展開と場合の数との関連を考
                                                          えさせた。
            11月      式と証明                          ・証明問題の意義と答案や論証の
 3学期
                      複素数と方程式                      進め方を確認した。
            12月      (第4回定期試験)(20)              ・グラフ理解のため,一部の授業
                      三角関数(7)                         でコンピュータを活用した。
              1月                                       ・諸公式を加法定理から導く方法
                      加法定理(15)                        を確認した。
              2月                                       ・総合演習によって,1年次の内
                      総合問題演習(8)                     容を再確認させ,理解を深めさ
              3月                                         せた。
   教 科      数学                            科目名      探究数学基礎(β)
   単位数     3単位/6単位                対象生徒      第1学年 404名
 指導計画             指導内容(時間数)                            取    組
 1学期       4月     数と式,集合と命題(8)             ・対称式の概念に触れ,3文字の
                                                          対称式も扱った。
              5月     場合の数(7)                       ・場合の数の数え方を系統的に分
                                                          類し,確認させた。
              6月     確率(16)                          ・平面幾何の分野では,平面幾何
                                                          の諸公式や空間の基礎概念を確
              7月     図形の性質(5)                       認した。
 2学期                                                 ・整数分野では,整数問題の基本
                                                          的な考え方を簡潔に説明した。
                                                        ・図形を表さない方程式について
              9月     整数の性質(5)                       考えることで,図形の方程式の
                                                          理解を深めさせた。また,軌跡
            10月      点と直線(8)                         の分野や線形計画法や通過領域
                      円(4)                               ではさらに理解を深めるために
                      軌跡と領域(5)                       コンピュータを利用することに
            11月
                                                          努めた。
 
 
                                        20
  3学期    12月        データの分析(10)                   ・指数の概念に力を入れて説明
                        指数関数(8)                          し,指数が実数の範囲まで拡張
             1月                                             できることを説明した。
                        対数関数(12)                       ・総合演習によって,1年次の内
             2月                                             容を再確認させ,理解を深めさ
                        総合問題演習(8)                      せた。
             3月
 《変容と考察》
     事象を数学的に表現し,論理的に扱うことでより正確に理解することが可能であること,ま
   た,数学が科学的研究に不可欠な言語であることを実感させ,学習への意欲と興味の向上を目
   指した。コンピュータのグラフソフトを用いた授業で関数のグラフ,線形計画法や通過領域に
   おける図の理解を深め,視覚的にとらえることの意義や面白さをより強く実感できるように努
   めた。SS教科「課題研究」と連携し,具体的な数学の活用例として,区間推定やカイ二乗検
   定について学ばせることで,研究におけるデータの分析の難しさと重要性を知ることができ,
   同時に,興味関心を高めることができた。
     時間的に余裕はない中で,基本である教科書の内容を確実に理解,習得させることと,その
   発展である数学的に高度な内容を紹介し,学習させることの両立が必要となる。今年度,演習
   を行う際,積極的にグループワーク(学びあい)を取り入れた。一斉授業とグループワークに
   ついてのアンケートを行った結果,約8割の生徒が「グループワークの方が一斉授業よりも授
   業内容についてより興味関心を深めることができる」と答えた。今後,授業改善に努め,生徒
   のより深い学びを支援できるように授業の質を高めていきたい。
 
 
      エ 学校設定科目「社会と科学」
    教 科      公民                            科目名     社会と科学
    単位数     2単位                        対象生徒     第1学年 404名
               グローバルリーダーとして,必要な自律的に学ぶ力に加え,科学的リテラシー,
    目 標    科学的思考力,批判的思考力,情報活用能力,問題発見・協調的問題解決能力,プ
             レゼンテーション能力,創造性を引き伸ばす。
  使用教材   高校現代社会(実教出版),政治・経済資料2017(東京法令出版)
  指導計画            指導内容(時間数)                            取    組
  1学期         1 現代社会の諸課題(2)            ・持続可能な世界の観点から,地球規
                      地球規模の諸課題                  模の諸課題について多面的・多角的
                      「持続可能な社会」をめざして      に考察を行う。
                      ミニ探究1
 
                   2   現代の経済社会と政府の役割(10) ・経済学の基礎的な理論を実践的に学
                        市場機構の仕組み                   習し,理解を深める。
                        現代の企業                       ・日本が抱える資本主義経済の諸課題
                        財政・金融                         を資料から多面的・多角的に捉え,
                        ミニ探究2                         三角ロジックを活用して論証を行
  2学期
                                                           う。
 
                   3   経済活動のあり方と国民福祉(10) ・少子高齢化に苦悩する日本が抱える
                        労働問題と雇用                     労働・社会保障の諸課題について,
                        社会保障                           グローバル化の観点から探究学習
                        探究学習                           を実践し,論文形式のパフォーマン
                                                           ス課題を完成する。
  3学期
                   4   国際経済の動向(20)            ・国際経済の理論を実践的に学習し,
                        国際経済のしくみ                  理解を深める。
                        南北問題                        ・グローバル化が進展する国際経済の
 
 
                                            21
                      地域経済統合と新興国の動向         諸課題を客観的に捉え,共存共栄の
                      エネルギー・環境問題               観点から考察を行う。
                      ミニ探究3                       ・持続可能な世界の実現に向けて,環
                                                         境と経済の好循環を導き出す新経済
                                                         社会システムの構築について三角ロ
                                                         ジックを活用して論証を行う。
 
                 5   国際政治の動向(12)             ・国際政治の動向とその諸課題を,共
                      国際社会における政治と法           存の観点から諸資料を分析し,国際
                      異なる人種・民族との共存           貢献の観点から日本の役割につい
                      国際社会と日本                     て多面的・多角的に考察を行う。
                      ミニ探究4
 
                 6   未来を切り拓き世界で活躍するグ   ・1年間の学習内容を活かして,グ
                      ローバルリーダーをめざして         ローバルリーダーとしてどのよう
                      探究学習                           な未来を切り拓くか?を,自律的に
                                                         考察し,論文形式のパフォーマンス
                                                         課題を完成する。
 《変容と考察》
     知識構成型ジクソー法では,授業の狙いと生徒が意欲的に取り組みたくなる導入と発問を明
   確にしたことで,下記の「生徒の探究活動アンケート」結果の数値が示すように,自律的に学
   ぶ力を向上させたと考える。そして,エキスパート活動,ジクソー活動,クロストークという
   3ステップの学習プロセスを重視したことで, 科学的思考力,批判的思考力,問題発見・協
   調的問題解決能力,プレゼンテーション能力 を引き出し,伸ばせたと考える。パフォーマン
   ス課題では,プレゼンテーションという発展的な言語活動による論述力の向上で,下記の「パ
   フォーマンス評価」結果の数値が示すように,科学的リテラシー,発信力,創造性を引き出せ
   たと考える。次年度は,学習プロセスで重視した言語活動をより充実させ,論理的説得力をも
   つ論文を完成させて,一人一人の学びを深めることが課題となる。
       〇「生徒の探究活動アンケート」〈2017年12月実施〉
         (数値:「当てはまる」・「やや当てはまる」という回答をした生徒の割合)
                             アンケート項目                        結果
         現代社会に関する関心が高まった。                         89.8%
         必要な資料を収集し,分析ができた。                       80.4%
         多面的・多角的に物事を考えることができた。               84.6%
         グローバルな視点で考えることができるようになった。       87.1%
         現代社会の課題や問題点について理解が深まった。           87.1%
       〇「パフォーマンス評価」〈2017年11月実施〉
         (パフォーマンス課題:「女性の社会進出を促進するための方策を考える」)
           評価                             評価基準                             結果
                 様々な資料を踏まえて多面的・多角的に考察し,女性の社会進出
           A    促進のための方策をまとめることができた。 また,その判断根     49.4%
                 拠が論理的に明確に述べられている。
                 様々な資料を踏まえて多面的・多角的に考察し,女性の社会進出
           B                                                                  50.6%
                 促進のための方策をまとめることができた。
                 女性の社会進出促進のための方策が多面的・多角的に述べられて
           C                                                                   0.0%
                 いない。
 
 
 
 
                                         22
     2第2学年
       ア 学校設定科目「課題研究I」
         (ア) 《理系》(理数に関する課題研究)
     教 科        課題研究                         科目名      課題研究I
     単位数       1単位                         対象生徒      第2学年 理系生徒233名
                   理科課題研究を通して,将来グローバルリーダーとして活躍するために必要な,
                自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力,科学的リテラシー,科学的思考力,問題
     目 標      発見・解決能力,協調的問題解決能力,主体的・協働的な学習態度等の育成を図
                るとともに,論文やポスターの作成を通して自身の研究に対する考えをまとめ,
                分かりやすく説明できる技能や発信力等の向上を目標とする。
   使用教材        自作プリント
   指導計画           指導内容(時間数)                         取      組
     1学期      4 月 ・オリエンテーション ・課題研究の主旨説明,研究の進め方の指導及び
                                                 興味分野に関する参考文献を調査する。
                 5 月 ・基礎ゼミ15             ・分野ごとで共通の基礎実験を行い,実験スキル
                                                 の向上を図る。
                 6 月 ・テーマ検討             ・研究に関する学術的意義を考えて,テーマを設
                        ・テーマディスカッ       定する。
                          ション13
                 7 月 ・予備実験1,2           ・予備実験を踏まえて,実験計画と仮説を立てる。
                        ・本研究1              ・2時間連続の本研究を開始する。
                        ・夏期課題研究         ・夏季休業中は半日×2日の研究時間を設ける。
     2学期      9 月 ・中間発表準備1,2 ・夏期休業中の課題研究の成果を発表し合い,各
                        ・中間発表会             研究に関して議論を行う。
                10 月 ・本研究28               ・仮説を検証するための具体的な研究計画を立
                11 月                            て,仮説と検証を繰り返す。
                12月 ・論文作成14              ・研究成果を論文にまとめる。
     3学期      1 月 ・追実験1,2             ・研究をまとめていく中で生じた新たな課題を解
                                                 決するための追実験を行う。
                 2 月 ・論文修正13             ・論文を完成させる。ルーブリックを用いた自己
                                                 評価と教員による評価を行う。
                 3 月 ・ポスター作成           ・研究成果をポスターにまとめる。
                          13                   ・1年間の振り返りと来年度に向けた確認を行
                        ・1年間のまとめ         う。
   ※本研究18,追実験1,2は探究物理,生物,化学と連携して2時間連続で実験を行った。
 《変容と考察》
       本校における理科課題研究の取り組みも4年目となり,生徒達は先輩達などを手本にしなが
     ら1年間を通して主体的・協働的に理科課題研究を実施できるようになってきた。また,面談
     やルーブリックなどを用いたフィードバックなどを効果的に行ったりするなど,教員の体制や
     指導力も向上してきている。
       本年度の新たな取り組みとしてあげられるのは,年度当初での基礎ゼミと研究終盤での追実
     験である。基礎ゼミでは,物理講座:単振り子におけるデータ処理方法,化学講座:分離・生
     成,滴定などの基礎操作から考える化学,生物講座:無菌操作及びLB寒天培地を用いた大腸菌
     の無菌培養等をそれぞれ行った。各分野の基礎実験を行い研究のやり方やイメージをしていく
     中で,自分たちの研究テーマを考えることができ,テーマ設定がスムーズに行えた。何度も困
     難に躓きながらも,仲間と協力し課題解決に向け,課題研究に生き生きと取り組んでいる生徒
     の姿が多く見受けられた。また,研究の途中で論文を作成しながら,結果をしっかりと議論す
     る機会を設けそれらを踏まえた追実験の機会を設定することで,全体として例年より研究の質
     を向上することができた。
       テーマ設定の重要性は高く,しっかりとした見通しを持った仮説検証型の実験を多くの班が
     行えるようにしていくことは来年度以降も課題である。また,研究ノートの作成方法もルーブ
     リックなどを示しながら改善していきたい。
 
 
 
                                           23
       (イ)    《文系》社会に関する課題研究
   教 科         課題研究                       科目名       課題研究I
   単位数        1単位                        対象生徒      第2学年 文系生徒168名
                  課題研究を通して,問題発見・解決能力や,思考力,課題解決に向けて他者と協
     目 標     調する態度等の育成を図るとともに,課題研究研修実施報告書やポスターの作成を
               通して自らの考えをまとめ,分かりやすく説明できる技能の習得を図る。
   使用教材       自作プリント
   指導計画                指導内容(時間数)                          取    組
   1学期        4  地域の問題を知り,その課題を知 ・論文の書き方を学ぶことによって,
                 6月 る(6)                                 自身の意見を論理的にまとめる方
                                                           法を身につけさせた。地域の抱える
                                                           問題や現状の課題点を知り,それに
                                                           対して意見を深めるために論文・新
                                                           聞記事等を読ませたことによって,
                                                           自身の研究対象を具体的にイメー
                                                           ジできるようになった。
                 7月 事前調査計画案作成(3)               ・「防犯・安全」「生物多様性」「無
                                                           形文化財」「有形資産」「地元特産
                                                           品」「街作り」から研究テーマをグ
                                                           ループごとに設定し,研究テーマの
                                                           問題の所在,問題の調査方法等の検
                                                           討を行った。
                                                         ・研究テーマに関する先行研究,テー
                                                           マに関する基礎的な知識について学
                                                           び,今後の指針の検討を行った。
   2学期      8       調査・研究,研究の中間報告(11) ・中間報告を行い,他グループと問題
               12月 調査報告書の作成                       を共有し,今後の研究のヒントとし
                                                           た。
                                                         ・各自の計画に基づき調査研究を実施
                                                           した。フィールドワーク,アンケー
                                                           ト調査を必要に応じて実施した。
                                                         ・研究成果を実施報告書としてまと
                                                           め,ルーブリックによる評価を実施
                                                           した。
   3学期      1       研究計画の修正と追調査・研究(3) ・評価に基づき,報告書の修正を行い,
               3月     ポスター作成(6)                     研究成果をポスターにまとめた。
 《変容と考察》
       文系の「課題研究I」では昨年度の反省を活かし,またSSH第二期ということで,課題研
   究のスケジュール見直しと研究テーマの変更を行った。実施に当たって教員間の連携を密にす
   るため,適宜進行状況の確認を行った。多くの教員同士の協力体制が整い,スムーズなプログ
   ラムの実施ができた。
       今年度最大の改良は,校外に出て,地域の課題解決のためのアクションを行うことであった。
   より地域に根ざしたテーマとして,「防犯・安全」「生物多様性」「無形文化財」「有形資産」
   「地元特産品」「街作り」の6講座を設けた。このことによって普段,部活動や勉学,学校の
   行き来の繰り返しの生徒が,地域の問題を知ることができ,見聞を広げることに大きく繋がっ
   た。初めは真新しい目標に教員も生徒も戸惑ったが,時間が経つにつれ調査内容が少しずつ具
   体的になり,それに比例して生徒のモチベーションも上昇していった。その一方で,研究の途
   中でつまずいてしまい,なかなかその打開案が浮かばず,苦戦しているグループもいくつか見
   受けられた。
 
 
 
 
                                          24
     イ 学校設定科目「探究物理I」
     教 科      理科                          科目名      探究物理I
     単位数     3単位                      対象生徒    第2学年 理系物理選択生徒190名
                主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)を通して,「科学技術リテラ
            シーI」で獲得した自然科学全般についての基礎知識や幅広い視点をさらに深め
     目 標  る。「課題研究I」と連携して探究活動を実施することで,自律的に学ぶ力,困
            難を乗り越える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解決
            能力,協調的問題解決能力,批判的思考力,創造性等を引き出し,伸ばす。
              自作プリント 高等学校物理基礎(第一学習社) 高等学校物理(第一学習社)
   使用教材
              フォトサイエンス物理図録(数研出版)
                        指導内容(時間数)                        取   組
                4月    1 音波                       ・共鳴の実験から定常波を探究する。
   指導計画               波の性質,伝わり方         ・楽器の構造や周波数スペクトルと音
     1学期               音波の性質に関する実験       色の関係性を探る。
                5月       弦の振動,気柱共鳴実験     ・ドップラー効果の諸現象(平面運動や
                          ドップラー効果               風の影響を含める)について定量的
                6月                                    に学習する。
                       2 光波                       ・プリズムを用いて光の屈折の法則を
                7月       光の性質                     学習する。
                          レンズと鏡                 ・望遠鏡を自作し,眼球の構造や光の
                9月       光の回折と干渉               屈折,近視・遠視用メガネについて
                                                       学習する。
                       3 運動とエネルギー           ・単振り子とレール上を転がる小球の
    2学期
               10 月      仕事と力学的エネルギー       実験から力学的エネルギー保存の法
                          熱とエネルギー               則を学習する。
                       4 剛体のつりあい             ・物体の重心に関する実験や剛体が受
               11 月                                   ける力のモーメントを学習する。
                       5 運動量の保存               ・タブレット端末を用いて,小球と床
                          運動量と力積                 との反発係数を求める。
               12月       運動量保存の法則           ・弾性衝突球の探究活動から,運動量
                          反発係数                     の保存,反発係数,弾性衝突・非弾
                                                       性衝突,エネルギー保存を学習する。
                1月    6 円運動と単振動             ・円運動,単振動を微積法や極限で導
                          円運動                       出する過程を学習する。
    3学期                慣性力と遠心力             ・単振動の周期に関する実験を行い,
                2月       単振動                       時計の歴史を学習する。
                          SPARKを用いた力学実験      ・万有引力・ケプラーの法則と天文学
                3月       万有引力                     史を学習し,物理法則の発展と普遍
                                                       性を学習する。
                       7 気体分子運動論             ・ボイル・シャルルの法則を実験から
                          気体の内部エネルギー         定量する。
                          気体の状態変化             ・熱機関の熱効率を探究する。
                       8 探究活動                   ・探究活動では,学校設定科目「課題
                                                       研究I」と連携し,理科課題研究を
                                                       実施する。
 《変容と考察》
     アクティブラーニングの視点を取り入れた授業を実施し,基礎知識の定着に加え得た知識を活
   用したり他と協働して課題を解決したりする力を高めることができた。生徒が活発に議論する中
   で知識や理解を生徒同士で構成していく姿が見受けられ,主体的な学びに繋がっている。学習が
   進むにつれて,身の回りの様々な現象を考えることができる機会が増えている。今後も,効果的
   な「問い」を生徒に投げかけ,深い学びへのきっかけ作りを行っていきたい。
     また,パソコンや関数電卓,タブレット端末を用いて実験や探究活動などの結果をデータ処理
 
                                             25
  したり,誤差,有効数字などを考えたりすることで,理論式の計算だけでなく実際に定量的に結
  果を比較する力も高まった。これらは課題研究にも生かされている。
    今後の課題として考えられることは,限られて時間の中で,すべきことを取捨選択し,より効
  果的なものへとしていくことと,生徒が自律的に学ぶことができるようなサポートをどのような
  形で行っていくかである。
 
 
      ウ 学校設定科目「探究化学I」
    教 科    理科                           科目名  探究化学I
    単位数   3単位                       対象生徒 第2学年 理系生徒232名
                化学の学びを通して,科学的な思考力,未知の事柄を考える応用力を身につけ
             させる。また,化学反応式や計算式から実際に起こる現象を想像する能力を養い,
    目 標
             机上と現実を結びつけながら学ぶ。さらに,生徒の主体的・協働的な学び(アク
             ティブ・ラーニング)や自由度の高い実験(探究型の実験)等を実施する。
             教材「授業プリント」
  使用教材   教科書「高等学校 化学」(第一学習社)「高等学校 化学基礎」(第一学習社)
             副教材「三訂版 サイエンスビュー化学総合資料」(実教出版)
  指導計画                  指導内容(時間数)                    取   組
  1学期     1     酸と塩基 (15)                 ・中和反応における量的関係を実験結
                                                      果から推測し,求められるようにす
                                                      る。
 
              2   酸化還元反応     (15)            ・マイクロスケール実験を用いて,酸
                                                      化剤,還元剤としての強さを観察か
                                                      ら推測する。
 
              3   電池・電気分解     (10)          ・実際に簡易な化学電池を見せること
                                                      で,自発的な酸化還元反応から電流
                                                      が発生することを学習する。
 
  2学期
              4   物質の状態     (20)            ・過冷却現象を例に挙げて目に見える
                                                      変化から関連づけて化学的現象を考
                                                      えさせる。
 
              5   物質とエネルギー        (15)   ・水酸化ナトリウムの溶解熱の測定実
                                                      験のパフォーマンス課題を班ごとに
  3学期                                              実施し,ルーブリックにより評価を
                                                      した。
              6   有機化学 (30)                    ・相互に学習内容を発表しながら,学
                                                      習目標をもとに達成度を各自で計り
                                                      ながら主体的,協働的に学ぶ習慣を
                                                      作る。
 《変容と考察》
     中和反応における量的関係を実験結果から推測することで,実験による確認をした場合より
   も定着が見られた。マイクロスケール実験を行うことによって,試薬の用いる量も少なく,生
   徒も簡易的に実験を行うことができた。協働的な活動を多用することによってグループ活動に
   も主体的,積極的な変化が見られた。パフォーマンス課題も事前に評価基準を示すことで活動
   に対しても積極性が見られ,非常にいい刺激となった。その半面進捗状況が芳しくなく,演習
   量も授業中に十分とれたとは言えず,表現力,思考力の向上は見られたが,単純な計算力など
   の進歩があまり見られなかった。今後は活動を増やしながら授業進度も遜色のないような授業
   内容を目指していきたい。
 
 
                                               26
      エ 学校設定科目「探究生物I」
    教 科                  理科              科目名                探究生物I
    単位数               3単位            対象生徒     第2学年 理系生物選択者43名
               主体的・協働的な学び(アクティブラーニング)を通して,
                                                                   「科学技術リテラシー
             I」で獲得した自然科学全般についての基礎知識や幅広い視点をさらに深める。「課
    目 標    題研究I」と連携した探究活動を実施することで,自律的に学ぶ力,困難を乗り越
             える力等に加え,科学的リテラシー,科学的思考力,問題発見・解決能力,協調的
             問題解決能力,批判的思考力,創造性等を引き出し,伸ばす。
             自作プリント 高等学校 生物(数研出版) 高等学校 生物基礎(数研出版)
  使用教材
             サイエンスビュー生物総合資料(実教出版)
  指導計画       指導内容(時間数)                  取     組
  1学期     1 はじめに 生物多様性とその保全(3) ・生物多様性の3つの階層及び重要性に
                   探究 帰化タンポポによる遺伝子     ついて,身の回りにあるタンポポ調査
                         侵略の現状を探る            を題材に学ばせる。
 
              2 第1章   細胞と分子(22)          ・タンパク質の働きや細胞の構造などを
                                                      最新の分子生物学研究等に触れながら
              3 第3章   遺伝情報の発現(21)        学ばせる。
  2学期           探究   コメの遺伝子解析          ・コメやタンポポを題材にして,PCR
                          タンポポの遺伝子解析        法やゲル電気泳動法による遺伝子解析
                                                      など,基本的な分子生物学実験を習得
  3学期                                              させるとともに,結果についてディス
                                                      カッションさせる。
               4 第2章 代謝(20)
                    探究 定量的にカタラーゼの働き ・カタラーゼの働きに関して,自由度の
                         を探る                        高い実験を行い,定量的実験の基礎を
                                                       習得させる。実験結果はレポートにま
                                                       とめ,発表させる。
               5 第4章 生殖と発生(39)            ・生殖と発生について最新の研究成果等
                    探究 ウニのポケット飼育            にも触れながら学ばせる。ウニのポ
                                                       ケット飼育を行うことで,生命や発生
                                                       に関して好奇心を喚起する。
 《変容と考察》
     科学技術に対する正しい理解や先端科学技術に対する興味関心を喚起するため,授業には最
   新の研究成果や教科書には未掲載の知見を多く取り入れた。また,問題発見解決能力を向上さ
   せるために,身近な生物を題材とした探究活動にも取り組んだ。これらの授業の実施において
   は,論理的思考力や主体性・協働性を向上させるために,ディスカッションやグループワーク,
   自由度の高い実験等に取り組ませた。課題レポートの内容や授業内の生徒の参加態度や発言内
   容の変遷からも,生徒の科学的思考力や主体性・協働性は高まったものと推察される。
 
 
     オ 学校設定科目「科学技術リテラシーII」
   教 科      理科                           科目名      科学技術リテラシーII
   単位数     2単位                        対象生徒     第2学年 文系生徒168名
              主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)を通して,自然科学全般
            についての基礎知識の習得と幅広い視点の獲得を目指す。特に生物学や化学に関
   目 標    する学習を通して,自ら学ぶ力,科学的思考力,他者と協働しながら問題解決を
            行う力の育成を目指す。さらに,先端科学技術に関するディスカッション等を通
            して科学的リテラシーを身につけさせる。
            教科書 化学基礎(第一学習社)       生物基礎(数研出版)
   使用教材
            副教材 サイエンスビュー化学総合資料(実教出版)
 
 
                                             27
                        サイエンスビュー生物総合資料(実教出版)
  指導計画           指導内容(時間数)                           取    組
  1学期      1   生物基礎(14)                     ・植生について,その構造や,遷移とそ
                   植生の多様性と分布                 のしくみについて学習する。
                   生態系とその保全                 ・生態系の成り立ち,生態系における物
                                                      質循環とエネルギーの流れについて学
                                                      習する。
              2   生物基礎(10)                     ・体内環境がいかにしてほぼ一定に保た
                   体液という体内環境                 れているのか,また体内ではどのよう
                   腎臓と肝臓                         なしくみがはたらき,どのように調節
              3   生物基礎(12)                       が行われているのか,循環系・腎臓と
  2学期           神経とホルモンによる調節           肝臓・自律神経系と内分泌系,免疫に
                   免疫                               ついて学習する。
              4   化学基礎(16)                     ・酸・塩基の基本的概念,pHの計算,中
                   酸と塩基の反応                     和反応の量的計算,中和滴定の原理に
                                                      ついて学習する。中和滴定の実験を行
                                                      う。
              5   化学基礎(18)                     ・電子の授受によって考えられる現象と
                   酸化還元反応                       して酸化・還元を学ぶ。また,電池の
                                                      化学反応は,すべて酸化還元反応であ
   3学期                                             るから,これらもあわせて学習する。
 《変容と考察》
       「学び合い」を中心とした授業を展開し,生徒が主体的・対話的に学ぶことを意識した。生
     徒からは「話し合いの時間を有意義に使える」「講義主体の授業よりも楽しく授業に参加でき
     ている」「クラスの子とコミュニケーションをとれるし,自分でも考えられるのでよい」といっ
     たおおむね肯定的な意見が聞かれた。また生徒同士で積極的に教え合っている姿が数多く見ら
     れた。課題として,単元によって講義形式の授業の方が適しているものもあるため学習内容を
     精選すること,課題が難しく行き詰まっている場合の適切な声かけ,授業で取り組んだ内容の
     定着をはかること,などが挙げられる。
 
 
      カ 学校設定科目「探究数学I」
    教 科      数学                          科目名     探究数学I(α)
    単位数     3単位/6単位              対象生徒     第2学年 理系生徒233名
               数学的活動を通して数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深
             め,事象を数学的に考察し表現する能力を高め,創造性の基礎を培うとともに数学
    目 標
             の良さを認識し,それを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育
             てる。
  使用教材 数学II(数研出版)数学III(数研出版)
  指導計画       指導内容(時間数)                                取   組
  1学期     1 微分法(10)                      ・微分の考え方について学び,基本的な
                                                      計算方法を学ぶ。
             2 積分法(12)                      ・積分の基礎を学び,図形の面積を求め
                                                      る。
             3 関数(8)                          ・分数関数,無理関数について学ぶ。
  2学期                                            ・無限級数や不定形など極限に関する処
             4 極限(20)                          理を学び,微分のもとになる考え方を
                                                      学ぶ。
             5 微分法(10)                      ・微分を用いて関数の凹凸や漸近線を調
                                                      べ,関数のグラフを描く。グループ活
             6 微分法の応用(10)                  動で媒介変数表示の関数の概形のかき
  3学期
                                                      方を考える。
 
 
                                          28
             7     積分法とその応用(24)           ・積分の考え方を理解し,積分により面
                  バームクーヘン積分,コーン積分         積や体積を求める。
 
    教 科      数学                         科目名         探究数学I(β)
    単位数     3単位/6単位               対象生徒       第2学年 理系生徒233名
  使用教材   数学B(数研出版)数学III(数研出版)
  指導計画             指導内容(時間数)                           取   組
  1学期     1 等差数列と等比数列                   ・数列の一般項,和について学んだ
                     いろいろな数列       (8)     ・Σの意味や数列特有の考え方を用い
                                                       て考えさせた
               2 数学的帰納法         (10)      ・数学的帰納法の意味と漸化式の意味
                                                       と解法を考えた
               3 ベクトルとその演算 (9)          ・ベクトルのもつ2つの量を踏まえ,
                                                       内積の意味を発見させた
               4 ベクトルと平面図形 (9)          ・ベクトルを用いて図形の性質を整理
                                                       させ,一次独立の意味を考えさせた
   2学期                                            ・空間内の図形をイメージさせ,成り
               5 空間のベクトル       (15)        立つ事項を確認させた
                     空間座標における直線の方程式や ・媒介変数表示や外積により,空間内
                     平面の方程式                      の図形の方程式を考えた
                                                     ・数学IIIに向けて,IIIABの基本内
               6 IIIAB総合演習      (5)          容と重要事項を確認した
                                                     ・基本的な二次曲線を中心に,定義や
               7 式と曲線             (12)        実用的な例を踏まえ,基本的な性質
                                                       を確認した
                                                     ・媒介変数による図形の把握と除外す
                                                       る点を注意させた
   3学期                                            ・探究数学Iαの進度も考慮し演習を
               8 IIIAB総合演習      (5)          行った
                                                     ・ベクトルとの相関に注意し,回転と
               9 複素数平面           (12)        拡大・縮小を確認した
                                                     ・代数学の基本定理(それに類似した内
                                                       容)を確認させた
                                                     ・数学IIIの「極限」「微分」を中心に
               10 IIIIIIAB総合演習 (10)        2年生の重要事項の確認をし,3年
                                                       生への足がかりとした
 《変容と考察》
       指導要領,教科書の内容に加え,より発展的で高度な数学につながる内容について深く掘り
   下げることができた。また,学び合いを通して様々な角度から問題を考えることの重要性,視
   覚的にとらえることの意義や面白さをより強く実感できるように努めた。その結果,学び合い
   やグループ活動をくり返し行うことで,難しい問題にも最初からあきらめることなく考えよう
   とする積極的な姿勢の生徒が増えた。
 
 
     キ 学校設定科目「ICTリテラシー」
     教 科      情報                科目名     ICTリテラシー
     単位数     2単位              対象生徒   第2学年 生徒401名
                情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させるとともに,情報と情報
              技術を問題の発見と解決に効果的に活用するための科学的な考え方を習得さ
     目 標
              せ,情報社会の発展に主体的に寄与する能力と態度を育てる。また課題研究に
              繋がるような論理的思考力とICTを用いた表現力を身につけさせる。
   使用教材   最新 情報の科学 新訂版(実教出版)
 
 
                                            29
   指導計画        指導内容(時間数)                                    取    組
   1学期      4月 パソコンの基本操作(2)                   ・実習を通して基本的なコン
                     ワープロソフトの基本操作(2)             ピュータリテラシーを身につ
                     ポスター作成(1)                         ける。
               5月 情報とコンピュータ(5)                   ・情報量の単位,進数計算,進
                                                                数変換,論理演算と論理回路
                                                                と補数表現と整数表現につい
                     表計算ソフトの基本操作(3)               て学ぶ。
                                                              ・関数の利用と絶対参照,グラ
               6月 表計算ソフトの基本操作(5)                 フ表現とグラフを使った問題
                     表計算ソフトの応用(3)                   解決を学ぶ。
               7月 コンピュータでのディジタル表現(4) ・文字,音,画像,動画,拡張
                                                                子について学ぶ。
   2学期
               9月 コンピュータでのディジタル表現(1) ・データ量計算とデータの圧縮
                                                                について学ぶ。
                     問題 解決 のた め の コン ピュ ータ 活用 ・プログラムを入力,実行の確
                   (6)                                       認から始まり,与えられた課
                                                                題を解決するためのフロー
               10月 問題解決のためのコンピュータ(6)          チャートを自ら考え,プログ
                                                                ラムを作成し,問題を解決す
                                                                る。
                     ネッ トワ ーク の 仕 組と 情報 シス テム ・IT社会でサイバー犯罪から身
                   (3)                                       を守るための知識を身につけ
                                                                る。
               11月 ネッ トワ ーク の 仕 組と 情報 シス テム ・ブレーンストーミングとKJ法
                   (4)                                       を用いて多くのアイディアを
                     問題解決の手法実習(1)                   どのように構造化してまとめ
                     ロジカルシンキング(1)                   るかを体験させる。
               12月 プレゼンソフトの基本操作(3)            ・論理的な物事の考え方を学ぶ。
                     自ら 設定 した テ ー マで プレ ゼン 作成 ・プレゼン作成を通して,情報
   3学期          (2)                                       を論理的にまとめ,他者へ伝
               1月 自ら 設定 した テ ー マで プレ ゼン 作成     えるための表現法について学
                   (2)                                       ぶ。
                     発表リハーサル(1)                     ・事例を取り上げ,著作権につ
                     発表と相互評価(2)                       いての理解を深め,著作物の
               2月 発表と相互評価(3)                         利用について正しく判断でき
                     産業財産権と著作権(4)                   るようにする。
               3月 データベース管理ソフトの操作(6)         ・データベースをどのように扱
                                                                うべきか学ぶ。
 《変容と考察》
     従来の科目(社会と情報・情報の科学等)では,授業で教える内容や進度の制約が多かった
   が,SS科目への改編により,指導要領,教科書の内容に加え,より実践的で高度な内容につ
   いても積極的に取り扱うことができた。生徒の現状に合わせ,臨機応変に授業を改善していく
   ことで生徒はより積極的かつ主体的に授業に臨んでいる。ICTリテラシーの授業内だけでな
   く,他のSS科目と連携していくことでより適切なタイミングで適切な内容を取り扱うことが
   できると考える。
 
 
 
 
                                          30
     3【参考】第3学年 *第1期SSHにおける教育課程に基づく学校設定科目である
       ア 学校設定科目「SS数学III」
     教 科       数学                        科目名      SS数学III(αおよびβ)
     単位数      6単位                      対象生徒    第3学年 理系生徒241名
                 数学的活動を通じて,数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解
               を含め,事象を数学的に考察し表現する能力を高め,創造性の基礎を培うととも
     目 標
               に,数学の良さを認識し,それらを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断
               する態度を育てる。
   使用教材 オリジナル・スタンダード数学演習III(数研出版),スタンダード数学演習I・
               II・A・B(数研出版),自作プリント
 《変容と考察》
       SS科目であることにより,指導内容や方法の自由度が従来より増しており,他の教科・教
   材との連携や発展的事項の取り扱いについて大きな効果があった。論理的,数学的な考察力,
   表現力の養成については,他者の数学的表現と自身のものを比較する学び合いの機会と生徒自
   身に解説させる発表の中で,一定の効果が得られたことを実感している。特に発展的内容は,
   独自のプリント等を利用して系統的に実施し,数学的理解を深める上でとても有意義であった。
       発展的内容の学習に向けて,より系統的な指導方針を組むことができたため,数学的内容の
   理解やその活用力を育む上で,大変スムーズに進めることができた。また,数学的表現力を養
   うことを目的に,生徒が能動的に学び合う機会を増やした結果,自身の考え方や表現を客観的,
   論理的に見つめ直す習慣を身につけることができた。大学教養レベルの授業やSS科目でなけ
   ればできない発展的な授業を単発的ではなく,3年間継続的に組み込めたことにより,生徒た
   ちも心を開いた状態でのぞむことができ,難解なものに対しても主体的に解決しようとする姿
   勢が身についた。
 
 
       イ 学校設定科目「SS応用物理」
     教 科       理科                            科目名    SS応用物理
     単位数      4単位                        対象生徒  第3学年 理系物理選択生徒201名
                 物理的な事物・現象についての観察,実験などを主体的に行い,自然に対する関
               心や探究心を高め,物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに,基本的な概
               念や原理・法則の理解を深め,科学的な自然観を育成する。また,物理基礎・物理
     目 標     の配列を系統的にまとめ,物理分野の内容においての基礎力及び応用力の定着を図
               る。さらに,大学レベルの発展的内容を扱い最先端科学技術について学習するとと
               もに,エネルギー・環境問題などの社会の諸問題についての理解を深め,豊かで持
               続的な社会の形成者としての人材を育成する。
               高等学校物理基礎(第一学習社) 高等学校物理(第一学習社)
   使用教材
               フォトサイエンス物理図録(数研出版)
 《変容と考察》
     「SS応用物理」では,日常生活と物理学とのつながりを意識しつつ,物理学に対する関心
   や探究心を向上させることができた。様々な物理現象について数学的アプローチで考察を行い,
   理解度と学習意欲の向上を図るとともに,論理言語としての数学の利便性を理解させることが
   できた。また大学学部レベルの内容に触れることにより,高校と大学で学ぶ物理のギャップを
   軽減し,また興味関心を引き出すことができた。探究活動では,実験系の構築や結果の考察に
   苦労する生徒も多かったが,共働的に取り組むことで理解を深めた。探究活動は時間を要する
   が,「実際に体験することで,理解が深まった」等の生徒の意見が多く,重要性を再認識した。
   また,言語活動の機会を積極的に取り入れるなど学び合いの機会を増やして主体的に学習に取
   り組む姿勢を向上させた。
 
 
      ウ 学校設定科目「SS応用化学」
    教 科      理科                           科目名       SS応用化学
    単位数     4単位                         対象生徒   第3学年 理系生徒243名
 
 
 
                                         31
                   化学的な事物・現象に対する探究心を高め,目的意識をもって観察・実験など
                 を行い,自律的に探究する能力と態度を育てるとともに,化学の基本的な概念や
                 原理・法則の理解を深め,それを活用し,問題発見・解決能力の向上を図る。ま
     目 標
                 た,大学レベルの発展的内容や最先端科学技術についても学習し,各分野の探究
                 活動を通じて論理的な思考力を養い,将来我が国の科学技術の研究分野で貢献で
                 きる人材を育成する。
                 教科書「高等学校 化学」(第一学習社)副教材「改訂版 化学図録」(数研出版)
     使用教材
                 補助教材「授業プリント」
 《変容と考察》
     日頃の授業で習った知識を活用し,論理的に思考したうえで,有機化合物を適切に分離できた。
   さらに,同様の分離問題についても,9割以上の正解率となった。また,糖類,アミノ酸の有機
   化合物を実験により,特定することもできた。さらに,高分子化合物の新たな用途を班で発表し
   合うことで,これからの社会を生き抜く力を育成できた。このことから探究活動により,生徒が
   主体的・協働的に問題解決能力を向上することができたと判断できる。
     アンケートや探究活動の報告書に,「授業で習った知識を探究活動で,確認でき,良い機会に
   なった」「化学の素晴らしさを実感できた」「事前に学習した内容や知識を活用することで,協働的
   に問題解決することができた」等の肯定的な意見が多く見られた。また,化学的に探究する能力
   と態度を育てるとともに,将来我が国の科学技術の研究分野で貢献できる人材を育成することが
   できたと評価できる。
 
 
     エ 学校設定科目「SS応用生物」
   教 科                  理科            科目名       SS応用化学
   単位数               4単位            対象生徒   第3学年 理系生徒42名
              「生物基礎」「生物」の内容を系統的にまとめ,自然科学全般について発展的
            内容まで取り扱い学習する。先端科学について理解を深め,その技術を体験し,
   目 標
            結果や課題を考察することで探究心や論理的思考力を養うとともに実践力を高
            め,社会において自然科学の知見を応用できる人材を育成する。
            自作プリント 高等学校 生物(数研出版) 高等学校 生物基礎(数研出版)
   使用教材
            サイエンスビュー生物総合資料(実教出版)
 
 
       オ 学校設定科目「SS理科III」
     教 科     理科                        科目名    SS理科III
     単位数    2単位                    対象生徒    第3学年 文系生徒159名
                 生物分野と化学分野を総合的に扱い,身の回りの現象を科学的に理解すること
     目 標     で,興味関心を高め,現状における環境問題や生物多様性に関わる問題を的確に把
               握し,社会問題や国際問題解決に向けた論理的思考力や視点の育成を図る。
               主たる教材 自作プリント
     使用教材
               補助教材      セミナー化学基礎(第一学習社)    リードα生物基礎(数研出版)
 《変容と考察》
     本校の文系生徒は,大学進学後,政治経済や語学力を駆使して国策や地域行政に関わる仕事を
   志す生徒が多い。そのため高校時代に自然災害や環境問題,薬害などの根底にある問題点を見極
   める視点と地域社会や地方自治,国策などに結びつける能力の育成が必要である。2年生のSS
   理科IIで身につけた基礎知識と発信力をさらに伸ばす主体的学びを多く取り入れた。特に実験で
   は,実験計画の立案の段階からグループで取り組ませた。はじめはなかなか討論ができなかった
   が,次第にグループをまとめリーダー的な役割を果たす者が出てきて,積極的な討論や意見の調
   整,ときには学び合い新たなものを創作していく協働的学習ができるようになった。
     生徒の感想から,与えられた実験をするよりも物事をより深く慎重に対応する姿勢が身につい
   たと実感したようである。身のまわりの現象や体の仕組を実験や実習により科学的に理解するこ
   とで,日常生活をより科学的根拠に基づいて捉えようとする姿勢が高まった。
 
 
 
 
                                           32
 4    実施の効果とその評価
      (1) 課題研究による生徒の主体的・協働的な学びの促進
          平成29年10月に第3学年理系生徒全69グループを対象として,課題研究に関する取組状況に関
       するアンケート調査を実施した。アンケート項目は以下の通りである。
          質問1:研究を進めるにあたり,教科書や資料集等を用いて未習分野(授業で学習していない
                   内容)を,グループで自主的に学習したことはありますか?
          質問2:始業前や休み時間,昼休み,放課後,休日など課題研究(SS教科「ESDII」)の
                   授業外で,研究や研究のための準備等を自主的に行ったことがありますか?
          これらの質問に対する,結果を下表に示す。
                   質問1:未習分野の自主学習        質問2:授業以外での研究・準備
                      はい             いいえ              はい           いいえ
                  54グループ         15グループ        60グループ        9グループ
                  (78.3%)         (21.7%)        (87.0%)      (13.0%)
          この結果が示すように,大半のグループが自分たちで未習分野の学習を行ったり,授業以外の
       時間にも自主的に研究を進めたりしている。このことから,課題研究が生徒の主体的・協働的な
       学びを引き出すうえで,大きな効果をあげていることが推察される。
 
 
      (2) 課題研究の質的向上
         本校では,平成26年度より全生徒が課題研究に取り組んできたが,全校規模での課題研究を進
       めていく中で,先行研究や研究の目的,学術的意義等に関する言及が不十分であったり,定性的
       なアプローチにとどまる研究が多く見られるなど,課題研究の質に関する課題も明らかになって
       きた。第2期SSHでは,課題研究の質的向上を目指し,第1学年の「探究基礎」や「科学技術
       リテラシーI」,第2学年の「探究化学」や「探究物理/生物」等のSS科目を中心に,研究の
       進め方や統計学的視点についての学習内容を盛り込むことで,生徒が課題研究を自律的かつ効果
       的に進められるようになることを目標に教育課程の改善を図ってきた。この効果を検証するため
       に,平成27年度から平成29年度までに生徒が作成した論文について,次のような評価基準を用い
       て評価を行った。
       ・評価基準(ADの4段階,Aが最高評価)
          <評価規準1:学術的意義や先行研究への言及>
          A 研究の学術的意義に加え,先行研究(これまでにどのような研究が行われ,どのようなこ
               とがすでに明らかになっており,何がまだ解明されていないのか)が示されている。
          B 研究の学術的意義は示されているが,先行研究への言及が不十分である。
          C 自分たちの興味関心等の研究の動機のみの提示に留まっており,学術的意義が示されてい
               ない。
          D 研究の目的や動機に関する記述がない。
          <評価規準2:定性的/定量的アプローチと統計処理>
          A 定量的なアプローチで研究が進められており,結果がグラフ等の適切な形式で示されてい
               る。また,統計量として,中央値・標準誤差・標準偏差等の平均値以外の数値も用いられ
               ている。
          B 定量的なアプローチで研究が進められており,結果がグラフ等の適切な形式で示されてい
               る。統計量としては,平均値のみが用いられている。
          C 定量的なアプローチで研究が進められているが,結果がグラフ等の適切な形式で示されて
               いない。
          D 定性的なアプローチの研究に留まっている。
          以下に結果を示す。なお,表中の数値は百分率(%)で示した。
                    1:学術的意義や先行研究への言及    2:定性的/定量的アプローチと統計処理
             年度     A      B       C        D        A        B         C         D
              27     3.2     6.3      85.7      4.8       3.2       54.0       4.8       38.1
              28     8.6     8.6      81.4      1.4      11.4       58.6       15.7      14.3
              29    18.0     12.0     68.0      2.0      18.4       57.1       16.3       8.2
 
 
                                                33
     このように,先行研究への言及(A)については,3.2%→8.6%→18.0%,学術的意義への言
   及(AとBの合計)については,9.5%→17.2%→30.0%と,2項目ともに緩やかではあるが値が
   上昇している。また,定量的なアプローチの研究(AからCの合計)は,61.2%→85.7%→91.8%
   と値が大きく上昇している。このことからも,SS科目を中心とした教育課程の改善が,課題研
   究の質的向上に一定の効果があったと評価できる。なお,平均値以外の統計量の使用(表の右側
   のA)についても,3.2%→11.4%→18.4%と緩やかな上昇が見られるものの,カイ2乗検定やt
   検定等の有意差検定を用いたものはほとんど存在しないため,引き続き教育課程の改善を行って
   いきたい。
 
 
 (3)  課題研究の指導体制の確立
     本校は普通科のみの公立高校であるため,私立高校や理数科設置校のように理数系教員の大幅
   な増員や課題研究専属の非常勤講師を配置するといったことは困難である。また,(SSHに指
   定されていない)一般の公立高校が課題研究を導入するにあたっては,指導内容(ソフト面)だ
   けではなく,教員数の問題(ハード面)が障壁になることも多い。そのため,本校では,全校で
   の課題研究を導入した平成26年度より,一般の公立高校にも普及できるよう,限られた人的リソー
   スでの全校規模かつ効果的な課題研究の指導体制(教員配置や時間割上の工夫)の研究開発を継
   続してきた。本年度は,理系課題研究における物理・化学・生物の各講座に2名ずつの教員を2
   時間連続で配置することができ,全校規模かつ効果的な課題研究の指導体制の1つの形を完成さ
   せることができた。
   <平成29年度の時間割>
              月           火                    水        木                金
       1
       4限
                   1組:化学(C1) 2組:化学(C1)       3組:物/生(講師/B1)
       5限
                   6組:物理(講師) 5組:物理(P1)           4組:物理(P1)
                   課研I(1・6組) 課研I(2・5組)             課研I(3・4組)
                   物(P1・P2)      物(P1・P3)            物(P1・P3)
       6限
                   化(C2・C4)      化(C1・C3)            化(C1・C3)
                   生(B1・C3)      生(B2・C4)            生(B1・B2)
       7限
     凡例:5限の化学・物理・物/生は,それぞれ「探究化学I」・「探究物理I」・「探究物理
         I」と「探究生物I」の2講座同時展開を,6限の課研Iは「課題研究I」を示す。また,
         C・P・Bの記号は,それぞれ化学・物理・生物の教員を示しており,記号の後の数字は
         個人を区別するために用いている。また,講師は非常勤講師を示す。なお,本校には9名
         の非常勤ではない理科の教諭が配置されており,その内訳は化学を専門とする教諭が4名
         (うち1名は再任用教諭),物理を専門とする教諭が3名,生物を専門とする教諭が2名
         となっている。
     <実施上の工夫>
     ・月曜と木曜は7限まで,その他の曜日は6限までの週32時間で授業を実施しており,理系6
       クラスの「課題研究I」を,火・水・金の各日に2クラスずつ割り当てている(13組は
       生物選択者と物理選択者との混合クラス,46組は物理選択者のみのクラスであり,生物
       選択者を含むクラスが各日1クラスずつになるようにクラスを組み合わせている)。なお,
       「課題研究I」を6限に設定している理由は,研究の継続を希望するグループは放課後も引
       き続き研究を進められるようにするためである。
     ・課題研究の本研究期間や追実験期間には,5限の「探究化学I」「探究物理I」「探究生物
       I」を課題研究の時間に振り替えることで,2時間連続の研究の機会を確保している(年間
       15回程度,この措置によって生じる授業時数の不均衡は授業変更で対応)。なお,各日の「課
       題研究I」の担当者で,5限に示してある授業を担当していない教員は,5限は空き時間に
       設定しており,特に時間割変更をせずに課題研究の指導に携われるようにしている。
     ・6限の「課題研究I」の時間には,該当クラスの担任も指導に加わることで,主に課題研究
       中におけるグループ毎の活動の様子(各生徒がグループ内でどのような役割を担っているか)
       の観察やメタ認知を向上させるような声掛けを行っている。
 
                                           34
    ・文系(4クラス)は,金曜日の4限に設定し,担任・副担任を中心とした12名の教員により,
      5講座展開で指導を行っている。
 
 (4)  文系課題研究の取組改善
     第1期SSHにおいて文系生徒は,持続可能な社会の実現に関する課題研究に取り組んできた
   が,いくつかの課題も顕在化してきた。その中で特に重大であると考える課題を2点あげる。第
   1は,多くのグループの課題研究が,仮説検証型の研究ではなく,調べ学習に留まってしまいが
   ちな点である。第2は,生徒の提案する結論の実現可能性が低いものになりがち(机上の空論に
   陥ってしまいがち)な点である。
     前者の原因としては,実験を繰り返し行っていく中で必然的にPDCAサイクルが回っていく
   理系の課題研究と比較して,文系の課題研究では,仮説の設定から検証までの過程が明確でない
   ものが多いため,PDCAサイクルが回りにくいことがあげられる。また,後者の原因としては,
   高校生がアクセスできる知的リソースの限界が考えられる。例えば,「再生可能エネルギーの導
   入について」の研究を行った場合,再生可能エネルギーの有用性はほとんど誰もが異論なく認め
   ることであろう。しかし,社会全体として再生可能エネルギーに転換できない背景には,技術や
   コスト,社会や経済の仕組みによる問題や,様々なレベルでの立場や考え方の対立等が大きな影
   響を与えていると考えられるが,高校生の持ち得る知的リソースでは,これらの問題について多
   面的に考察することが困難である。
     そこで,第2期SSHにおいて文系の課題研究は,社会に関する課題研究と再定義し,以下の
   ように,仮説検証型の研究となるべく改善を行った。
   <概要>
       地域や社会に潜む問題を見つけ出し,問題解決のための仮説を立てた上で,実際に地域や社
       会に足を運ぶなどして,問題解決及び仮説検証にグループ単位で挑戦する。
   <基本的な流れ>
       1 一般市民に対するアンケートや街頭調査,実地調査等を行い,得られたデータから問題
            を見出す。
       2 1で設定した問題の解決に向けた仮説や解決策を考えだし,それを検証するために実際
            に地域社会で実践を行う。
       3 事後アンケートや街頭調査を再び行うなどして,仮説の検証を図る。
     取組初年度となる本年度は,「生物多様性の保全」(ジビエ料理の活用による生物多様性の保
   全策の提唱,刈谷市民の生物多様性の保全意識を高めるには等),「防災・安全」(東海地震発
   生時における刈谷市内のハザードマップの作成と最適避難経路のシミュレーション,刈谷市内の
   歩行者事故を減らすには等)をはじめとする5つの大テーマでの取組を行った。実施初年度とい
   うことで,多少の混乱や時間的な遅れは見られたが,大まかな枠組みを作成することができた。
   次年度以降は,研究の質的向上を目指し,研究開発を行っていく計画である。
 
 
 (5)  自律した学習者を育成するための教育課程の改善に係る取組
     平成27年度,第2期の継続申請の内容を校内で検討するに当たり,「これからの社会をたくま
   しく生き抜く,自律した十八歳の育成」及び「真正な学びを創出する「未来型」の進学校への進
   化」を戦略目標として掲げ,さらにこの戦略目標に呼応させる形で,第2期のSSHの研究開発
   課題である「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダーの育
   成プログラムの確立」を設定した。そして,平成28年度には,これらの目標を実現させるための
   方策の一つとして,校長・教頭・教務主任・進路指導主事・生徒指導主事・各学年主任・情報研
   修主任・SSH開発主任及びSSH開発副主任から構成される「学校マネジメントプロジェクト
   会議」の立ち上げを行った。当プロジェクト会議では,運営委員会や「SS科目担当者会議」等
   と連携を図りながら,学校マネジメントの導入及び学校改革の具体的方策や方向性について検討
   を行っている。これまでの具体的な成果の一例としては,これまで実施されてきた補習(課外授
   業)の時間数や実施形態の見直しや,生徒たちが学年を超えて自主・自律的に学びあう「SSゼ
   ミナール」の導入等があげられる。なお,平成29年度は「SSゼミナール」として,科学の甲子
   園や科学オリンピック等に向けた学習会や,(株)日立ハイテクノロジーズから約2か月の間,
   貸与していただいた卓上型走査型電子顕微鏡TM-3030を用いた観察会等を実施した。
 
 
                                            35
      (6) 教員の指導意識に関するアンケート調査結果から
         教員の指導意識の変容を把握するために,学校マネジメントプロジェクト会議では,SSH開
       発部と連携し,以下のようなアンケート調査を実施した。
       (問)日々の授業実践等における教育活動において,あなたが特に意識している項目は何ですか。
             次の選択肢から,あてはまるものを選んでください(最大5つまで)
         ○教科に関する基礎的・基本的な知識の理解 ○応用問題(入試問題)を解くための知識・技能
         ○教科に関する興味・関心の喚起      ○言語活動の充実
         ○批判的思考力,問題解決能力,意思決定能力の育成      ○主体的・自律的に学ぶ力の育成
         ○仲間と協働的に学習を進める態度        ○コミュニケーション能力の育成
         ○コラボレーションする力(チームワーク)      ○情報リテラシー・ICTリテラシーの育成
         下の表は,平成30年2月に実施したアンケート調査の結果を,選択された回数が多いものから
       順にまとめたものである。なお,表中のスコアとは,各項目が選択された回数を,回答者数の2
       分の1で割った値を示している。
             順位                        項 目                         スコア
               1  教科に関する興味・関心の喚起                          1.52
               2  教科に関する基礎的・基本的な知識の理解                1.29
               3  主体的・自律的に学ぶ力の育成                          1.14
               4  言語活動の充実                                        0.90
               5  仲間と協働的に学習を進める態度                        0.86
               6  批判的思考力,問題解決能力,意思決定能力の育成        0.81
               7  コミュニケーション能力の育成                          0.72
               8  応用問題(入試問題)を解くための知識・技能              0.52
               9  コラボレーションする力(チームワーク)                0.24
               10  情報リテラシー・ICTリテラシーの育成                0.00
         この調査結果を見ると,「教科に関する興味・関心の喚起」,「教科に関する基礎的・基本的
       な知識の理解」に続いて,「主体的・自律的に学ぶ力の育成」が多く選ばれていることがわかる。
       一方,従来の高等学校における学習指導において,大変重視されてきたと考えられる「応用問題
       (入試問題)を解くための知識・理解」は下位にとどまっている。これらの結果からも,本校の
       戦略目標である「自律した十八歳の育成」が,教員間で共通認識として保持されており,「未来
       型」の進学校へ向けての進化が着実に進展しているものと評価できる。
 
 
 5    研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及
      (1) 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向
       1 課題研究の質のさらなる向上学術的意義や統計学的処理に関して
          4(2)で述べたように,これまでの実践において,課題研究における一定の質的向上が見ら
       れ,ほとんどのグループが定量的なアプローチで研究を進めることができるようになったものの,
       学術的意義や先行研究への言及が不十分である研究が多く見られる。また,SS科目「探究基礎」
       において統計学の重要性やカイ二乗検定・t検定に関する学習活動を行っているにも関わらず,
       自分たちの得たデータに有意差があるかどうかを,検定を用いて論じることができているグルー
       プに至っては非常に少ないのが現状である。これらの課題の解決策については,SS科目担当者
       会議等で教科の枠を超えて議論を進めており,「探究基礎」の授業内での取組だけで終わらせて
       しまうのではなく,「探究基礎」での学習した後は,通常の授業で「実戦形式の練習試合」(パ
       フォーマンス課題)を繰り返し行っていくことで,生徒たちが自律的に知識や技能を使いこなせ
       るように,教育課程を改善する必要があるという共通理解に達している。次年度以降は,例えば
       「探究基礎」で検定について学んだ後には,理科や数学,情報,公民等の授業等において検定を
       用いるパフォーマンス課題等を繰り返し行い,さらにそれを「探究基礎」に活かしていくなどの
       教育課程のスパイラル化に関する研究開発を進めていく計画である。これに併せて,文系課題研
       究についても,引き続き研究開発を行っていきたい。
 
 
 
 
                                                36
  2   SSHの効果の見える化
    現在,各教科・科目等においてルーブリックやポートフォリオ等を用いた評価の研究開発が進
  められており,課題研究やSS科目の取組によって,生徒達の資質・能力の変容を個々の実践レ
  ベルにおいては捉えられるようになりつつある。しかし,「これからの社会をたくましく生き抜
  く,自律した十八歳」や「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバル
  リーダー」といった本校が育成を目指している人物像に対し,SSH全体としての効果を大局的
  かつ客観的な数値として測定することは,未だに実現できていない。次年度以降は,SS科目担
  当者会議で作成中のマトリックスを導入し,それぞれの教科・科目の目標や役割を共有化・明確
  化することで,到達目標や育てたい力から出発する逆向きの授業設計や指導と評価の一体化をよ
  り一層進展させると共に,SSHの効果の見える化を進めていく計画である。
 
 
 (2) 成果の普及
  1   研究開発実施報告書やウェブサイト等での発信
    これまでの研究開発の成果については,研究開発実施報告書や本校ウェブサイト等を通して,
  発信を行った。また本年度の課題研究の成果については,論文・ポスター集等にまとめ,近隣の
  学校等に配布する計画である。SSHの研究開発で作成したルーブリックや教育課程については,
  県内外の教員研修会等で積極的に普及を行っており,本校の研究成果が他校の課題研究等におけ
  る実践等にも取り入れられている。
  2 校内成果発表会の実施や校外の発表会への参加
    「校内成果発表会」や「SSH生徒研究発表会」,あいち科学技術教育推進協議会発表会「科
  学三昧inあいち」等に各種発表会にて県内外の高校生に研究の成果を発信した他,刈谷市中学生
  理科発表会,生理学研究所の主催する市民講座「せいりけんセミナー」等において,地元中学校
  及び地域社会に対し,SSH事業の成果の普及還元を行った。また,愛知県内の教員研修会や各
  種冊子等においても,本校のSSHの研究開発の成果の発信を行った。
 
 
 
 
                                          37
 II-2         生徒一人一人の主体性,自律的な学習態度を引き出すプログラム
             (“本物”の体験)の研究開発
 
 1    研究開発の課題
      (1) 目標
          海外での研究活動や外国人との研究交流,研究者との議論,科学技術・理数系コンテストへの
       挑戦,企業や大学・研究機関と連携した研修,地域貢献を目的とした調査研究などの“本物”の
       体験を通して,生徒一人一人の主体性を引き出す。
 
 
      (2)  実践及び結果の概要
          第3学年生徒全員による課題研究の成果発表の場である「サイエンスデー」は,「SSH講演
       会」と「ポスターセッション」に加え,日頃の探究活動や主体的・協働的な学びで身に付けた力
       を発揮する場として本校版の科学の甲子園ともいえるクラスマッチ「刈高サイエンスマッチ」の
       3つの内容で実施した。「ポスターセッション」の部では,約100枚のポスターが体育館に一堂に
       会し,学会さながらの白熱した発表が行われ,来賓の方からも,年々研究の質が向上していると
       いった評価を得た。また,第3学年代表生徒による課題研究成果の英語での口頭発表会である
       「Scientific Research Presentation」には,本年度より新たに外国人講師を招聘し質疑応答や
       フィードバックを行っていただくなど,より“本物”の体験になるように工夫を行った。代表発
       表生徒にとっては大きな重圧があったと推察されるが,これを乗り越えたことで,自信や自己肯
       定間の上昇につながった。
          外国人研究者による英語でのレクチャーである「SCI-TECH ENGLISH LECTURE」は,平成29年度
       は3回実施し,毎回非常に活発な質疑応答が行われた他,多くの生徒が将来的に海外で研究を行
       い,国際社会で活躍したいという意識を持った。事実,平成27年度,28年度,29年度と海外の大
       学へ進学する生徒が現れたほか,在学中に海外留学を行う生徒は増加傾向にある。また,名古屋
       大学が実施するグローバルサイエンスキャンパス「名大Mirai GSC」に7名,時習館高校がSSH
       事業として実施している「SSグローバル英国研修」には最大申込数の3名の生徒が国内研修に
       エントリーし,「名大Mirai GSC」では1名の生徒がドイツ派遣を,「SSグローバル英国研修」
       では3人全員が,厳しい選考を突破し英国派遣を決めている。さらに,全校生徒で実施する「刈
       谷市及び周辺地域の在来種植物調査」やSS部生徒による「国指定天然記念物小堤西池のカキツ
       バタ群落の保全研究」のような地域の特色を生かした取組では,刈谷市および愛知教育大学と連
       携して実施した他,東京大学特別研究,名古屋大学特別研究,スーパーカミオカンデ訪問研修,
       JTEC訪問研修等,大学や研究機関,地元企業等と連携したプログラムを実施した。
 
 
 2  研究開発の経緯
   第1期SSHでは,株式会社デンソーへの企業訪問「デンソー企業訪問研修」や株式会社ジャパン・
 ティッシュ・エンジニアリング(JTEC)での再生医療に関する研修「JTEC訪問研修」,
 東京大学及び名古屋大学での研究活動「東京大学特別研究」及び「名古屋大学特別研修」,つくば市
 内の各研究施設等を訪問する「つくばサイエンスツアー」など,地元企業や大学・研究機関等と連携
 した事業の研究開発を行った。また,全校生徒による刈谷市及び周辺地域での「生物多様性調査」や
 スーパーサイエンス部による「国指定天然記念物小堤西池のカキツバタ群落の保全研究」等の地域の
 特性を活用した研究活動や,オーストラリアでの科学研修「Sci-tech Australia Tour」や外国人研究
 者を招聘しての英語レクチャー「Sci-tech English Lecture」などの国際性を高めるための取組,「校
 内実験研修」,各種コンテストへの参加等を積極的に行ってきた。
   第2期SSHでは,これらの研修等をより効果的なものに発展させ,生徒の心に火をつける“本物”
 の体験になることを目指している。前述した事業のうちの多くのものは,第2期SSHでも継続して
 実施しているが,“本物”の体験の観点で内容の見直しや改善を行った。例えば,第1期SSHにお
 いて,継続して実施してきた「つくばサイエンスツアー」は,「スーパーカミオカンデ施設訪問研修」
 に発展させ,東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設(スーパーカミオカンデ)及び東北大学
 大学院 ニュートリノ科学研究センター(カムランド)での講義を中心とした研修を行っている。
 
 
                                                38
   3年生の課題研究の最終的な発表会である全校英語研究発表会「Scientific Research Presentation」
 では,平成28年度までは日本人どうしで英語でのやりとりを行なわれていたが,平成29年度からは外
 国人講師を招聘し,質疑応答を行うなど,より“本物”の体験に近づくよう改善を行った。
 
 
 3    研究開発の内容
      (1) 仮説
          海外での研究活動や外国人との研究交流,研究者との議論,科学技術・理数系コンテストへの
       挑戦,企業や大学・研究機関と連携した研修,地域貢献を目的とした調査研究等の“本物”の体
       験を通して,生徒一人一人の科学に対する興味・関心・意欲や主体性を引き出すことができる。
 
 
      (2)    研究内容・方法・検証
       ア     サイエンスデー(SSH特別講演会・ポスターセッション・サイエンスマッチ)
             (ア) 活動目標
                 科学・技術のプロセスを多角的に体験し,科学・技術等に関する興味・関心を高め,未知
              の分野に挑戦する探究心や創造性,科学的に問題を解決する力,協働して課題を解決する力
              を育む。また,ポスターセッションでは,表現力,コミュニケーション能力等の向上を図り,
              学年間の交流を深める。
             (イ) 活動内容
                 実施日時    平成29年6月16日(金) 8:5015:10
                 実施会場 【A】SSH特別講演会        本校体育館
                           【B】ポスターセッション     本校体育館
                           【C】サイエンスマッチ       理科実験室,特別教室
              【A】SSH特別講演会
                     最先端で活躍する研究者の講演を聞き,科学のプロセス
                   を知る。先端科学技術の応用への理解を深めるとともに,
                   大学などの研究機関の活動に触れることによって,進路意
                   識や学習意欲の向上を図る。
                 講師 北陸先端科学技術大学院大学
                              かわにし   しゅん ご
                     副学長 川西 俊 吾 先生
                演題 「グローバル時代のリーダーとしての科学者の資質
                       と役割」
                                                                          ▲川西先生による講演
 
              【B】ポスターセッション(3年生の発表を1,2年生が聴講する)
                    3年生が昨年度のSS科目「ESDII」で取り組んだ課題研究の成果を後輩に伝える場
                  として,ポスターセッションを行う。体育館に約100枚のポスターを掲示し,訪れた
                  1,2年生に3年生がコミュニケーションを取りながら研究内容や成果を発表する。ま
                  た,SS部等の研究発表も合わせて行う。
 
 
 
 
                       ▲ポスターセッションの様子
 
 
 
 
                            課題研究全校ポスターセッションの様子
                                                     39
       【C】刈谷高校サイエンスマッチ(1,2年生のみ,学年ごと)
             理科・数学・科学英語などで構成される10の競技に,各クラス35名のチームで参
           加する。各競技で順位を決め点数化し,合計得点でクラス対抗戦を行う。全競技科目と
           主な内容を以下の表に示す。
 
  種     目           競   技   名                                                主    な    内    容
                                                      校舎3階から落下させる卵を保護するためのプロテクターを
  物理A      『エック゛ト゛ロッフ゜コンテスト 2017』
                                                      紙で作り上げ,落下後の割れ具合と着地点を競い合う。
                                                      中身がわからないフ゛ラックホ゛ックスに抵抗等の素子が入っていると
  物理B      『電気回路のフ゛ラックホ゛ックス』
                                                      きの,フ゛ラックホ゛ックス内の電気回路の配線を考える。
                                                      9種類の液体について,用意されている材料,試薬と器具類を
  化学A      『謎の液体の正体は!?』
                                                      使って突き止める。
              『分子模型から構造を探 炭化水素について分子模型を利用して,様々な結合の構造式を
  化学B
              る』                                    見つけ出す。
  生物A      『植物の分類』                          植物の分類・観察に関する技能を競い合う。
  生物B      『光合成に関する探究』                  光合成に関する実験を通して,生物学的な技能を競い合う。
  地学        『天気図から天気を読む』 ラジオ放送から天気図を描き,次の日の天気を予想する。
  数学A      『攻略法を考えろ』                      ゲームの必勝法や実験の最善策を考える。
  数学B      『立体図形』                            整角四角形問題・立体図形の問題に取り組む。
  科学        『Great Paper JETS!!』                  英文で書かれた紙飛行機の作り方を理解して作成する。作成物
  英語          (第1学年)                            を紹介するプレゼンテーションおよび飛行距離を競う。
  科学        『Treasure hunters』            学校のどこかに隠された宝を探し,それを使ってある物を作
  英語          (第2学年)                    成する。その出来具合や英語のクイス゛を行う。
 
 
 
 
                ▲刈高サイエンスマッチの競技中の様子
 
 
 《変容と考察》
     SSH特別講演会では,「グローバル時代のリーダーとしての科学者の資質と役割」と
   いう演題のもと,研究者としての姿勢や役割について学んだ。「理系」と「文系」の枠に
   とらわれずに,新たな研究分野に対して積極的に取り組むチャレンジ精神の大切さなどを
   語られた。生徒にとっては,今後の進路選択において大いに参考になる話であった。ポス
   ターセッションでは,約100枚のポスターが体育館に一堂に会し,会場である体育館は
   熱気にあふれており,発表者が後輩たちに向けて熱心に説明する姿が印象的であった。発
   表者へのフィードバックとして,聴衆者である教職員が『ポスタールーブリック(教員用)』
   で採点を行い,さらに聴衆生徒が『Good Job!シール』にコメントを記入しポスターに貼
   付した。発表者は,研究内容やポスターの表現だけでなく,実演を交えるなど工夫を凝ら
   し主体的に取り組み,その成果がアンケートにも現われている。来賓の方からは,「全生
   徒が積極的に取り組んでいて感心した」,「自己の研究に対するこだわりを感じた」等の
   高い評価を得た。刈谷高校版「科学の甲子園」ともいえるクラスマッチ「刈高サイエンス
   マッチ」は,未知の課題に対して日頃の探究活動で培った知識・技能を発揮する機会とな
   り,協働的に問題解決する手法を体験的に学習できた。
 
 
 
 
                                                       40
      研究内容を分かりやすくまとめて伝える力が向上した             27.6                                        59.9                                 10.8 1.7
 
               自身の研究の課題を見いだすことができた                  29.9                                51.9                                15.4        2.7
 
            質問に対しての的確な回答を行うことができた          18.5                             47.0                                 29.8                 4.7
 
         仲間と課題を解決することの有用性を実感できた                         39.0                                    47.5                          10.2 2.5
 
 
 
 
            仲間と課題を解決することの楽しさを味わえた                                54.8                                     37.1                    6.7 1.4
 
         仲間と課題を解決することの有用性を実感できた                                50.5                                    39.8                      8.7 1.1
 
                知識を応用することの大切さを実感できた                   34.7                                   48.5                            14.7        2.1
 
              今後もこのような探究活動を行っていきたい                   35.1                                   48.7                           13.4        2.8
 
 
 
 
             研究についてのイメージを持てるようになった                  35.1                                     53.0                               10.6 1.3
 
                         研究についての意欲が高まった                   34.0                                    50.9                                14.2    0.9
 
                        研究のテーマのヒントが得られた             26.5                                 50.5                                 20.9           2.1
 
                     科学に対する興味・関心が高まった              26.4                                 50.6                                 20.3          2.8
 
                                                          0%              20%                   40%             60%                   80%                  100%
 
 
                                     大変当てはまる        やや当てはまる                    あまり当てはまらない              当てはまらない
 
 
 
 
 イ   全校英語研究発表会「Scientific Research Presentation」
      実施日時    平成29年10月23日(月) 13:1015:30
      実施会場    刈谷市総合文化センター「アイリス」大ホール
      内    容
            第3学年のSS科目「ESDIII」では,3年間の学習
          の集大成として,各自がこれまで取り組んできた課題研
          究の成果をもとに,英語版のプレゼンテーション資料の
          作成を行った。発表資料が完成した後は各講座内での発
          表練習や発表会を実施し,代表班の選出を行った。この
          ような取組を経て,10月23日に実施した全校英語研究発
          表会「Scientific Research Presentation」では,代表
          班の生徒が在校生及び保護者等に向けて英語での口頭発
          表を行った。なお本年度は,名古屋大学よりAaron Grajo
          Laylo先生をお招きし,生徒による発表の前に基調講演を
          行っていただいた。基調講演は“Open Up”という演題で
          行われ,物事の固定観念に囚われず,客観的に物事や自
          分の感情を考える大切さや,世界共通語としての英語用
          いて人生を切り開いていくことの大切さ等についてお話
          しいただいた。基調講演の後は,スーパーサイエンス部
          の生徒達による,全校での生物多様性調査の結果につい
          ての英語発表を挟み,3年生代表班5グループの発表を
          行った。なお,発表テーマは,
                                    「Boost sale at convenience
          Stores」(文系課題研究),「The best way of living」
          (文系課題研究),「Can we make a soundproof room」
          (理系課題研究物理分野),「Let's have beautifl hair!」
          (理系課題研究生物分野),「Power generation with       ▲全校英語研究発表会
          peltier device」(理系課題研究化学分野)であった。
          各班の発表はもちろん,生徒による司会進行やAaron先生による質問やフィードバック,
          在校生との質疑応答等も全て英語で実施した。
 ウ   刈谷市及び周辺地域の在来種の分布調査
 
 
                                                           41
      (ア)   活動目標
           「生物多様性の保全」を学校継続課題と設定して,全校生徒による刈谷市及び周辺地域の在
         来種植物調査を全校生徒で行っている。マンパワーが必要なデータを蓄積するとともに,調査
         方法を確立させ,小学校や中学校を巻き込み行政と連携して地元の環境保護意識を高める。
      (イ) 活動内容
       a 準備担当       各クラスのSSH委員が資料配付,調査表回収と集計を行った。紙媒体に
                         よる調査表と植物同定資料のほかに,インターネットを利用して調査結果
                         を報告するシステムを昨年に続きSS部が管理した。
         b 調査方法     自宅周辺の500m四方の地域内に生息する,指定した在来種植物の観察地
                         点を地図上に記入し,生息地の分類,生息状況を記入する。
       c 日時対象       1 春の調査        平成29年4月28日(金)5月7日(日)
                                           第1学年第3学年,植物種22種
                         2 秋の調査        平成29年9月23日(土)10月17日(火)
                                           第1学年・第2学年,植物種18種
       d 発       表    集計結果の分析や考察はSS部の生徒が行っている。指定した植物種の出
                         現率や植物種ごとの出現地域の割合で植物の分布状況をまとめた。昨年と
                         同様,SSH東海フェスタ,AITサイエンス大賞(奨励賞を受賞),科
                         学三昧inあいち2017での発表に加え,刈谷市刈谷市児童生徒理科研究発表
                         会などで研究成果の発表を行った。
      (ウ) 今後の計画
           調査4年目で,まだまだ十分なデータではないが,インターネットを利用した回答方法を
         導入して,昨年度よりも高い回答率となった。このインターネットを活用した方法をさらに
         改善して小・中学生にも参加できるようにし,行政と一体となった環境保護意識を高める活
         動に盛り上げていく。また,初年度よりデータの信頼性が今調査の大きな課題になっている。
         植物同定資料の改善やSS部による再調査の実施,春・夏・秋と年3回行ってきた全校調査
         を春・秋の年2回に変更して実施するなど,データの信頼性の向上を目指し模索している。
 
 
 エ  高大連携特別研究
  (ア) 活動目標
       大学の研究室において,最先端の研究実験を体験することで先端科学技術についての興味
     関心を喚起するとともに,科学技術の発展に貢献する意識と,問題解決能力をはじめとした
     研究者として必要な素養を身に付ける。
 (イ) 活動内容
     a 東京大学特別研究
       研究概要 大学の研究室に生徒を1週間配属し,大学教員やTAの指導のもと,大学院生
                 と同じ研究室で生活をともにして,探究活動を行う。夜間は本校教員の指導に
                 より,事後学習及びレポート作成を行った。
       実 施 日 平成29年7月31日(月)8月5日(土) (5泊6日)
       実施場所 東京大学 大学院工学研究科 牛田研究室 中尾研究室
       指導講師 牛田 多加志 教授(再生医工学)
                 草加 浩平      教授(機械工学)
       参加生徒 希望者5名(2年生5名)
       研究内容    [牛田研究室]
                    再生医工学の一つとして,生体内の力学的環境に注目し,軟骨再生における
                    圧力などの物理刺激が細胞にいかに需要されるかの研究の一環として,軟骨
                    組織の静水圧負荷の影響を検証するため,軟骨細胞前駆体を用いてその分化
                    に関与する遺伝子の発現の定量を行った。
                    1 ガイダンス                      2 マウス軟骨前駆体細胞の観察
                    3 無菌操作,細胞継代,細胞播種 4 静水圧刺激開始
                    5 RNA抽出                         6 cDNA合成
                    7 遺伝子増幅(PCR法)             8 培養細胞観察
                    9 静水圧刺激細胞の免疫染色及び蛍光観察
 
 
                                            42
                     10 PCRにて増幅された発現遺伝子の解析
                    [中尾研究室]
                     CADソフトを使用して立体物を設計し,3Dプリンタで造形した。また,
                     旋盤やドリルなどの機械を使って,首振りエンジンのピストン部分の金属加
                     工を行った。
                     1ガイダンス                     2CADソフトの基本操作
                     3立体物の設計                   4立体物の造形
                     5首振りエンジンのピストン部分の金属加工
 
    b     名古屋大学特別研究
         研究概要 1日目は各自が持ち寄った植物試料から抽出したDNAの rbc-L遺伝子のPC
                   R処理及び塩基配列の解析を行うための前処理を,2日目は塩基配列の解析結
                   果をもとに,系統関係にに関するディスカッションとPCを用いた系統樹の作
                   成法に関する実習を行った。
         実施期日 平成29年8月4日(金),8月25日(金)
         実施場所 名古屋大学遺伝子実験施設      名古屋市千種区不老町
         指導講師 名古屋大学遺伝子実験施設 杉田 護 教授
                                              一瀬 瑞穂 特任助教 他
         参加生徒 希望者15名(2年生2名 1年生13名)
         研修内容 1 事前指導(校内)・マイクロピペット等の器具の使用法に関する研修
                                       ・蛍光遺伝子の大腸菌への導入(遺伝子組換え実験)
                                       ・PCR法及び電気泳動法を用いたコメの遺伝子解析
                   2 研修1日目        ・植物試料からの遺伝子抽出及び rbc-L遺伝子のPCR処理
                                       ・アガロースゲル電気泳動法による遺伝子増幅の確認
                       研修2日目      ・DNAシークエンサーによる解析結果からいえる系統
                                         関係に関するディスカッション,PCを用いての分子
                                         系統樹作成
 
 
 
 
 ▲名古屋大学特別研究                                          ▲東京大学特別研究
   (写真1左)持参した植物試料からのDNA抽出                       研究結果に関する最終
   (写真2右)大学院生と議論しながら分子系統樹を作成              ディスカッション
 
 
  《変容と考察》
      東京大学特別研究において,最先端の機器を使用しながら,未知の現象を解明していく中
    で,研究のおもしろさと難しさ,そして魅力を体感することができた。また,大学院生から
    大学生活や研究生活について直接話を聞くことで,自分も大学に入学して研究の道に進みた
    いという,未来のビジョンを明確化でき,有意義な時間を過ごすことができた。
      名古屋大学特別研究においては,自分たちの持ち寄った植物についての系統関係を予想し
    た上で,実際の分子系統樹を作成することで,分子生物学的な研究手法について学ぶことが
    できた。また,実施後に行ったアンケートでは,「実験の内容が難しかった」と答えた生徒
    が見られたものの,ほとんどの生徒が「内容を理解できた」「科学について興味・関心が増
    した」「今後も内容について学びを深めていきたい」と肯定的に回答した。また,自由記述
    欄には,「答えのないことにチャレンジすることは大変だったけど,とても楽しかった」と
    いう意見も複数見られ,本実習が自然科学に関する理解増進や興味関心の喚起に一定の効果
    があったと考えられる。なお,平成29年度の東京大学特別研究 牛田研究室には,以前の東京
 
 
                                           43
        大学特別研究に参加した男子学生が牛田研究室に所属しており,TAとして,在校生の指導
        にあたってくれた。当学生は,従来医学部志望であったが,東京大学特別研究に参加したこ
        とで再生医工学に興味を抱き進路変更を行ったようである。このような点からも,このよう
        な研修が,高大接続や生徒の心に火をつけることに一役買っていることがうかがい知れる。
        今後も引き続きより効果的な研修になるよう事業改善を行いたい。
 
 
 オ  SS特別活動「施設訪問研修」
   (ア) 活動目標
          先端科学技術に携わる企業や研究機関での,研究者からの講義や施設見学を通して,先
        端科学技術に対する理解の深化や幅広い見識を身に付ける。
   (イ) 活動内容
        a 再生医療企業訪問
          研修概要 人工培養表皮や人工培養軟骨等の研究開発で再生医療分野をリードするベン
                    チャー企業である(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を
                    訪問した。iPS細胞など再生医療が注目される中,地元にある最先端企業で働
                    く研究開発担当者の講義や大学進学に向けた話は,研究者を志す生徒に大変
                    参考になる機会となった。再生医療に関する講義を受けた後,人工培養表皮
                    等を用いた実習を行った。
          実 施 日 平成29年7月28日(金)
          実施場所 (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング (愛知県蒲郡市)
          参加生徒 希望者9名(1年生5名 2年生4名)
          実施内容 再生医療に関する講義
                    培養表皮,培養軟骨の観察・実習質,応答など研究者との交流
        b カミオカンデ施設訪問研修
          研修概要 岐阜県神岡町に設置されたスーパーカミオカンデと前身のカミオカンデ跡
                    地であるカムランドの研究施設を訪問し,講義や坑道内の研究施設を見学し
                    た。京都大学飛騨天文台や穂高砂防観測所では,天文学や防災における最先
                    端の研究施設を見学した。
          実施期日 平成29年8月28日(月)8月30日(水)(2泊3日)
          参加生徒 希望者 18名(男子13名,女子5名)
          研修施設
            1日目 奥飛騨さぼう塾(神通砂防資料館)
                    京都大学防災研究所附属流域災害研究センター
                    穂高砂防観測所
            2日目 東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設
                    東北大学大学院 ニュートリノ科学研究センター
            3日目 京都大学大学院理学研究科附属天文台飛騨天文台
 《変容と考察》
      再生医療企業訪問では,学校では経験できない講義や実習を通して,生徒の学習意欲を大い
   に刺激した。高校生にも分かりやすい説明で,再生医療に対する理解が深まった。実際に培養
   表皮に触る体験は,再生医療についてより身近に感じることができた。研究者の方々の説明や
   質疑応答を通して,将来の職業選択に向けたキャリア教育にも繋がった。
      カミオカンデ施設訪問研修では,研究者の方から現在行われている研究のことだけではなく,
   研究の方法に関する講義もしていただき,1つのことに対して様々なアプローチの方法があり,
   それらを駆使していかなければならないことを学ぶことができた。また最先端の装置やデータ
   に触れることで,科学に対する興味・関心をさらに高めることができた。
 
 
 
 
 カ    SS特別活動「SCI-TECH AUSTRALIA TOUR」
      (ア) 目的・概要
          オーストラリアにて,現地研究機関や大学にて講義を受けたり,フィールドワークを実施
 
 
                                            44
     する中で,地球規模での自然科学や先端科学・技術についての認識を深め,持続可能な社会
     を創造するグローバル・リーダーとして,将来国際社会で活躍するための素養を育成する。
     また,現地高校との共同研究や現地高校を訪問しての科学プレゼンテーション交流を行うこ
     とで,科学英語コミュニケーション能力を高めるとともに,異なるバックグラウンドをもっ
     た人々と協働する態度を養う。
   実施日時 平成30年3月4日(日)12日(月) 6泊9日
   実施場所 オーストラリア ブリスベン,ゴールドコースト
       (主な研修先) ミッチェルトン州立高校,クイーンズランド大学,ナッジービーチ環境
                       教育センター,ローンパインコアラサンクチュアリ,スプリングブルッ
                       ク国立公園
   参加生徒 第2学年理系生徒希望者12名
  (イ) 日程
 月日       訪問先等
                           現地時刻                  行程                宿泊地(都市)
 (曜)       (発着)
        中部国際空港発       16:05      航空機(CX539)にて香港へ
 3/4
        香港着               19:45      空港到着後,航空機乗り換え
 (日)
        香港発               21:35      航空機(CX155)にてブリスベン空
                                        港へ                             機内泊
 3/5    ブリスベン着         08:30      ブリスベン空港到着
 (月)   ブリスベン近郊                  専用車でミッチェルトン高校へ
                              午前      オリエンテーション
                              午後      サイエンス等の授業に参加・交流   ブリスベン
                             15:00      ホストファミリーと対面           (ホームステイ)
 3/6    ブリスベン近郊        終日      ミッチェルトン高校にて           ブリスベン
 (火)                                   サイエンス等の授業等に参加       (ホームステイ)
 3/7    ブリスベン近郊       終日       専用車にてナッジービーチ環境教
 (水)                                   育センターを訪問,マングローブ
                                        などの生物多様性保全に関する講   ブリスベン
                                        義および野外調査を実施           (ホームステイ)
 3/8    ブリスベン近郊       終日       専用車にてクイーンズランド大学
 (木)                                   を訪問,研究室訪問,キャンパス   ブリスベン
                                        ツアー,講義,学生との交流       (ホームステイ)
                             午前       ミッチェルトン高校にて授業に参
 3/9    ブリスベン近郊
                                        加・交流
 (金)
                             午後       現地高校生との課題研究の成果に
                                        ついてのポスターセッション,意   ブリスベン
                                        見交換                           (ホームステイ)
 3/10   ブリスベン近郊       午前       ミッチェルトン州立高校に集合,
 (土)                                   ホストファミリーとお別れ
        ゴールドコース    午前/午後    専用車にてスプリングブルック国
        ト近郊                          立公園を訪問,生態系や生物多様
                                        性に関する講義や野外研修を実施
                                        ゴールドコーストへ移動
                                        ホテルチェックイン               ゴールドコース
                                        夕食                             ト(ホテル泊)
 3/11                        8:30       ホテルで朝食後,チェックアウト
        ゴールドコース
 (日)                                   専用車でブリスベン市内へ移動
        ト近郊
                             午前       ローンパインコアラサンクチュア
        ブリスベン近郊
                                        リ訪問,オーストラリアの生態系
                                        や固有種に関する講義・実習を実
                                        施
                              午後      ブリスベン市内で研修(サイエン
                             18:30      スセンター,植物園等を訪問)
                             19:00      専用車にてブリスベン空港へ
        ブリスベン空港
                                        空港到着後,自由時間(夕食)
 
 
                                        45
                                 00:45      航空機(CX156)にて香港へ
 3/12      ブリスベン発                                                     機内泊
                                 07:10      香港到着後,航空機乗り換え
 (月)      香港着
                                 10:25      航空機(CX536)にて中部国際空港
           香港発
                                 14:55      へ
           中部国際空港着
                                            中部国際空港到着後,解散
 
 
 
 キ    SS特別活動「SS校内特別講座」
      (ア) 活動目標
           発展的な実験やまとまった時間が必要な講義については,特別講座を実施して,多くの生
         徒に先端科学技術に対する理解と幅広い見識を身につける機会とする。あわせて,本校教員
         の指導力の一層の向上を目指す。
      (イ) 活動内容
           a 物理分野1 放射線の観測
             講座概要 身の回りには,様々な種類の放射線が飛び交っている。それらの放射線の正
                       体について学び,また霧箱を用いて宇宙の観測を行う。さらに,素粒子物理
                       学入門として,標準模型の考え方について学んだ。
             実 施 日 平成29年8月21日(月)       *実施場所 本校物理教室
             参加生徒 希望者19名(2年生16名 1年生3名)
             結    果 100円均一などで簡単に手に入るものを用いて霧箱を制作し,宇宙線の観測を
                       行った。多くの生徒が試行錯誤しながら霧箱を作成し,観測することができ
                       た。また,素粒子についての講義を行い,最先端でどのような研究が行われ
                       ているかを知ることができた。高次な内容と思われている放射線や素粒子も
                       考え方の基本はそれほど難しくないことがわかり,先端科学を身近なものと
                       して実感することができた。
           b 物理分野2 電気回路・電子工作入門
             講座概要 電気抵抗,発光ダイオード,トランジスタ,コンデンサーなどの電気回路で
                       扱う素子のしくみを理解する。また,回路素子,ブレッドボード,基盤,ハ
                       ンダなどを用いて点滅回路を自作し,電気工作の基本操作を身につける。
             実 施 日 平成29年8月8日(火)       *実施場所 本校物理教室
             参加生徒 希望者11名(2年生8名,1年生3名)
             結    果 電気回路の仕組みを理解するとともに電子工作による「ものづくり」を体験
                       的に学習させ,生徒の科学に対する興味・関心・意欲を引き出した。実施後
                       のアンケートでは「紙に描かれた回路図を実際に工作することは難しかっ
                       た。」,「ものづくりの大変さと楽しさが分かった」などの感想があり,理
                       論から技術(理学から工学)への応用の難しさの一端に触れさせることがで
                       きた。「手を動かすこと」への機会が減る中で,電子工作を学習することで
                       科学者としての素養を高めた。
           c 化学分野 環境測定
             講座概要 「水を科学する」をテーマに,金属イオンと各種試薬との沈殿反応を観察し
                       て,金属イオンの系統的分離方法を考察するとともに,工場排水から金属イ
                       オンの除去方法を検討する。さらに,採取した河川水のCOD測定から汚染
                       の度合いを確認し,身近な環境を数値で理解する。
             実 施 日 平成29年8月1日(火),7日(月)     *実施場所 本校化学教室
             参加生徒 希望者3名(参加者1年生2名)
             結    果 参加者が1年生だけということもあり,大学の教養課程レベルの内容である
                       が,試薬や実験器具の扱いを身につけただけでなく,思考力を高める内容と
                       した。実験器具を一人一人が扱うことで,基本的操作の習得とともに安全面
                       に対する意識を高めた。試薬により生じる沈殿の色や,沈殿の溶ける様子に
                       興味を持ち,試薬を組み合わせた系統分離に意欲的に取り組んだ。台風の接
                       近によりCOD測定は行うことができなかったが,化学的内容だけでなく,
                       環境意識を高め1年生から3年生,文系か理系にかかわらず薦められる研修
                       にしたい。
 
 
                                            46
          d生物分野1 マイクロサテライト法によるコシヒカリの鑑定実験
         講座概要 品種のわからないコメサンプルのDNAを抽出し,マイクロサテライト領域
                    をPCR法により増幅した後,電気泳動法による遺伝子解析を行い,コシヒ
                    カリかどうかを鑑定する手法により,分子生物学実験の基本を習得させる。
                    なお,本講座は名古屋大学実験研修の事前講義を兼ねて実施した。
         実施日時 平成29年7月20日(木) *実施場所 本校生物教室
         参加生徒 希望者6名(2年生2名,1年生4名)
         結     果 分子生物学実験を初めて実施するという生徒も多かったため,マイクロピ
                    ペット等の実験器具の使用法や実験の原理等を最初に講義した後,実験を
                    行った。今回はマイクロサテライト領域の長さ(コシヒカリはSTRの反復
                    数が少なく,他の品種よりも増幅DNA断片の長さが短くなる)の違いによ
                    りコシヒカリか否かを判定したため,失敗もなく全てのグループにおいて,
                    正しく判定を行うことができた。実験後に実施したアンケートでは,すべて
                    の生徒が「先端科学・技術に関する理解が深まった,科学について興味・関
                    心が高まった」と答えたことからも,本実習が自然科学に関する理解増進や
                    興味関心の喚起に一定の効果があったと考えられる。
       e 生物分野2 大腸菌の遺伝子組換え光る大腸菌を作ろう
         講座概要 大腸菌に蛍光タンパク質の遺伝子(kik-G,kik-GR)を組込み,蛍光を発する大
                    腸菌を作成することで,分子生物学実験の基本を習得させる。なお,本講座
                    は名古屋大学実験研修の事前講義を兼ねて実施した。
         実施日時 平成29年7月21日(金),25日(火) *実施場所 本校生物教室
         参加生徒 希望者21名(2年生5名,1年生16名)
         結     果 本研修は7月21日(金)に遺伝子組換え技術や蛍光タンパク質に関する講義
                    の後,大腸菌への遺伝子導入処理を行い,25日(火)に青色LEDで蛍光タ
                    ンパク質を励起して遺伝子組換えが成功したかどうかの確認を行った。今回
                    の実験では,ほとんどの班において遺伝子組換えが成功し,蛍光を発する大
                    腸菌を得ることができた。なお,本実験は「遺伝子組換え生物等の使用等の
                    規制による生物の多様性の確保に関する法律」に準じて実施するとともに,
                    蛍光確認後はオートクレーブによる滅菌処理までを体験させた。実施後に
                    行ったアンケートでは,「実験の内容が難しかった」と答えた生徒が半数程
                    度いたものの,すべての生徒が「内容を理解できた」「科学について興味・
                    関心が増した」と肯定的に回答した。このことからも,本実習が先端科学技
                    術に関する理解増進や興味関心の喚起に一定の効果があったと考えられる。
 《変容と考察》
     校内特別講座として,物理・化学・生物それぞれの講座を実施した。普段の授業では取り上
   げることが難しい発展的内容や時間を要する実験を実施した。参加者には非常に良い刺激と
   なった。校内特別講座は教員の指導力向上の場としても有意義なものとなっている。
 
 
   ク    SS特別活動「SCI-TECH ENGLISH LECTURE」
        (ア) 活動目標
             外国人研究者による先端科学や研究者としてのキャリアに関するレクチャーやその後の
           質疑応答を通して,英語をツールとして積極的に使いこなそうとする態度や実戦的な科学
           英語コミュニケーション能力を高めるとともに,自然科学等についての見識を深め,将来
           国際社会で活躍できる素養を育成する。平成30年3月実施の「SCI-TECH AUSTRALIA TOUR」
           の事前トレーニングも兼ねる。
        (イ) 活動内容
           a 化学分野「半導体光媒体を用いるCO2と有機化合物との炭素一炭素結合形成反応の
                          開発」
               実 施 日 平成29年7月12日(水)
               講      師 名古屋大学大学院理学研究科 SELVAM, Kaliyamoorthy 博士
               参加生徒 希望者18名(2年生3名,1年生15名)
         b 工学分野「底面滑動を利用する基礎構造による建築物の耐震性能向上と評価」
 
 
                                            47
             実 施 日 平成30年1月26日(火)
             講    師 名古屋大学減災連携研究センター Habib Cem YENIDOGAN 博士
             参加生徒 希望者17名(2年生7名,1年生10名)
       c 生物分野「微生物関連分子パターン(MAMP)による細胞膜プロトンポンプの活性
                      制御機構の解明」
             実 施 日 平成30年1月26日(火)
             講    師 名古屋大学・トランスフォーマティブ生命分子研究所 Wenxiu YE 博士
             参加生徒 希望者21名(2年生6名,1年生15名)
 《変容と考察》
     今年は年3回の実施となった。講師のレクチャーの後の質問タイムでは,今までより活発な
   質疑がなされた。参加生徒の積極性が年々向上していると思われる。生徒にとっては大変貴重
   な経験なので,今後も継続していきたい。
 
 
  ケ    スーパーサイエンス部活動
       (ア) 活動目標
            自然科学系の部活動をSS部として統合・改編し,各分野において高いレベルの研究活
          動を行う。また,研究の成果を地域に発信することで,SSH事業の成果を地域社会等に
          広く普及させる。
       (イ) 活動内容
        a 生物班
          (a) 研究概要
                「国指定天然記念物小堤西池のカキツバタ群落の保全種子繁殖による遺伝的多様
              性の回復」「刈谷市及び周辺地域の生物多様性調査」などを中心に研究を行った。
          (b) 研究内容
                「小堤西池のカキツバタ群落の保全」では,愛知教育大学渡邊研究室,刈谷市役所
              等と連携しながら研究・調査活動を行っており,種子繁殖による遺伝的多様性の回復
              を目標に,分子生物学的な手法を取り入れた保全活動を行っている。次年度以降も,
              カキツバタ群落の遺伝的多様性の回復に向け,研究活動を行う予定である。「刈谷市
              及び周辺地域の生物多様性調査」においては,全校生徒が調査したデータの取りまと
              めを行い,全校生徒や地域住民に発表を行った。
        b 物理班
          (a) 研究概要
                「シャトルコックの飛行」,「断熱材の性能試験」,「風洞装置の作製」などを中
              心に研究を行った。
          (b) 研究内容
                「シャトルコックの飛行」では,自作の射撃装置を使用し,シャトルコックの飛行
              の様子をハイスピードカメラで撮影し,解析を行った。本年度は,羽根が一本欠けた
              シャトルコックの性質を飛行起動と空気抵抗から比較した。「断熱材の性能試験」で
              は,自作したロケットストーブに利用する断熱材を,バーミキュライトと耐火モルタ
              ルの混合比を変えて作成し,その性能を比較した。「風洞装置の作製」では,風洞装
              置を自作し装置の性能を確かめる実験を行った。実験では,整流ができているか,測
              定部内の風速にばらつきがあるかどうかを調べた。
        c 化学班
          (a) 研究概要
                マンガン乾電池に関する研究を行った。
          (b) 研究内容
                マンガン乾電池を断続的に使用することで電圧が回復する現象について研究してい
              る。マンガン電池を自作し,各材料の機能や発生する物質・反応を調べて解析を行っ
              た。また,現在は,簡略化された電池を使うことで,現在未解明である電池内部の細
              かな化学反応を解明し,電池の効率を高める研究も行っている。
        d 数学班
          (a) 研究概要
 
 
                                           48
              整数論に関連する諸問題について研究した。
         (b) 研究内容
              ある特定条件を満たしている整数元の集合について,その特徴や集合の作成方法
            について調べた。また,現在は,必勝法のあるゲームの必勝法についての研究を行っ
            ている。
     (ウ) 主な成果発表
       ・SSH全国生徒発表会;ポスター発表
       ・東海地区フェスタ;口頭発表,ポスター発表
        ・せいりけん市民講座;岡崎高校SS部と共にワークショップを実施
        ・ユネスコスクール発表会;ポスター発表
        ・科学三昧inあいち2017;口頭発表,ポスター発表
        ・AITサイエンス大賞;口頭発表,ポスター発表
        ・京都産業大学益川塾シンポジウム;ポスター発表
        ・第8回マスフェスタ;ポスター発表
        ・愛知県湿地サミット;口頭発表
        ・その他,中学生体験入学,文化祭等でも実験会や発表を行った。
 《変容と考察》
     生物班では,「小堤西池のカキツバタ群落の保全」におい
   て愛知県湿地サミットや科学三昧inあいち2017など多くの発
   表の機会を得て,研究成果の普及と広報を行うことができた。
   また,生物多様性の保全を中心にした地域貢献・地域連携活
   動に取り組み,コミュニケーション能力や他者と協働しなが
   ら問題を解決する力を伸ばすことができた。
     物理班では,「シャトルコックの飛行」においてAITサ
   イエンス大賞において優秀賞を受賞したり,全国SSH生徒
   成果発表会や益川塾シンポジウムに参加するなど,多くの実
   績が得られた。また,「風洞装置の作製」において他校と研
   究協力を行うなど,学校間での部活動の連携や交流を深めた。
   各研究について,複数年継続している研究が増加し少しずつ
   研究の質が向上している。
     化学班は教科書の内容を端緒として,教科書の内容を超え
   た取組を行うことができた。また,研究を通して,実験器具
   の正しい使い方を学ぶことができた。                         ▲カキツバタの保全研究
     数学班は,生徒と教員の間でのゼミナール形式の活動を主       活動の様子
   として行い,第8回マスフェスタや科学三昧inあいち2017な
   どで発表した。命題に対して,分かることを1つ1つ丁寧に検証するという研究の土台となる
   粘り強さを養うことができた。今後もさまざまなつながりを見出せるよう引き続き検証,研究
   を重ねていく予定である。
 
 
   コ    各種コンテストへの参加
        (ア) 物理チャレンジ2017 第1チャレンジ
            事業概要   科学技術に関する興味関心の一層の喚起のため,本年度から物理チャレン
                     ジの第1チャレンジを特例会場として本校で実施している。本年度もSS部
                     の1・2年生を中心に生徒が「実験課題レポート」に取り組み,「理論問題コン
                     テスト」に挑戦したが,残念ながら第2チャレンジへの進出はできなかった。
            実 施 日 平成29年7月9日(日)
            実施場所 愛知県立刈谷高等学校
            参加生徒 希望者10名(1年生5名,2年生5名)
            結    果 第2チャレンジ出場者なし
        (イ) 日本生物学オリンピック2017予選
            事業概要   科学技術に関する興味関心の一層の喚起のため,日本生物学オリンピック
                     予選を特例会場として本校で実施している。本年度も2年生理系生物選択者
 
 
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                     を中心に多くの生徒が予選突破に挑戦した。
         実 施 日 平成29年7月16日(日)
         実施場所 愛知県立刈谷高等学校
         参加生徒 希望者48名(1年生4名,2年生42名)
         結     果 本選出場者なし
     (ウ) 化学グランプリ2017予選
         事業概要      化学に興味のある生徒たちを中心に,本年度は7名の生徒が挑戦した。
                     また事前研修として,一宮高校主催の化学グランプリチャレンジにも積極的
                     に参加した。
         実 施 日 平成29年7月17日(月)
         実施場所 名古屋工業大学
         参加生徒 希望者8名(1年生7名,2年生1名)
         結     果 本選出場者無し
     (エ) あいち科学の甲子園2017
         事業概要      予選のトライアルステージは実験競技と各分野に関する筆記試験,決勝の
                     グランプリステージでは,物理・化学・生物・数学の4分野を中心とした実
                     験競技,事前課題を含む総合競技においてチーム競技を行う。2年生理系生
                     徒を中心にメンバーを募り,選抜チームとして参加した。
       (a) トライアルステージ
             実 施 日 平成29年10月21日(土)
             実施場所 愛知県立明和高等学校
             参加生徒 2チーム 12名(1年生4名,2年生8名)
             結    果 Aチームがトライアルステージ4位で,グランプリステージに進出した。
       (b) グランプリステージ
             実施期日 平成30年1月20日(土)
             実施場所 愛知県総合教育センター
             参加生徒 8名(2年生8名)
             結    果 上位入賞は果たせなかった。
 《変容と考察》
     多くの生徒から「もっと勉強をして,次回はいい成績を残したい」と感想を得ることができ
   た。このことから,本取組が科学技術に関する興味関心の喚起という点で一定の効果があった
   ものと推察される。科学の甲子園では,参加者を中心に,「科学の甲子園事前トレーニング」
   を9月と1月に合計5回実施した。参加生徒は事前研修や当日の探究活動を通して,論理的に
   事象を捉えることの重要性や正確に実験を再現することの難しさ他と協働することの大切さを
   実感しながら,仲間との絆を深めた。思うような結果は残せなっかったものの,参加した生徒
   は非常に充実した様子であり,このような協働的問題解決の機会は今後も多くの生徒に提供し
   ていきたい。
 
 
   サ    各種校外発表会
        (ア) せいりけん市民講座
            事業概要    生理学研究所が実施している「脳の不思議とサイエンス」市民講座におい
                     て小中学生や一般市民の方々を対象に生理学にまつわるサイエンスショーを
                     行い,科学の楽しさを伝えた。
            実施期日 平成29年7月22日(土)
            実施場所 岡崎げんき館     愛知県岡崎市若宮町
            参加生徒 SS部 16名(1年生5名,2年生11名)
            実施内容    刈谷高校と岡崎高校がそれぞれ身近な科学をテーマとして一般市民向けの
                     ワークショップを実施した。本校SS部は化学班が中心となって物が消える
                     箱を制作し,偏光板や光の性質について楽しく学んでいただき,好評を得た。
        (イ) 全国SSH生徒研究発表会
            実 施 日 平成 29 年8月9日(水),10日(木)
            実施場所 神戸コンベンションセンター(神戸国際展示場)
 
 
                                            50
                参加生徒  SS部3名(2年生3名)
                実施内容  1 発 表 形 態 ポスター発表
                              「劣化したシャトルコックの飛行
                          2 発 表 者 SS部3名(2年生3名)
                          3 発表概要
                                バドミントンで使用されているシャトルコックは,打たれた後に減衰振
                            動を示す縦揺れ(ピッチング)をしながら飛行することが先行研究などか
                            ら分かっている。今回の研究では,羽毛製シャトルコックで羽根が欠けた
                            ものを使用し,軌道がどのように異なるかを調べた。研究の結果,羽根が
                            欠けたシャトルコックは飛行が不安定になることが分かったが,1本欠け
                            たものだけは安定した。この原因は今回の研究だけではわからなかったた
                            め,次回以降の研究で調べる。また,風洞を製作中であり,これを用いて
                            シャトル本体の空気抵抗を調べる。
            (ウ) 刈谷市児童生徒理科研究発表会
                事業概要 刈谷市内の中学生の理科教育振興を目的に,科学部の研究成果発表の場とし
                          て開催されている刈谷市中学校理科発表会に,本校SS部員が特別発表とし
                          て参加し,日頃の研究成果について発表を行った。なお,本事業は中高連携
                          事業の1つとして実施している。
                実 施 日 平成30年1月20日(土)
                実施場所 刈谷市市民交流センター
                参加生徒 SS部3名(発表者3名)
                発表内容 「刈谷市および周辺地域の生物多様性調査」
        《変容と考察》
            SS部の研究成果は,様々な機会を通して行っており,その研究内容は年々評価されてきて
          いる。このような活動は,校内での課題研究ポスターセッションや代表発表において他の手本
          となり,校内発表会を盛況に導く,原動力となった。また,全校生徒による在来種調査の発表
          は,成果を還元することで調査意欲を高め,より多くの生徒の自然科学に対する興味関心を高
          めるとともに,地域社会に貢献しようとする態度につながる。
 
 
 
 
 4      実施の効果とその評価
      (1) 全校生徒一人一人が主役となりえる「サイエンスデー」の実施方法の研究開発
           第2期SSHでは,これまで単独で実施してきた「SSH特別講演会」と,第3学年生徒によ
         る課題研究の成果発表会「生徒成果発表会」を1日に集約させ「サイエンスデー」として実施し
         ている。「サイエンスデー」では,3年生の全員が在校生に対して発表をできるようにするため
         に,代表班によるプレゼンテーション発表の形式ではなく,ポスターセッションの形式を採用し
         ている。ポスターセッションでは,体育館に約100テーマのポスターがずらりと並び,学会さなが
         らの白熱したやりとりが交わされている。なお,ポスターセッションは前後半の2部構成し,こ
         れと並行して,本校版「科学の甲子園」ともいえる科学をテーマにしたクラスマッチ「刈高サイ
         エンスマッチ」を開催している。刈高サイエンスマッチを実施する目的としては,体育館の過密
         化を防ぐことに加えて,日頃の学習活動で身に付けた問題発見・解決能力や協調的問題解決能力
         を実際の問題解決の場面に活用する経験をさせることの2点がある。例えば,前半は第1学年の
         生徒がポスターセッションを聴講するのに並行して第2学年生徒が刈高サイエンスマッチに取組
         み,後半は入れ替えて実施するという方法を取っている。刈高サイエンスマッチでは,実際に手
         を動かしてものづくりを行ったり,実験を行いながら課題に取組ませるなどの競技を中心に行っ
         ているが,監督する教員からは,第1学年の生徒に比べて,第2学年の生徒はたとえ文系クラス
         であっても,問題解決のアプローチや思考スキルが非常に高いという声が複数上がっており,S
         S科目を中心とした教育活動の成果の現れであると評価できる。
 
      (2)  全校英語研究発表会の効果について
          平成29年11月,第3学年全生徒(n=399)を対象にこれまでの課題研究等の取組に関して,アン
        ケート調査を実施した。以下に示した表は,第3学年全体の回答結果(上段)と全校英語研究発
 
 
                                                51
        表会で代表班として発表した生徒の回答結果(下段)を抜粋したものである。
            ・質問1:仲間と協力して未知な問題を探究し,解決する力が向上した。
                            大変            やや          あまり          全く
                            当てはまる      当てはまる    当てはまらない 当てはまらない
                全    体      18.7%          59.1%          18.4%           3.8%
                代表生徒      81.3%          18.8%           0.0%           0.0%
            ・質問2:英語プレゼンテーション能力が向上した。
                            大変            やや          あまり           全く
                            当てはまる      当てはまる    当てはまらない   当てはまらない
                全    体      14.3%          46.5%          30.4%           8.8%
                代表生徒      68.8%          25.0%           6.3%           0.0%
            ・質問3:仲間と協力しながら課題を解決することの有用性を実感した。
                            大変            やや          あまり          全く
                            当てはまる      当てはまる    当てはまらない 当てはまらない
                全    体      29.8%          49.7%          17.0%           3.5%
                代表生徒      68.8%          25.0%           6.3%           0.0%
 
              アンケート結果から,全校英語研究発表会で代表班として発表した生徒がこれらの質問項目に
            対し「大変当てはまる」と回答した割合が,第3学年全体の値と比べて非常に高くなっているこ
            とがわかる。また,代表班として発表した生徒からは,「(Aaron先生からのフィードバックの
            内容から)自分たちの発表内容が的確に伝わったことがわかり,とても嬉しかったし,大きな自
            信につながった」という感想も得られた。当発表会は,3年生の10月下旬に実施されることや,
            約1500人もの聴衆を前にしての発表に加え,外国人講師や在校生と英語での質疑応答を行わなけ
            ればならないことなど,代表発表者の多くにとっては大きな重圧の掛かる取組であったと推察さ
            れる。しかし,このような重圧を仲間達と協力して乗り越えたことこそが大きな成長の機会とな
            り,自らの成長や学習の有用性(レリバレンス)を実感し,自己肯定感の向上につながったもの
            と考えられる。このことから“本物”の体験を経験させることは,生徒一人一人の心に火をつけ
            るという点で大きな効果があったものと評価できる。
 
 
 5    研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及
      (1) 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向
       1 校内における“本物”の体験のより一層の充実と効果の検証
          それまでは一般の生徒の中に埋もれていた生徒が,あるSSH事業への参加がきっかけとなり,
       他の校内でのSSH事業に次々と参加して積極的に質問等を行うようになったり,大学等が主催
       する研修に参加したりするようになった生徒や,東京大学特別研究への参加を契機に進路変更を
       行い,大学進学後にその研究室に所属し再び学ぶ生徒が現れるなど,本校で実施している各種研
       修・特別活動が生徒の主体性や自律的な学習態度を引き出すうえで,有効なものになっていると
       考えられる。その一方で,授業以外のSSH事業に参加しないまま卒業してしまう生徒も非常に
       多いため,各事業の魅力度をより一層高めていくとともに,学校行事等の日程調整を進めていく
       など,より参加しやすい環境を整えていきたい。また,SSHの課外活動に参加した生徒につい
       ては,卒業後の進路の追跡調査を行い,各種プログラムが“本物”の体験となり得ているか,効
       果の検証も続けていきたい。
 
        2   海外研修の一層の充実
          現在,「オーストラリア研修」では,現地の高校にホームステイし,授業に参加したり,課題
        研究の成果について現地の高校生と発表交流を行っており,参加した生徒からは好評を得ている。
        しかし,当初計画にあるような,同一テーマでの現地校との共同研究やインターネット会議シス
        テム等を用いての定期的な相互交流,現地での共同研究の実施については未だ実現できていない。
        これらの目標が一日でも早く実現し,海外研修がより一層の“本物”の体験になるとともに,学
        校全体に海外連携の成果が還元できるように,実施プログラムの研究開発を重点的に行いたい。
 
 
                                                  52
 (2) 成果の普及
  1   研究開発実施報告書やウェブサイト等での発信
    これまでの研究開発の成果については,研究開発実施報告書や本校ウェブサイト等を通して,
  発信を行った。また本年度の課題研究の成果については,論文・ポスター集等にまとめ,近隣の
  学校等に配布する計画である。SSHの研究開発で作成したルーブリックや教育課程については,
  県内外の教員研修会等で積極的に普及を行っており,本校の研究成果が他校の課題研究等におけ
  る実践等にも取り入れられている。
 
  2   校内成果発表会の実施や校外の発表会への参加
    「校内成果発表会」や「SSH生徒研究発表会」,あいち科学技術教育推進協議会発表会「科
  学三昧inあいち」等に各種発表会にて県内外の高校生に研究の成果を発信した他,刈谷市中学生
  理科発表会,生理学研究所の主催する市民講座「せいりけんセミナー」等において,地元中学校
  及び地域社会に対し,SSH事業の成果の普及還元を行った。また,愛知県内の教員研修会や各
  種冊子等においても,本校のSSHの研究開発の成果の発信を行った。
 
 
 
 
                                          53
 II-3         国際社会で通用する発信力を身に付けさせるカリキュラムの
             研究開発
 
 1    研究開発の課題
      (1) 目標
          スーパーサイエンス科目(以降「SS科目」)「Science & PresentationI・II・III」やSS教
       科「課題研究」の成果発表等を通して,国際社会で通用する発信力を身に付けさせる。
 
      (2) 実践及び結果の概要
         3年生に実施される全校英語研究発表会「Scientific Research Presentation」において,活
       発に質疑応答ができる実戦的な英語運用能力の育成を目標に,各学年のSS科目の研究開発に取
       組んだ。これらの科目では,科学的な文章をもとにプレゼンテーションを作成し,発表を行うと
       いう一連の過程を繰り返し行うことで,自律的にプレゼンテーションを作成できるようになるこ
       とを目指した。その結果,平成29年度10月に実施された「Scientific Research Presentation」
       では,プレゼンテーション発表はもちろん,外国人講師との質疑応答等も全て英語のみで行うこ
       とができた。また,在校生との英語での質問内容ややりとりも,的確かつ充実したものに高まっ
       た。この他にも,時習館高校SSH事業「SSグローバル 英国研修」や名古屋大学グローバルサ
       イエンスキャンパス事業「名大Mirai GSC」等の外部での取組等でも,複数名の生徒が選考を突破
       し海外派遣への切符を獲得するなど,SS科目「Science & Presentation」をはじめとした,国
       際社会で通用する発信力を育成するための取組の有効性が高まってきているものと評価できる。
 
 
 2  研究開発の経緯
   第1期SSHでは,各学年の英語の一部をSS科目「SS英語I」(4単位;コミュニケーション
 英語Iの代替),「SS英語II」(3単位),「SS英語III」(4単位)として実施し,科学的な内
 容を通して,英語プレゼンテーション能力等を育成するためのカリキュラムの研究開発を行ってきた。
 これらのSS科目により,生徒の英語プレゼンテーション能力や科学的な文章を読み解いていく力等
 に一定の効果が見られたが,単位数が多いため,現行学習指導要領に規定されている科目との差別化
 が図りにくいという指導上の課題も見られた。そのため,第2期SSHでは,SS科目「Science &
 PresentationIIII」として,各学年での実施単位数をあえて絞り込む(I,II,IIIの順に,2単位,
 2単位,1単位)ことで,第1期SSHでの研究開発の成果を礎として,さらに特色のある教育実践
 を行うことができるように,教育課程上の改善を行った。また,「Science & Presentation」の指導
 内容も,英語でサイエンスを学ぶ力や,英語プレゼンテーションを自律的に作成する力,質疑応答に
 も耐えうる実戦的な英語力の育成を目指すものへと発展させている。平成28年度からは,第1学年に
 おいて「Science & Presentation I」を,平成29年度からは第2学年において「Science & Presentation
 II」を実施している。なお,平成29年度は,SS科目担当者会議において平成30年度から第3学年に
 おいて実施される「Science & Presentation III」の効果的な実施方法等について,教科・科目を超え
 て検討を行った。
   また,第3学年のSS科目「SS英語III」では,全校英語研究発表会「Scientific Research
 Presentation」での英語プレゼンテーション発表に向け,SS科目「ESDIII」及び英語科と連携し
 て,実践的なプレゼンテーション能力等の指導・育成を行った。
 
 
 3    研究開発の内容
      (1) 仮説
          SS科目「Science & PresentationI・II・III」やSS教科「課題研究」の成果発表等を通し
       て,国際社会で通用する発信力を身に付けさせることができる。
 
 
 
 
                                                54
 (2)     研究内容・方法・検証
  ア      学校設定科目「ESDIII」
          教 科   ESD                           科目名         ESDIII
          単位数  1単位                         対象生徒         第3学年 396名
                  第2学年で実施した課題研究(理系は自然科学,文系は人文科学や社会科学など
                  の課題研究)をポスターにまとめ,研究成果を他者に伝える力を身につける。全
          目 標   校でのポスター発表会を通して,自身の研究に対する考えをまとめ,分かりやす
                  く説明できる技能の習得を図る。また,英語による口頭発表を通して,表現力や
                  国際コミュニケーション能力の育成を図る。
        使用教材 校務分掌SSH開発部が作成した教材
        指導計画              指導内容(時間数)                              取     組
        1学期      4 月 ・ESDIIIオリエンテーション(1)           ・全校ポスター発表会に向け,
                          ・ポスターの作成 (4)                        ポスターの作成を行った。
                                                                    ・作成したポスターを用いて,
                    5 月 ・ポスター発表準備 (3)                       発表練習を行った。
                                                                    ・体育館で約 100 枚のポスター
                    6 月 ・全校ポスター発表会「サイエンステ゛ー」     を掲示し,全校でポスター発
                          ・英語スクリプト作り (1)                    表を行った。
                                                                    ・英語版のスクリプトを作成し
                    7 月 ・英語口頭発表準備 (3)                       た。
 
                    9月    ・英語口頭発表準備 (3)                 ・英語での発表練習を行った。
        2学期             ・英語口頭発表会 (1)                   ・学年内で英語での口頭発表会
                                                                    を行った。
                   10 月   ・英語口頭発表会 (2)                   ・全校で優秀班の英語での口頭
                           ・全校英語発表会                         発表会を行った。
                           「Scientific Research Presentation」
                   11 月   ・課題研究のまとめ (2)               ・2年間の課題研究の振り返り
                           ・社会問題研究 (1)                     を行った。
                                                                ・様々な社会問題を扱い,自分
                   12月    ・社会問題研究 (3)                     の意見を考えた。
 
        3学期     1月     ・社会問題研究 (3)                     ・3年間のESDの振り返りを
                   2月     ・ESDのまとめ(1)                      行った。
 
     (ア)  全校ポスター発表会(サイエンスデー)
           全校ポスター発表会では,約100枚のポスターを体育館に掲示し,3年生が2年次に
         実施しした課題研究の成果をポスターセッション形式で発表した。発表会の準備として,
         ポスターや論文の作成をコンピュータ室で実施した。クラスSSH委員には,ポスターの
         見方や質疑応答の仕方などを事前に研修を行い,ポスターセッションをより有意義なもの
         にした。また,ポスター発表用ルーブリックを用いで発表の評価を行った。
     (イ) 英語口頭発表会
           学年内で英語発表会を実施した。1学期の後半に,英語でのスクリプトの作成を行い,
         夏休み中に英語科の教員による添削・指導を実施した。優秀班は生徒の相互評価および教
         員評価で選出した。
     (ウ) 全校英語研究発表会「Scientific Research Presentation」
           英語口頭発表会での優秀班の口頭発表を刈谷市総合文化センターにて実施した。司会・
         質疑応答を含めオールイングリッシュで行った。
         《優秀班発表テーマ》
             「Boost sale at convenience Stores」,「Can we make a soundproof room」,
             「Let's have beautifl hair!」,「Power generation with peltier device」,
             「The best way of living」
 
 
 
                                                 55
 《変容と考察》
     「ESDIII」では,ポスター発表での評価基準の明確化と英語発表の形式を口頭発表に変更
   することを行った。多くの教員同士の協力体制のもと,自身の研究に対する考えをまとめ,分
   かりやすく説明できる技能の育成を図れた。ポスターセッション形式での発表会では昨年度の
   反省を生かしてルーブリックをより要点を絞った形に変更し,また生徒の相互評価では段階ご
   との評価シートという形にして評価をしやすい形に変更した。学年内での英語発表に関しては
   活発に行われたが,質疑応答が不十分であるので英語コミュニケーション能力のさらなる向上
   を図る必要がある。
     口頭発表という目標に向け,発表準備をしていく中で班の団結力もより高まり,生徒にとっ
   て充実したものとなった。発表を通して生徒からは,「自らの成果を他者に理解してもらえる
   ように表現することの難しさを痛感した」という意見も聞かれた。コミュニケーション能力や
   表現力などの有用性を実感したと振り返る生徒が非常に多かったため,発表技能の習得に向け
   て発表の場を数多く与える必要がある。
     今後の課題として,英語発表会に向けての時間を増やし,質を向上させていく必要があるこ
   とがあげられる。そのために,英語の時間とコラボレーションするなど,カリキュラム段階で
   の改善を行い,課題研究を中心にすえていく必要があると考えられる。
 
 
 イ   学校設定科目「Science&PresentationI」
        教 科      英語                             科目名      Science&PresentationI
        単位数     2単位                          対象生徒     第1学年 402名
                   将来国際社会でも通用する発信力の基礎を育成する。主に,生物の生態や化学
                実験など,科学分野に関する文章を理解し,自らもプレゼンテーションを行い,
        目 標
                論理的に研究を発表する基礎的な能力を養う。また,情報や分析などを的確に理
                解したり相手に適切に伝えたりする基礎的な能力を養う。
      使用教材 PRO-VISION English CommunicationI,Mysteries in Science
      指導計画                 指導内容(時間数)                         取    組
                4・5月 "The Power of Vision and Hard Work" ・ペアやグループで英問英答を行
                          テーマ「人生」(9)                     う。本文の内容を英語で要約す
                                                                る。
                                                              ・本文の内容を参考にし,自分の
                                                                夢や信念についてプレゼンテー
                  6月     ″The  Sky’s Your Only Limit″       ションを行う。
                          テーマ「男女差別」(9)               ・本文の内容を自分の言葉で要約
      1学期
                                                                し,本文の内容に関してディス
                                                                カッションを行う。
                                                              ・ペアやグループで本文音読を行
                                                                う。
                          "Chocolate:A Story of Dark and      ・児童労働に関する自分の意見
                  7・9月 Light"                                 と,問題解決のための方策を考
                          テーマ「文化・社会構造」(9)           え発表する。
                  10月    ″Talking Plants″(10)              ・自らが興味のある動植物につい
                          テーマ「植物」                        て調べ,その生態を分かりやす
                                                                く写真3や絵を用いて王れ全
                                                                テーションする。
                  11月    ″  Parasitic     Butterflies   and ・本文の内容について正しく捉
      2学期                Their Host Ants″ (4)               え,生物の知恵について自分の
                          テーマ「生物の寄生関係」              意見を発表する。
                          ″ Where Have All the Honeybees ・ペアやグループで英問英答を行
                  12月    Gone?″(4)                            う。自分の考えや経験を相手に
                          テーマ「環境」                        伝える。
 
 
 
 
                                            56
                 1月     “He or She?”(4)                   ・生物の特異な性質について正し
                         テーマ「生物の性」                    く理解し,分かったことを自分
                                                               の言葉で要約する。
                 2月     “Now You See it”(3)               ・人間の体の不思議について自分
      3学期             テーマ「心理」                        の意見を相手にわかりやすく伝
                                                               える。
                         “Be Careful of Paper-Cuts”(3)     ・統計資料を使い,効果的なプレ
                 3月     テーマ「医療」                        ゼンテーションを行う。
 《変容と考察》
     科学分野で用いられる専門用語を,多くの英文を読むことで少しずつ理解し,自らも使える
   ようになってきた。また,プレゼンテーションの能力も,回数を重ねるごとに自ら目標や改善
   点を見つけ,それぞれがより良い発表を目指すようになった。発表素材の選択も,より聴衆が
   興味を持つものを選択するようになっていった。
 
 
 ウ     学校設定科目「Science&PresentationII」
        教 科   英語                                科目名    Science & PresentationII
        単位数  2単位                              対象生徒   第2学年 397名
                   先進的かつ多様な話題に関して興味関心を持ち,自ら問題点を見つけ出し,自
                分の意見をまとめ,それを英語を通じて,他者と積極的にコミュニケーションを
        目 標
                図ろうとする態度を育成するとともに,自らの考えを的確に他者に伝えることが
                できる基礎的な能力を養う。
      使用教材 PRO-VISION English CommunicationII,Mysteries in Science
      指導計画                指導内容(時間数)                          取    組
      1学期      4月    "An  Abundant  Well That Never  Runs ・日本文化に関する考えを40語
                         Dry"                                   程度の英語で表現し,伝えるこ
                         テーマ「日本文化」(4)                  とができる
                  5月    "Are You Really a Sloth?"            ・ペアやグループで本文音読を行
                         テーマ「共生」(5)                      う。本文の内容を英語で要約す
                                                                る。
                         "Designed to Change the World"       ・様々な物のデザインについて調
                  6月    テーマ「デザイン」(5)                  べたことを,英語で表現するこ
                                                                とができる。
                         "The Story of the Teddy Bear"        ・本文の内容に関して,英語を用
                  7月    テーマ「文化」(5)                      いて自分の言葉で伝えること
                                                                ができる。
                         “Baby corals dance their way home” ・自然の不思議に関する英文を読
      2学期             “Monarch butterfly migration”        み,その神秘性についてクラス
                         テーマ「自然」(3)                      メートに発表することができ
                  9月
                         "The Miracle of Fermentation"          る。
                         テーマ「発酵」(5)                    ・発酵に関して調べたことを英語
                                                                でクラスメートに紹介するこ
                         "Shedding Tears for My Patients"       とができる。
                10月     テーマ「医療」(4)                    ・医療について調べ,それについ
                                                                て自らの気持ちを英語で表現
                         "Inspired by Nature"                   することができる。
                         テーマ「科学技術」(5)                ・自然界と科学技術の関係性につ
                11月                                            いて理解を深め,その応用可能
                         “No polar bears in the Antarctic” 性について発表できる。
                         “It’s not safe out there”         ・宇宙の中の地球を自覚,認識し
                         テーマ「地球と宇宙」(5)                自分の考えを他者に伝える,プ
                12月                                            レゼンテーションを行うこと
 
 
                                              57
    3学期              "Finding the Real Santa Claus"      ができる。
                        テーマ「現代の習慣」(4)           ・異文化におけるサンタクロース
                                                            について理解し,違いを説明す
                1月     “Who is the smallest one of all” ることができる
                        “Missing link”                  ・進化の仕組みについて理解し,
                        テーマ「進化」(5)                   プレゼンテーションを行うこ
                        "The Underground Reporters"         とができる。
                2月     テーマ「戦争」(5)                 ・戦争について,自分の言葉で発
                        “ The bittersweet battle with      表することができる。
                        cockroaches”                     ・生存と適応の関係性に関する英
                        テーマ「適応」(3)                   文を理解し,耐性獲得の重要性
                3月                                         を自分の言葉で表現できる。
 《変容と考察》
     今年度は英文テキストの内容を確実にとらえしっかりと理解し,問題意識を持ちその解決策
   を自らの言葉で説明し,他者に的確に伝える活動を行うことを目標としプレゼンテーション能
   力の向上を図った。時には理解が難しい表現や内容が多く含まれている場合があったが,それ
   は英語表現が難解というわけではなく内容に関する自らのバックグラウンドの認識が不足して
   いたことが原因であったことが多かったようである。そのような時は,まず日本語で発表する
   ことで,内容を能動的に的確に理解することができ,後に英語による発表の場面でも論理的に
   的確な表現活動を行うことができた。以下に評価で使用したルーブリックの一部と,抽出した
   クラスにおける1学期と2学期のプレゼンテーションの総合評価の変化を示す。プレゼンテー
   ションにおいて高評価を受ける生徒の割合が徐々に増加しており,全体としての発表技術の向
   上が見られ指導効果が現れてきているように感じられる。
 
 〇プレゼンテーションのルーブリック
   評価 発表態度(アイコンタクト,             声量                          内容
              ジェスチャー等)
          準備原稿をほとんど見な       オーディエンス全体に聞     Introduction  Body 
        いで,写真4(絵)を上手く使っ こえるような声で,聞き取り Conclusion の 展 開 が よ く わ
     A て,ジェスチャーやアイコン やすいスピードで話してい かり,各写真5(絵)のポイン
        タクトを交えて発表した。 た。                           トがはっきり伝わり主張が
                                                                明確である。
          準備原稿には目を落とす       時々聞き取れないところ     Introduction  Body 
        が,写真6(絵)を上手く使っ もあるが,全体的に聞きやす Conclusion の 展 開 は わ か る
     B て,ジェスチャーやアイコン い声で発表できている。       が,あまり目新しい内容がな
        タクトを交えて発表しよう                                くあまり主張が明確でない。
        としていた。
          準備原稿を読むだけで,       声が小さくて聞こえず,内   Introduction  Body 
        ジェスチャーもアイコンタ 容が聞き取れないので伝わ Conclusion の 展 開 が わ か り
     C クトもなかった。写真7(絵)は らない。                     づらい。 各写真8(絵)と説
        ただ貼ってある(持ってい                                明が対応していないため全
        る)だけであった。                                      く主張が伝わらない。
 〇1学期と2学期のプレゼンテーションにおける評価の変化
                            総合A評価             総合B評価              総合C評価
        1学期                  21%                    43%                     36%
        2学期                  34%                    45%                     21%
   *ルーブリックの各項目の評価において,AAA・AABを総合A評価,ABB・BBB・
   ABC・BBCを総合B評価,ACC・BCC・CCCを総合C評価とした。
 
 
 
 
                                             58
        エ 学校設定科目「SS英語III」
         教 科     英語                                 科目名     SS英語III
         単位数    4単位                             対象生徒     第3学年 399名
                      英語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成すると
         目 標     ともに,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりする能力を養う。科
                   学分野の発表を行うだけでなく,質疑応答ができる能力も養う。
         使用教材 Science Explorer, Cutting Edge 3, LINK UP
       《変容と考察》
           第3学年は,まずテキストを通じて先端科学技術,環境問題,生態系維持についてより深く
         理解し,その後自分たちの言葉や表現を用いて発表をすることで,発表者と聴衆の両方がさら
         にテーマについての理解度を深めることができた。難解な専門用語をできるだけ使用すること
         なく,どうすればより皆が理解しやすい発表になるか,という視点を通じて発表の練習をする
         ことで,生徒の英語運用能力の向上が見られた。
                                                               (数字は肯定的な回答の人の割合)
               英語による発表をやって良かった。                            文系83%,理系80%
                   プレゼンによって英語による表現能力が身に付いたと思う。    文系88%,理系75%
               2年次に比べ,より聴衆を意識した発表が行えるようになった。発表の前提条件となる英文
             を正しく理解する能力についても,より短い時間でより多くの情報を読み取ることができるよ
             うになった。語彙力や表現力も増しており,それらに基づいて,意見発表を堂々と落ち着いて
             行うだけでなく,的確に質疑応答ができるようになった。
 
 
 4    実施の効果とその評価
      (1) 実践的な英語力を育成するための取組の充実
          本校では,課題研究の成果をもとにした全校英語研究発表会を平成27年度から実施してきた。
       司会進行を含め,発表や質疑応答を全て英語で行うことを原則として行ってきた当発表会ではあ
       るが,平成28年度までの発表会においては,質疑応答において「日本語でもいいですか?」と断
       わりを述べた後に,日本語での質問や説明を行ってしまう場面を目にすることも多かった。しか
       し,3回目となった本年度は,質疑応答も含め全て英語のみで行われ,名実ともに全校“英語”
       研究発表会が実現した。また,外国人講師との質疑応答のやりとりも非常に的を射たものであっ
       た上,在校生との質疑応答も一往復のみに留まらず非常に活発なものとなり,御臨席いただいた
       評価委員及び運営指導委員の先生方からも非常によい評価をいただくことができた。なお,今回
       の発表者のほとんどは帰国子女等の海外経験者ではなく,SS科目「SS英語IIII」 (現「Science
       & Presentation IIII」)等の授業や「Sci-tech Australia Tour」,「Sci-tech English Lecture」
       等の特別活動を通して,実践的な英語力を高めてきた生徒達である。これらの成果は,全校英語
       研究会での質疑応答に耐えうる英語力の育成を目標に据え,教育課程や授業の取組改善を行って
       きたことの効果の現れだといえる。
 
 
      (2) 校外における研修や本校SSH事業「Sci-tech English Lecture」への取組状況から
         時習館高等学校のSSH重点枠事業「SSグローバル英国研修」では,平成29年度は3名,平
       成28年度は2名の生徒(各校からの派遣上限数は3名)がイギリスへの派遣を,名古屋大学グロー
       バルサイエンスキャンパス事業「名大Mirai GSC」では平成29年度は1名,平成28年度は2名の生
       徒がドイツへの派遣を,いずれも厳しい選考を突破し決めている。さらに,外国人研究者を招い
       て実施する先端科学研究に関する英語レクチャー「Sci-tech English Lecture」には各回2030
       名程度の生徒が参加している他,60分ほどの講義に対し,質疑応答の時間がほぼ毎回30分間を超
       えるなど,非常に活発なものになっている。このようなことからも,国際社会に積極的に関わろ
       うとする態度が垣間見られる。
 
 
 
 
                                                   59
 5    研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向,成果の普及
      (1) 研究開発実施上の課題及び今後の研究開発の方向
       1 自律して英語プレゼンテーションを作成する能力や質疑応答に耐えうる実戦的な英語運用能
            力の効果的な育成に向けた教育課程の改善
          本年度の全校英語研究発表会においては,外国人研究者との質疑応答も含め,全て英語のみで
       実施することができたが,プレゼンテーションやスクリプトの作成時には,英語科教員を中心と
       して,添削指導等の支援を行っている。現在の課題としては,生徒たちが教員の手を借りずに自
       律的にプレゼンテーションを作成したり,質疑応答ができるようになるための教育課程及び指導
       法を確立することであり,「Science & Presentation IIII」を柱として,SS教科「課題研究」
       や理科・数学等のその他の教科科目の連携を強化することで,いわば練習試合にあたるパフォー
       マンス課題を繰り返し行わせるなどの教育課程の改善を「SS科目担当者会議」等を中心に継続
       して行っていきたい。
 
 
      (2) 成果の普及
       1   研究開発実施報告書やウェブサイト等での発信
         これまでの研究開発の成果については,研究開発実施報告書や本校ウェブサイト等を通して,
       発信を行った。また本年度の課題研究の成果については,論文・ポスター集等にまとめ,近隣の
       学校等に配布する計画である。SSHの研究開発で作成したルーブリックや教育課程については,
       県内外の教員研修会等で積極的に普及を行っており,本校の研究成果が他校の課題研究等におけ
       る実践等にも取り入れられている。
 
 
 
 
                                                60
 III   校内におけるSSHの組織的推進体制について
   (1)     SSH研究組織の概要図
 
   愛知県立刈谷高等学校                   SSH運営指導委員会・SSH評価委員会
 
                                                        SS科目理科担当→理科
            S      プ   学           SSH
            S      ロ   校                             SS科目数学担当→数学科
                                      研究・指導
            H      ジ   マ                             SS科目英語担当→英語科
            運                        グループ
                    ェ   ネ                             SS科目公民担当→地歴・公民科
            営      ク   ジ
            委      ト   メ                             SS科目情報担当→情報科
            員      会   ン                             SS教科課題研究担当
            会      議   ト
            ・                                                →SSH開発部,1年・2年・3年
            校                                          SS特別活動担当→SSH開発部
            長                                          SS地域連携担当→SSH開発部
                         S
                         S                             SS企業連携担当→SSH開発部
                         H                             SS大学・研究機関連携担当→SSH開発部
                         開
                         発                             SS国際交流担当
                         部                                   →SSH開発部・国際交流部
                                                        SS自然科学部→SS部活動
 
                    SS科目          SSH            SSH広報担当→情報・研修部
                  担当者会議          広報・評価        SSH図書・資料担当→図書部
                                      グループ          SSH報告書担当→SSH開発部
                                                        SSH評価担当→SSH開発部
                                      SSH
                                      経理・事務
                                      グループ
 
 
 
   (2) 刈谷高校SSH運営指導委員会等
      ア 運営指導委員会
        本校のスーパーサイエンスハイスクール研究開発事業の運営に際して,有識者からなる運営指
    導委員会を設置し,指導・助言を仰ぐ。
            氏名                                    所属・職名
      武藤 芳照       日本体育大学総合研究所 所長
      吉田      淳    名古屋学院大学 スポーツ健康学部 教授
      菅沼 教生       愛知教育大学 副学長
      松下 恭規       株式会社デンソー 総務部長
      別所 良美       名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 教授
      竹内 恒夫       名古屋大学大学院 環境学研究科 教授
      小谷 健司       愛知教育大学 数学教育講座 教授
      野村 裕幸       刈谷市立富士松南小学校 校長
 
       イ  管理機関
             氏名                                       所属・職名
       柴田 悦己          愛知県教育委員会高等学校教育課 課長
       加藤 文彦          愛知県教育委員会高等学校教育課 主幹
       山脇 正成          愛知県教育委員会高等学校教育課 課長補佐
       加納 澄江          愛知県教育委員会高等学校教育課 主査
 
 
                                                   61
    川手    文男       愛知県教育委員会高等学校教育課        主査
    鶴見    泰文       愛知県教育委員会高等学校教育課        指導主事
    尾崎    和由       愛知県教育委員会高等学校教育課        指導主事
    前田    憲一       愛知県教育委員会高等学校教育課        指導主事
    中野      隆       愛知県教育委員会高等学校教育課        指導主事
 
  ウ     活動計画
       運営指導委員会は,年に2回下記の予定で開催し,研究開発の指導・評価等を行う。
         平成28年度          平成29年度         平成30年度          平成31年度        平成32年度
    ・研究中間報告と     ・研究中間報告と   ・研究中間報告と   ・過去3年間の研   ・過去4年間の研
      年間計画見直し       年間計画見直し     年間計画見直し     究報告と評価       究報告と評価
    ・各事業について     ・各事業について   ・平成2830年度の ・各事業について     ・各事業について
      の中間評価           の中間評価         各事業についての   の当該年度の中     の当該年度の中
    ・次年度へ向けた     ・次年度へ向けた     中間評価           間評価             間評価
      事業内容の検討       事業内容の検討   ・次年度へ向けた   ・次年度へ向けた   ・次期申請に向けた
                                              事業内容の検討     事業内容の検討     事業内容の検討
 
 
 (3) 刈谷高校SSH評価委員会
    本校のスーパーサイエンスハイスクール研究開発事業の運営に際して,有識者からなる評価委
  員会を設置する。
          氏名                                  所属・職名
    川上 昭吾       愛知教育大学 名誉教授
    野々山 清       名城大学 教職センター 教授
    石川 泰隆       学校評議員 代表
    評価委員には,本校SSH事業を随時視察していただき,年度末に開催する評価委員会で研究
  開発状況の評価を仰ぐ。
 
 (4) 刈谷高校SSH研究組織
    SSH責任者          校長
    SSH運営委員会      教頭 教務主任 SSH開発部
    学校マネジメント      校長 教頭 教務主任 進路主任 生徒指導主事 情報研修主任
    プロジェクト会議      各学年主任 SSH開発主任,副主任
                          教頭 教務主任 SSH開発主任,副主任
    SS科目担当者会議
                          SS科目を設置している各教科の各学年代表者 各1名
 
  ア  学校マネジメントプロジェクト会議
    運営委員会やSS科目担当者会議等と連携を図りながら,「自律した十八歳の育成」や「真正
  な学びを創出する「未来型」の進学校への進化」の達成に向け,学校マネジメントの導入及び学
  校改革の具体的方策や方向性について検討を行っている。開催は随時。
  イ SS科目担当者会議
    教頭,教務主任,SSH開発主任,SSH開発副主任,SS科目を設置している各教科(数学
  科,英語科,理科,情報科,地歴公民科)の研究開発の学年主担当者から構成され,学校マネジ
  メントの実現に向けたマトリックスの作成や,SS科目の研究開発における教科間連携等につい
  て実務担当者レベルでの協議を行っている。なお,平成29年度は,週1時間を時間割上に設定し
  継続的に開催し,「自律した十八歳」,「科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふ
  れるグローバルリーダー」とは,どのような資質能力や態度を兼ね備えた人物であるかの検討を
  行い,育成を目指す人物像の具体化(見える化)を行った。現在は,平成30年度のSS科目等の
  より効果的な実施に資するため,育成したい資質能力を教育課程に落とし込んだマトリックス(ど
  のような力を,いつまでに,どの教科・科目で,どのくらいのレベルまで育成するべきかを整理
  した表)の作成作業を行っている。
 
 
 
 
                                                  62
 IV          関係資料
 1     教育課程編成表
      (平成29、28年度入学生用)
                                                                                 第2学年                     第3学年                      単位数計
                                                       標 準    第 1
       教        科             科            目                                 類    型                     類    型                      類    型
                                                       単位数   学 年
                                                                        文       系    理       系   文       系    理        系   文       系    理       系
                            国語総合                     4        5                                                                     5          5
            国
                            現代文B                     4                   2              1             2              2              4          3
            語
                            古 典B                      4                   4              3             3              2              7          5
                            世界史A                     2                                      2                                                0・2
        地理                世界史B                     4                   3       2               4     2          3            5・7        0・5
                            日本史B                     4                   3       2               4     2          3            5・7        0・5
        歴史                地 理 A                     2                                      2                                                0・2
                            地 理 B                     4                           2                                3                          0・5
            公              倫    理                     2                                                3                             3
            民          ※社会と科学                     2        2                                                                     2              2
                            数 学 II                     4                   3                                                          3
                            数 学 B                     2                   3                                                          3
            数          ・数学総合α                                                                      3
                                                         3                                                                              3
                        ・数学総合β                     2                                                2                             2
            学
                        ※探究数学基礎                   6        6                                                                     6              6
                        ※探究数学I                      6                                  6                                                          6
                        ※探究数学II                     6                                                               6                             6
                        ・総合理科                       2                                                2                             2
                       ※ 科 学 技 術 リテラシーI        4        4                                                                     4              4
            理
                        ※ 科 学 技 術 リテラシーII      2                   2                                                          2
                        ※探究物理I                      2                                  3                                                    0・3
                        ※探究物理II                     4                                                               4                       0・4
            科          ※探究化学I                      3                           3                                                                 3
                        ※探究化学II                     4                                                        4                                    4
                        ※探究生物I                      2                                  3                                                    0・3
                        ※探究生物II                     4                                                               4                       0・4
        保健                体    育                   78       2          2              2             3              3           7             7
        体育                保    健                     2        1          1              1                                        2             2
            芸              音 楽 I                      2      2                                                                  0・2        0・2
                            美 術 I                      2      2                                                                  0・2        0・2
            術              書 道 I                      2      2                                                                  0・2        0・2
                            コミュニケーション英語I      3        2                                                                  2             2
                            コミュニケーション英語II     4                   1              1             3              3           4             4
            外
                              英語表現I                  2        2                                                                  2             2
            国                英語表現II                 4                   2              2             2              2           4             4
                        ※Science&
                           PresentationI
                                                         2        2                                                                  2             2
            語          ※ Science&
                                                         2                   2              2                                            2          2
                          PresentationII
                        ※ Science&
                          PresentationIII
                                                         1                                                1              1               1          1
        家庭                    家庭基礎                 2        2                                                                      2          2
        情報            ※ICTリテラシー                  2                   2              2                                            2          2
                        ※探究基礎                       1        1                                                                      1          1
       課題研究         ※課題研究I                      1                   1              1                                            1          1
                        ※課題研究II                     1                                                1               1              1          1
       特別活動             ホームルーム活動             3        1           1          1                1               1              3          3
                                     計                          32          32          32               32             32             96         96
        備考          (注1)線で結んだものは選択履修する単位数を示す。
                      (注2)第2学年の理系の地理・歴史で世界史Bの選択者は地理Aを選択履修する。
                      (注3)第2学年の理系の地理・歴史で日本史B・地理Bの選択者は世界史Aを選択履修する。
                        ※はスーパーサイエンス科目を示す。
                        現代社会は社会と科学で代替する。
                        数学I、数学II、数学Aは探究数学基礎で、数学II、III、Bは探究数学Iで代替する。
                        第1学年の物理基礎、生物基礎は科学技術リテラシーIで代替する。
                        第2学年の文系の化学基礎は科学技術リテラシーIIで代替する。
                        第2学年の理系の化学基礎は探究化学Iで代替する。物理、化学、生物はそれぞれ探究物理I、
                        探究化学I、探究生物Iで代替する。
                        情報の科学はICTリテラシーで代替する。
                        第1学年の「総合的な学習の時間」は探究基礎で代替する。
                        第2学年の「総合的な学習の時間」は課題研究Iで代替する。
                        第3学年の「総合的な学習の時間」は課題研究IIで代替する。
                        ・は学校設定科目を示す。
                                                                             63
 2   平成29年度SSH運営指導委員会及び評価委員会の記録
      (1) 第1回SSH評価委員会・運営指導委員 御助言・御指導
          1 実 施 日      平成29年6月16日(金)
          2 出 席 者   菅沼 教生(愛知教育大学 副学長)
                         別所 良美(名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 教授)
                         小谷 健司(愛知教育大学 数学教育講座 教授)
                         野村 裕幸 (刈谷市立富士松南小学校 校長)
                         鶴見 泰文(愛知県教育委員会高等学校教育課 指導主事)
          3 内     容     課題研究成果発表,本年度の事業計画
          4 御 指 導
           ア ポスターセッションで生徒から聞いたところによると,研究に関する費用は全て自腹
             であるということだった。薬品等も自分たちで用意したとのことで,それでは研究に限
             界が出てしまうと考えられる。自分たちで何かをやるという点では意味があると思うが,
             研究を進める上では多少のサポートがあると研究自体が高まる。
           (刈谷高校補足)
               研究に関する費用としては,研究に用いる薬品や実験機器・器具等は本校SSH予算
             を用いて購入しており,使用可能な薬品や実験機器・器具類の一覧はいつでも,生徒が
             観覧できるようにしている。しかし,多岐にわたる研究の全てに対応できるだけの材料
             等を学校として予め準備することは不可能であるので,生徒たちには,できる限り100
             円均一などで販売されている材料等を利用して実験装置などを作成するなどの工夫をす
             るように指導している。
           イ 課題研究について,様々な方法を試して仮設を検証する研究が少なかった。追究の仕
             方がより深まるような指導を目指す必要がある。
           (刈谷高校補足)
               平成29年度の課題研究では,テーマ設定(学術的問題や仮説の提起,先行研究の調査
             等)に十分な時間を充てることで,仮説検証型の研究の割合が増えるように,指導方法
             の改善を行っている。
           ウ 文系の中には調べ学習で終わってしまっている研究があるので,改善を求める。
           (刈谷高校補足)
               平成29年度からは,仮説検証型の課題研究が文系においても実現するように実施内容
             の見直しを行って実施している。
           エ 参考文献にインターネット情報が多く見られた。信頼ある情報ソースに限定するなど
             の工夫が必要である。
           (刈谷高校補足)
               先行研究の調査等においては,論文検索サイトや書籍等を用いて,信頼度の高い情報
             のみ参照するように指導しているが,個人のサイト等を参照する生徒が少なくないのが
             現状である。
           オ 生徒が選んだ課題がどのように世界の問題とつながっているのかなどの事後指導を一
             層充実させるとよい。
           カ 現在大学も評価が大きな課題となっている。事業においても学生がどのように変容し
             たかを客観的に示すように求められてきている。SSHも同様であると思われるが,生
             徒への事前事後アンケートなどでも変容の姿が客観的に示されると考えられる。
           キ 評価については,追究の仕方がどう変ったのか,前年と比べ統計処理に取り組むグルー
             プが幾つ増えたのかなど,数値で表せるとよい。
           (刈谷高校補足)
               課題研究の全体的な質的向上については,ルーブリック等を用いて行っているので,
             後日お示ししたい。
           ク サイエンスマッチの問題はよく考えてあり,面白い問題である。これらの問題は今後,
             他の生徒にも紹介して全員がこの問題に関われるようになるとさらによい。
           (刈谷高校補足)
               刈高サイエンスマッチの実施の目的には,教員の指導力の向上や授業改善もある。こ
             れまでにも,刈高サイエンスマッチで作成した問題は,翌年度以降の授業におけるパ
 
 
                                              64
          フォーマンス課題として活用されている。
        ケ サイエンスマッチでは,問題の教材も安価にそろえられ先生方の工夫が感じられた。
          生徒たちが互いに関わり合いながらチャレンジしている姿や,教員の協力分担等を見ら
          れた。
        (刈谷高校補足)
            課題研究における生徒への指導と同様に,できる限り100円均一等を利用して材料等を
          集めるなどの工夫を教員も行っている。また,刈高サイエンスマッチでは,担当教科・
          科目の教員のみならず,学年に所属する全教員で運営に当たっており,名実ともに全校
          体制での取り組みとなっている。
 
 (2) 課題研究英語発表会 出席委員 御助言・御指導
  1   実 施 日    平成29年10月23日(月)
  2   出 席 者  野々山 清(名城大学 教職センター 教授)
                  菅沼 教生(愛知教育大学 副学長)
                  野中 繁 (JST中部地区主任調査員)
                  加納 澄江(愛知県教育委員会高等学校教育課 指導主事)
   3 内     容    課題研究英語口頭発表
   4 御 指 導
    ア 大きな会場で,司会も含めてオールイングリッシュでの発表会は大いに意味がある。特
      に,英語での質問が定着したことが大きな進歩といえよう。
    イ 文系の課題が,仮説の検証,そして問題解決へとはなりにくい状況は十分考えられる。
      しかし,少しでもそれに近づけ,単なる調べ学習にならないようにしたい。
    ウ 一生懸命時間をかけて取り組んだ努力は認めるが,研究内容のレベルアップを図ること
      は常に必要である。特に理系の内容については,底が浅くならないようにしてほしい。
    エ これだけの発表をするために,教員側の指導が大変であることは容易に推測できる。仲
      間と一緒に問題を解決するためのトレーニングの場であるという位置に,この課題研究を
      持って行けば,内容がもっと深まる。
    (刈谷高校補足)
        英語の指導は,学年の英語科教員だけではなく,英語科全体で協力して行っている。た
      だし,教員によって添削をされた英語の原稿を覚えて,発表するというのは極端な話小学
      生でもできるので,刈谷高校としては質疑応答の部分を重視したい。第2期SSHでは,
      第1・2学年の英語の授業である「Science & Presentation」でできる限り練習試合(パ
      フォーマンス課題)を経験させることで,教員の手を借りなくとも,自律的にプレゼンテー
      ションの作成や質疑応答ができるよう教育課程の改善を行っている。
    オ 研究内容から考えて,何のためにこの調査をするのか「仮説」を明確に持ちたい。
    カ 一人一人が発表に対して問題意識を持って取り組むことが,よりよい質問につながる。
 
 (3) 第2回SSH評価委員会・運営指導委員 御助言・御指導
  1   実 施 日    平成30年1月26日(金)
  2   出 席 者  川上 昭吾(愛知教育大学 名誉教授)
                  野々山 清(名城大学 教職センター 教授)
                  吉田    淳(名古屋学院大学 スポーツ健康学部 教授)
                  菅沼 教生(愛知教育大学 副学長)
                  松下 恭規(株式会社デンソー 総務部長)
                  小谷 健司(愛知教育大学 数学教育講座 教授)
                  野村 裕幸(刈谷市立富士松南小学校 校長)
                  前田 憲一(愛知県教育委員会高等学校教育課 指導主事)
   3 内     容    本年度の事業報告,次年度の活動計画
   4 御 指 導
    ア 企業の新人研修でも数年前からALを取り入れているが,個々の習得内容に大きな差異
      が出るなどの問題が指摘されている。ALを推進する中で,デメリットを最小限に抑える
 
                                          65
   対策も必要である。
 (刈谷高校補足)
     例えば講義形式での授業でも「よい授業」と「悪い授業」があるようにALにも「よい
   AL」と「悪いAL」があると認識している。近年の教育科学ではALのほうが効果が高
   いことが常識になっているので,主体的で対話的かつ深い授業の実現に向けて,指導力向
   上のための取組を継続したい。
 イ 韓国や台湾では日本と比べようのないほど,レベルの高い取組をしている高校もある。
   刈谷高校としての独自性を出すためには,他校の取組を研究することも大切である。
 ウ これからは知識を増やす力ではなく,知識を使う能力が求められるので,SSH事業を
   通して全校としてこうした力を伸ばして欲しい。
 (刈谷高校補足)
     「使える」レベルの学力の育成は,第2期SSHにおける重点項目の一つとなっている。
 エ 自ら課題を見つけさせることは難しいことであるが大変意義がある取り組みである。先
   輩たちの研究を引き継いで発展させる方法も模索する必要がある。
 (刈谷高校補足)
     先輩の研究テーマを引き継ぐことは認めており,テーマを考える際には,前年度までの
   研究ノートを参照できるようにしたり,テーマ検討期間中にポスターセッションを行うな
   どの取組を行っている。例年,数グループが先輩のテーマを引き継いでいる。
 オ 数学的な研究として,算額は文系の生徒でも楽しんで取り組めるので,勧めて欲しい。
 (刈谷高校補足)
     文系の課題研究のテーマの一つとしても積極的に検討したい。
 カ 文系の課題研究の進め方が課題であり,その中で積極的に改善に取り組んでいるので,
   今後の成果が楽しみである。解がひとつでないもの,解がないもの,相反する意見がある
   ことなどを理解した上で,検証させる体験は重要な取組である。
 キ 環境保全の取組も大変すばらしいことではあるが,さまざまな人たちの異なる価値観が
   存在するので,特定の考えに偏らないように配慮して指導することが必要である。
 ク 文系の研究においても,データを見て自分でどう判断するかといった論理的,批判的な
   考え方を大切にする必要がある。また,これまでの財産である上級生の先行研究を生かす
   方法を考えて欲しい。
 (刈谷高校補足)
     統計学的な視点は文系・理系に関わらず必要であると認識しており,第1学年の「探究
   基礎」でも,クリティカル・シンキングや統計的な考え方を取り扱っている。
 ケ 生徒の研究が興味から発生し,将来の進路につながるような研究となれば面白い。
 (刈谷高校補足)
     生徒の心に火をつける“本物”の体験となるように,課題研究の実施方法等は引き続き
   改善を積み重ねていきたい。
 コ グローバル人材を目指しているので,英語で外国人と渡り合うことのできる力をつけな
   くてはならない。
 (刈谷高校補足)
     グローバルリーダーには,英語コミュニケーション能力も求められるが,それ以上に,
   多様性を尊重する姿勢や英語や日本語といった言語に関わらず自分の考えをしっかりと持
   ち自信をもって発信していくことが重要だと考えている。本校では,SSHアソシエイト
   事業として「エンパワーメントプログラム」を開催しており,この取組では,これらの態
   度や力の育成を目指している。
 サ 事業内容について増やしていく一方で,減らしていく工夫も重要である。スリム化を図
   ることは大賛成である。
 (刈谷高校補足)
     課外活動の中には,第1期で実施していた「つくばサイエンスツアー」のように,廃止
   したものある。また,「SSH特別講演会」と「生徒成果発表会」を統合して「サイエン
   スデー」としたように,教育的効果を下げない範囲内でスリム化も図っていきたい。
 シ 評価方法については,これからの研究課題であると思う。評価の一面として生徒が喜ん
   で取り組んでいるか,調べる楽しさや能力が身についたのか,あるいは保護者がどのよう
   に受け止めているかも考えられる。
 
 
                                     66
    3      生徒アンケート結果                実施日        平成30年2月
       問1     SSHの取組(スーパーサイエンス授業も含む)に参加したことで,先端の科学技術や豊かで持
              続可能な社会の発展に対する興味・関心が増しましたか?
                                     大変増した       少し増した           効果がなかった          元々高かった         わからない
                                                                                                                                                         8.8%
     1年       8.5%                                         53.8%                                                    27.1%                   1.7%
                                                                                                                                                        11.0%
 2年理系        10.0%                                 45.7%                                                   31.1%                       2.3%
                                                                                                                                                        10.6%
 2年文系     4.3%                           42.2%                                                       41.0%                             1.9%
                                                                                                                                                           5.5%
 3年理系            14.5%                                   42.3%                                                 32.7%                          5.0%
                                                                                                                                                        5.2%
 3年文系 3.9%                                       53.5%                                                             37.4%                         0.0%
 
 
 
       問2     SSHの取組(スーパーサイエンス授業も含む)に参加したことで,主体的に学習を進めたり,
              仲間と協働的に学習を進めたりする力が身につきましたか?
                                 大変増した           少し増した              効果がなかった            元々高かった               わからない
     1年            14.9%                                               57.9%                                                 16.0%          2.0%       9.2%
 
 2年理系         12.3%                                          53.9%                                                     22.4%              2.7%       8.7%
 
 2年文系      7.5%                                           59.0%                                                      20.5%             1.9%      11.2%
 
 3年理系                20.5%                                               53.6%                                                 16.4%           3.2% 6.4%
 
                                                                                                                                                    1.3%
 3年文系        9.0%                                                  67.1%                                                          17.4%                 5.2%
 
 
       問3     SS教科「課題研究」,「ESD」の取組について,以下の項目について当てはまるものを選ん
              でください。
           (a)探究活動を行うための基礎知識              (b)仲間と共同的に学習を進める力
 
                                                                 0.9%                                                                             2.6%
      1年           31.4%                   55.7%              6.9%               1年           27.6%                   51.3%                 12.0% 6.6%
                                                                   5.1%
                                                                                                                                                  0.9%
  2年理系     14.7%                 60.6%                 14.7% 9.6%          2年理系      17.8%                    57.5%                    16.0% 7.8%
                                                              0.6%                                                                                3.1%
  2年文系    12.7%                58.9%                17.1% 10.8%            2年文系     14.5%                 54.1%                     18.9%      9.4%
 
                                                                  2.7%                                                                                4.5%
  3年理系     18.6%                 52.3%                 23.2% 3.2%          3年理系          25.9%                 48.2%                   18.6% 2.7%
 
                                                                   3.3%                                                                                1.9%
  3年文系    13.1%                  65.4%                    17.0%            3年文系      19.4%                      65.2%                       12.3%
                                                                  1.3%                                                                                1.3%
 
       問4 SS教科「理科」の取組について,以下の項目について当てはまるものを選んでください。
       (a)主体的に学習を進める力                    (b)仲間と共同的に学習を進める力
 
                                                              1.4%                                                                               1.7%
    1年      20.3%                  52.1%              16.9%        9.2%        1年            31.8%                    47.6%                12.0% 6.9%
 
                                                                                                                                                    1.4%
 2年理系 10.5%                   59.8%                 21.9%        6.8% 2年理系        13.2%                 58.4%                       20.1%         6.8%
 
                                                             1.9%                                                                                2.5%
 2年文系 8.2%               50.3%                 27.0%         12.6%      2年文系      9.4%                55.3%                     22.0%         10.7%
 
                                                                  4.1%                                                                                 3.2%
 3年理系    15.5%                50.5%                27.7%     2.3% 3年理系             15.9%              45.0%                     33.2%          2.7%
 
                                                                   8.4%                                                                             11.0%
 3年文系 6.5%            42.9%                    41.6%        0.6%     3年文系 7.1%                35.7%                     44.8%              1.3%
 
                                                                            67
     問5 SS教科「英語」の取組について,以下の項目について当てはまるものを選んでください。
     (a)英語プレゼンテーション能力              (b)仲間と共同的に学習を進める力
 
                                                          0.6%                                                                 1.1%
     1年            41.1%              48.0%            5.4%            1年       30.0%                47.1%               15.1% 6.6%
                                                            4.9%
                                                       2.3% 8.7%                                                               1.4%
 2年理系    16.1%           54.1%              18.8%               2年理系 7.8%               54.1%                27.1%              9.6%
 
                                                         9.4%                                                                   1.3%
 2年文系    19.5%             56.6%             13.2%              2年文系 8.2%               52.2%                29.6%           8.8%
 
 3年理系    17.7%           46.4%              30.9%      1.8%
                                                                3年理系       14.7%            45.4%                   33.0%      1.8%
                                                           2.7%                                                                     5.0%
 3年文系 12.3%              60.0%               21.9% 0.0% 3年文系 10.3%                      47.1%                33.5%         0.6%
                                                        5.8%                                                                        8.4%
 
 
     問6 SS教科「数学」の取組について,以下の項目について当てはまるものを選んでください。
     (a)主体的に学習を進める力                      (b)仲間と共同的に学習を進める力
 
                                                                                                                               1.4%
                                                     1.4%
    1年        33.0%                45.3%        12.8%                  1年    21.4%              45.7%                23.1%      8.3%
                                                       7.1%
 
                                                                                                                               2.3%
 2年理系   13.2%            56.6%              19.2% 3.7%    2年理系 10.0%                     53.0%               26.9%              7.8%
                                                        7.3%
                                                                                                                                  2.3%
 3年理系     23.6%            48.6%              22.7% 2.7% 3年理系           15.5%           39.7%               39.3%             3.2%
                                                         2.3%
 
 
     問7 SS科目「社会と科学」の取組について,以下の項目について当てはまるものを選んでください。
     (a)主体的に学習を進める力                      (b)仲間と共同的に学習を進める力
 
 
 
                                                         0.6%                                                                       0.6%
    1年            41.1%               48.0%           5.4%          1年              41.1%                    48.0%             5.4%
                                                           4.9%                                                                       4.9%
 
 
 
 
                                                                   68
  4    スーパーサイエンス教科「課題研究」の3年間のアウトライン
       学期                     理系                                        文系
              ・論証の方法,議論の方法,論理的な文章の書き方(パラグラフライティング),問いの立て方
        1      *国語科および地歴公民科が中心的に開発
 第             *文科系教員を主担当とし,理科系教員との2名の教員によるチーム・ティーチングで実施
        学
 1
        期            サイエンスデー(校内成果発表会;3年生のポスター発表,刈高サイエンスマッチ)
 学
 年
              ・研究でよく用いる統計や検定
 ・
        2      *理科と数学科が中心的に開発
 探
        学      *理科系教員を主担当とし,文科系教員との2名の教員によるチーム・ティーチングで実施
 究
        期          英語での全校発表会(優秀作品の口頭発表会)に聴衆として参加
 基
 礎
        3    ・基礎ゼミナール
        学        *各クラスを2分割し,共通の書籍(例えば,生物多様性に関する書籍)を用いて輪読を行い,
        期          研究の「型」を習得する。
              ・オリエンテーション                        ・オリエンテーション
              ・研究分野(物理・化学・生物・地学・数学・ ・研究分野(生物多様性・防災安全・観光産業・
                情報)決定                                環境エネルギー等)の決定
              ・研究テーマ検討開始(文献・先行研究調査) ・研究テーマ検討開始
                (予備実験期間)                          ・発展ゼミナール
                                                            *各分野に関する文献等を用いて輪読を行い,
        1
 第                                                           各分野の研究手法や基礎知識を構成的に学ぶ。
        学
 2                   サイエンスデー(校内成果発表会;3年生のポスター発表,刈高サイエンスマッチ)
        期
 学
 年               (理科教員との面談)
 ・           ・研究テーマの決定・研究計画書の提出         ・研究テーマの決定
 課           ・本実験開始(2時間連続×数回)             ・夏季校外調査の計画
 題           (夏休み)夏季課題研究期間 *全生徒          (夏休み)夏季課題研究期間 *全生徒(校外調
 研                                                        査)
 究           ・中間発表会(講座ごと)                     ・校外調査報告会(講座ごと)
 I      2    ・本実験(2時間連続×8回,1時間×数回)     ・調査・研究・議論
        学
                    英語での全校発表会(優秀作品の口頭発表会)に聴衆として参加
        期
              (冬休み)冬季課題研究期間 *希望者のみ
        3    ・研究のまとめ                               ・研究のまとめ
        学      *研究論文・ポスター作成                     *研究論文・ポスター作成
        期
              ・講座内研究成果発表会                       ・講座内研究成果発表会
              ・英語版ポスター作成開始                     ・英語版ポスター作成開始
        1          サイエンスデー(校内成果発表会I(ポスター発表);3年生のポスター発表
 第
        学
 3
        期
 学           ・英語でのポスター発表練習(講座ごと)       ・英語でのポスター発表練習(講座ごと)
 年           (Science & PresentationIIIの授業での練      (Science & PresentationIIIの授業での練習)
 ・           習)
 課           ・英語版ポスター発表会(講座ごと)           ・英語版ポスター発表会(講座ごと)
 題           (Science & PresentationIIIの授業での練      (Science & PresentationIIIの授業での練習)
 研           習)
        2          英語での全校発表会(優秀作品の口頭発表会)
 究
        学
 II
        期
                  *外国人留学生・研究員等を招聘               *外国人留学生・研究員等を招聘
              ・社会問題研究                               ・社会問題研究
              ・全体のまとめ                               ・全体のまとめ
 
 
 
 
                                                      69
  5      課題研究テーマ一覧                  SS科目「ESDIII」(現3年生)
 理系分野   通番                                 テーマ                          理系分野     通番                                テーマ
            理1    音力発電の効率化に関する基礎研究                                           理61   カイワレ大根のストレス耐性と光屈性
            理2    人工筋肉の実用化に向けた基礎研究                                           理62   アクアポニックス
            理3    熱風を冷風にするには水による吸熱の可能性                                   理63   美しい髪を手に入れよう!!
            理4    ローラー滑り台で発電子供の有り余るエネルギーを電気へ変換                   理64   オイカワにとって最適な光環境とは投射光の集魚性に注目して
 
            理5    避雷針に関する基礎研究                                                     理65   細菌の増殖を防ぐ!!
                                                                                    生物
            理6    耐震性のある揺れにくい構造を調べよう!                                     理66   効率的なメイク落とし
            理7    紙飛行機を遠くに飛ばそう!!!重心と発射角度との相関関係                      理67   ミドリムシによる乳酸菌の活性化
            理8    土砂崩れ砂の粒と砂防堤                                                     理68   身近な物質の抗菌作用を探る
            理9    ダイラタンシーの性質を用いた衝撃吸収材を作ろう                             理69   ミドリムシの効率的な培養法を探る
            理10   扇風機革命羽の形と角度で最強の省エネ扇風機を目指す                         理70   均一な濃度になるように凍らせるには?
            理11   軽量なおもりを用いた低コストな命綱の開発
            理12   土石流をせき止める穴の仕組み
            理13   減磁物語熱以外における永久磁石の減磁
            理14   ムペンバ効果に関する研究                                      文系分野     通番                                テーマ
   物理
            理15   音波の干渉を利用した安価な高指向性スピーカーの作成                         文1    カッパ
            理16   圧電素子を用いた黒板発電                                                   文2    生きるとは何か?
            理17   海洋浮体型波力発電に関する実験                                 生命倫理    文3    妖怪って実は…?
            理18   シャボン玉の滞空時間ムチンの粘性・保水性の利用                             文4    環境保護と産業発展の両立
            理19   ボウガンで遠くに飛ばす条件の研究                                           文5    WE'RE 自殺バスターズ
            理20   簡易ホログラム装置に関する基礎研究                                         文6    ファーストフードの利用と意識
            理21   風通しを良くするには窓の開け方で換気の早さは変わるのか                     文7    絵画の謎に迫る
            理22   物質の密度と振動と防音の関係について                                       文8    ユダヤ人迫害について
            理23   堤防に関する研究                                                           文9    ブータンの幸福度
            理24   速乾風と熱の黄金バランス                                                   文10   "NO飢餓"実現への道
            理25   パラシュートの落下実験                                                     文11   知られざる日系人の過去
            理26   紙飛行機の飛行実験                                                         文12   今昔物語集と都市伝説の比較
            理27   音の心地よさと不快さの定義音の三要素から探る                               文13   英語化のゆくえ
            理28   構造物の耐久力N字構造の可能性                                 歴史・文化 文14     みんなで守ろう日本食
            理29   銀イオンの防腐効果について                                                 文15   イスラム国解体にむけて
            理30   levelup土~土の水はけの向上~                                                文16   日本人の美人の基準の変化
            理31   バイオエタノール made in 刈谷                                              文17   流行色と時代背景の関係
            理32   炭の浄化作用について                                                       文18   目指せ!!女性の社会進出
            理33   髪はなぜ傷むの                                                             文19   変化する日本語の過去と未来
            理34   保湿クリームの保湿効果についての研究                                       文20   平安貴族の暮らしを探る
            理35   酵素の壁を越えろ                                                           文21   東京裁判における昭和天皇の戦争責任
            理36   なぜ混ぜるな危険を混ぜたら危険なのか                                       文22   ゲームから学ぶアメリカと日本の文化(人間性)の違い
            理37   紙とインク最適な関係を探る                                                 文23   少年法の歴史と年齢引き下げについて
            理38   はがそう!瞬間接着剤!!                                                   文24   憲法9条の改正
            理39   硬水と軟水                                                                 文25   日本国憲法の問題点について 新しい人権
                                                                                 法律・政治
            理40   マンガンでガンガン発電                                                     文26   移民難民の受け入れについて
   化学     理41   収斂火災は防げるか                                                         文27   Best of the Election 高校生の考える理想の選挙
            理42   ダニエル電池最適濃度                                                       文28   正当防衛の境界線
            理43   茶渋は防げる?!茶渋にとらわれない毎日を求めて                             文29   活用しよう老人クラブ
            理44   片栗粉の秘めた可能性                                                       文30   財政の豊かでない地域を経済的に豊かにさせる計画
            理45   自電車science explorerに新たな1ページを                                   文31   「ボールパーク化」にZOOM ZOOM
            理46   濡れた紙に書ける条件                                                       文32   オリンピックの経済効果を上げるには
            理47   エコクーラーあなたの夏を快適に                                             文33   バイオエタノールによる穀物価格高騰への対策
            理48   濡れた紙を乾燥させる際に生ずるうねりを抑える方法              経済・産業 文34     観客数UpへKickoff
            理49   音が植物の成長に与える影響                                                 文35   コンビニ売り上げアップ大作戦
            理50   再生チョーク・改                                                           文36   ふるさと納税を普及させよう
            理51   水溶液の冷却に関する実験・改                                               文37   めざせ観光都市刈谷市魅力発展計画
            理52   To prevent the oxidation                                                   文38   年金制度で私たちは得するためにどうしたらいいか
            理53   ペルチェ素子を使った温度差発電について                                     文39   軽減税率制度実現にむけて
            理54   大根の紫外線照射によるグルタミン酸量の変化
            理55   光合成の測定
            理56   刈谷高校芝生化計画
   生物     理57   体感時間
            理58   音で促す発酵♪
            理59   ジャガイモの成長日記オーキシントジベレリン入れてみた。
            理60   植物の生長と光の色との関係
 
 
 
 
                                                                            70
 6    ルーブリック
      (1) SS科目「課題研究I(理系)」(論文作成用)
            基
                                                                                                                                   得
  項目      礎                優秀 ×2                             普通 ×1                           努力が必要 ×0
                                                                                                                                   点
            点
                 □「である・だ」調・パラグラフ       □ 「である・だ」調の文章である       □「である・だ」調・パラグラフ
       文
            1      ライティングで書かれており,分か      が,パラグラフライティングで書か     ライティングで書かれておらず,分
       章
                   りやすい文章である。                  れておらず,少し分かりにくい。       かりにくい。
                 □論文書式フォーマットと同様の形式   □論文書式フォーマットとほぼ同様の    □論文書式フォーマットと同様の形式
 書    構
            1      で文章が書かれており,見やすい。      形式で文章が書かれているが,見に     で文章が書かれておらず,見にくい。
 式    成
                                                        くい。
       図        □図(グラフや写真9も含む)や表につい □図や表について,番号/タイトル/      □図や表について,番号/タイトル/
       ・   1      て,番号,タイトル,軸表記,単位,   軸表記/単位/簡単な説明 の書き       軸表記/単位/簡単な説明 の書き
       表          説明などが適切に示されている。       忘れが1個または2個ある。            忘れが3個以上ある。
                 □研究の主題や着眼点を表すキーワー □ 研究の主題や着眼点を表すキーワ       □研究の主題や着眼点を表すキーワー
  タイ              ドが含まれており,適切な長さで読     ードのどちらかが含まれていない       ドが 含まれていない/ 短すぎる/
            1
  トル              みやすく,興味を惹くものである。     / 少し短い/少し長い/少しわか      長すぎる/わかりにくい。
                                                         りにくい。
                 □200 字400 字程度で書かれており, □200 字400 字程度で書かれている        □200 字400 字程度で書かれていな
                   研究の主題と得られた重要な結果と     が,研究の主題と得られた重要な結      い/研究の主題と得られた重要な結
  要旨      2
                   意義 がきちんと示されている。        果と意義についての説明が不十分で      果と意義について示されていない。
                                                        ある。
 キーワ          □研究の参考となるキーワードの抜き □キーワードの抜き出しが不十分であ      □キーワードの抜き出しがされていな
            1      出しが適切にされている。             り,研究の参考にならない。            い。
   ード
       先        □この研究の主題とそれについての問   □この研究の主題や問題点について示    □この研究の主題や問題点 について
       行          題点について,過去の研究を参考に     されているが,過去の研究を参考に      示されていない。
            1
       研          しながらきちんと示されている。       しておらず,不十分である。
       究
       目        □研究の目的と意義(どういう問題に □構成は概ねよいが,研究の目的と意      □研究の目的と意義のうち (どういう
 序    的          取り組むのか,どうして取り組むの   義のうち (どういう問題に取り組む       問題に取り組むのか/どうして取り
 論    ・   2      か,どういう着眼で,何をやるのか) のか/どうして取り組むのか/どう        組むのか/どういう着眼で/何をや
       意          がきちんと示されている。           いう着眼で/何をやるのか )が不十       るのか )
                                                                                                      ,が示されていない。
       義                                             分である。
                 □先行研究をふまえた上で,今回の研 □今回の研究の仮説が述べられている      □今回の研究の仮説が述べられていな
       仮
            1      究の仮説が明確に述べられており,   が,
                                                        (先行研究をふまえていない/論        い。
       説
                   論証可能性が高い。                 証可能性が低い)不十分である。
                 □使用した道具・試薬,実験装置の概 □使用した道具・試薬 / 実験装置の      □使用した道具・試薬 / 実験装置の
 材料と            略図,実験手順,統計処理の方法,   概略図 / 実験手順 / 統計処理の        概略図 / 実験手順 / 統計処理の
            2      などが適切に書かれており,第三者   方法 が不十分であり,第三者が実験       方法 が書かれておらず,第三者が実
   方法
                   が実験を再現できる。               を再現することは困難である。            験を再現できない。
                 □結果をまとめたデータが分かりやす   □結果をまとめたデータは示されてい    □結果をまとめたデータは示されてい
       結          い形で示されており,特徴などが適     るが,やや分かりにくい形 / 特徴      るが,分かりにくい形 / 特徴など
            2
       果          切にまとめられている。               などが適切にまとめられていない。      がまとめられていない。
 結    過        □研究の仮説を実証するために必要な   □研究の仮説を実証するために必要な    □研究の仮説を実証するために必要な
 果    不   1      結果を,過不足なく(必要でかつ十     結果を,不必要なものも含めて/不      結果を示していない。
       足          分な分量だけ)示している。           十分な分量で示している。
       処        □統計処理と有効数字の取り扱いを考   □統計処理/有効数字の取り扱いを考    □統計処理と有効数字の取り扱いを考
            1
       理          慮している。                         慮していない。                        慮していない。
                 □個々の結果に基づいた考えが示さ     □個々の結果に基づいた考えが示され    □個々の結果に基づいた考えが示され
       考          れ,なぜそのようになったのか(原     てはいるが,なぜそのようになった      ていない。
            2
       察          因とメカニズム)が論理的に主張さ     のか(原因/メカニズム)が論理的
                   れている。                           に主張されていない。
                 □個々の結果を統合し,一連の考察か   □個々の結果を統合し,一連の考察か    □個々の結果を統合し,一連の考察か
       統
            1      らいえることが論理的に述ベられて     らいえること述ベられているが,論      らいえることが述ベられていない。
 考    合
                   いる。                               理的でない。
 察
       問        □今回の実験においての問題点があげ   □今回の実験においての問題点があげ    □今回の実験においての問題点があげ
       題   1      られ,その具体的な改善策が論理的     られているが,改善策が具体的 /論     られていない。
       点          に示されている。                     理的でない。
       他        □参考文献や先行研究と比較すること
       研   1      で,自分達の研究成果や意義を明確
       究          にしている。
                 □研究成果を簡潔にまとめ,取り組ん   □研究成果が簡潔にまとめられている    □取り組んだ問題に対する答えが示さ
       結
            1      だ問題に対する答えが明確に示され     が,取り組んだ問題に対する答えが      れていない。
       論
 結                ている。                             あいまいになっている。
 論              □今後の展望と課題(次に挑むべき問   □今後の展望と課題(次に挑むべき問    □今後の展望と課題(次に挑むべき問
       展
            1      題)が示されており,他者が取り組     題)が示されているが,不十分であ      題)が示されていない。
       望
                   みたくなる。                         る。
  参考           □参考文献が適切に記されている。     □参考文献が記されてはいるが適切で    □参考文献が記されていない。
            1
  文献                                                  ない記述形式である。
 
                                                                                                         合
                                                                                                         計
                                                                                                                                   /50
 
                                                                 71
 (2)      SS科目「課題研究I(文系)」(論文作成用)
  項     基礎                                                                                                                      得
                               優秀 ×2                             普通 ×1                          努力が必要 ×0
  目      点                                                                                                                       点
                    □取り組んだ問題や課題、課題解決     □取り組んだ問題や課題、課題解決     □取り組んだ問題や課題、課題解決の
  要
         3         のために行ったこと、結果、考察、結   のために行ったこと、結果、考察、結   ために行ったこと、結果、考察、結論
  旨
                    論を正確に伝えている。               論の中の一部が抜け落ちている。       の中の半分以上が抜け落ちている。
  は                □背景、仮説とその根拠がわかりや     □背景、仮説とその根拠がある程度     □背景、仮説とのその根拠がわかりに
  じ                すく述べてある。これ以降の項目へ     わかるように述べてあるが、あまり     くい。これ以降の項目への興味をひく
         3
  め                の興味をひく内容である。             これ以降の項目への興味をひく内容     内容でない。
  に                                                     でない。
                 □実践内容とその結果が細かく丁寧        □実践内容とその結果が丁寧に述べ     □実践内容とその結果がわかりにく
  研             に述べてある。図や表を用い、それが      てある。図や表を用いているが、それ   い。図や表を用いているが、内容との
         3
  究             見やすく、効果的に示されている。        がすこし見づらく、効果的に示されて   関連が薄いものである。
  実                                                     いない。
  践             □仮説を検証するために適切で十分        □仮説を検証するための研究実践が、   □仮説を検証するための研究実践が
         3
                 な研究実践が行われた。                  一部不十分だった。                   不十分だった。
  考             □実践結果や先行研究に基づいた考        □実践結果や先行研究に基づいた考     □実践結果と考察の間にズレがあり、
         3
  察             察が論理的に十分になされている。        察が一部不十分である。               考察として成り立っていない。
                 □成果が簡潔にまとめられており、        □成果が簡潔にまとめられておらず、   □成果が全くまとめられておらず、
  結
         3      「はじめに」で提起した仮説に対する      「はじめに」で提起した仮説に対する   「はじめに」で提起した仮説に対する
  論
                 解答になっている。                      解答との間にズレがある。             解答との間にズレがある。
                 □研究の中で新たに発生した疑問や、      □研究の中で新たに発生した疑問や、   □研究の中で新たに発生した疑問や
  課
         3      この研究で解決できなかった点につ        この研究で解決できなかった点につ     この研究で解決できなかった点につ
  題
                 いて十分に述べている。                  いて述べているが、不十分である。     いて正しく述べていない。
 
                                                                                                               合計
                                                                                                                                   /21
 
 
 
 (3)      SS科目「ESD III (理系)」                  日本語ポスター発表用
 *作品の作成者は、以下の内容の項目が達成されている。
       キーワード                                                   評価点                                             チェックの個数
                          □   『目を惹くようなデザインがされている』
                          □   『図やグラフ、写真10などを見やすく配置している』
   レイアウト・表現       □   『項目立ておよび項目の配置が適切である』
                          □   『色使いや文字の大きさが適切である』
                          □   『目的と結論が対応し、研究の流れが見やすい』
 
                          □   『研究の目的が分かりやすく明記されている』
                          □   『方法が正しく表記されており、再現性がある』
       目的・方法         □   『先行研究に基づいて研究方法を設定している』
                          □   『実験・調査条件の設定が適切である』
                          □   『実験・調査の回数が十分である』
                          □   『表・グラフを利用して、客観的な結果を示している』
                          □   『研究結果に基づいて、矛盾なく考察・結論を示している』
       結果・考察         □   『自分なりの表現で、考察または説明ができている』
                          □   『複数の結果を比較して考察ができている』
                          □   『目的と結論に一貫性がある』
 
                          □   『発表全体および各項目の説明の時間が適切である』
                          □   『声量や目線、発表態度など、聞き手を意識して発表している』
          発表            □   『聞き手に興味を持たせる工夫が複数ある』
                          □   『発表にまとまりがあり、研究内容が理解しやすい』
                          □   『質問への応答が端的かつ的確である』
                          □ 『オリジナリティがあり、多数の人が興味を持つテーマである』
                          □ 『先行研究を参考にしながら、テーマを設定している』
       テーマ設定
                          □ 『興味をひかれるタイトルがついており、研究をイメージできる 』
 
 
 
 
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 7   報道関係
 平成29年5月17日(水)    中日新聞   朝刊
 SS部「湿地サミット」
 
 
 
 
 平成29年6月16日(土)    中日新聞   朝刊
 SS特別活動「サイエンスデー」
 
 
 
 
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         《刈谷高校第2期SSHの戦略(第1期SSHとのつながり)》
                                                ・
  研究開発課題:科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバ
                ルリーダー育成プログラムの確立
              これからの社会をたくましく生き抜く,自律した十八歳を育成
    将来グローバルリーダーとして活躍するために必要な,自律的に学ぶ力,困難を乗り越える力等に加え,科学的
  リテラシー,科学的思考力,問題発見能力,協調的問題解決能力,国際社会でも通用する発信力,批判的思考力,
  創造性等を「意識的に」 引き出し,伸ばす。
 
  第2期SSH(H2832)における刈谷高校=真正な学びを創出する「未来型」の進学校
  1「課題研究」を教育活動の中心に据え,全ての教科・科目において,主体的・協働的な学びを展開するとともに,
    探究課題やパフォーマンス課題,学習プロセスの評価法を開発する。
  2 海外での研究活動や外国人との研究交流,研究者との議論,科学技術・理数系コンテストへの挑戦,地域貢献を
    目的とした調査研究などの“本物”の体験を通して,生徒一人一人の主体性をさらに引き出す。
  3「Science & Presentation」や課題研究の成果発表等を通して,国際社会で通用する発信力を身に付けさせる。
 
 
   急速な世の中の変化への対応
   急速な世の中の変化への対応
   ・知識基盤社会の本格化,グローバル化の一層の進展                                                 真正な学びを創出する
   ・人類の直面する問題の深刻化・複雑化
   ・人工リスク*1の増大,トランス・サイエンス*2の拡大
                                                                                                    「未来型」の進学校への進化
       *1 科学技術や産業の発達がもたらす新しいリスク
       *2 科学に問うことはできるが,科学だけでは答えることができない問題群
 
 
 
  現在の刈谷高校…高い大学進学率,何事にも前向きな生徒(強いチームワーク),多彩な学校行事,活発な部活動
 【第1期SSH(H2327)の成果】
   ◎全校での課題研究の実施体制の確立(ルーブリック等の開発),全校での成果発表会 ◎デンソー等との企業連携
   ◎オーストラリア科学研修,東京大学特別研究・名古屋大学特別研究,刈高サイエンスマッチ等の課外活動の実施
   ◎理科・数学・英語・公民・総学のSS科目化 ◎科学系部活動の充実 ◎生物多様性調査等による地域貢献
 
 
                            《刈谷高校第2期SSH(2832) 研究開発の概要》
     第1期SSH(H2327)で構築した全校での「課題研究」における主体的・協働的な学びを全教育活動に拡充
                                  ・
   科学する力をもった「みりょく」(実力・魅力)あふれるグローバルリーダー育成プログラムの確立
 
   1全ての教育活動において主体的・協働的な学びや学習プロセスを重視した評価をすることで     自律した十八歳
    科学する力を引き出し,伸ばす。                                                         として次の学び
   2“本物”の体験を通して,生徒一人一人の科学に対する興味・関心・意欲や主体性を引き出す。     の舞台へ
   3SS科目や課題研究を通して,国際社会で通用する発信力を身に付けさせる。
 
 
                                                                                                                 第3学年
                                              一人一人の心に火をつける
       大学・研究機関                                       SSHオーストラリア研修
                                                    “本物”の体験
                                            海外での研究活動,研究者との議論,科学技術・理
                                                                                                                 1・2学年の主体的・協働
      刈谷市・地元企業                      数系コンテストへの挑戦,企業や大学・研究機関と                       的な学びの実践,国際社会
                                            連携した研修,地域貢献を目的とした調査研究等                         でも通用する発信力の育成
 
                                                                                                           ●SS科目
                                                                          第2学年                          探究物理/生物II(4),探究化学II(4)
                                                                                                            探究数学II(6)
                   第1学年                                                                                 Science & Presentation III(1) 課題研究II(1)
               第1学年                                        課題研究で主体性・協働性を
     自律して課題研究を行うための                                                                           *課題研究の成果発表
                                                               一層引き出し、伸ばす
                                                                                                            サイエンスデー(ポスター発表,口頭発表)
     基礎力の養成                                          ●SS科目                                       全校英語発表会(ポスター発表,口頭発表)
   ●SS科目 *( )内の数字は単位数                        探究物理/生物I(各3),探究化学I(3)
    科学技術リテラシーI(4),探究数学基礎(6)                 科学技術リテラシーII(2),探究数学I(6)        ●SS課外活動 *課題研究の成果発表以外
    科学技術リテラシーI(4),探究数学基礎(6)
    社会と科学(2)                                           ICTリテラシー(2)                              SS生物多様性調査
    社会と科学(2),Science & Presentation I(2)              Science & Presentation II(2) 課題研究I(1)    SS特別講演会
    Science & Presentation I(2) 探究基礎(1)
    探究基礎(1)
   ●SS課外活動                                          ●SS課外活動                                      サイエンスデー
     サイエンスデー,刈高サイエンスマッチ                    サイエンスデー,刈高サイエンスマッチ              SS生物多様性調査,SS特別講演会
     SS生物多様性調査,SS特別講演会                      SS生物多様性調査,SS特別講演会            1・2学年で向上させた主体性と
                                                                                                           協働性を最大限に生かした,高度
   全教科・科目での主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)の                                        で深く,相互的な授業を展開
   推進と,学習プロセスを重視した評価の実施
             平成28年度指定
    スーパーサイエンスハイスクール
     研究開発実施報告書(第2年次)
            平成30年3月発行
       発行者 愛知県立刈谷高等学校
 〒448-8504 愛知県刈谷市寿町5丁目101番地
    電話 0566-21-3171 FAX 0566-25-9087
 
 
 
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