江津高校(島根県)の公式サイト内のPDFをテキストに変換して表示しています。

このコンテンツは、受験生と保護者の皆様の利便をはかるため取得されました。
取得日:2024年03月23日[更新]

最新コンテンツは、下記の公式サイトURLにて、ご確認ください。
志望校の選定など重要な判断の際には、必ず最新の情報をご確認ください。
https://www.gohtsu.ed.jp/files/original/20240311072625796932c541e.pdf

検索ワード:進路[  1  ]
[検索結果に戻る]
 
   校訓:思慮 高邁 貫徹           育てたい生徒像:自らの成長のために挑戦できる生徒
 
 
 
                     田村のつぶやき                       第 19 号
   2024.3.11 発行                                  文責:島根県立江津高等学校長 田村康雄
 
 
 
                                天災は忘れた頃にやってくる
 
 
   「天災は忘れた頃にやってくる」―― これは、科学者で随筆家の寺田寅彦(18781935)の言
 葉とされています。寅彦は熊本の第五高等学校に入学し、そこで英語教師だった夏目漱石と出会い、
 大きな影響を受けました。漱石も自身の作品の中で寅彦をモデルとした人物を登場させています。
 寅彦は、自身の随筆の中で防災について記述し、天災による被害を忘れることへの危険性を訴えて
 いました。しかし、寅彦の随筆の中には、
                                     「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉そのものはあ
 りません。寅彦の弟子たちは、寅彦が生前このような言葉をしばしば口にしていたので、この言葉も
 寅彦の随筆の中に書かれていたと思い込んでいたようです。
   さて、今日は 3 月 11 日です。このほか 1 月 17 日、9 月 1 日という日付に共通する出来事が何
 かわかりますか?   いずれも大規模な地震が発生した日です。今年の元日には能登半島地震が起き、
 大きな被害をもたらしました。地震発生から 2 ケ月以上が過ぎ、がれきの撤去や断水の解消といっ
 た復旧に向けた動きや、仮設住宅の建設も進み始めていますが、今も多くの人たちが避難所生活を
 余儀なくされています。被災地の一日も早い復興を願っています。
  2011(平成 23)年 3 月 11 日は東日本大震災が発生した日です。生徒のみなさんは、リアルタイ
 ムでの記憶はあまりないかもしれませんが、私はテレビで映像が流れた時の衝撃を今でも覚えてい
 ます。沿岸部の街を津波が襲い全てを押し流していく様子や、福島第一原子力発電所におけるメル
 トダウン発生は、日本国内のみならず全世界に大きな衝撃を与えました。昨年の夏、震災遺構として
 保存されている宮城県の仙台市立荒浜小学校の見学に行きました。津波が2階まで押し寄せた校舎
 の被害状況や被災直後の様子を伝える写真や映像などから、津波の脅威を知ることができます。
  1995(平成 7)年 1 月 17 日は阪神・淡路大震災が発生した日です。特に震源に近い神戸市の市
 街地の被害は甚大で、建物や高速道路が倒壊、各地で火災が発生、まるで爆撃でも受けたかのような
 惨状でした。阪神・淡路大震災では、
                                 「過去にない多くのボランティアが駆け付けた」
                                                                           「学生や社会人
 等それまでボランティアの経験がなかった人が多数参加した」
                                                       「ボランティアが行政を補完する重要
 な役割を果たした」ことから、1995 年は「ボランティア元年」と呼ばれています。
  1923(大正 12)年 9 月 1 日は関東大震災が発生した日です。地震の発生時刻(11:58)が昼食の
 時間帯と重なったことから、火災による被害が拡大しました。死者・行方不明者が 10 万人を超す
 被害で、明治以降の日本の地震としては最大規模の被害です。また、震災の混乱の中、デマによる朝
 鮮人虐殺事件や、労働運動家を殺害した亀戸事件、社会主義者を殺害した甘粕事件なども起こりま
 した。天災が人災をもたらした負の歴史として記憶にとどめておく必要があります。ちなみに、寅彦
 自身も関東大震災に被災しており、その後、焼け跡を回り、地震被害の調査を行っています。現在、
 9 月 1 日は「防災の日」と定められています。
                                                                               (次に続く)
     校訓:思慮 高邁 貫徹             育てたい生徒像:自らの成長のために挑戦できる生徒
 
 
   現在放映中の TBS テレビドラマ『不適切にもほどがある!』は、宮藤官九郎さんの脚本による
 オリジナルドラマです。コンプライアンスが厳しい令和(2024 年)とそうではなかった昭和(1986
 年)を舞台とするタイムスリップものであることから、令和における不適切な表現についての注意
 を喚起する注釈テロップが1話につき何度も挿入されたり、毎回終盤にミュージカルシーンが挿入
 されたりと、いかにもクドカンさんらしい脚本です。昭和と令和のギャップを楽しむタイムトラベ
 ル・コメディと思って観ていたら、いきなり物語の中に阪神・淡路大震災が登場してきました。思い
 返してみれば、クドカンさんは、2013 年の NHK の連続テレビ小説『あまちゃん』で東日本大震
 災を、2019 年のNHK 大河ドラマ『いだてん東京オリムピック噺』で関東大震災を物語に織
 り込んでいました。2022 年に公開された新海誠監督のアニメーション映画『すずめの戸締まり』
 も、東日本大震災を真正面から取り上げていました。エンタメ作品で震災を扱うことには、作者自身
 の葛藤や迷い、一部からの批判の声をあったかと思います。それでも、自身の作品の中で震災を取り
 上げることで、そこに作者自身の強いメッセージが込められています。特に、宮城県出身のクドカン
 さんにとっては、強い思い入れがあるのだろうと思います。
   ところで、鴨長明(11551216)の随筆『方丈記』をご存じですか。「ゆく河の流れは絶えずし
 て、しかも、もとの水にあらず」で始まる有名な作品です。長明が生きた時代は、平氏政権が倒れ、
 鎌倉幕府が成立するという激動の時代でした。また、この当時の京都では大火事(安元の大火 1177)、
 竜巻(治承の辻風 1180)
                      、飢饉(養和の飢饉 1181)、大地震(元暦の大地震 1185)が相次いで
 発生し、長明はその様子を『方丈記』の中で克明に描いています。日本文学史上の代表的な随筆作品
 であると同時に、最初の災害作品(?)と言えるのではないでしょうか。長明は、元暦の大地震の様子
 を「山はくづれて、河をうづみ、海はかたぶきて、陸地をひたせり。土裂けて、水湧きいで、いはほ
 割れて、谷にまろびいる。」と描いています。
                                         「山はくづれて、河をうづみ」とは大規模土砂災害の状
 況を、
     「海はかたぶきて、陸地をひたせり」とは津波の被害を表しているのでしょう。この大地震の
 約3ヶ月前に、平家一門は壇ノ浦の戦いで滅亡。当時の都人の間では、この地震は平家一門のたたり
 によるという噂も流れたようです。
   「天災は忘れた頃にやってくる」―― 日頃から防災意識を高めておくことが大切です。
 
 
 【つぬさんぽ】
   昨日(3 月 10 日)の「つぬさんぽ」には、たくさんの生徒諸君が参加しました。地域の皆様を中心に
 多くの方に足を運んでもらいました。事前の準備、当日の運営、上手くいったこともあれば、失敗したことも
 あったことでしょう。それもまた大きな学びの場、成長の機会となります。ぜひ今回の取組を各自で、または
 チームで振り返ってください。
 
 
 【探究学習発表会】
   3 月 15 日(金)は、2年生が今年度実施した「総合的な探究の時間」の取組を発表します。発表する2年
 生は、各自が考えをまとめて人前で発表する経験を積み、3 年次の進路1実現に役立て欲しいですし、1 年生は、
 先輩のプレゼンを見て、来年度の自分の姿を想像してください。そして、ぜひ積極的に質問もして欲しいです。
 保護者の皆様も聴講可能ですので、お時間が許せば、ぜひ生徒たちの発表を聴いてください。