岡山白陵高校
(岡山県)の
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取得日:2024年03月20日
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一 次の各問いに答えなさい。
問1 次の110にある 線部のカタカナを漢字に直しなさい。
1 コライ、桜は日本人にとって特別な花である。
2 オリンピックはスポーツを通じた平和のサイテンだ。
3 モンシロチョウは世界中に広くブンプしている。
いね あくえいきょう あた
4 夏にヒデりが続くと、稲の生育に悪影 響 を与える。
- 1 -
ばっそく
5 ヒジョウなまでの厳しい罰則は設けるべきでない。
6 体の大きな動物が小さな動物に対していつもユウイだとは限らない。
きんきゅう
7 昨年は岡山県にも緊 急 ジタイ宣言が出された。
お しょく かれ し はら
8 その汚 職 事件によって彼の支払ったダイカは余りにも大きい。
9 歩行者の安全のため、自動車に歩行者検知機能がヒョウジュン装備された。
10 あの研究者は独自の視点にシンコッチョウがある。
問2 次のの文章の後にあるアエは、 線部アエの改め方を示しています。そのうち、不適切な表現
せんたく し
を改善している選択肢をそれぞれ選び、記号で答えなさい。
たび ア にゆうか
この度は当サイトを ご 利 用 く だ さ り 、あ り が と う ご ざ い ま す 。ご 注 文 の 品 は 、申 し 訳 あ り ま せ ん が 現 在 入 荷
イ ウ
待ちです。お届けは二週間後を 予定していますので、今しばらく お待ちしてください。なお配送の日程
エ
が決まりましたら、改めて お知らせします。
ア ご利用くださり → ご利用申し上げ
イ 予定しています → 予定しております
ウ お待ちしてください → お待ちください
エ お知らせします → お知らせになります
- 2 -
ア イ
発 表 か ら 何 年 た っ て も 少 し も 色 あ せ な い 作 品 が あ る 。も し ド イ ツ の 児 童 文 学 で あ げ る と し た ら 、お そ ら く
ウ エ
その一つはミヒャエル=エンデの 『はてしない物語』だろう。まるで自分も本の中に 入りこんで、主人
いっしょ ぼうけん
公と一緒に冒険できる。全ての子どもたちにぜひ読んでほしい作品である。
ア 色あせない → 色あせる
イ あげるとしたら → あげるとき
ウ 『はてしない物語』だろう → 『はてしない物語』だ
エ 入りこんで → 入りこんだように
じょうきょう こう い ア ふ
周囲の 状 況 を見て身勝手な行為をつつしむことは確かに必要だ。 例えば「人の振り見てわが振り直せ」
イ
もそれに関係することわざである。 しかしそのことは自分で考えることをやめることにもつながりかねな
ウ エ
い。 ところで自分の意志を持つことをためらうことにもなるだろう。 だから、人の振りを見てばかりで
はいけない。
ア 例えば → ただし
イ しかし → ところが
ウ ところで → あるいは
エ だから → それから
- 3 -
かん て い こ く りゅうほう いっ かい しん ア
漢 帝 国 の 創 始 者 劉 邦 は 、お も し ろ い 人 物 だ 。一 介 の 農 民 と し て 生 ま れ 、秦 の 国 に 対 す る 反 乱 軍 の 将 と 仕立て
そ こう う いか イ ウ
上げ、楚の国の大将軍項羽の怒りをかわしながら着々と力を たくわえて、最後はその項羽を 打ち破り、
は しゃ ふ つう こうてい エ お あ した
覇者となった。酒を愛する一見普通の男を皇帝に 押し上げたのは、彼を慕う周囲の人々だった。
ア 仕立て上げ → 仕立て上げられ
イ たくわえて → たくわえさせて
ウ 打ち破り → 打ち破らせ
エ 押し上げ → 押し上げられ
(このページに問題はありません)
- 4 -
二 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
まさ や し ほ こ
中 学 校 一 年 生 の「 ぼ く 雅
(也 」
) は 、「 お じ さ ん 」 の 知 り 合 い の 「 志 保 子 さ ん 」 が 運 営 す る 「 北 の 太 陽 」 と い う 「 家 」
でひと夏を過ごすことになる。「北の太陽」には、さまざまな事情で親と生活できない五人の子どもたち 中 ( 学校
かい なる あん な えい すけ ま お
一 年 生 の 「 海 鳴 」、 小 学 校 五 年 生 の 「 杏 奈 」、 三 年 生 の 「 ゆ ず 」、 一 年 生 の 「 瑛 介 」、 最 年 少 の 「 麻 央 ち ゃ ん 」 が
) 暮ら
している。ある日の午後、志保子さんが食堂にみんなを集めて話を始める。
注
(1 )
「さてみなさん。きょうの午前中、杏奈、ゆず、麻央ちゃんの三人は、ピアノを教えてもらいに行きました。そこで
いっ し ょ う けん めい
先 生 に 、秋 の 発 表 会 に 出 て み ま せ ん か と 、さ そ っ て い た だ き ま し た 。そ れ だ け 、一 生 懸 命 に 、練 習 を し て い る と い う
ことです」
「わあー。よかったね」
- 5 -
声を上げたのは、瑛介だった。なのに女の子たちは瑛介の声に、むしろうつむいてしまった。
いやな予感がする。
志保子さんは「ところが」と、ひと呼吸おく。
「困ったことに、その発表会に、ドレスを着たいと、杏奈とゆずが言い出しました」
「だって、みんなドレスを着て演奏するって言ってた」
「みんな? 本当ですか、杏奈?」
「そうよ。みんな、ドレスを着るって。ね、ゆず」
「う、うん」
「先生も、なるべくドレスがいいって」
語気を強めて、杏奈が主張するということは、志保子さんから、反対されたってことか。
「それはへんですね。わたしが先生に電話をして聞いたら、
制服
1
やふだん着で参加する子もいると、おっしゃってい
ました」
「ズルいよ。電話するとか!」
杏奈がどなる。
ゆずはチラッと、志保子さんを横目でにらむ。
「でも、
制服
2
で出るのは、男子だし。ふだん着の子は、ふだんから一生懸命に練習してない」
杏奈は折れる気はないみたいだ。
ぼくたち男子三人は、なんとなく、ぽかんと聞いていた。どうしてもめているのか、かんじんなところがわからない。
「志保子さん。ドレスだと、どうしてだめなんですか?」
1
これくらいなら、口をはさんでもかまわないだろうと、ぼくは聞いた。
「いくらかかるのかは、わかりませんが、そういった予算はここにはないということです」
「よさんって、なに?」
瑛介がきょとんとした目を海鳴に向けた。
- 6 -
「お金だよ。瑛介がほしいおもちゃがあっても、お金がなきゃ買えないだろ」
「そういうことです」
志保子さんが、うなずきながら、女の子たちを見る。
「買うんじゃない、借りるの」
「どちらにしても、そういうわがままを言われると困ります」
「こんなのが、わがままですか?」
「ここではそうです」
「じゃあ、もう発表会に出るのあきらめる」
杏奈がふてくされる。
2 ふ つう
ちょっとかわいそうに思えた。発表会にドレスを着るなんて、普通にやってる家庭はたくさんあるのに。やっぱり
ここは、普通の家とは呼べない。
ふく し
「いいですか。発表会に出るなとは言ってません。ドレスも用意していただけないか、福祉協議会や、ボランティア
センターに問い合わせてみます」
「そんなのいや。ちゃんとしたのがいい」
「杏奈。ちゃんとしたのとは、どういう意味ですか」
「だから、お店に並んでる中から自分で選びたい。ピアノ教室に、パンフレットもあったよ。段ボールに入った服は
もういや」
「ちゃんと新しい服も買っているでしょ」
おく ねむ せんざい
「でも、みんなそんなふうに思ってない。ずっとどこかの倉庫の奥に、何年も眠ってたやつで、安い洗剤とほこりの
においしかしないって、そう思ってる」
ふ
「なんですか。多くの善意を、踏みにじるような言い方をして」
「わたしが言ってるんじゃない!」
3 えい り は もの
志保子さんにたしなめられたとたん、 杏奈が鋭利な刃物のような目つきになった。
- 7 -
注
(2 さ
) かえ
「 学 校 で 言 わ れ て る よ 。く ん く ん く ん く ん 、安 い 洗 剤 の に お い が す る っ て 。い ま ま で 志 保 子 さ ん や 栄 さ ん に 悪 い と 思
って、だまっていたけど」
なみだ
よほどがまんしていたんだろう。杏奈のひとみから、涙があふれた。
志保子さんもだまってしまった。
重い空気が立ちこめる。
「ねえ、杏奈、知ってる?」
海鳴は、ここは年長の自分が、どうにかしなきゃと思ったのだろう、やさしい声で話しかけた。
注
(3 ) ぼうけん
「みつばちマーヤの冒険の中に、こんなのがある。 運命がひきはなしたものを、またいっしょにしてはならない
よ、という、ばらこがねのクルトのセリフ。
どういうことだと思う? ぼくはこう思う。ぼくたちは、ぜいたくとはけっしていっしょになれない運命なんだ。
き ょ うぐ う
だ か ら ぜ い た く を 知 っ て し ま う と 、い つ か 身 を ほ ろ ぼ す こ と に な る 。も ち ろ ん 将 来 、自 分 の 力 で ぜ い た く で き る 境 遇
になれたら、それはいいと思うけど」
「ドレスを着るって、ぜいたくなの?」
目を真っ赤にして杏奈はうったえる。
「いまのぼくたちにはね」
海鳴は、きぜんと答える。ぼくは胸が苦しくなった。
海鳴がぼくを見て言った。
「雅也はどう思う?」
「えっ、ぼくの意見?」
「だって、北の太陽の一員だもん」
海鳴は平然と言うけど、ぼくには答える準備もなければ、経験もなかった。
杏奈やゆずが、ドレスを着たい気持ちは理解できる。でもお金の問題となると、話はちがってくる。
4
海鳴は志保子さんにも気をつかっているのだろう。そう考えると、 ここで自分の考えを主張するなんて、こっけ
- 8 -
いな気がする。
「もしかして、自分の気持ちがないの?」
「いや、そんなことないけど」
「自分の意見に、自信がないとか?」
「それは あるかも」
・・・・・・
ぼくの意見は、よくクラスの和を乱した。
「話しても、だれかを不快にしてしまうかも。そう考えると、話すことに意味があるのかなって、そう思う」
「それでも、わかりあうためには、言葉にするしかないと思う。ここではみんなが自由に発言できる。みんな同じ太
陽の下にいる。だから、もしなにか思っているなら、話して」
ぼくはとてもうれしかった。いままで自分の言葉を、こんなにていねいにあつかってくれたのは、両親とおじさん
だけだ。
「それなら言わせてもらうけど、ドレスは着せてあげたい。それはあたりまえの感情だし、かなえてあげるのは、大
人の責任だと思う。たとえドレスが似合わないとしても」
ふ だ
ぷっと、海鳴が吹き出した。
「えっ、なにかおかしい?」
5
「あ、いや。 それでいいよ」
おうえん
応援したつもりが、杏奈もゆずも、ぼくをいやそうな目で見る。
「ねえ、志保子さん。お金なら借りればいいじゃないですか」
ぼくなりに考えて言った。
「そういうくせを、いまからつけてほしくありません」
志保子さんはがんとして、意志を曲げる気はないみたいだ。
「瑛介はどう思う?」
海鳴が聞くと、
- 9 -
6
「ぼくもドレス、きてみたい」
と、的外れなことを言って笑わせた。
むらかみ
村
( 上しいこ『みつばちと少年』による )
注
(1 ピ
) アノを教えてもらいに行きました 「杏奈」たち女の子は、ピアノを無料で教えてもらっている。
むすめ
注
(2 栄
) さん 志 保 子 さ ん の 娘 で 、「 北 の 太 陽 」 に は 、 子 ど も た ち の 世 話 を す る 手 伝 い に 来 て い る 。
注
(3 み
) つばちマーヤの冒険 ドイツの作家、ワルデマル・ボンゼルスの児童文学作品。物語のなかで、主人公の
「マーヤ」はさまざまな虫たちと出会い、成長していく。
問1 線部1「これくらいなら、口をはさんでもかまわないだろう」とありますが、このときの「ぼく」の気
持ちとして最も適当なものを次のアオから選び、記号で答えなさい。
ア 志保子さんと杏奈が言い争いになったいきさつくらいなら、
「 北 の 太 陽 」で 今 後 も ず っ と 世 話 に な る わ け で
はない自分が聞いても、志保子さんはていねいに答えてくれるだろう。
イ 志保子さんが杏奈たちにドレスを着させない理由くらいなら、
「 北 の 太 陽 」の な か で も 年 長 の 自 分 が 志 保 子
さんの代わりに教えてあげても、だれも不自然には思わないだろう。
ウ 杏奈たちが発表会でドレスを着ていいかどうかくらいなら、
「 北 の 太 陽 」で 世 話 に な っ て い る 自 分 が 杏 奈 た
せっかい
ちの代わりに聞いてあげても、だれもお節介だとは思わないだろう。
- 10 -
エ 志保子さんと杏奈がこのまま仲たがいするくらいなら、
「 北 の 太 陽 」で 生 活 し て 間 も な い 自 分 が 和 解 さ せ よ
うとしても、海鳴や瑛介は余計なお世話だとは思わないだろう。
オ 杏奈たちが発表会でドレスを着られない理由くらいなら、
「 北 の 太 陽 」に 来 た ば か り の 自 分 が 志 保 子 さ ん に
たずねても、だれも差し出がましいとは思わないだろう。
問2 線 部 2 「 ち ょ っ と か わ い そ う に 思 え た 」と あ り ま す が 、「 ぼ く 」に は 、ど の よ う な こ と が そ の よ う に 思 え
たのですか。わかりやすく説明しなさい。
問3 線 部 3「 杏 奈 が 鋭 利 な 刃 物 の よ う な 目 つ き に な っ た 」と あ り ま す が 、
「 杏 奈 」が ど の よ う な 様 子 に 見 え た
ことをたとえているのですか。その説明として最も適当なものを次のアオから選び、記号で答えなさい。
ア 志保子さんの真意を見抜いて、冷ややかに相手を見下している様子。
イ 志保子さんに疑念をもって、ひそかに反論の機会をうかがっている様子。
ウ 志保子さんに非難されて、理性を失いけんかごしになっている様子。
エ 志保子さんの思いを理解して、すがすがしい気持ちになっている様子。
かく
オ 志保子さんに言い負かされて、自分の落ち度を必死に隠そうとする様子。
- 11 -
問4 線 部 4「 こ こ で 自 分 の 考 え を 主 張 す る な ん て 、こ っ け い な 気 が す る 」と あ り ま す が 、こ の と き の「 ぼ く 」
の気持ちを説明した次の文章を読んで、後のの問いに答えなさい。
杏奈やゆずの気持ちは理解できるが、志保子さんが言うように、 A がないとな
ると、ここで杏奈を B ような考えを主張したところで、どうにもならないことはわかりきっている。その
うえ、海鳴は自分の考えを主張しながら、杏奈やゆずにだけでなく、 C のに、
それも台無しにしてしまうかもしれない。
A にあてはまることばを十五字以内で考えて答えなさい。
- 12 -
B にあてはまることばとして最も適当なものを次のアオから選び、記号で答えなさい。
ア かばう
イ さとす
ウ あざむく
エ いざなう
オ いさめる
ぬ だ
C にあてはまることばを本文中から十五字以内で抜き出して答えなさい。
問5 線 部 5 「 そ れ で い い よ 」と あ り ま す が 、「 海 鳴 」は ど の よ う な こ と に 対 し て 「 そ れ で い い 」と 言 っ て い る
のですか。最も適当なものを次のアオから選び、記号で答えなさい。
ア だれも不快な思いをしてほしくないから自分の考えは言わないほうがましだと考えていた「ぼく」が、海
鳴にうながされるままに話をしているものの、皮肉をまじえた本音を打ち明けたこと。
イ だれかを不快にするくらいなら自分の考えなど話す価値がないと思っていた「ぼく」が、言わなくてもい
い余計なことまで言ってはいるものの、自分の考えを自分のことばで表明したこと。
ウ 今まで人の和を乱すような発言ばかりしてきた「ぼく」が、言い方にまずいところはあるものの、ぎすぎ
ふん い き
すしたその場の雰囲気をなごませるために自分の意見を言う努力をしたこと。
- 13 -
エ 杏奈たちを心の中で応援しているようにみえた「ぼく」が、少々口がすべったところはあるものの、本心
では志保子さんの考えに同調していることをほのめかす意見を言ったこと。
オ 自分の意見をはっきりと言える自信のなかった「ぼく」が、お世辞にも上手な言い回しだとは言えないも
のの、ユーモアをまじえた独創的な考えをみんなの前で発表したこと。
問6 線 部 6 「『 ぼ く も ド レ ス 、き て み た い 』と 、的 外 れ な こ と を 言 っ て 笑 わ せ た 」と あ り ま す が 、本 文 全 体 の
内容をふまえて、ここから読み取れることとして最も適当なものを次のアオから選び、記号で答えなさい。
ア 「北の太陽」の仲間たちは、どんなに対立してもすぐに笑って許し合う、やさしくて思いやりのある人た
ちばかりだということ。
イ 「北の太陽」の子どもたちは、自らが背負っている不幸な運命に負けまいと、意識して明るくふるまいな
がら生きているということ。
ねん れい
ウ 年 齢 や 立 場 の ち が い を こ え て 、た が い に 思 っ た こ と を 気 が ね な く 発 言 で き る 人 間 関 係 を 、
「 北 の 太 陽 」で 暮
つちか
らす人たちは培っているということ。
- 14 -
エ 対 立 や 失 敗 を お そ れ ず 、自 分 の 意 見 を み ん な の 前 で 言 え た と き に は じ め て 、
「 北 の 太 陽 」の 一 員 と し て 認 め
てもらえるということ。
オ ど の よ う な 苦 難 も 、明 る く 笑 っ て さ え い れ ば 乗 り こ え ら れ る と い う 信 念 を 、
「 北 の 太 陽 」で 暮 ら す だ れ も が
持っているということ。
三 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
(注1)
イ ン ゴ ル ド は 自 著『 ラ イ ン ズ 』の な か で 、
「 線 」に は 、あ ら か じ め 決 ま っ た 始 点 と 終 点 と を 定 規 で 結 ぶ よ う な 直 線 と 、
どこに行くか定まっていないフリーハンドの曲線との二種類がある、と言っています。
最初の直線は、目的を決めて、それに向かってまっすぐ進むような生き方に重なります。おそらく結果を重視する
受験勉強やビジネスの世界などにあてはまるでしょう。試験に受からないと意味がない。ものが売れなければ仕方が
ない。受かるためには、売れるためにはどうしたらいいか。何があっても、その目標を効率的に達成したい。日々、
1
そういう思いで生きている人は少なくないと思います。でもインゴルドに言わせれば、 そこには落とし穴がある。
おちい な と
まず定められた目標以外のことを考えなくなる。ある種の思考停止に陥る危険性があります。何かを成し遂げるに
、も
はどうしたらいいか、という問いの立て方からは、なぜ私たちはそうしようとしているのか、というそ 、そ
、も
、の
、問 い
- 15 -
はい じょ
が排除されています。でも、たとえ大学に合格できても、大学で何を学ぶのか、大学に行ったうえでどう生きていく
のか、という大きな問いは残されたままです。
ビジネスの現場でも、そもそも何のために働いているのか、なぜそれを売りたいのか、その原点を問うことが重要
(注2)
、ル
なブレークスルーをもたらすことがあります。でも、その大切な問いはス 、ー
、さ れ て し ま う 。
とう たつ
もうひとつの落とし穴は、目標に到達することだけを考えた場合、その過程でどのように動くかとか、どんな手段
を使って目標を達成するのかなどが問われなくなる点です。できれば最小限の努力やコストで、最短の時間で目標を
、計
達成したい。そうなると、その過程に起きるすべてが余 、な
、こ と に な り ま す 。
インゴルドの言葉を借りれば、それは出発前からすでに決まった経路をたどるだけの旅のようなものです。旅のお
もしろさは、予定どおり目的地にたどりつくことより、その過程でどんなおもしろい出来事と出会えるかにかかって
いるのに、直線の旅は、そのプロセスを全部、余計なものにしてしまう。
それに対して、フリーハンドの曲線はどうでしょうか? インゴルドは、それを徒歩旅行にたとえています。歩い
ち ょ う ぼう はら と ちゅう
て い る 人 は 、進 む に つ れ て 変 化 し 続 け る 眺 望 や 、そ れ と 連 動 し て 動 い て い く 道 の 行 き 先 に 注 意 を 払 う 。そ の 途 中 で 起
ぐう ぜん よ ゆう
きることをちゃんと観察しながら進んでいる。だから偶然の出来事に出会っても、それを楽しむ余裕がある。
その道すがらに出会う予想外の出来事は、とりあえず時刻表どおりに電車に乗って、計画どおりの日程をこなすこ
じゃ ま
と ば か り 考 え て い る 人 に と っ て 、旅 の 邪 魔 だ と 感 じ ら れ る で し ょ う 。し か し イ ン ゴ ル ド は 、フ リ ー ハ ン ド の 線 に こ そ 、
人は生き生きとした生命の動きを感じられるはずだと言います。
あた せい いっ ぱい
とはいえ、私たちは日々、時間に追われ、与えられた仕事や予定をこなすことで精一杯です。ひとつの仕事を片付
けたら、また別の仕事にとりかかる。そのあいだに周りをじっくり観察しながら進む余裕はありません。インゴルド
あわ 2
の言葉は、そんな慌ただしい日常を過ごす私たちにも 大切なことを思い出させてくれます。
むすめ よう ち えん
私 は 毎 朝 、娘 を 幼 稚 園 の バ ス 乗 り 場 ま で 連 れ て い く の で す が 、時 間 が 決 ま っ て い る の で 、い つ も 慌 て て 家 を 出 ま す 。
「はい、急いで!」と娘に声をかけて急がせることもしょっちゅうです。
い がき ひき く も
そのバス停の近くの生け垣に二匹の大きな蜘蛛が巣を張っていて、蜘蛛が大好きな娘はいつも「蜘蛛さん見る!」
- 16 -
と言ってききません。そこでバスが来ないかひやひやしながら、二匹の蜘蛛にあいさつに行きます。毎日観察してい
なか
ると、お腹がふくれていたり、逆に少し細くなっていたり、蜘蛛の巣の張り方が変わっていたり、ちょうど巣にかか
か と
った虫にみついていることもあります。そんなとき、私まで「おお! すごい!」と、思わず写メを撮ったりして
います。
ほんとうにささいなことですが、インゴルドの言葉を読むと、もしかしたら限られた人生、娘を無事に幼稚園のバ
おどろ し ゅ ん かん
ス に 乗 せ る こ と よ り 、毎 日 、蜘 蛛 の 様 子 を 二 人 で 観 察 し て 驚 き や 発 見 に 満 ち た 瞬 間 を 味 わ う こ と の ほ う が 大 切 か も し
の おく
れ な い 、 と 思 え て き ま す ( バ ス に 乗 り 遅 れ る と 、 あ と が た い へ ん な の で す が … … )。
ひそ
たぶん私たちの日常には、そんなふだんは気づかないところに「生きる喜び」が潜んでいる。なのに、たいていは
気づかずに通り過ぎてしまう。でもそのささいな喜びを人生からすべて取り去ったら、あとに何が残るのか。そう考
えさせられます。
が まん
私たちは小さいときから好きなことを我慢してがんばりなさい、そうすればよりよい人生が送れる。そう言われ続
けて大きくなりました。でも目標を達成したらそこで人生が終わるわけではない。目標の達成は通過点でしかありま
せん。またそこで歩み続けなければならない。
大きな目標を達成することだけを目指して、それまでのあいだずっと周囲の変化や他者の姿に目をつぶって耳をふ
こば
さぐ。そうやって「わたし」の変化を拒みながら足早に通り過ぎていくうちに、私たちは確実に「死」へと近づいて
います。
インゴルドも、フリーハンドの曲線のような人生だけがよりよく生きることだと言っているわけではありません。
線には直線と曲線の二つがあるのに、私たちは知らないうちに直線的な歩みをしてしまいがち。だからこそ二つの歩
み方があることを自覚できるかどうか。それが「よりよく生きる」ことにとって意味がある。たぶんそう考えている
のではないかと思います。
周 囲 の 変 化 に 身 体 を 開 き 、そ の 外 側 に 広 が る 差 異 に 満 ち た 世 界 と 交 わ り な が ら 、み ず か ら が 変 化 す る こ と を 楽 し む 。
いきあたりばったりの歩みのなかで「わたし」に起きる変化を X 、ま
的にとらえる。そういう姿勢は、まさにさ 、ざ
、
- 17 -
、に
ま 、異
、な
、る
、他
、者
、と と も に 生 き る 方 法 で す 。 そ し て 、 そ れ は 変 化 が い っ そ う 激 し く な る こ れ か ら の 時 代 に こ そ 必 要 と さ
れるのだと思います。
たよ
すべてが自動化され、先進技術に頼らないと生きていけなくなる時代には、私たちの歩みは、最小限の努力で最大
せ
の効果をあげるようますます急かされるかもしれません。
けん さく
そんな「効率」だけを求める志向性を私たちはすでに Y 化しています。ナビやスマホの経路検索で「ここに行
くにはこれが最短ルートです」と示される。ネット書店では「いまのあなたにオススメの本はこれです」と提案され
る。その指示に従うのが最適解で、それ以外は不正解のように感じられる。
ほん だな なが
そのとき、ふらふらと町を歩きながらたまたますてきな店を発見したり、本屋さんの本棚を眺めているうちに人生
を変える本と出会ったりする機会が失われる。人生は、往々にしてそんな偶然の出会いから「喜び」が得られるにも
かかわらず。
さ の こ
もちろん人生には困難な出会いもあります。それはどんな生き方をしていても避けられない。でも苦しみを乗り越
えるためのヒントも、その変化に開かれた姿勢のなかにあるような気がします。
インゴルドの二つの線は、他者との二つのつながり方とも重なります。他者との境界に沿って、その差異を強調す
し ょ う にん
る 「 共 感 の つ な が り 」 は 、「 わ た し 」 の 存 在 の 確 か な 手 ご た え を 与 え て く れ る 大 切 な 承 認 の 機 会 で す 。 が ん ば っ て 目
標を達成すると満足感が得られる。それを人からほめられると、うれしくなる。そんなポジティブな感情をもたらし
おびや
ま す 。で も 、そ こ に は 同 時 に 異 質 な も の や 変 化 を 拒 む 力 も 潜 ん で い る 。異 質 な も の は 大 切 な 「 わ た し 」を 脅 か す 存 在
で あ り 、「 わ た し 」 が 変 え ら れ て し ま っ て は い け な い 、 と 。
かか
これはあたかも最初に掲げた目標を達成することだけが重要であって、途中で目標が変わったり、目標とは関係な
い出来事に出会ったりすることは邪魔なことでしかない、という直線的な生き方のようです。
3
一 方 、「 わ た し 」が 他 者 と の 交 わ り の な か で 変 わ る 「 共 鳴 の つ な が り 」は 、予 想 外 の 出 来 事 や 偶 然 の 出 会 い で 変 化
かて ちが
が生まれることを、みずからの糧にします。自分の生まれ育った世界とは違う世界を生きる人や違う価値観の人との
出会いをみずからの「喜び」に変える姿勢でもあります。
違いを拒まず、その違いとの交わりをみずからの可能性を広げるものとしてとらえる。するとひとつの固定したゴ
- 18 -
ールを定めていないので、その違いを楽しむ余裕が生まれます。目標を達成できないと、ふつう「失敗」と見なされ
ますが、人生の価値をはかるひとつの指標を定めない曲がりくねった線の上では、それは「失敗」ではなく、興味深
い「変化」になります。困難や苦しみも人生の味わいになるかもしれません。
かん き ょ う
「 わ た し 」 や 「 わ た し た ち 」 が 変 化 す る か ら こ そ 、周 囲 の 人 や 環 境 も 、 自 分 自 身 も あ ら た な 目 で と ら え な お す こ と
きょう い
が で き る 。 脅 威 に 感 じ ら れ た 差 異 が 可 能 性 と し て の 差 異 に 変 わ る 。そ れ こ そ が 、さ ま ざ ま な 差 異 に 囲 ま れ 、差 異 へ の
ぞう お 4
憎悪があふれるこの世界で、 他者とともに生きていく方法なのではないか。それが、私が文化人類学を学ぶなかで
手にした実感だったように思います。
まつ むら けい いち ろう
(松村圭一郎『はみだしの人類学』による)
ひ かく
(注1)インゴルド イギリスの文化人類学者。文化人類学とは、様々な文化・社会を比較研究する学問のこと。
とっ ぱ
(注2)ブレークスルー 難関を突破すること。
問1 線部1「そこには落とし穴がある」とありますが、それを説明した次の文章を読んで、後のの問
いに答えなさい。
A には、目標に向かうにあたっての B のみに意識が向き、自分の行動の C は考
えないという思考停止に陥る危険性がある。さらに A には、目標到達への効率ばかりが
み いだ いっ さい
重視され、その D に意味を見出すという視点を一切もてなくなる危険性もあるということ。
ぬ だ
A にあてはまる表現を本文中から二十六字で抜き出して答えなさい。
- 19 -
B ・ C に あ て は ま る こ と ば と し て 最 も 適 当 な も の を 次 の ア オ か ら そ れ ぞ れ 選 び 、記 号 で 答 え な さ い 。
ア 利得 イ 意義 ウ 順位 エ 方法 オ 短所
D にあてはまることばを本文中から四字で抜き出して答えなさい。
問2 線部2「大切なこと」とは、どのようなことですか。わかりやすく説明しなさい。
問3 本文中の X ・ Y にあてはまることばとして最も適当なものを次のアオからそれぞれ選び、記号で答
えなさい。
ぶん せき こう てい
X …… 〔 ア 国際 イ 分析 ウ 肯定 エ 一元 オ 批判 〕
Y …… 〔 ア 機械 イ 有料 ウ 形式 エ 問題 オ 内面 〕
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問4 線部3「共鳴のつながり」とありますが、その具体例として最も適当なものを次のアオから選び、記
号で答えなさい。
かく にん
ア イスラム文化における宗教と生活の関係をインターネットで調べ、その文化独特の生活習慣を確認した。
イ アフリカからの留学生と交流をする中で、むしろ自国文化についての気づきがあり新鮮な驚きを覚えた。
かつ やく ほこ
ウ オ リ ン ピ ッ ク で 自 国 の 選 手 の 活 躍 し て い る 姿 を 見 る と 、自 分 の 事 の よ う に 感 じ ら れ 誇 ら し い 気 分 に な っ た 。
い わ かん いだ
エ 中学校で他県出身の友人ができたが、同じ言葉でもアクセントが自分とは異なっており違和感を抱いた。
とう こう
オ SNSの自分の投稿に支持が多く集まったとき、自分が認められたようで安心感を得ることができた。
問5 線部4「他者とともに生きていく方法」とありますが、それはどのような生き方のことを言っているの
ですか。わかりやすく説明しなさい。
問6 、当
本文の表現や内容について説明した次のアオから適 、で
、な
、い
、も
、の
、を 一 つ 選 び 、 記 号 で 答 え な さ い 。
ア 筆者と同じ研究分野における考え方を引用することで、自分の主張の説得性を高めようとしている。
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ひ ゆ
イ 「落とし穴」や「旅」のような比喩表現を入れることで、説明を具体的にイメージしやすくしている。
ウ 筆者の娘の話題といった身近な具体例により、専門家以外の読者でも理解できる書き方に努めている。
エ 「 ス マ ホ 」「 ネ ッ ト 書 店 」 な ど の 話 題 を か ら め 、 文 化 人 類 学 の 知 見 を 日 常 へ つ な げ よ う と し て い る 。
オ インゴルドの考え方と比べて違いを示すことで、筆者の主張の独自性を明確にしようとしている。