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取得日:2024年03月19日[更新]

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                  校長室だより湘南の空                         第4号
                                                       令和4年3月7日
 
   懐かしく尊い思い出
   2月1日に本校 27 回生の石原慎太郎さんが逝去した。一橋大学在学中にデ
 ビュー作「太陽の季節」で 1955 年下半期の芥川賞を受賞、「太陽族」という語
 が生まれるきっかけになった。その後、政治家として運輸大臣、東京都知事等
 を歴任した。
   改めて石原さんの作品を読み、政治家としての足跡を辿ってみると、「世の
 中を放っておけない」という衝動を感じる。本校在学中から疑問に蓋をせず、
 こうあるべきという理念に突き動かされる、心優しい人物だったのではない
 か。世間に注目される発言を続けてきた石原さんだが、その文章は瑞々しくデ
 ビューの頃から色あせない。
   石原さんの本校 100 周年記念誌への寄稿文は「湘南と言う学校は多感な十代
 での迷いや反発も含めてその後の多事多難だった二十代への不安定ながらも無
 視できぬ足がかりとしていかにも懐かしく尊い思い出に満ち満ちている。」と
 結ばれている。「やりたいことに全力を尽くす」皆さんが勇気をもらえる文章
 ではなかろうか。
   石原慎太郎さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
 
   余談になるが、2月1日に東京新聞の石原真樹記者(73 回)から追悼記事の
 ための電話取材を受けた。彼女は本校創立 100 周年記念式典にも取材に来てお
 り、
   「湘南 100 周年記念誌」に石原慎太郎さんの文章が載ったことは本当に素
 晴らしいと言った。https://www.tokyo-np.co.jp/article/157666
 
   ウクライナ
   1988 年7月 10 日 T.G.シェフチェンコ記念・キエフ劇場バレエ団(以下キエ
 フ・バレエ団)の来日公演「白鳥の湖」は伝統的な振付と衣装、素朴さの中に
 洗練された表現が光る舞台であった。私は茅ヶ崎市民文化会館で、キエフ・バ
 レエ団の温かい人間性、芸術を愛する心に触れ、訪れたことのないウクライナ
 の風土や首都キエフの歴史に思いを馳せた。当時のプログラムに「キエフ・バ
 レエ団の歴史」が紹介されている。「キエフ・バレエ団の踊り手たちは世界の
 50 以上の国々で公演を行ってきたが、どこに行っても彼らはもっとも大きな、
 そしてもっとも大切な芸術の持つ課題を決して忘れることはない。それは民族
 間の壁を積極的にとり除くことであり、地上の平和を確かなものにするための
 闘いを発展させることである。」
   キエフ・バレエ団の精神のバックボーンは現在のチェルカースィ州出身の国
 民的詩人タラス・シェフチェンコ(1814 年1861 年)であり、彼は、ウクラ
 イナの農奴解放に尽力、人々の魂に訴える詩や絵画を発表し、敬愛されるも、
 当時の帝政ロシアの圧政により 1847 年から 10 年間流刑にされるなどした。
 (「コブザール」タラス・シェフチェンコ著 藤井悦子編訳より)
       「苦痛と悲哀から逃れ
         人が手紙を読むのを目にすまいと、
         わたしはさまよい歩く。
         海辺を歩きまわり、
         自分の悲しみを紛らわせる。
         ウクライナを思い出して
         歌を歌い始める。
         人は誓いを立て、そして裏切るけれど、
         歌はわたしを勇気づけてくれる。
         わたしを励まし、慰め、
         わたしに真実を語ってくれる。」
 
   プログラムにはキエフ・バレエ団と交流のあった舞踊家寺田博保氏の解説も
 掲載されている。「キエフ・バレエ団の印象は一言でいえばウクライナ地方の
 気候・風土にはぐくまれた明るい民族性と言うことができるだろう。(中略)
 『われわれはウクライナダンス、ロシアダンスとは違うと、その差異をよく見
 てほしい』と語っている。」公演のカーテンコールでのダンサーたちの人懐っ
 こい笑顔を私は忘れることができない。この客席でウクライナに湘南との共通
 点を見出していたのは私だけだろうか。
   なお、バレエ音楽「ロメオとジュリエット」を作曲したセルゲイ・プロコフ
 ィエフ(1891 年1953 年)は現在のウクライナ東部ドネツク州の出身だ。プ
 ロコフィエフの曲には、時代を超えた今なお新しいメッセージが込められてい
 る。
   スポーツ界において、ウクライナのキエフ州出身の元サッカー選手、同国最
 多の代表通算 48 ゴールをマークしたアンドリー・シェフチェンコ(1976 年
 )は「ウクライナの矢」と呼ばれ、直線的にディフェンスを抜く芸術的なプ
 レーで多くの人を魅了した。
   アンドリーはウクライナ侵攻について「我々は多くの難しい時代を生き抜
 き、30 年以上に渡って国家として成り立ってきた!誠実で勤勉な、自由を愛す
 る人々の国だ!これが私たちの最も貴重な財産である!」と訴えている。
   このような美しい文化、国を継承するという当たり前のことはどうしたら実
 現するのだろうか。考えてみたい、考えていただきたいと思う。
   「あなたは世界をどう変えますか。」生徒の皆さんには引き続き高い理念・
 目標を掲げ進んでほしい。
 
   3年生の皆さん、卒業おめでとう。皆さんは、コロナ禍を乗り越え、勉強、
 行事、部活動に全力を注ぎ駆け抜けた。とりわけ昨年 10 月6日に延期した第
 73 回体育祭は皆さんの湘南での生き様を示し、長く語り継がれることだろう。
   湘南で培った力を信じ、やりたい分野から世界を動かしてほしい。
   皆さんの今後の活躍を心よりお祈りいたします。
   「最も困難な道に挑戦せよ」Always do what you are afraid to do.