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取得日:2024年03月19日[更新]

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                  校長室だより湘南の空                         第8号
 
                                                       令和4年6月6日
 
 
   生徒の皆さんは、勉強、文化祭の準備、部活動等忙しい日々を送っているこ
 とと思う。「まず好きなことを見つけてとことんやってみる」という皆さんの
 姿勢は、私達に勇気を与えてくれる。
   ご承知の通り、勉強にしても部活動にしても基礎を固めることが最も困難な
 道である。長く苦しい基礎固めを成し遂げてほしい。未来の世界で飛翔すると
 信じ、突き進んでいただきたい。
   私は、生徒の皆さんの今後の挑戦を心より楽しみにしている。
 
 
   「社会にとってなくてはならない企業」であること
   本校 27 回生でセコム創業者・最高顧問の飯田亮さんの文章「“自由闊達”な
 校風こそわが校の誉れ」が湘南 100 周年記念誌に掲載されている。飯田さんは
 湘南入学から4か月余りで終戦を迎え、仲間とハワイアンバンドを結成し、ウ
 クレレを弾いていたが、ある先生の「ラグビー部をつくらないか」の一言で生
 活の中心はラグビーになった。厳しい練習を重ねたが、歴史のない即製チーム
 だけに試合ではほとんど勝てなかったが「スタミナは十分に養われ、ラグビー
 の合宿が終わると、すぐに葉山でヨットに乗ったりしました。」
   2012 年、創業 50 周年を記念した「セコム その経営の神髄」(長田貴仁著)
 が校長1室に寄贈された。
   「大きな会社になったねと言われても、嬉しくもなんともない。社会にとっ
 てセコムはなくてはならない会社だね、と言われると本望だ」
   「ソリューション」というビジネスの概念について「メーカーが考えている
 のは、アフターサービスからの発想だから。我々は、精神自体がサービスなん
 だよね。ついでにサービスを良くして、顧客に喜んでもらおうという発想じゃ
 絶対ダメだよ」飯田さんは「社会にとってなくてはならない企業」を目指すそ
 の精神そのものがサービスだと言う。企業の存在そのものが社会にとっての価
 値であると。この理念は目標達成に資するばかりではなく、社会の発展に貢献
 する。
   こうした飯田さんの精神は現在の湘南生に受け継がれているのではなかろう
 か。実際、湘南生は、実現したい未来に向けて突き進むことで、周囲の人々の
 心を明るくしている。
   「今の高校生には高い志、そして大きな夢を持ち空想してもらいたいです
 ね。自分の将来、人間の形成、仕事に関しても空想をしないと可能性が生まれ
 ません。そしてどこかまでは必ず実現できると信じることです。」
   秀麗の富士、イルカ、月からの祝福
   5月 14 日(土)11 時 30 分、相模湾の三浦半島南端に程近い小網代沖をスタ
 ートし、熱海沖に浮かぶ初島を反時計回りに回航して小網代沖に戻る外洋ヨッ
 トレースに出場した。地元のヨットレースであり、今回は6チームの参加だ。
 初島は熱海の南東沖に浮かぶ海岸線長4km の島である。乗り組むメンバーは7
 人。ヨットは操船によってマストにセットされた複数のセール(帆)を張って
 風をうまく流し、セールの表裏の気圧の差で発生する揚力を得て前進するボー
 トである。ボートの底からキールと呼ばれる巨大な板状のものが突き出してお
 り、ボートの横流れを防ぐことで前進する仕掛けである。ほぼ真後ろからの追
 い風を受けた場合は、そのまま推進力にする走らせ方になる。キールの材質は
 鋳鉄や鉛で、ヨットの総重量の半分近くを占め、復原性を高めてもいる。
   曇りなのに 360 度パノラマで相模湾が全望できる不思議な天気。セーリング
 に良い風が吹くのではという期待が膨らむ。小網代、葉山、逗子、由比ヶ浜、
 稲村ヶ崎、江の島、茅ヶ崎、大磯、国府津、真鶴、熱海、伊東、稲取、下田、
 大島、そして三浦半島南端の城ヶ島。国府津の向こうには秀麗の富士もくっき
 り浮かんでいる。
   南南西から南西の軽風が吹くものの、船体をたたく小波が絶えず、操船は簡
 単ではない。7人で風や潮を読み、レースプランを議論しながら、先行するヨ
 ットを追い上げていく。初島の東南東 10km 付近で、大きな生きものが海面を
 ジャンプする。背びれも見事なハナゴンドウというイルカだ。見回すと私たち
 は群れに囲まれていた。名前の通り丸い大きな頭で体長3m前後、50 頭はい
 る。ハナゴンドウは仲間同士で体をぶつけあうことで知られている。船体にぶ
 つかってこないことを祈りながらも、祝福されている気持ちになる。
   2017 年8月に始まり、過去最長を更新した黒潮の大蛇行の影響だろうか、ハ
 ナゴンドウは、イカや魚を求めてここまでやってきた。
   初島を回航したときには3艇が先行していたが、私たちは積極的にレースプ
 ランを修正しながら操船した。初島の東南東 10km 付近で再びハナゴンドウが
 ジャンプし、今度は並走してきた。
   こんなことがあるのだろうか、風向が南西から北北西に変わり風速も5m/s
 から 10 m/s に上がるなど海況が大きく変化した後、私たちのヨットは先行す
 るヨットより風を良くつかんでいた。実際、じりじりと追いつき、とらえ、抜
 き去り、逆に差を広げることに成功した。日は暮れたが、晴れて月齢 14 日の
 大きい月の光が海面に降り注ぐ中、静謐なエネルギーをいただき、集中力を切
 らさずに風をつかみ続ける。いかに速く走らせるかを7人で議論しながら延々
 と試行錯誤を繰り返す。その後、再び風が弱まり打つ手も尽きかけたが、後続
 を振り切ってフィニッシュ。時刻は 22 時 11 分 44 秒だった。
   自然に生かされていることに感謝するセーリングになった。チームとして、
 あきらめない、楽しむ気持ちが功を奏したのではなかろうか。
  https://dolphinkids.heteml.net/zukan/rissos_dolphin