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取得日:2024年03月20日
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令和3年度 3学期終業式「訓話」(令和4年3月18日)
新潟県立長岡高等学校長
鈴 木 勇 二
0 はじめに
皆さん、おはようございます。
今日は3学期の終業式、これまでリモートでの講話が続いていましたが、年度の最後に
こうやって、直接、皆さんに話ができることを大変嬉しく思います。対面で、皆さんの表
情を見ながら話ができる、これが本来の学校のあり方なんだと強く感じます。では、訓話
を始めましょう。
1 春を感じる
初めに、私はこの1年、朝6時前にに起きて、6時半に家を出る毎日でした。つい2週
間前は暗い中起きて、薄明かりの中家を出ていましたが、今日は、薄明りの中起きて、普
通に明るい中家を出ました。車を運転して1時間、7時半に学校について校長室のカーテ
ンを開けると、皆さんがいる教室棟が見えます。手前にある中庭は、先週は一面雪で覆わ
れていましたが、今は校長室側三分の一が消えました。よく見ると保健室の外にはふきの
とうが顔を出しています。このように、日一日と早まる日の出と、校長室からの風景に春
の訪れを感じます。まだ少し肌寒さは残りますが、いい季節になってきたなと嬉しく思い
ます。皆さんはどうですか。何に春の訪れを感じますか。
2 目が合った本にすれば 『万葉と沙羅』より
私は、この1年、皆さんに本を読むことを呼びかけてきました。「またか」と思う人も
いるかもしれません。しかし、私は、「本を読む」ことが皆さんが成長する一つの機会に
なると思うので繰り返し話しています。プロの表現者が書いた文章はさすがに訴えるもの
があります。そういうものに触れることは、触れた人の心を豊かにすると私は考えます。
3学期始業式で、今年は「一月に3冊読む」という目標を立てたと話しました。これが
なかなか難しい。ですが、少し難しいくらいの目標にしておかないと楽をしてしまうので、
これで良かったと思っています。1月以降に図書室から借りて読んだ本は7冊。横山秀夫
さんの『ノースライト』、宮部みゆきさんの『おそろし』、『パーフェクトブルー』、中島京
子さんの『やさしい猫』、湊かなえさんの『ブロードキャスト』と読み進め、6冊目に読
んだのが中江有里さんの『万葉と沙羅』。通信制高校に通う沙羅という高校生と、沙羅の
幼なじみ万葉(万葉集の万葉)が、それぞれの将来の目標を見つけていく物語です。物語
が始まってすぐのところに、万葉がアルバイトをしている古書店(古本屋です)での一場
面があり、そこに次のような沙羅と万葉の会話があります。
「万葉くん、わたしも本読みたいっ」
行こうとする万葉の背筋がピンと伸びた。
「ねぇ、本選び、手伝ってくれないの」
沙羅は古書店に戻って、店内を一通り見て回ってから訊いた。
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「・・・・・・好きなの、読めばいい」
万葉はまたレジに戻っていて、本から目を離さない。時代劇に出てくる武士ような佇ま
いだ。
「だから、それがわからないんだってば。そうだ、なんかヒントちょうだい」
「・・・・・・目が合った本にすれば」
どうですか、皆さん。目が合うというのはお互いに見合っていること。本を探す人だけ
でなく、そこにある本も人を見ているという考え方でしょうか。本のタイトルや作者の名
前、本の大きさや色合い、書かれた文字、本を紹介する帯などで、それぞれの本が「私を
見て、読んで」と訴えてくる。「目が合う」とは、それらの情報と、自分の経験や知識や
興味、そのときの気分から「おやっ」と思う本に出会うことなのだと思います。『万葉と
沙羅』を読み終わって図書室に返しに行ったとき、早速試してみました。いろいろある本
の中で、ふと目についた(目が合った?)のが、この『盤上の向日葵』でした。「盤上」
という言葉と表紙の絵から将棋が絡んだ物語であることが予想されました。実際に読み始
めると、うまい表現だなと思うことが随所にあります。そして、伏線と思われる文章表現
があります。丁寧に読んでいないと見逃してしまう。時間のないなかで読むときにはどう
しても斜め読みになって大切なことを読み逃してしまうのですが、外が雪に閉ざされてい
る(十日町市に住んでいます)今は時間があるので、土日には特に丁寧に読むことができ
ています。とても楽しく読ませてもらっています。あと50ページほどのところまできまし
た。クライマックスに入り、今も読みたいところですが、勤務時間中なので昼休みに読み
たいと思います。
皆さんは明日から春休みです。勉強や部活動に忙しいと思いますが、少しずつ読み進め
るでも良いと思います。「目が合った」本との時間を過ごしてみてはどうでしょうか。
3 世界での出来事
話は変わりますが、世界では悲惨な出来事が起きています。幸せな日常を奪われ、住み
慣れた場所から避難を余儀されなくされる人が後を絶たない状況です。そんな人たちのた
めに自分にできることはないかと考えていたとき、和同会総務有志が避難民支援の募金活
動をしたいと申し出てきました。同じことを長岡高校の生徒が考え、それをすぐに行動に
移したことは賞賛に値します。さすが長高生。こんなところに、伝統精神が受け継がれて
いるのだと感動しました。今日、その募金活動が行われました。素晴らしい感覚と行動力
に頭が下がります。
4 おわりに 小さな事でもできるようになったら喜ぼう
さて、今日で、令和3年度の授業が全て終わります。新型コロナウィルスの感染拡大の
影響により、窮屈な1年だったといわざるを得ませんが、マスクの着用、教室の換気、黙
食、歯磨き時の会話の自粛、これら一つ一つをしっかりと生活の中に取り入れ、今では当
たり前のこととして実行している皆さんには感謝せずにはいられません。
大会が中止になったり、学校行事も規模を縮小したり、残念な気持ちでいる人も多いと
思いますが、そういった中でも、体育祭や
文化祭
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、学期末の部会など、工夫を凝らして、
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やれる最大限のことに取り組む姿は、素晴らしいと思いました。
それらも含めて、皆さんにとって、どのような経験をした1年だったでしょうか。何を
身につけたか1年だったでしょうか。気づかないけれども、確実に皆さんは成長していま
す。自信を持って次のステップに進みましょう。大きな目標を持ちましょう。すぐにはそ
こにはたどり着けないので計画を立てます。段階を踏みます。小さなことでもできなかっ
たことができるようになったら喜びましょう。それが次のステップに進む活力になります。
私たち人間は、どうしてもできなかったことだけが頭に残って自分を低く評価してしまう。
だから、失敗して、やりたかったことができなくて劣等感を抱くことは当然あります。そ
んな時、良い面と悪い面を両方見るようにすることが大切です。
大きな区切である今日、自分自身のこの1年を振り返り、自分の成長を感じて欲しいと
思います。そして、これからの1年で自分は何に力を入れて、どう成長したいか考える春
休みにしてください。
以上で私の話を終わります。
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