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取得日:2024年03月20日[更新]

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                   研究内容<夜間定時制課程の取組>
 1     本年度の定時制の研究目標
      (1) 授業に主体的・対話的な活動を取り入れ、年間を通じて深い学びにつなげるための授業改善を
        行う。定期考査では生徒の実態に応じて思考力・判断力を要する出題内容を考える。
      (2) 少人数という定時制課程の特色を生かし、個々の生徒の達成度を評価できる取組を行う。
      (3) 定時制での生徒用タブレットや ICT の活用方法について研究し、授業実践を行う。
      (4) 公開授業1を踏まえ、授業実践の振り返りを行って、定時制における「主体的・対話的で深い学
        び」の授業について協議を行い、授業改善を図る。
 
 2 研究の実施内容
   【保健体育】
   (1) 体育の実技では、生徒の主体的な活動
     を促進するために、学期ごとに運動・ス
     ポーツに関する調査を行い、生徒の実態
     に合った科目を選定している。今回授業
     実践として設定した単元は「現代的なリ
     ズムのダンス」である。最初にダンスの
     技能レベルやダンスに対するイメージ
     についてアンケートをとった。その結
     果、「ダンスに自信はありますか」とい
     う問いに対してほとんどの生徒が「な
     い」と答えた。この結果を踏まえ、授業
     ではグループ活動を主体とした。また、
     グループでの対話的な活動を活発化さ       【図1   P-time】
     せるため、ICT を活用して、ダンスの共
     通課題を提示するようにした。授業での
     活動内容や話し合いの様子を動画で録
     画してクラウド上に提出保存し、授業の
     導入やダンス動画の比較に活用した。こ
     れにより自らの活動を振り返って課題
     を確認し、次のレベルに移行するための
     判断を視覚的に確認できるようにして、
     学習につながりをもたせるようにした。
       P-time(友達のダンス活動をのぞき込
     む時間【図1】)やワールドカフェ(メ
     ンバーを変えてグループ討議をするこ
     とで、より創造的な意見を出す方法)と     【図2   話し合い】
     いった時間を設定し、新たな気づきやよ
     り深く追求しようとする姿勢を促すよ
     うにした。
   (2) 定時制の少人数の特色を生かし、毎時
     すべてのグループに発表する機会を与
     えることとした。その出来栄えについ
     て、動画を視聴しながら、課題に対して
     どの程度達成できたか話し合わせ、話し
     合いの様子【図2】もタブレットのイン
     カメ機能で撮影して、次時に利用した。
     達成状況と次への課題を録画すること
     で、生徒の考えや困りごとを把握できる
     ようにした。
   (3) ICT として、生徒用タブレット等と       【図3   壁に映した動画での練習風景】
     Google の教育用クラウドサービスをつ
    かった学習支援を行った。生徒への課題の提示はプロジェクターを利用するとともにクラウドサ
    ービスを活用し、授業前や授業中に見ることが出来るようにした。授業で撮影した動画について
    はクラウドに移すことで、教員含め同じ班の生徒と共有することができるようにした。また、壁
    に映し出した動画は繰り返し流れるように設定し、生徒が動画を参考にして何度も練習が行える
    ようにした【図3】。
  (4) 公開授業2を踏まえ、授業者、参観者で授業を振り返り、以下の2点について検討することとし
    た。1つ目は、主体的に学習を進めるための中心発問である。「躍動感のあるダンスを目指そう」
    であった。現代的なリズムのダンスの特徴である「群」や「まとまり」、「リズムの特徴を捉える」
    という観点を重視した発問である。「もっと具体的な言葉の方がいい」「認識が生徒によって、変
    わる」などの意見がでた。2つ目は、公開授業3で取り入れた「P-time」についてである。ほかの
    班の様子を見る時間であるため、2分という短い時間であるが自由度が高い。違った視点を得る
    ことができた一方で、P-time を終えてからの練習に取り組むまでの時間が長くなってしまった。
    コロナ感染予防のため、体育館全域をつかっていたため、移動距離等が長くなったことが主な原
    因ではないかという意見がでた。
  【理科】
    年間を通して ICT を活用し、自然と人間
  生活とのかかわり及び科学技術が人間生
  活に果たしてきた役割について興味や関
  心を持たせ、主体的に学ぶ姿勢の育成を図
  った。特に今回は、太陽放射や地球放射の
  基礎知識の定着から、相互の知識を結び付
  け、地球温暖化という問題に対してより深
  い理解や解決策を自ら考えさせるような
  学習を目指した。
    具体的には、タブレット端末を活用し、
  地球環境問題と自分自身の生活との関連
  性について調べ、考えさせた【図4】。ま
  た、あえて、教員の考え『正解』を提示せ
  ず、様々な考えを参照させ、自由に考えさ
  せて、自分の考えをまとめさせるように心    【図4 タブレットを利用した授業】
  掛けた。
  【数学】
    本校の数学の授業は、小・中学校の復習
  から始めるので、1・2学年では計算中心
  の学習となり、定着させるための繰り返し
  練習を行う。3・4学年では、図形やグラ
  フなどの学習を行うが、生徒は図形をイメ
  ージすることが難しく、板書でも伝えづら
  い。そこで、今回の授業では、数学のソフ
  トを利用し、プロジェクターやタブレット
  を用いて立体図形を提示することとした。
  数学ソフト GeoGebra で作成した様々な立
  体図形をプロジェクターで提示し、生徒に
  立体図形を明確にイメージさせることを
  目指した【図5】。また、GeoGebra では、   【図5 数学ソフトでの立体図形の提示】
  立体図形の高さを変化させたり、1つの面
  だけを強調したり、立体図形を回転させることもできるので、立体図形をイメージすることだけで
  なく、立体図形の名称、底面積や高さ、体積の求め方などの理解にも活用できるように心掛けた。
 
 3 研究の成果と今後の課題
   【保健体育】
     今回の研究では、ICT を活用した学習支援を行った。生徒用タブレットと教育用クラウドサービ
   スを活用したことで、タブレット1台で多岐にわたる学習を進めることができた。授業の補助とし
 てクラウドにプリントや動画を挙げれば、生徒が必要と感じた資料を取り出すことができ、小規模
 人数による共有フォルダと全体共有のフォルダを分けることで、一斉指導とグループ指導、個別指
 導と幅広い指導が可能であった。これは、生徒の意欲を引き出すだけでなく、進捗状況も把握する
 ことができるため、生徒がどこでつまずいているか分かり、個々に応じた高い支援ができることが
 明らかになった。自らの動きやグループトークの様子を振り返って客観的に見ることで、「気づき」
 や「他との違い」など多面的・多角的に研究する姿を表出させることができた。これに合わせて、
 話し合う時間や他の演技を見る時間を重ね合せたことにより、グループ内の対話が増え、次時への
 より高い課題を設定する場面が多く見られた。対話的活動から課題を見つけて改善し、ダンスの技
 術をより高めようとする意欲的な行動が見られた。
   今回、課題曲選びや初心者でも取り組めるように技能レベルを設定したことで、生徒の実態に合
 った指導を行うことができた。また、生徒自身が選択した課題曲であったため、受け身にならず、
 意欲的に学ぶ姿が見て取れた。アンケートでも授業前は 15 名がダンスに「自信がない」「ほとんど
 ない」と答えていたが、授業後のアンケートでは自信がなかった生徒のうち7名が「以前より自信
 をもつことができましたか」という問いに「はい」「どちらかと言えば、はい」と回答していた。
   今後の課題は、運動感覚を生徒につかませることである。ICT を使用すれば、自分の動きを客観的
 に確認することができる。自分の筋肉や関節に連動した動きを伝え、実践できる力を養わせたい。
 そのためには、運動の最初の段階である「認知的・意識的段階」を大切にしたい。インプットした
 ものを再現したいという姿が表出できれば、ICT を使った支援が生きていくと考える。「感覚と運動
 の連合の段階」や「自動化の段階」を導いていくことができれば、より豊かにスポーツライフの実
 現に近づくと考える。定時制の生徒は学習レベルの差が大きいが、個々の生徒の学習レベルを考慮
 し、インプットとアウトプットの学習バランスを調整する必要がある。
 【理科】
   この一年継続して動画や画像を多様化した結果、より生徒が理科を学習する楽しさを実感できた
 のではないかと感じている。生徒の授業を受ける姿勢にも変化が見られ、タブレットで得た情報を
 活用して生徒自身で考える姿勢が見られるようになった。
   課題としては、全体的に板書のみの授業より進度が遅れがちになったので、今後動画や画像をよ
 り精選し、効率よく授業を展開する必要がある。また、教員として、動画の説明に頼りがちになり、
 教師自身のスキルが停滞する危惧を感じた。
   今後、ICT に使われる授業にならないように日々研修する必要がある。
 【数学】
   ICT の活用により、生徒は立体図形やグラフなどをイメージしやすくなり、教員も説明しやすくな
 った。数学ソフトの GeoGebra では、立体図形の視点を変えたり、サイズや形を変更したりでき、視
 覚的な変化によって生徒の気づきにつながることもあった。生徒の苦手とする部分を補えるツール
 として効果的であったと感じている。
   課題として感じたことは2つある。1つ目は使用できるテーマが限られる点である。計算など反
 復練習が必要なテーマでは、ICT を利用するのが難しい。2つ目は、数学ソフトを用い、授業に必要
 な教材を作成するのに時間がかかりすぎる点である。夏休みなどの長期休業中に1年間を見据えて
 教材を作成しておくなどの工夫が必要になってくる。
   今後は、来年度から本格実施される観点別評価の点からも、従来の説明して解くという講義型授
 業からの転換を図らなければならない。ただ、教えられた通りに解くだけではなく、自分や周りと
 の対話の中から解き方を見つけることや、なぜそうなるかを考えさせる授業展開をしなければなら
 ない。