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取得日:2024年03月22日[更新]

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          教育相談および特別支援教育に関する取り組みについて
 
 
                                                      通信制課程
                                                      教育相談・特別支援教育係
                                                                   吉竹   資英
 1     はじめに
      開陽高校は、通信制課程がある県内唯一の公立高校です。2019(R1)年度は通信制課
 程に 1,524 人(5月1日現在数)の生徒が在籍しています。通信制であるため、 私た
 ち教職員が生徒と顔を合わせる機会が全日制と比べてとても少なく、1年間まったく
 担任と顔を合わせない生徒も複数います。生徒によって学習状況は 様々で、順調に学
 習活動を進められる生徒もいれば、ほとんどスクーリングに出席していない生徒もか
 なりの人数になります。不登校や引きこもり、様々な特性などが理由で、学習活動に困
 難を抱えている生徒も少なくないことから、 少しでも安心して学習活動に 取り組める
 ような指導・支援が必要になります。
      このような背景から、教育相談と特別支援教育に関する業務を 担う教育相談・特別
 支援教育係が 2015(H27)年度に設置されました。今回はこれまで係で取り組んできた
 ことを報告し、今後の本校の取り組みの充実につなげていければと考えています。
 
 
 
 2     具体的取り組みについて
 
 
 (1)生徒への配慮事項・支援等の希望調査
      本校通信制には、毎年新入生・転入1生・編入生合わせて 500600 人の生徒が入学し
 てきます。中学校や前籍の高校で不登校を経験していたり、発達障がいを抱えていた
 りするなど、学習活動や学校生活に困り感や不安感を抱えている生徒が多 くいます。
 そのため、新しく入学する生徒の保護者を対象に「配慮事項・支援等希望調査」(案内
 文の送付)を行っています。希望があった家庭については、スクーリングが始まる前に
 担任や係で、生徒の特性やこれまでの支援のこと、配慮して欲しいことなどについて
 聞き取りをします。その内容を係で整理し、 スクーリング等で必要な配慮について職
 員間で情報を共有するよう努めています。5年間の相談希望者数は以下のとおりです。
        2015(H27)   26人
        2016(H28)   34人
        2017(H29)   29人
        2018(H30)   58人
        2019(R01)   69人
      この5年間、相談希望者数はかなり増加してきています。それだけ学習活動や学校
 生活に困り感や不安感を抱え、学校へ事前に相談しておきたいと考えている家庭が多
 いと言えます。
 (2)開陽通信制教育相談
   本校にもスクールカウンセラー(SC)が配置されていますが、「SCに相談するま
 ではない(またはSCへの相談は精神的にハードルが高い)が、学校には相談しておき
 たい」という生徒・保護者のために、係職員(希望があれば該当担任)と直接相談がで
 きる場を 2016(H28)年度から設定しています。SCによる教育相談と区別するために、
 「開陽通信制教育相談」という名称にしています。
   生徒の約4割が地区の協力校で学んでおり、遠方であるため鹿児島市の本校へ 行く
 には生徒・保護者の負担が大きいことから、年に3回(6・12・2月を中心に)係職員
 が出張し、地区別に教育相談の場を設けています。始めた当初は離島以外の地区でし
 か行っていませんでしたが、2019(R1)年度からは生徒数の多い大島地区でも実施する
 ことになりました。4年間の実施件数は以下のとおりです。
     2016(H28)   地区13件       ※本校では実施せず   合計13件
     2017(H29)   地区10件       本校28件           合計38件
     2018(H30)   地区19件       本校31件           合計50件
     2019(R01)   地区18件       本校31件           合計49件
   相談内容は、学習活動、学校生活、進路などですが、多くの生徒がこれまでの学校生
 活で不登校を経験しているので、 現在の学習活動だけではなく卒業後の進路にも不安
 を抱えていることが多いようです。本校での学習活動を通して少しずつ自信をつけて、
 学校生活や進路への不安を減らしていくためには、継続的な相談・支援が必要だと感
 じています。
 
 
 (3)「聞き合う会」の開催
   不登校状態であったり、発達障がいを抱えたりすることで、 学習活動や学校生活に
 困難を感じている生徒の保護者も、悩みを多く抱えています。そのため、保護者同士が
 お互いに悩みや情報を交流し励まし支え合えるような場として「聞き合う会」を 2016
 (H28)年度から鹿児島市の本校で開催しています。「聞き合う会」とは、保護者が子
 育てで抱えている問題・課題を解決するのではなく、お互いの悩みを聞き合い、「共
 有」することに重点をおくようにしています。始めた当初、少ない時は2人での開催と
 いうこともありましたが、回数を重ねるにつれ継続的に参加される保護者も 増え、現
 在は毎回510 人の参加があります。継続的に参加される保護者から、多くの人が参
 加できる機会を増やして欲しいという要望があり、回数も増やすようにしました。4
 年間の参加者の延べ人数、開催回数は以下のとおりです。
     2016(H28)   15人       年3回
     2017(H29)   14人       年3回
     2018(H30)   39人       年7回
     2019(R01)   84人       年10回
   この4年間の取り組みで参加者数も増え、「聞き合う会」もある程度定着してきた感
 があります。子育ての悩みや葛藤など、現在抱えていること、これまで経験してきてき
 たことを保護者同士で語り合うことで、共感したり新たな気づきを得られたりする場
 となっているように感じています。同席している私たち係職員も、親がどういう思い
 でいるのか、生徒・保護者とどのように関わってい けばよいかなど、考え、学ばせてい
 ただいています。
 
 
 
 3     今後の課題
      文科省の 2016(H28)年度学校基本調査によると、中学校卒業者約 117 万人のうち、
 高校進学者は約 115 万人、うち通信制高校は約2万5千人です。つまり約 20 人に1人
 の割合で通信制高校が選ばれていることになり、その割合は年々増えて いるようです。
 通信制高校は「いつでも、どこでも、だれでも」学ぶことができる学校であり、「多様
 化するニーズに応えている」とポジティブに捉えることもでき ます。
      しかし、通信制であるために抱えている課題もあります。今回は課題を3点あげ、今
 後の取り組みの充実につなげていきたいと考えています。
 1      生徒一人ひとりが置かれている状況や背景は異な るので、抱えている悩みや課題
  も違います。私たち教職員はそれにどのように向き合い、対応していけるのか。可能
  な限り一人ひとりの思いを聞き取り、必要な指導・支援へつなげていく努力が求めら
  れます。支援内容によっては、福祉関連機関との連携も模索していく必要があります。
 2      本校は通信制であるため、生徒が毎日学校へ登校して来るわけではありません。
  さらに約4割いる協力校で学んでいる生徒とは、本校職員と顔を合わせる機会も極め
  て少ない状況です。そのため、担任が生徒一人ひとりの状況を捉えるには限界があり
  ます。その状況のなかで、学習がうまく進められず単位修得がなかなかできないなど、
  生徒が抱えている悩みや困り感をどのように把握し、必要な支援をしていくのかも大
  きな課題と考えます。
 3      通信制高校の生徒数が増えてはいるものの、高校の全生徒数からいうと5%程度
  なので通信制高校のしくみは一般的にはあまり知られていません。様々な不安を抱え
  ている生徒や保護者、生徒を送り出している中学校 等に対し、安心して通信制高校へ
  進学してもらえるよう、私たち教職員は外部に向け丁寧な説明をしていくとともに、
  現在在籍している生徒・保護者への支援・サポートの充実を図っていく必要がありま
  す。